926 :シーランド王国建国後編:2013/06/23(日) 11:29:06
設定:休日世界
参考資料:シーランド王国 著者:休日氏
WIKI:シーランド王国 石油プラント
コードギアス兵器
捏造設定あり ガンダムネタあり
927 :シーランド王国建国後編:2013/06/23(日) 11:29:38
シーランド王国建国後編
シーランド王国軍事区〔G-1〕の戦闘指揮所が、慌ただしく動いていた。
原因はいつもの事ではあったが、今回の規模は今までよりも大きなものになっていた。
「くそ!吊り上げられた護衛艦はまだ戻ってこないのか!」
「護衛艦より伝達。『周囲に非武装の抗議船がおり、行動に阻害有り。威嚇発砲するも、離れず』です!」
「なんてことだ・・・ここまで組織的に動くとは、予想外だ」
戦闘指揮所のメインモニターには、吊り上げられて周囲を囲まれた護衛艦三隻が無様な姿をさらしており。
頼みの綱となる【ズゴック】も、敵高速艦艇に翻弄されてなかなか戦果を挙げられていない。
何時も数隻の高速艦艇がおちょくる様に動き回るだけなのだが、今回は明らかに駆逐艦と見える艦艇が一隻混じっていた。
船体の形から推測するとかなり前の年代物であるが、拘束されている味方艦が来ればすぐにでも撃沈できる代物だ。
しかし最悪な事に、四隻いるうちの護衛艦一隻が機関不調で軍事区〔G-1〕の仮港で係留中。
【ズゴック】においてはブリタニアとの部品共通化があるため何とかなってはいるが、独自の稼働コクピットの整備が大変手間がかかる。
さらに配備数が【ポートマン】に比べて少ないのもネックであり、高速艦艇六隻に対して稼働できる機体【ズゴック】八騎が拘束されていた。
現在、旧式駆逐艦×1と護衛の高速艦艇×4がこちらに突進していた。
(どうする・・・あいつらの目的は集積区の可燃物エリアだ。砲弾の一つでも落ちたら・・・)
最悪な未来を想像してしまい、慌てて頭を振るう。
自分はここを守る事を一任されている。
欧州に戻るための一手として重要な場所であり、自ら志願して着任したのだ。
しかし手札は少なく、防衛はなかなかうまくいかなかった。
戦力さえ整えられれば・・・そう思うが、そううまくいかないのが世の常だ。
苦悩していると格納庫から連絡が入った。
『指令、外では何が起こっているのですか?兵士がかなり慌てているようですが・・・』
連絡を入れてきたのは日本から来た技術者だ。あと数日もすれば日本に帰る手筈となっていた。
「ええ、少し不味い状況です。いつでも避難できるようにしていただけると・・・」
『そうなのですか。・・・それならば、“アレ”をだしますか?』
「“アレ”・・・とは?」
そこまで言うと、技術者の言う“アレ”と言うのを思い出した。
「調整が終わったのですか?!」
『ええ、先程ようやく』
「すぐに出せますか!」
『出せます。ですが・・・整備と調節をしていた為、あまり弾薬を積み込んでいません』
「いえ、それでもかまいません。時間を稼げれば何とかなります」
『了解しました』
「ご苦労をおかけします」
礼を述べて通信を切り、別の受話器を取り上げて格納庫に連絡つなげる。
「ああ私だ。状況はわかっているな・・・装備数が少ないのはわかっている!的になる可能性が高いのも承知しているが、今は出せる戦力が欲しいのだ!急げ!!」
受話器に怒鳴りつけると戦域マップの睨みつけながらも指令は指示を出し続けた。
◆◆◆
928 :シーランド王国建国後編:2013/06/23(日) 11:30:11
連絡を入れていた日本技術者が振り返ると、一人のパイロットが楽しそうな笑みを浮かべて立っていた。
「ヴェルナーさん。大丈夫ですか?」
「ああ大丈夫さ。なんでか知らないが、今自分はとてもワクワクしているよ」
技術者の前に立つ男・・・『ヴェルナー・ホースト』は安心させると様に言ったが、技術者の方はあまり緊張していなかった。
この技術者。前世において最前線近くで働いていたこともあり、こういう修羅場にはある程度慣れていた。
ヴェルナーは振り向き、最終調整をしていた機体を見つめる。
本来ならば赤い塗装をしているはずなのだが、この欧州の海に合わせた青い塗装を施した【ヴァル・ヴァロ】を頼もしそうに見ていた。
「さて、出撃許可が出たし俺は乗るよ」
そう言って去るその背中を、技術者は複雑な心境で見ていた。
(あの人は・・・どう見てもIGLOOのヴェルナー・ホルバインだよなぁ・・・
この世界のそっくりサンなのか、それとも転生者なのかわからん。
それとなくジオンとか聞いてみたが、全然反応しないし。
記憶無しの転生か?
