948 :二二三:2013/07/12(金) 01:38:45
ちょっと息子がゲスいの投下~
モニカさんがマジでひどい目にあってる描写があるから嫌な人は避けてね~
ついでに文章荒いんでそこんとこヨロシク~

949 :二二三:2013/07/12(金) 01:39:33
悪い子にはならない


ある日、母さんが倒れた。病院に駆け付ける父さん、姉さんたち、母さんの部下の人たち

そして、僕

「迅速な対応とご本人が持つ強靭な体力のお陰もあり一命は取り留めることができました」

お医者さんの説明に胸を駆け付けたみんなは撫で下ろす
でも、それはほんの一瞬の間でしかなかった

「しかし、後遺症として左半身に麻痺が残ることは確実です」

僕の耳に続いてお医者さんの言葉が入ってくる

「日常生活を送るまでには回復すると思われます。ですが、回復はそこまでです」

「KMFには!?」

姉さんが叫ぶ。ただ質問しているだけなのに叫んでいるように聞こえた。それだけ憧れの母さんが心配なのだろう

「とんでもない!日常生活を送れるといっても、それも介護なしでは不可能なほど身体能力が喪われているのですぞ!本来ならば命を落としていてもおかしくないというのにKMFに乗るなど自殺行為に等しい!」

口調が荒くなるお医者さんと非情な現実を突き付けられ、その場に崩れ落ちる姉さん
終始冷静だった父さんの右手からは赤い雫がにじみ出ていた


数年後、自分の部屋にいた僕は母さんに呼ばれて一階に降りる。向かう先は焦げ茶色のお膳が置かれた居間

「なに?」

自分でもわかるくらい不機嫌な声になってしまう
あの日以来、弱々しい動きしかできなくなってしまった母さんが未だにエラソーな態度で説教するのがイライラして声に出てしまうようになったんだ
ホント、こんな筈じゃなかったのにね~

「―!――!!」

聞き取りにくい感じの言葉で母さんのお説教が始まる。よく聞いていないと何を言ってるのかさえわからない
そりゃそうだ。言語中枢にも麻痺が残っているんだから

「――!!」

ああ……イライラする

「うっせなぁ~」

口を突いて出て来たのはそんな言葉

「僕の頭が出来損ないだって言うなら、そんな出来損ないを生んだ母さんも同じだよね」

「……」

「おまけに今は扱けもしない。口でわーわー言うだけしかできない」

何を言ってるんだろうと思わないでもなかったけど、一度漏れ出した言葉は止まらなくて

「いい年してそんなリボンを髪に巻いてさ~恥ずかしくないわけ~?」

「……」

母さんは何も言い返してこないけど、僕の言葉は止まらない
もういいや、我慢生活もウンザリだし準備も整ってるし、種明かししてやろう

「だいたい僕は母さんに生んでくれなんて言った覚えないよ?誰がいつアンタに生んでほしいって頼んだよ?勝手に生んで育ててアンタの思うように教育されるこっちの身にもなってみろよ」

僕はその場から立ち上がると母さんの胸ぐらをつかみあげた

「ほら、昔みたいに投げ飛ばしてみてよ?ねえ?ねえ?」

僕は母さんを嘲笑いながら母さんの頬を殴った

「――っっ!」

「どうしたの~?やり返さないの~?なっさけないね~天下の元ラウンズ様が超格下の僕に殴られてな~んにもできないんだからさ~」

騒ぎを聞きつけたのか姉さんが来て止めに入るけど、僕は母さんをつかみあげてる右手はそのままに、空いている左手の裏拳一発で姉さんをぶっ飛ばした
三下が。僕に叶うとでも思ってんの?

「邪魔するなよ今いいところなんだからさ」

ふと見たら母さんの右手が震えていた

「あれ~?ひょっとして生意気にも怒っちゃってんのかな~?まあいいや、とにかく出来損ないでポンコツになっちゃったババアなんか怖くも何ともないから言っとくよ」

僕はひと月前に接触したある人たちから持ち掛けられた話をする

「剣尚人と浅村豊数って知ってるよね?」

「―!」

僕を睨んでいた母さんの目が見開かれた。蒼い瞳が揺れている

「そ、アンタや父さんの政敵である腐敗臭ぷんぷんのオジサンたち。でさあ、僕、夏の総選挙にその剣先生と浅村さんに後ろ盾になってもらって立候補するんだよ。当選は確実らしくってさ。もう勉強する必要無いんだよね~」

議員先生になれば左団扇の生活が待っている。勉強付けと母さんの説教からおさらばするのさ
母さんは僕が剣先生と浅村さんの二人と繋がってたことが余程ショックだったのか悲しい目をしていた

