469. ヒナヒナ 2011/12/08(木) 22:07:20
ネタ短編その3です。

>>408
のコミケネタと
>>428
のネタ振りが化学反応を起こしたらこうなった。
古畑ネタですが、正直、嶋田元帥像をだしたかっただけ、今は反省している。
きっと天国で嶋田さんが泣いているな。CM前の語りはカットです。


警部補 古畑任三郎 in 憂鬱世界


潮の匂いのする深夜の広場で、二人の男の言い争う声が聞こえる。
かなり興奮しているようだ。

「ちょっと待て、何で分からないんだ!」
「放せよ、田畑。俺は俺の萌え道を進むんだ。お前の考えは古いんだよ。ともかく俺はやるからな!」
「おい、待て……待てよ!」

肩を引っ掴んで思いっきり壁に叩きつける男。鈍い音がして相手の男が崩れ落ちる。
近づいて、倒れている男を揺する。

「死んでる?  え……冗談だろ、アレだけで?  ……このままじゃ、今度の撫子たんの同人が手に入らなくなる……どうにかしなきゃ。隠す?  でもどうせ見つかるし……どうにかして疑われないようにしなきゃ。」

田端は周囲を見回す。目に止ったのは数年前に増築されたお台場ビッグサイトの新館、そして嶋田繁太郎像。


(暗転)


パトカーが大量に止っている。集まってきたオタク達を押し戻しながら警官が通路を作っている。その通路を自転車に乗った黒いコートの男がやってくる。

「古畑警部補、お待ちしていました。」
「お疲れ様。で?」
「被害者は名取大祐、24歳、死亡推定時刻は昨夜の24時から1時までの間、死亡原因は後頭部の強打です。」

部下の西園寺刑事が上司の古畑に報告する。
名取大祐はコミケのスタッフで明日から開催予定だったコミケの準備で昨日から徹夜で各作業を行っていたが深夜に殺害された。しかも今朝の7時にビッグサイト新館の屋上から死体が落とされた。複数の人間がそれを目撃されている。など細かい状況を古畑に伝える。

「つまり、犯行現場は特定できたけれど目撃者はいない。犯人を見つけるには今朝、死体遺棄を行った人間を探し出さなくてはならない。」

西園寺刑事が補足するには、死体が落とされた屋上やそこまでの通路は警備員が巡回しており、直前まで異常がなかったことを確認している。などなど、西園寺と古畑が条件を絞っていく。そして、最後に西園寺がまとめに入る。

「まとめますと、犯行時間はどの容疑者もアリバイはありません。次に死体遺棄時刻ですが、警備員の巡回で直前に死体が運び込まれたことが分かっています。血痕から死体が朝まで置かれていたのはこのビッグサイト新1号館倉庫です。ここから死体が遺棄された新3号館へは、このルートで行くと30分以上かかります。他のルートは作業中の人がいて無理です。つまり死体遺棄前までの30分間にアリバイがなければ犯行……死体遺棄ですが、が可能ですが該当者はいません。しかも屋上へと登る階段への入り口はここにあるのですが、当時は複数の人が作業していて目撃されずに、ここを通過するのはまず不可能です。」

「作業中の人?」
「ええ、この嶋田元帥像前のステージを飾り付けていたそうです。」

古畑が嶋田元帥像を見ると、背中に「萌神」と書かれた軍服……のようなものを着せられ、足元には「コミケ神・嶋田大明神」と書かれた板と何故か賽銭箱が設けられている。
周囲には早くも薄い本が供えられている。周囲にはスタッフらしき人がいる。容疑者だろうか。

「さすがに嶋田元帥さんだけあって人気ですね。」
「いやこれは止むに止まれぬ理由があって……」

尋ねる古畑に、微妙な顔をするスタッフ達。皆何故か目をそらして挙動不審だった。
470. ヒナヒナ 2011/12/08(木) 22:08:28

古畑は手がかりを探して新館中を見て回る。コミケの来場者数が明らかにビッグサイトの許容量を超えたため、数年前に改・増築が行われている。昭和の時代からこのコミケ会場を見渡していた嶋田繁太郎元帥像を新1号館の玄関ホールに据え、新1〜6号館が増築されていた。
さて、死体が遺棄された新1号館の屋上に登る階段への昇り口は玄関ホールに設置されていて、ホールの真ん中には同人の神様である嶋田元帥像が立っている。ホールの天井には足場が組まれて様々な飾りつけや照明が設置されていた。死体遺棄時刻、ここには人が沢山いたのでこのホールを通るのは不可能だろう。非常に遠回りだが、他の階段を人に見つからない様に経由してくるしかない。

ふと嶋田像に近づく古畑。
台座に上ってまじまじと見ると、何かを発見し微笑んで、そばにいたコミケスタッフを呼びつける。

「そこの方、ちょっと。……ええと、名前をお聞きしても?」
「スタッフの田畑ですが。なんでしょうか。」
「この嶋田元帥さんについている黄色いペンキ。何でこんな物が付いているの?」
「あ、その、実は誰かが悪戯したんらしいですよ。今朝、ペンキを上からぶちまけた奴がいたんです。」
「元帥さんに?  酷い人がいたものです。田端さんはご覧になっていた?」
「いいえ、僕は他の館で作業をしていましたから。僕はスタッフ仲間に聞いたんです。」
「そうですか。何故みな黙っていたのでしょう?」
「嶋田元帥といえば帝国の英雄ですから、誰かがペンキをぶちまけたなんて事になって、このビックサイトを使用禁止なんてことになるのが怖かったんですよ。」
「なるほどそれで、服を着せたり、軍帽をかぶせたりしてペンキを隠したのですね。」
「ええ、ペンキが落ちなかった所は、会場運営が帰ってからばれない様に誤魔化そうと考えていたのですが。」