脱出用KMF【ゼー・ゴック】っていうけど・・・フラグにはならないよなぁ。
まぁ・・・度胸はあるから大丈夫でしょ)
そう締めくくると管制室に向かう。
◆◆◆
ヴェルナーは会話の後すぐに【ゼー・ゴック】に乗り込み、機体が【ヴァル・ヴァロ】に接続されたのを衝撃で感じ取った。
【ゼー・ゴック】は水流抵抗を少なくするためにカプセル状のモノに入っており、海水で中を満たして空気を抜く構造になっている。
通常のKGFが機首上部にKMFがあるのに対し、【ヴァル・ヴァロ】は後部上部に接地されており、横倒しになっている。
「よし、調整はうまくいっているな。すべてオールグリーンだ」
彼がこの機体に乗り込むときに感じたのは、どういうわけか懐かしさだった。
EUからの亡命者だったヴェルナーは漁村生まれで、そのまま漁師になるはずだった。
しかし不況のあおりを受けたせいで仕方なく食い扶持の為に軍に志願、【パンツァー・フンメル】に搭乗して治安維持などをしていたのだが・・・シーランド王国の事を知り、正式に退役して亡命してきた。
そして経歴を生かして最初は【ポートマン】に搭乗していたが、日本から持ち込まれた【ズゴック】を見た時衝撃が走ったのだ。
強烈なデジャビュが走ったその時、思わずお守り代わりの銛を触っていた。
自分はこれに乗っていたことがある。
ヴェルナーは急いで指令室に向かって交渉した。
KMFの才能を見出していた司令の推薦もあり、彼は無事に日本製水中用KMF部隊隊長に任命されて【ズゴック】を乗りこなした。
そして今回、この未知のKGFを動かせる人物として選ばれたのだ。
去来する様々な思いを胸に感じつつ、再び衝撃が走った。
リフトが下がり、海面近くまで下げられた。
しばらくすると機首に当たる部分が下に向けられ、全体が斜めになったところで止まる
『よろしいですか?』
コクピットのモニター画面の隅に、技術者と整備士達が映っているのが見えた。
にやりと笑い、親指を挙げて肯定する。
「ああ、出してくれ!!」
『では・・・』
「『エントリー!!』」
掛け声とともに【ヴァル・ヴァロ】は、その巨体を海中に滑るように突入した。
すぐさま機関を始動させて進み始める。
20メートルほど海中に沈んだところで水平になり、旋回する。
戦場は反対側で行われており、急いで向かわなければならない。
「さてと・・・〔電磁界装甲〕展開!」
気合を入れるのと同時に、スイッチを入れる。
【ヴァル・ヴァロ】の表面に変化が表れて、のろのろと進んでいた機体が次第に早くなり、軍事区を抜けるころには高速艦艇に負けないスピードを出して戦場に向かっていた。
「うひょぉぉぉ!!やっぱりこいつはパワフルだぜぇ!」
普通の水中用KMFでは得られない【ヴァル・ヴァロ】の加速力に、ヴェルナーは感嘆と興奮を表情に出す。
軽く右旋回左旋回してみても、殆どスピードが落ちない。
ヴェルナーが楽しんでいる頃、海上ではパニックが起きていた。
いきなり巨大な敵影がソナーに映ったかと思えば、あり得ない速さで突進してくるのだ。
すぐさま護衛の高速艦艇が駆逐艦から離れて謎の敵に向かう。
いくらスピードがあろうと相手は水中にいるならば、対応は同じだ。そう判断したのだろう。艦艇群は散開して包み込むように布陣、五隻が一斉に対潜魚雷を放つ。
駆逐艦が二発、高速艦艇が一発ずつ発射した魚雷はすぐに着水して敵に向かった。
距離もあるからこれで十分、たとえデコイで避けても第二陣を放つ余裕が駆逐艦には在った。
「おお!?魚雷か!!」
