536 :トゥ!ヘァ!:2013/06/19(水) 19:04:13
ギアス世界の最低野郎
シベリア……そこはEUロシア州に属する極寒の地である。
今そこでは中華連邦から独立した新進気鋭の国家「清」とヨーロッパ・アフリカの広大な地域を有する大国「ユーロピア連合」の二国による領土を巡る争いが行われていた。
当初EU軍はシベリアに電撃的に攻め入ってきた清に対し効果的な防御策が取れず各地で敗戦が続いていた。
EU軍はそのたびに戦力を消耗していき遂には反抗作戦までの時間稼ぎに重犯罪人で構成された囚人部隊を戦場に送り込んだ。
この部隊に属する犯罪者達は減刑を餌にして集められた人々であった。
勿論この部隊は捨て駒前提であり、損耗率の高い作戦にこぞって投入された。その毎回の損耗率が約五割というとんでもない数字になっていた。
それもその筈、囚人達は最低限の訓練を受けたらすぐに実戦に出されるのだ。
しかも乗る機体は「鉄の棺桶」「ワンショットライター」などと悪名高い
「シュトゥルムフント」なのだから、損耗率が高いのは必然とも言えるものだった。
そして、その損耗率の高さから兵士達の間に広まり呼ばれた仇名が「処刑部隊」
部隊が犯罪者で構成されていることから「処刑するための部隊ではなく処刑されるための部隊」の意味である。
しかも部隊を構成する重犯罪者や死刑囚はヨーロッパ・アフリカまでの広大な地域と人口を有するEUにとってはそれなりの数がおり、
毎回の凄まじい損耗ながら次の戦いには兵士は補充し終えているという様々な意味での悪夢の様な部隊であった。
しかしその死ぬのが半ば当たり前の部隊の中でも「死神」と呼ばれ、
味方から意味嫌われる男がいた。
その男はただの囚人とは思えないほどの操縦技術を誇り、性能で劣るはずの
シュトゥルムフントで清のジェンシーと互角以上に戦うことが出来ていた。
ここまで聞くと頼りになる存在に聞こえるだろう。
だが彼が配属されてきた小隊は彼を毎回必ず激戦区に投入され、彼を残し
全滅していた。その回数はなんと5回。どの時も味方は全滅し、彼だけが
生き残っていた。
そのことから彼は味方からは自分たちに死を呼び込む死神と言われ、
部隊内でも敬遠されいた。
537 :トゥ!ヘァ!:2013/06/19(水) 19:04:55
○月×日
今日も戦場だ。周りの奴らも俺と同じように進んでいく。
ただその中で俺だけが除け者にされている。
当たり前だ。連中にとって俺は「死神」なのだから。
何時からこうなってしまったのだろうか…
俺は普通に働いていた。一人の軍人としてだ。しかしある日突然豚箱に入れられた。
訳が分からなかった。後で分かったことだが当時の上官が軍で汚職をしており、
その罪を俺に擦り付けたらしい。その内容が近頃世界中で問題になっている
危険薬物「リフレイン」の不法売買だという。しかもその上官が本当に隠したかったのはただの横領だ。
それを隠すために俺にとんでもない罪状を着せて自分に目がいかないようにしたらしい。
全く禄でもない理由だ。勿論、俺は無罪を主張したが却下された。
どうやらあの上司は随分と手際が良かったようだ。そのおかげで今じゃ立派な重犯罪者だ
そしてその犯罪者を兵士として求めた政府により今じゃ棺桶に乗って戦場にいる。
操縦に関してはそこまで困らなかった。前世の記憶が役にたったらしい。
そう俺は前世の記憶とも言えるものがある。
どれもあやふやな記憶だが前世での自分の最後だけハッキリと覚えている。
俺は戦場で“アイツ”に赤い耐久服を着た死神に殺された。
それなのに今では俺が死神扱いだ。まったく洒落にもならん。
っと話がそれたな。
その後訓練を終えた俺はすぐさま戦場に送られた。
538 :トゥ!ヘァ!:2013/06/19(水) 19:05:35
