465 :フォレストン:2013/09/15(日) 08:20:09
テーマは脱ガソリン!

提督たちの憂鬱 支援SS 憂鬱英国ディーゼル事情

戦後発足した英国の調整機関である円卓で決定された事項の一つとして、民間向けのディーゼルエンジン
の推進・発展が挙げられる。米国の消滅によって、ハイオクガソリンが入手出来なくなり、戦闘機用の
大出力レシプロエンジンの性能を発揮しにくくなったのが原因である。

もちろん、英国もハイオクガソリンを生産する技術と設備を有してはいたが、規模とコストの面で米国には
遠く及ばず、軍が必要とする分を確保するので精一杯であった。

ハイオクでない、いわゆるレギュラーガソリンも軍用に回されたため、民間向けの供給を統制せざるを得ず、
このままでは戦後復興に悪影響が出るのは必至であった。

一方でガソリンに比べ、ディーゼル油は取得の容易さとコストの安さがあり、比較的余裕があった。
英国内ではガソリン車が動けなくなるのを尻目に、ディーゼル車は普通に走り回っていたのである。

そのため円卓ではガソリンを軍に優先して振りわけ、逆にディーゼル油は民間に回すことを決断、合わせて
ディーゼルエンジンの普及に乗り出すことになる。

円卓関係者の形振り構わぬ梃入れと、技術者の必死の努力もあり、英国ではディーゼル技術の開発が
加速していくことになる。

466 :フォレストン:2013/09/15(日) 08:21:55
円卓関係者の奔走によって、民間車両に搭載するエンジンとしてディーゼルは急速に普及していった。
元々バスやトラック等の大型車には搭載されていたが、急速に乗用車にも搭載されることになる。

乗用車、特に小型車用のディーゼルエンジンは開発に難航したものの、英国随一の内燃機関研究家である、ハリー・リカルド
の手により1.2リッター2気筒ディーゼル(20馬力)が実用化された。このエンジンは戦後生産された小型大衆車である
オースチンA30に搭載された。

その後もミドルクラスのハンバー・プルマンなどの大衆車にも続々とディーゼル搭載モデルが登場することになる。

バイクにもディーゼルエンジンが搭載された。
特にロイヤルエンフィールドから発売されたディーゼル搭載バイクは、その低速トルクによる扱いやすさと低燃費でユーザーに歓迎された。
スペック上の馬力からは想像も出来ない、豊かなトルクで粘り強い走りを見せたという。

467 :フォレストン:2013/09/15(日) 08:23:50
鉄道はバトル・オブ・ブリテンと巨大津波の被害のため、路線を復旧するので精一杯であった。
史実以上に電化が進まなかったことと、旧式化していた蒸気機関車の置き換え、さらに戦後の輸送量の増大
に対応するためもあり、大出力の高速ディーゼル機関車が求められた。

英国国鉄は、対抗ピストンディーゼルを3つ繋げた、ネイピア デルティックを搭載した新型ディーゼル機関車
を開発したが、軽量高出力とはいえ、元は魚雷艇用の大型エンジンを狭いスペースに押し込んだため、トラブル
が頻発した。ダイヤにも影響が出るほど故障が頻発しため、エンジンごと交換出来るように、予備エンジンを
大量に準備していたという。

後にメーカーの必死の努力により、通常のディーゼルエンジンと変りない信頼性とオーバーホール周期を達成したが、
デルティックエンジンの信頼性が向上したとはいえ、メンテナンスに手間のかかるエンジンであることに変りないため、
大出力を必要としない場合は通常のディーゼルエンジンを積んでいることが多かったようである。

巨大津波で多大な被害を受けた船舶は、円卓の指導(ディーゼル助成金&税制優遇)により、新造された船は最初から
ディーゼルエンジンを搭載していた。
経費節減とディーゼル助成金のためにドッグ入りした際に、タービンからディーゼルへ積み替える船舶も多かったという。

小型船舶には自動車用ディーゼルを流用したエンジンを、中型、外航用大型船舶には中速ディーゼル機関が搭載されたが、
特にタンカーなどの大型で、本国と植民地を結ぶ長距離を航行する船舶には、よりコストの安い重油を燃料とする
低速ディーゼル機関が搭載された。

468 :フォレストン:2013/09/15(日) 08:26:26
このように、英国では民間向けにディーゼル機関が急速に普及していったのである。
しかし、このままでは終わらないのが英国面である。

軍用のディーゼルエンジンも作るべきではないか?と誰が言ったかは知らないが、英国最凶の
エンジンメーカー(誤字に非ず)、ネイピア&サンは航空機用ディーゼルを開発したのである。