950 :二二三:2013/07/12(金) 01:41:08

「ついでに種明かししておくと、アンタの身体が麻痺した原因、それは僕が仕込んだ毒なんだよ」

「ッッ!!」

「そうさ!毎日毎日ウルサいアンタを黙らせてやろうと考えて毒を盛ってやったのさ!ククク…ア~ハッハッハッ」

母さんを出し抜いた喜びからか、一々出さなくてもいい下衆な笑い声が止まらなくなってしまう
ふと母さんの右手を見ると、さっきまでの震えが止まっていた

「あれ?そんなにショック?アンタの翼を奪ったのが実の息子である僕だった事実に」

そうだ。僕は母さんの翼を奪った。二度とKMFに乗れない身体にしてやったんだから

「ま、気も晴れたしもういいや。ポンコツになっちゃったアンタに僕は止められないし、お人好しでボンクラな父さんが僕の正体に気づく訳ないし…ね…」

そこまで言ったときだった。満足に動くことすらできない母さんから、全身ズタズタに引き裂かれるような殺気を感じたのは

「シ・・ゲ・・タロウ・・への・・・ぶじょ・・くは・・・・ゆるし・・ま・・せん・・・」

や…ばい……なんか知らないけどヤバい!
早くっ!早くこの死に損ないから離れなきゃ!!
そう思った時は………もう、手遅れだった…

「かは・・っ!」

止まっていた右手が目視できない速さで動いたかと思うと、次の瞬間には僕の喉を掴んでいた

「は・・なせっ・・・っ!」

もの凄い力で僕の喉に指が食い込む。音が、喉を握り潰す音が聴こえそうなくらいに

「あ、なた、の、きょ、いく、を、まち、がえた、わた、し、を、ゆる、して、く、ださ、い、」

母さんは泣いていた。僕の毒で翼を無くしても決して涙を見せなかった母さんが泣いた

"ゴキっ"

鈍い音が聴こえる。なん、だ、この、音?
息が、息ができない、

「せめ、て、あな、た、が、これ、いじょ、う、みち、を、ふみ、はずす、まえ、に、わた、し、が、いん、どう、を、わた、し、ます、」

いん…どう?
引導だって?
フザケンナ!
僕には!僕には輝かしい未来が待ってるんだ!
こんな!こんな事で!
こんな事でェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!

「ごめ、ん、な、さい、あい、して、い、ました、よ、カズ、シ、ゲ、」

"ボキっ"

もう一度鈍い音が聴こえて視界が暗転する瞬間

最後に見たのは、止め処なく溢れる涙に濡れた、悲しそうな母さんの顔だった



◆◆◆

951 :二二三:2013/07/12(金) 02:00:09







「うわぁぁぁぁぁぁ―――――ッッッ」

あれ……声が出る
さっき母さんに喉を潰されたはずなのに…………………………

「………ゆめ?」

ど、どうやら夢だったみたいだな、だけど……

「なんつー夢なんだよ」

僕、下衆すぎだろ
昔見た下衆さん下衆だよ
母さんに毒を盛って半身不随に追いやって公民党から立候補して、オマケにあんなことまで……
最後は母さんに喉潰されて殺されるなんて

「こら一繁!」

「うわあァァ!………ってなんだ、サクラ姉さんじゃないか……なんか用?」

「なんか用?じゃないでしょう!アナタいま何時だと思ってんの?!」

「何時って」

僕はいつも6時半には目が覚める

「6時半?」

「7時半よ!」

ゲェ!マズい遅刻する!

「ち、遅刻!遅刻しちゃうよ姉さん!」

「そんなこと言ってる暇があるならさっさと着替えて降りてきなさい!」

「わ、わかった、」

着替えて一階に降りた僕を待ってたのは、元気な母さんだった
そりゃそうだ。あの母さんは夢の中の母さんなんだから

「おはようございます」

「お、おはよう、母さん仕事は?」

「今日はナイトオブシックスと交代でお休みですよ?」

「そ、そうなんだ。父さんは?」

「お出掛けの支度をしています」

「出掛けるってどこに?」

「たまの休みですから映画でも観に行こうとなりましてね」

「へ、へぇ」

「そんな事より早く朝食を済ませなさい!アナタだけですよ?!夜遅くまで起きているからこの様なことになるのです!」

「あ、う…」

朝っぱらから母さんに怒られた

952 :二二三:2013/07/12(金) 02:00:58
「あのさ母さん、」

「なんですか?」

「もしもだよ?もしも僕が悪の道を歩み始めたら……母さんはどうする?」

「悪の道……ですか」

「もしもだよ!もしも!」

母さんは少し考えた後、答えた

「それは無意味な質問ですよ?」

「ど、どうしてさ?」

「カズシゲが悪の道に足を踏み入れる。そのような事、私がさせると思いますか?」

「う…」

「それに、アナタは私がお腹を痛めて生んだ子。アナタの事は一番理解しているつもりです。アナタは不真面目で、お調子者で、落ち着きのない、手の掛かる子ですが――」

悪い子にはならない。迷いなくそう答える母さんに面食らってしまった

………なんか、嬉しい

「さあ、早く食べなさい」

「……うん!」

目の前に置かれた味噌汁に手を着ける

「……」

まっず~~~!!

こ、この味は、間違い無い

「これ、母さんが作ったの?」

「ええそうですよ。さ、遠慮無く食べなさい」

「い、いただきます、」

母さん、アンタ自分の料理の腕が壊滅的なの自覚してんでしょーが!なんでメシ作ったの?!

でもニコニコしてる母さん見てるとマズくて食えないなんて言えないし

なんとか嘔吐感を我慢して食べきったけど、結局学校で吐いてしまったのでした

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最終更新:2013年09月09日 01:02