446 :第三帝国:2013/10/02(水) 19:04:20
衝号ぬきの太平洋戦争~第4章「太平洋の戦いⅠ」
1942年11月1日、
日本海軍はミッドウェー攻略の前段階としてウェーク島へ侵攻を開始した。
この時参加した兵力は(参考本編34話)
- 第4艦隊(本編では第4艦隊、とのみ明記これらは予想)
第6水雷戦隊
第29駆逐隊:追風、疾風、朝凪、夕凪
第30駆逐隊:睦月、如月、弥生、望月
第3航空戦隊〔翔鶴、瑞鶴、瑞鳳〕
第11戦隊〔伊吹、鞍馬〕
第9戦隊〔那智、利根、筑摩〕
第3防空戦隊〔川内、駆逐艦12隻〕
その他第36軍第56歩兵団を載せた輸送船など、
と史実からすると大げさとしか言いようがないものであった。
現にフィリピンで派手に戦艦を動かした事もあり海軍全体の油の減りようは、
平時では考えられない程であったため、過剰兵力であるとする意見が多数寄せられたが、
史実ウェーク島の善戦と、万が一アメリカ太平洋艦隊の救援がやってきた際に備えるためにという理由で作戦は推し進められた。
もっとも、根本的な原因は国家方針として経済優先で海軍全体で艦が不足しており、
上記の編成表から分るように、第4艦隊に参加可能な艦は駆逐艦しか存在していない。
元より第4艦隊の意義は史実でも艦隊根拠地守備隊、
つまり基地警備艦隊でしかないため2線級の戦力しかない。
なお、第4艦隊の旗艦は練習巡洋艦の『鹿島』で速度は最高で18ノット程度。
そのためとても艦隊運動について行けないので置いてかれている。
史実のウェーク島攻略に参加した軽巡洋艦の『天龍』『龍田』『夕張』は憂鬱世界では既に退役。(参考本編34話)
代わりに阿賀野型軽巡洋艦があるがこれらはあくまでも対空、対潜戦闘を主眼とした対ドイツ戦用のもので、
しかもこれらは第5艦隊や遣支艦隊(現在は遣南艦隊)、海上護衛総隊、海上保安庁に集中配備されていた。
結果、第4艦隊でまともに戦えるのは駆逐艦8隻のみ。
それも水雷戦隊を率いる軽巡洋艦抜きと火力が甚だしく不足している状態であった。
447 :第三帝国:2013/10/02(水) 19:05:00
閑話休題
ウェーク島への攻撃は猛将で知られる、
角田覚治中将の第3艦隊から発艦した攻撃機の爆撃から始まった。
その数90機、しかもそれは第1次攻撃隊に過ぎず対する
アメリカはF4F合計12機しかなく。
圧倒的な性能格差からたちまち護衛の『烈風』に食われ、早々と制空権を失う。
地上も日本の潜水艦が暗躍する中、何とか戦車を含んだ増援を受けたが。
元々海兵隊1個大隊程度の戦力しかなく、また大兵力を展開できる土地でもないため大局に影響を与えることはなかった。
数少ないコンクリートとヤシの木で必死に作り上げたトーチカに潜み、
何とか昼間の空襲を過ごした彼らはほっと一息をついたが、むしろこれからが試練であった。
夜間、戦艦『伊吹』『鞍馬』がウェーク島への砲撃を開始した。
ある人物に言わせると戦艦一隻の艦砲射撃は5個師団に匹敵すると述べており、
この時たかが増強1個大隊がこもるウェーク島は合計10個師団の砲撃に一晩中曝された。
そして、翌朝に写ったウェーク島はまるで月世界かのごとく一面穴だらけの有様となっており、
大多数の人間は艦砲射撃でアメリカ軍は既に全滅しているのでは?と冗談を言い合ったほどであった。
だが史実のタワラ、硫黄島、ペペリューの戦史から分るように、
例え艦砲射撃を加えてもやりようによっては兵力を温存することがで、上陸側に思わぬ損害を与える。
そのことを承知していた
夢幻会によって、
この世界の日本の上陸部隊に与えられた装備とドクトリンは史実の米軍のごとくぶ上陸部隊をぶ厚い火力で守るようにしていた。
この時、上陸部隊には各種上陸支援艦に水陸両用戦車、火点潰しのための駆逐艦。
さらには、支援砲撃役として再び戦艦を近づかせ、駄目押しとばかりに空母からは攻撃機は発艦しており、
誰もが楽に勝てると確信していたが、やや沖合で待機していた空母『翔鶴』の電探が不審な物を捉え。
やがてしばらくして、全艦隊に緊急警報が発せられた。
米艦載機の襲撃だ。
真珠湾に逼塞状態であったアメリカ太平洋艦隊であったが、
水道を塞いでいた空母『レキシントン』はその名前を次の艦に託すことにして、
最終的にサルベージすることなく真珠湾で暇をしていた戦艦群の至近距離からの艦砲射撃で強引に破壊。
残るは海底に散らばった破片を航行する艦船に支障がでない程度に片づけるのみで、11月中旬には真珠湾の機能は完全回復する見込みであった。
が、失った時間は戻ってこない。
2か月以上航行訓練を行っていないこともあるが、既に
アジア艦隊は海の底に沈み。
フィリピンのマッカーサーは名誉の戦死を遂げてしまい太平洋艦隊を投入する機会を逃してしまった。
また、日本海軍がその威力を証明した空母機動部隊による破壊力は、
ただ単に太平洋艦隊を突撃させてもアジア艦隊と同様に無残な敗北に喫する可能性があり、