929 :シーランド王国建国後編:2013/06/23(日) 11:31:09
レーダーに映った小さな影を【ヴァル・ヴァロ】はすぐに解析と分析し、素早く教えてくれる。
すぐにデコイ発射を推奨してくる。が、ヴェルナーは違う判断を下した。
機体を水平から一気に上昇に変更した。
警報が鳴り響いて注意を促す。
「うるせぇ!黙ってろ!!」
対潜魚雷は一気に【ヴァル・ヴァロ】に向かってくる。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
更にスロットルを吹かさせてスピードを上げ・・・機体は海面から爆発するように飛び出た。
その光景を敵艦体は茫然と見ていた。
はじめてみるKGFの巨体に度肝を抜かれ、ソナーから上昇してくるとわかっていて待機していた銃手もその巨体に目をひん剥いた。
敵が驚いているとは知らないヴェルナーは、機首を少し離れているが充分射程圏内にいる高速艦艇の一隻に向けると、予めチャージしていた機首下部のカバーを開いてハドロン砲をぶっ放した。
狙われていると知って慌てて回避しようとした高速艦艇であったが、呆然としていた事が仇となって回避するまもなく直撃、爆散した。
仲間がやられて正気に戻ったのか距離を詰めてくる高速艦艇に、着水した【ヴァル・ヴァロ】も突進する。
水上でもかなりのスピードが出せるうえに、近接攻撃用の腕を使用する事で急激なターンやブレーキを駆使し、別の高速艦艇に向かっていく。
銃撃をする高速艦艇の攻撃は数発当たるのだが、【ヴァル・ヴァロ】の装甲を打ち抜けるほどのものではなかった。
〔電磁界装甲〕は、防御能力はないが【ヴァル・ヴァロ】自身の装甲はそれなりにある。ある程度の距離は慣れていれば弾くのも容易だ。
お返しとばかりにモーターガトリングガンをぶっ放す。
銃撃の閃光に慌てて銃手が伏せると、今まで撃ち放っていた機銃や艦橋に弾痕が刻まれ、粉砕される。
装甲が無きにひとしい艦艇だ。あっという間にハチの巣になり、銃弾がまだ残っていた対潜兵器が治められている場所を打ち抜くと、爆発して消し飛ぶ。
怒り狂った駆逐艦が砲撃する時には、察知した【ヴァル・ヴァロ】はすでに海中に潜っていた。
「ふぃぃぃ・・・あぶねェ、あぶねぇ」
『なにやってんですか!!』
「うぉぉぉ!?」
額に浮かぶ汗を拭くと同時に、サウンドオンリーで怒声が聞こえてきた。
「あ、あんたか・・・脅かさないでくれよ」
『【ヴァル・ヴァロ】の装甲は硬いですが、潜水艦と同じで穴が開くと不味いのですよ!!』
「ああ、そういえばそうだった。すまん」
『もういいです。・・・敵が動揺しているようです。このまま一気に・・・』
「わかっているさぁ!」
930 :シーランド王国建国後編:2013/06/23(日) 11:31:40
勢いよく答え、通信を切ると同時に少し落ちたスピードを再び加速させた。
あっという間に二隻もやられ、残った二隻の高速艦艇は離れないように一定の距離を保って【ヴァル・ヴァロ】を挟むように移動していく。
ヴェルナーとしてはさっさと駆逐艦を撃沈したかったが、二隻の高速艦艇はそうはさせまいと妨害してくる。
仕方がないので向かってくる高速艦艇に正対するよう機体を移動させ、すぐに魚雷を発射した。
敵が水中を進んでくる機体であるため、魚雷の存在は警戒していた高速艦艇はすぐにデコイを発射し、ほぼ同時に機首に装備されている爆雷投射機を起動させた。
魚雷はデコイに引っ掛かって逸れ、爆雷はうまい具合に【ヴァル・ヴァロ】を直撃するコースになった。
「甘いんだよ!!」
