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338. ヒナヒナ 2011/12/15(木) 20:27:45
・本当にどうでもいいネタ

ミステリはお休み。でもネタは書くよ。
果てしない物語が書かれたのは1979年だとか、
ファンタージェンは読み手の心象世界だとか、そこら辺は気にしない方向で。


・ネバーエンディングストーリー


とある帰国子女用女学校の図書館。
大日本帝国に最初期に開校した帰国子女用の学校とあって、かなりの設備を誇っている。
史実日本で、バカ女学生の代名詞でもあった英文科女子学生(笑)を塗り替えるために、
辻らの奮闘で図書館などの教養施設に力が入れられている。

そこでとある本が発見された。
皮装丁の大きな本で何故今まで誰にも発見されなかったのか不思議なくらいの存在感だ。
その表紙には二匹の蛇が絡み合って互いの尾を噛んでいる意匠の細工が象嵌されていた。
その本の題名は「Die unendliche Geschichte」。
……英語に直すならThe Neverending Storyと書かれていた。
驚いた逆行者によってその本は夢幻会に送られた。

夢幻会の会合後のお好み焼き屋の別室。
大戦の後始末もだいぶ片がつき、身が自由になった者も多いなか、
いい大人が集まって、この本の朗読会が開かれようとしていた。
誰が読むかでMMJや映画派などが争った結果、
いつもどおり、首相兼進行役であった嶋田が読み手を押し付けられることとなった。
もちろん本文もドイツ語であったが、首相になってからドイツ語などの言語を勉強させられ、
海軍軍人ながらドイツ語も異様に堪能になっていたため、その役目を強制させられることとなった。
首相が部屋の真ん中で胡坐をかきながらファンタジーを読み上げ、
その周囲で大日本帝国の重鎮達が感涙に浸るといった異様な光景が繰り広げられる。

―アトレイユは幸いの竜のファルコンに乗ってファンタージェン国の空を……―

嶋田が読み上げるたびに、締め切った室内に何処からか風が吹いたり、外が嵐になったりする。

「うおおお、これが果てしない物語か。これが解析されればVRMMOが作れるぞ。」
「アウリンがあれば超大和型戦艦がいくらでも……ふはははは。」
「おさな心の君かわいい。永遠の幼女とか胸熱。」
「ファンタージェンに領土を、いや傀儡政権でも設立できないものですかねぇ。」

周囲は盛り上がって物語に埋没していくが、
読んでいる当人である嶋田は、終始こんな合いの手が入るため、
まったく物語に集中できなかった。
そのため、周囲の人間は原作どおりに本の世界を疑似体験しているのに、
嶋田だけ普通に本を朗読している状態になっていた。
別に死亡フラグ満載のファンタージェン国になんて行きたくも無いが、
自分だけ現実逃避も許されないのかと、嶋田はひそかに涙した。

夕方から始められた朗読会は宵の口に入って、山場に差し掛かった。
外は完全な嵐となっている。
「俺は何をしているんだろう。」と自分に問いかけること数回。
嶋田はすでに無我の境地に至りかけていた。
そうこうしている間に物語は佳境に入りファンタージェン国は崩壊しかけている。
国を統べる幼女に名前が無いため、国ごと存在が消えかかっている。
彼女とファンタージェン国を救うには新しい名前をつけなければならない……
そんな場面だ。
339. ヒナヒナ 2011/12/15(木) 20:28:44

―嶋田。私に名前をつけてください―


その場の全員が噴出し、嶋田が本を投げ捨てた。

「くっそ、なんで俺なんだ!  そこはバスチアンだろJK。しかも何故苗字なんだ。」
「ぶっ……さあ、嶋田さんご指名ですよ。おさな心の君に名前をつけるのです。」
「ロリババァいいよ。エヴァたんだろうやっぱり。」
「永遠の幼女だろう、撫子と名前をつけて、ロリ神として神社に祭ろう。」
「バカ、原作に沿ってモンデンキントだろうが!」

何故か本気になって嶋田に詰め寄りはじめる辻ら。
その欲望むき出しのぎらぎらした目に嶋田は恐ろしい物を感じて、部屋の隅へと後退する。
すでに嶋田は朗読していないのに、嶋田を呼ぶ幼女の声が響く。
……何故か日本語で。


―手遅れになってしまう前に早く。嶋田!―


「さあ、嶋田さん」
「嶋田さん。男ならドイツ風のモンデンキントですよね。」
「嶋田さん。撫子と叫ぶのです。」
「ロリババァ、ハァハァ」


―嶋田!―


ついには嶋田は追い詰められ、部屋の壁に背がついてしまう。
嵐で留め金が外れたのか窓が開き、窓の前にいる嶋田に豪雨が降り注ぐ。
外からは相変わらずおさな心の君の声。
日々の激務や夢幻会の面々の奇行に色々と溜まっていた嶋田はキレた。