ネイピア ノーマッド2
水平対向型12シリンダー液冷ディーゼルエンジン(2ストローク、排気エネルギー回生機構付き)
筒径×行程:152.4mm × 187.3mm
排気量:41L
全長:3000mm
全幅:1429mm
全高:1000mm
乾燥重量:1625kg
離床出力 軸出力換算3135馬力(2050rpm、ブースト圧 614kPa)
水噴射時 軸出力換算4095馬力

ディーゼル故の重量サイズ、レスポンスの鈍さがあったが、燃費が良く、高高度飛行に有利な
このエンジンは実際にいくつかの機種に搭載されたという。また、構造上ターボプロップエンジン
に近いこともあり、ターボプロップエンジンの早期実用化に繋がった。

ガソリンエンジンの被弾炎上時の危険性を鑑みて、戦車のパワープラント用に大出力ディーゼルエンジン
も開発された。
これは上述のデルティックを再設計して、ダウンサイジングと信頼性の向上を図った対抗ピストンディーゼルエンジン
であり、デルティックJr.と名付けられた。

ネイピア デルティックJr.
形式:液冷対向ピストン型18気筒36ピストン 2ストロークディーゼルエンジン
筒径×行程:105mm × 160mm ×2
総排気量:49.86L
全長:1934mm
全幅:1325mm
全高:1148mm
乾燥重量:1785kg
燃料:直接噴射式
公称出力:1400HP/2100rpm

小型化したとはいえ、これでもサイズ的に巨大であり、重駆逐戦車用に少量採用されたに留まった。

一方でレイランドモータースでも戦車用のディーゼルエンジンが開発されており、船舶用の発電機
をベースにL60を開発した。

史実とは違い、マルチフューエル化しなかったことによる機構の単純化と、憂鬱英国のディーゼルの
基礎技術の向上により、十分な信頼性を確保することに成功したこのエンジンは、陸軍が開発中の
新型戦車に採用されることになる。

469 :フォレストン:2013/09/15(日) 08:30:00
あとがき

貴重なガソリンを軍用に回すのなら、民間はディーゼルを普及させるのではないかと思ったのですが、
気がついたら、軍にもディーゼル化の波が!?

しかし、こうもディーゼルが普及すると、スモッグが悪化しそうで怖いですね(汗

乗用車用ディーゼルは、1936年にメルセデス・ベンツ260D(6気筒、排気量3.8リッター、82馬力)
が市販されています。これを単純に1/3にしたのを小型車用ディーゼルとしています。
1.2リッターで20馬力出せれば、小型車には十分だと思います。加速がトロくて、最高速も伸び悩むでしょうが、
トルクはあるから運転しやすいはずw

ディーゼルを搭載したバイクも実際に販売されています。とはいっても時系列的にはずっと後なのですが。

日本でも、レッドバロングループから輸入販売されていた、エンフィールド=ロビン・D-R400Dが
ディーゼルエンジンを搭載していました。エンジンは富士重工製の空冷4サイクルディーゼルであるDY41なのですが、
富士重工はこのエンジンが、バイクに搭載されていることを知らなかったそうです。

設定スレで何度か出している、ネイピア ノーマッド2は、実在する航空用ディーゼルです。
史実ではジェットエンジン実用化によって消えていきましたが、憂鬱世界ではターボプロップまでの繋ぎとして生き残れるでしょう。
というか、ディーゼルなのにWikiではターボプロップの範疇にカテゴライズされてるんですよね。それだけ機構的に近いということなのでしょうが、
逆に言えばノーマッドを実用化出来れば、ターボプロップの早期開発に繋がるのではないかと。

デルティックJr.はオリジナルです。
史実デルティックをより小型に、扱いやすくして戦車のパワーパック用にしてみました。
馬力は史実第3世代戦車並に出せますが、サイズも大きいので使いどころが難しいですね(汗

レイランドのL60は史実チーフテンに搭載された対抗ピストンディーゼルです。
どんなエンジンなのかは…ここに来られる方々なら知っているでしょうから説明は省きますw
マルチフューエル化しなければ、信頼性も向上したのではないかと思い、あのような描写となりました。
他にも問題ありまくりだったりするのですが、憂鬱英国のディーゼル技術なら、きっとなんとかしてくれるはずw

空軍の場合、ディーゼルが普及して軽油メインになれば、後のジェット化にも対応しやすくなるのではと思います。
海軍も後になってガスタービンを積むなら軽油のほうが都合が良いですしね。

陸軍の場合は燃料が兵站と直結していますので、仮に戦車のエンジンをディーゼルにしたら、他の軍用車両もディーゼル化は
必須になるかもしれません。

北海油田が開発されれば、燃料事情は好転しますが、北海油田の油質は硫黄分が少なく、クリーンなディーゼルが実現可能なわけで、ディーゼルが普及
してしまったら、ガソリンに戻る理由が無いんですよね。さすがにバイクとか小型車はガソリンに戻るかもしれませんが。

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最終更新:2013年09月28日 18:39