が、ヴェルナーは海面近くまで機体を浮上させると同時に対空ミサイルを発射、その後すぐに反転して腹ばいになり両腕を爆雷に向けて爪を開いた。
黒い線条が二本、爆雷を薙ぎ払うと同時に破壊した。
とんでもない方法で迎撃した敵に船員が頭を抱えると、仲間が怒鳴ってきた。
怒鳴っている方向には二発のミサイルが見えて・・・彼の乗る艦艇は直撃を受けてこの世から消えた。
爪を閉じて戦果を気にせずそのまま潜航し、一気に海中に潜る。
残った高速艦艇が逃げようと旋回を開始、その間に一気に詰め寄り距離を縮めた【ヴァル・ヴァロ】は海面から飛び出し、すれ違い様に伸ばしておいた腕で持ち上げるように艦艇をひっくり返してしまった。
【ヴァル・ヴァロ】が海中に戻る時には高速艦艇は艦首から海面に落ち、何度もバウンドしながら周りに部品や人間をばらまき、最後には真二つになって沈んでいった。
残った駆逐艦は相手にしている敵が恐るべき兵器であると知り、泡を食って離脱にかかった。
しかし、ヴェルナーは逃がすつもりなどない。今まで好き放題にやられて頭に来ていたのだ。
全滅させる行為は、政治的に見ても調子に乗った海賊・・・派遣元のEU政府に対する姿勢を見せるのもある。
他にもあるのだが政治家の思惑の事は知らない彼は、単純に仲間の為に敵を許すことは無かった。
ミサイルを放ち、同時に魚雷を放って横に回り込むように移動する。
駆逐艦もやられまいとミサイルを迎撃するために機銃を放ち、魚雷を避けるためにデコイを投下する。
しかし、たった一隻の弾幕などで高速で飛翔するミサイルを迎撃する事などできるわけがなく、悲しいことに全て直撃してしまう。
かろうじて魚雷はデコイの方に向かった。が、被弾して発生した火災を鎮火するために、急いでポンプを動かして消火をしなければならなかった。
「わるいな・・・逃がすわけにはいかねぇんだ」
必死に船を生かそうとする彼等の真横から【ヴァル・ヴァロ】が飛び込んで、
機首のハドロン砲で中央を分断、
モーターガトリングで薙ぎ払い、
駆逐艦を飛び越えて、開いておいた爪のハドロン砲を拡散式で穴だらけにして、
【ヴァル・ヴァロ】は着水した。
猛攻を受けた駆逐艦は、もう浮いているのが奇跡としか見えず。艦体は松明のごとく燃え盛っていた。
燃え盛る中、いきなり後部がはじけ飛んで何かが数発発射された。
それを機体のレーダーでとらえ、解析された結果を見てヴェルナーは目を向いた。
「なんだ・・・デカいミサイル!!」
最後に放ったのは、大型ミサイルらしきものだった。
戦闘が終わったと思い込んで落としていたスピードを、慌てて一気に引き上げて追いかけ始める。
しかし空中を進むミサイルの方が早いのはわかりきっている。
それでも諦めきれないヴェルナーは残っていたミサイルと魚雷をすべて投棄し、ハドロン砲に回されるエネルギー全てを推進力に変えた。
さらに【ヴァル・ヴァロ】を海面に浮上させて水中ではなく、海上を進むのを選択して海面を突き進んだ。
「ぬぉぉぉぉぉぉ!!」
931 :シーランド王国建国後編:2013/06/23(日) 11:32:12
猛烈なGに、シートに押し付けられながらもミサイルを追いかける。その彼の前に、高速艦艇が二隻出てきた。
【ズゴック】を拘束していた二隻が仲間の救援きたのだが、あっという間にやられてしまい。せめて最後の抵抗を成功させるために妨害に打って出てきていたのだ。
「邪魔だぁぁぁぁぁ!!」
両側から迫る高速艦艇右側に舵を取り、モーターガトリングをばらまく。
最初は距離がありすぎて当たらなかったが、お互いに距離を埋めていくうちに直撃が出始めた。