古畑が嶋田像の軍帽と軍服もどきを脱がすと、黄色いペンキがべったりと付いていた。
471. ヒナヒナ 2011/12/08(木) 22:09:48
それからも古畑は周囲を捜索しながら、証拠や証言を集めていき、犯人に目星をつけて一気に追い込んだ。
そして、ついには容疑者を集めた。



「犯人はこのエリアで作業をしていた人のなかにいる。そして、7時に屋上から被害者の死体を突き落とせる人物です。ちなみに、血痕から新3号館から新1号館に死体を運んだことが分かっています。さて、新3号館で作業していた方は……」
「僕を疑っているんですか、古畑警部補さん?  でも死体が隠して合ったらしき場所からは人に見つからないように屋上に行くには、どんなに急いでも30分かります。僕にはアリバイがあります。」
「そうですね。今朝は作業をしているスタッフが沢山居ました。それを掻い潜って死体を運ぶのは難しい。このルートでは30分以上係るでしょう。」
「なら……。」

人の悪い笑みを浮かべて、周囲を見回す古畑。そして今泉巡査を呼びつける。

「さて、ここで実験をしたいと思います。今泉君。」
「え、僕ですか?」
「いいからつべこべ言わずにやる。はい。」

死体代わりの重石袋を担いで新3号館から走る今泉と、ストップウォッチを片手にそれを見張る西園寺。
今泉は10分で駆け抜ける。新1号館の嶋田元帥像のあるホールの手前まで走り抜けた。

「古畑さんこのルートでは無理です。このホールの中には早朝とはいえ、人がいなくなることはないはずです。ホールを迂回したら間に合いません。僕はどうやって、時間内に屋上に登ったのですか?」

不敵に笑う田端。
それに微笑んで合図を出す古畑。影にいた西園寺が携帯でどこかに掛けると、突如、上から嶋田像に真っ黄色の液体がかかる。プラスチックのバケツまで降ってきたギョッとしてその場の人々が騒然となる。

「「「「!!  なんて事をするんだっ!」」」」

田端と古畑、西園寺ら以外の全員が黄色くなった嶋田元帥像に集まって、雑巾を持ち出したりしている。

「はい、そこまで。それは水性塗料ですので水拭きで落ちます。……今泉君!」

はーい、と声がして、屋上への扉の方から姿を現す、今泉。いつの間にか階段を上っていたらしい。
「さて、この瞬間、全員が色水を浴びた嶋田元帥像に注目していました。これでは今泉君がホールの隅を横切って身を隠したのも分からなかったでしょう。そう、犯人は天井の足場からペンキを嶋田元帥像に引っ掛けて皆の注目を嶋田元帥像に集め、その隙に屋上へ向ったのです。ここからなら、5分で死体遺棄現場の屋上の端までいけます。そして、十分に遺体遺棄の時間に間に合います。バイブ付きの携帯電話が二台あればそう難しいことではありません。夜のうちに仕込めるでしょう。そう、犯人は日本人なら、コミケ参加者なら決して行わないこと、つまり嶋田元帥像にペンキを掛けると言った暴挙に出ることで、不可能に思えたショートカットを可能にしました。これでアリバイが崩れました。……さて、このなかにひとりだけペンキのついた携帯をもっていた人物がいます。」

笑みを浮かべて古畑は犯人を指し示す。

「あなたが犯人です。田端さん」

田端は俯いていたが、やがてペンキのついた携帯を放り投げる。

「仕方なかったんだ。名取の奴スタッフであることをいい事に調子に乗ってて……あいつ、艦魂の18禁誌を出展するサークルを出そうとして、いや、18禁誌だけなら許せるけれど脱がそうとしやがったんだ。艦魂は軍服や和服を着ていてこそ艦魂なのに。遂には自分の好きな同人を書く団体だけをブースに入れようとしていたんだっ!  僕にはそれが許せなかった……僕にとってコミケは人生なんだ。それでついカッとなって……」

「田端靖男さん、あなたを逮捕します。」

田端は悄然としてただ頷く。
制服警官が田端の両手に手錠を掛けて連れてゆく。そのとき古畑が後ろから田畑に声を掛けた。

「あなたのしたことはコミケを思う心からでていても、コミケ……いや同人界をもっとも侮辱することです。」

とうとう、泣き出す田畑。
制服姿の警官が田端を連行してゆく。その背中を送るのはコミケスタッフと黄色く染まった嶋田元帥像だった。


(了)
472. ヒナヒナ 2011/12/08(木) 22:10:22
あとがき

ああっ石を投げないで!  
なんだこれ、コナンの犯行動機より酷いw  嫌な世界です。
てか、テンパったら普通に死体を海に捨てる気がするwwトリックも無理やりすぎ。
現実の古畑は「ちなみの家」でマンガを読まないことを露呈していますが、
憂鬱世界ならばこういう話が普通に、夜9時からのドラマで
受け入れられるのではないかと思って書いてしまいました。
うん、疲れてるんだな俺。
483. 名無しさん 2011/12/08(木) 23:05:14
嶋田さんの扱いになんとなくモノリス大明神が頭をよぎった。

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最終更新:2012年01月04日 08:28