「俺が何をした!  嶋田、嶋田って連呼するな!」


嶋田の絶叫が周囲に轟いた瞬間。嵐がぴたりと止んだ。雲の切れ目から月まで見える。
え?  っと疑問符を浮かべる面々。
そして、嶋田は原作の展開を思い出して顔を青くする。

「ま、まさか……」

理性が飛んだ所為か、いつの間にか嶋田まで本の世界にトリップしてしまったようだ。
周囲にファンタージェン国の残骸が漂う象牙の塔。ラストシーンだ。
夢幻会のメンバーもその場にいる。
玉座から進み出た少女を見て絶句する。



「新しい名前をありがとう。嶋田撫子です。」



そこに居たのはどう見ても日本人の少女だった。
どうも強すぎる周囲の雑念が混じったらしかった。

嶋田(嶋田命名)撫子は、10代の少女(MMJ)でドイツ風(原作派)の甲冑を纏った、
黒髪のセイバー(月型愛好者)という女王(交渉が出来る的な意味で辻)だった。
乾いた笑いを浮かべる嶋田と、理想の女性に色めき立つ夢幻会の面々。
もちろん「Yesロリータ、Noタッチ」の紳士協定に基づいて、
抱きつこうとするような不埒者はいない。

「さあ、新しいファンタージェン国を創造するためにアウリンに願い事を。」

嶋田はショックで、膝をつき、いつの間にか手に持っていたアウリンを落とす。
それに群がる夢幻会の面々。

「アウリン、超大和級戦艦……いや、いっそヤマトを!」
「撫子タン。はぁはぁ」
「原型をなくしてしまったチハたんのために、史実のチハをこの世界で……」、
「ファンタジー系美少女の人材交流を希望します。」

嶋田は朦朧とする意識の片隅で、そんな同僚達の声を聞いた。
340. ヒナヒナ 2011/12/15(木) 20:29:14


激務続きだった嶋田が一時的に夢の世界に逃避してしまう程のダメージを負ったが、
幸いなことに、本の世界は本の世界で、現実にとって代わる事はなかった。
翌日、嶋田が総理官邸の寝所で夢オチかとホッとしていると辻が訪ねてきた。
手にはあの本が……
表紙の字が「果てしない物語」と日本語表記に代わっているが、
アウリンも付いているし、間違いない。

再び絶句している嶋田に、辻は無常にも告げる。
「いやあ、昨日の出来事は集団トリップかとも思ったのですが、これだけ手元に残ったのですよ。」
辻がパラパラとページを捲ると、何故かドイツ語だった文字もすべて日本語になっている。
そして、最終ページの挿絵はドレス姿のおさな心の君ではなかった。

なぜかアニメ調の絵で黒髪セイバー姿の嶋田撫子が玉座に掛けている後ろに、
ヤマトやチハが描かれ、女子高生っぽい制服のネコ耳少女達がかしずいているという、
非常にカオスな絵面だった。

後世で、果てしない物語の名前で、世界中で愛読されることになる本の原作だった。
この本が何処から来たのかは分からないが、
嶋田原作などとして売り出すわけには行かなかったので、
作者としてミヒャエル・エンデという名が記された。
史実世界での原作者であるが、この世界ではすでに亡くなっていて無名であるようだったので、
このドイツ人原作者に敬意を表して、記したのだった。
341. ヒナヒナ 2011/12/15(木) 20:29:48
あとがき

作者のミヒャエル・エンデが親日家で、奥さんが日本人なのは知っていたのですが、
果てしない物語のおさな心の君の原作者イメージが「白装束を着た日本人少女」で
あったことを知って、これは書かざるを得ないと思った。

原作者のエンデって、反ナチスでレジスタンス活動していたし、
(16歳で兵役拒否して、シュヴァルツヴァルトの森を夜間移動のみで80km踏破して逃げ切った)
憂鬱世界では死んでいるかも……というので、あのラストです。
しかし、アメリカが作った映画版は自分のイメージと全く違うとして、
クレジットに自分の名前を入れるのを拒んだ人だし、かなり怒られそうw

嶋田さんTSネタ以外で撫子ちゃんを出してみたかった。
単発ネタだから勘弁して下さい。
どうでもいいけど、羽賀研二の歌う日本語版テーマ曲のコレジャナイ感は異常。

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最終更新:2011年12月31日 21:25