「負けんなぁぁぁぁぁぁ!!」
お互いに被弾し始め、チキンランの様になっていたが・・・装甲のある【ヴァル・ヴァロ】の方に結局軍配が上がった。
艦艇は爆散し、残った艦艇がその爆炎の横目に突進してくる。
それに対して薙ぎ払おうとしたが・・・弾丸が出てこない。
「しまった。撃ちすぎた!!」
元々ミサイル撃墜のために残しておいたのだが、緊急出撃の上に弾薬はあまり搭載していなかったのを忘れていた。
急いでハドロン砲を撃つことも考えたが、今速力を落とせばミサイルに追いつけない。
だからといって目の前の敵も無視できない。
「しょうがない。荒いが、我慢してくれよ!」
ヴェルナーは機体を一時的に沈ませると、一気に機首をあげてジャンプさせた。回転を加えて。
視界が目まぐるしく変わり、更にGの負荷も加わり意識が飛びそうになる。
まじかで飛び上がった巨体に、船員が驚き見上げてしまう。
見上げたおかげで気が付いた。
【ヴァル・ヴァロ】の腕が伸びていた。
回転を加えた軌道は、ちょうど高速艦艇を上から叩き潰す軌道だった。
それに気が付いた何人かが海に飛び込もうとする。しかしそれよりも早くに腕が落下してきて艦艇の後ろを見事に叩き潰した。
「ああもう!わかっているよ!!」
コクピット中に警報が鳴り響き、それらを一時的に黙らせる。
それと同時にミサイルを見ると見えなくなっていた。
慌てて確認すると、ミサイルだったものは全て海中を進んでいることが分かった。
どうやら迎撃をさせ難くするためなのだろう。変わった機構である。
魚雷に変貌したミサイルは、海水と言う防壁に守られながら突き進む。
さらに最悪な事に【ズゴック】を完全に無視して、残った高速艦艇が向かってきていた。
小さく舌打ちをし、海中に潜って魚雷を追う。対潜兵器は怖いが無視する。
さらに先程無茶をした腕から警報が鳴りやまないので、軽量化の為に切り離して突き進む。
「いけいけいけいけぇぇぇぇ!!」
932 :シーランド王国建国後編:2013/06/23(日) 11:32:43
可能な限り軽量化し、エネルギーを推進力に変えた【ヴァル・ヴァロ】は想定されていた以上に速さを見せつけた。
徐々に距離を詰め、次第に近づいていく魚雷。
集積区に向かう魚雷は恐らく、係留させている支柱に命中するようプログラムされているはずだ。
それをどうにかしなければならないのだが、ひたすら機体を直進させているヴェルナーの頭には無かった。
ただひたすらに魚雷に追いつく、それだけを考えていた。
後ろから高速艦艇が追いすがるが、まったく追いつけない。それ以上のスピードを出せばひっくり返る危険があるためだ。
『お前らの相手は俺たちだ!』
『隊長の邪魔させん!!』
その高速艦艇に、海上を滑るように移動できる装置を取り付けた【グロースター】が襲いかかる。
高速艦艇もそれに応じて攻撃を加え始め、激しい戦闘が後方で行われ始めた。
しかし、極限まで精神集中していたためにまったく気が付かず、ただひたすらに突進させていた。
この様子を司令部でも見ていたのだが、彼が何をするつもりなのかわからなかった。
そして集積区からわずか50メートル先で、後から追い掛けていた【ヴァル・ヴァロ】は魚雷を追い抜くことに成功した。
【ヴァル・ヴァロ】は魚雷の近くを通り過ぎ、巨大な体躯で海中を撹拌し、その衝撃に魚雷はめちゃくちゃに振り回されて誤った反応して全て自爆した。
魚雷が無力化された光景を、固定カメラとソナーで確認していた司令部は一気に歓声に包まれた。