様々な激戦地に送られた。しかし俺は生き残った。俺だけが生き残ってしまった。
まるで前世のように。ただ違うのは乗っているのはKMFで周りの奴らからは
最低野郎(ボトムズ乗り)とは呼ばれないことだ。
それにこの世界には前世で俺を殺したあの野郎はいないことだ。
あんな化け物と遣り合うのは二度とゴメンだね。
さて。そんな俺だが今ピンチに陥っている。
なんせ現在進行で敵陣への突撃を刊行している。現地の司令官が俺達に命令をくだいしたからだ。「本隊が別ルートで敵陣に攻撃を加えられるように陽動として突撃せよ」ってな。
作戦前のブリーフィングじゃあ味方からの支援砲撃が加えられているはずだった。
しかし実際には殆ど支援がない。一応は数機のパンツァーヴェスペが支援してくれているが相手側と比べると全然規模か違ってくる。
俺達はそんな中での突撃だ。バンバン味方がやられている。今も隣の奴が敵攻撃を受けて
爆発した。誘爆範囲からは咄嗟に離れたが危なかった。
そして今も危ない。頭上からは敵の砲弾が降り注ぎ、前方は敵の銃撃が壁のように
放たれている。
上かも敵の砲撃が雨のように降り注いでいる。
前を走っていた味方は砲撃で出来た窪みに足を取られて敵の銃撃の餌食になり穴だらけ。
横を走っていた奴は運悪く砲撃が直撃し、木端微塵になった。
後ろの機体は足をやられて味方を巻き込みながら一緒に爆発した。
ここは地獄と変わらない。鉄と血の焼ける匂いが漂う極寒の地獄。
死神が赤や黒で白いキャンパスに戦場という名の絵を描いている場所だ。
539 :トゥ!ヘァ!:2013/06/19(水) 19:06:07
そんな中で当然敵陣からの攻撃が少なくなった、どうやら本隊が奇襲に成功したようだ。
「よし!敵は混乱している。今のうちに接近して混戦に持ち込むぞ!!
そうすれば敵も砲撃を行えなくなる。」
生き残っていた指揮官がそう叫んだ。俺達は我先にと敵に殴り込んだ。
俺は機体性能では叶わないとわかっているので近づかれない様に距離を取りながら、
敵のサザーランドもどきに銃撃を浴びせいく。
その横で味方は近接戦が出来ないガンルゥに接近し至近距離から銃撃を浴びせ撃破する。
また別の味方は敵に接近され中華刀で切り裂かれている。哀れそいつは大爆発。
切り裂いた本人も爆発に巻き込まれていた。
俺もアイツの様には成りたくないのでより一層、敵との距離に集中する。
ライフルを撃つ、撃つ、撃つ、その銃弾は敵に当たる、当たる、あた…避けられた!
俺の攻撃を避けた敵が近づいてくる。近づかれないようにライフルを撃ちながら後退するが相手はそれを避けながら中華刀で切りかかってくる。
俺は咄嗟に機体を横に滑らせ避けた。
そしてそのままの勢いで一回転しながら空いている方の腕で相手を思いっ切りぶん殴った。相手は吹き飛び倒れ、俺はそのままの相手に銃撃を加えてやった!
相手は倒せたがこちらは左手がおしゃかになっちまった。
これはヤバイと思いながら周りの敵影を確認。残りは味方が如何にか片づけたようだった。
そのままライフルと手持ちの残弾の量を確認して味方の状況を確認してみたが、
「こりゃあ酷いな…」
味方は当初いた数の四分の一程度までに激減していた、戦闘に耐えられそうな機体の奴は
さらに少なかった。同じ小隊の奴らに関しては又しても自分を残して全滅していた。
「勘弁してくれよ…これじゃあ、また死神の伝説が増えたとか言われちまうじゃねえか…」
数十分後この地域の戦闘は収束した。俺らを囮に後方から奇襲をかけた本隊が敵の司令部を落としたからだ。
この攻撃により一部の部隊が壊滅した清国軍に一時的な後退を促した。
これにより味方が撤退するための貴重な時間が稼げたと言えよう。
しかしこの作戦の影には多大な犠牲を払った囚人部隊の存在があった……
最終更新:2013年09月08日 14:53