「やったぞぉ!」
「やりましたね、指令!」
危機を脱したことを知った司令部が沸きあがる中、一人の通信兵がとあることに気が付いた。
「あ、あれ?・・・指令・・・」
「ん、なんだ?」
「【ヴァル・ヴァロ】が止まりません」
「は?」
「集積区の下を潜り抜けてそのまま突き進んでいます」
「・・・どういうことだ?機械トラブルか!?」
「いえ、そうではないようです」
通信兵はそういうとヘッドホンを手渡した。
そのヘッドホンからは・・・
『ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!』
えらくハイテンションな声が聞こえてきた。
ガックリと肩を落とす指令を見て、通信兵が同情のまなざしでどうしようか聞いてみる。
「・・・自動帰還装置を起動させろ」
「了解」
何とも締まらない最後だった。
933 :シーランド王国建国後編:2013/06/23(日) 11:33:14
この後、自称海賊は全滅した。
脱出して生き残った者は全員テロリスト扱いでブリタニアに移送され、抗議団体はいきなり浮上突入してきた【ヴァル・ヴァロ】に驚いて退散した。
ブリタニアは正式にEUに対し抗議。EUも暴走した一部の政治家と軍部を処分する事で対応し、戦争回避に動いた。
抗議団体もEU政府の働きにより徹底的に抑えられ、イギリスもこのような団体は事前に察知して対応した。
処分が終わるまでに出てきた自称海賊に対しても、イギリスは徹底的に攻撃を加えて撃退し、密約を守る事を必死にアピールした。
流石に旧式駆逐艦を見逃したことは問題視されたからだ。
この後、シーランド王国は順調に整備されて世界初の海上都市として有名になり、海洋研究所としても名を馳せる様になる。
なお【ヴァル・ヴァロ】はこの時の戦果が認められ、正式に発注がかけられて合計20騎が納入されることとなった。
また、ブリタニアでも導入が一部進められることになる。
934 :影響を受ける人:2013/06/23(日) 11:34:32
と言うわけで、ようやく完成しました。
なんというか・・・【ヴァル・ヴァロ】を優遇し過ぎたような感があります。
かといって手直しできないし・・・
そして思った通り文章が酷い出来に・・・うまい人を見てもどうしたらいいのやら・・・
あと、投棄した腕は無事に回収されています。技術を渡すわけにはいきませんからね。
後、今回原作からキャラ持ってきてみましたがどうでしょうか・・・もしアウトならば改訂してやり直しをします。
楽しんでいただけたら幸いです。
935 :シーランド王国建国おまけ:2013/06/23(日) 11:35:12
おまけ
海上滑走ユニット:陸上KMF専用装備
上陸作戦でKMFを直接揚陸艦から発進させるために製作されたユニット。
コクピット両脇に推進用の大型プロペラを装備して、脚部にサンドボードに酷似したスキー板を取り付けることにより会場を滑走できる。
波が穏やかならば外洋でも運用できるが、コストに比べて活動限界が短くなるという欠点が発覚し、生産は少数のみで終わった。
他にも武装できる場所が両腕と、脚部固定の後付ロケットランチャーしかない。
しかも銃弾補充がしにくいとテストパイロットから報告が入るなど、評判は良くなかった。
銃弾補給はベルト式を採用する事で何とか解決したが、重量が重くなって速力が落ちた。
それでも海上防衛には使えるかもしれないという事で、シーランド王国にはとりあえず作った全てが配備された。
最終更新:2013年09月08日 15:04