激化するばかりの通商破壊と合わせてアメリカの戦争の方針をめぐって混乱状態であった。
ニミッツ提督は
- 当面一切太平洋上の拠点は放棄、ハワイまで戦線を後退。
- 安易な攻勢は控えて日本軍の攻撃に備える。
- 既に太平洋まで回航した大西洋艦隊を太平洋艦隊の増援を付けてカナリア諸島を攻略。
- 日本の通商破壊には巡洋艦、正規空母の生産を押さえて駆逐艦、護衛艦の増産で対応。
- またやり返す意味で潜水艦による通商破壊を展開、長大な日本の補給線を締め上げる。
などといった対応をすべきと提案し、さらには。
- 恐らく1年以内に日本海軍は決戦を求めてハワイかミッドウェー島に襲来する。
- ミッドウェー島共々航空要塞として防御力を高め、基地攻撃にてこずっている間に横合いから太平洋艦隊が殴りかかる。
と言った堅実な計画を立てて政治家たちを安心させたが、
彼と海軍首脳部は現状がそうした計画が実現できるかどうかも怪しい極めて危険な状態であると考えていた
まず時間稼ぎになるはずのチャイナ、フィリピンの拠点が早々と殲滅されてしまい、アジア艦隊に至っては全滅という結果残す。
次に兵力についてはアジア艦隊が航空機の波状攻撃で殲滅されたように空母機動部隊の創設が不可欠であったが、
空母も開戦一か月以内に全6隻の内半分が既に海の藻屑と化してしまい残るは3隻のみ。
期待のエセックス級空母については42年末に完成し、
実戦部隊に配備されるのはどんなに急いでも来年初頭となってしまう。
だが、短期決戦でしか勝利を見いだせない日本は来年春には再度攻勢を仕掛けてくる。
対するアメリカは戦艦数で日本に優るが、新たな価値が見出された空母という要素を吟味すると兵力不足と言わざるを得ない。
448 :第三帝国:2013/10/02(水) 19:06:36
だからこそ、今はあらゆる数が揃うまで耐え忍ぶべきであり投機的な攻勢は慎むべきであったが政治がそれを赦さなかった。
よく知られているように史実においても日本海軍はアメリカ本土に対して攻撃を仕掛けている。
そのせいで一時期パニック状態に陥り、誤認から始まりその状況がラジオで中継されていたせいでさらに全米が混乱した『ロサンゼルスの戦い』
を筆頭に今からすれば馬鹿みたいな話だが当時のアメリカ市民社会は真剣に日本軍が本土に侵攻してくるのを恐れていた。
だからこそ、少しでも国民の士気を上げるために、
ハルゼーによるギルバート諸島への襲撃、ドーリットル空襲など国民の士気上げ、支持を保つための作戦を計画、実行に打ち出した。
そして、アメリカ本土への攻撃を更に徹底した憂鬱世界でアメリカ市民が受けた衝撃は夢幻会が想定した以上のもので、
通商破壊でハワイ‐アメリカ本土の航路は輸送船の墓場と成りつつあり、
食料の自給ができないハワイでは俄かに配給制度が始まりまだ備蓄があるとはいえ苦しい状態であった。
それだけでなく、パナマ運河の両側から付近に機雷をバラまかれ一時期は運河の運航すら停止。
さらに南米航路も安全とは言い難く、チリ沿岸など本土から航空機が届かない場所で好き放題に暴れ回っていた。
極めつけはメキシコの反米勢力に潜水艦による武器の輸出すら実行しており、アメリカの神経を尖らせた。
なお、最初の月に失った船舶は軍艦を除けば合計約80万トン。
42年の時点でアメリカが保有する船舶は約1300万トンとほぼ史実通りの船舶数で、
いきなり100万トンに匹敵する船舶を失い、さらに次の月は100万トンを超えてアメリカの海運業界は恐慌状態であった。
艦砲を搭載した旧型の『伊17』『伊26』潜水艦に至っては史実にならって本土への艦砲射撃すら実行しており、
カリフォルニア州サンターバーバラの製油所に大爆発を含む被害を与えることに成功し、燃料製造計画を大きく狂わせた。
このように日本の尋常でな攻撃力にアメリカは為すすべもない状態で、
いいくら、メディアによる報道管制を敷いていたとはいえ、完全に統制できるはずもなく、
アメリカ市民社会の大統領に対する視線は日々厳しいものとなっていた。
だからこそ、ルーズベルトが東京への爆撃を命令したのと同じく、
日本に対して何らかの打撃を与えるように海軍に命令を下したのは全く自然の流れであった。
海軍としてはニミッツ提督を筆頭に安易な攻撃に反対であったが、大統領命令なので従わざるを得ずむしろ
『陸上機を空母に乗せてトウキョウを空爆する』という当初大統領が出した馬鹿げた案を何とか退けたことに安堵し、
直ぐに大統領の『太平洋上でウェーク島を含む島々の救援、援護』という条件で代わりとなる作戦について頭を悩ましたが、
使用可能な空母による一撃離脱の攻撃、つまり現実の歴史であった『マーシャル・ギルバート諸島機動空襲』
と同じく太平洋上にある防備が薄い日本軍の拠点に対して攻撃を行うことにし、その指揮官にはたまたま真珠湾の外にいたため、
逼塞することもなく使用可能な戦力として残っていたウィリアム・ハルゼー中将率いる第5任務部隊が選ばれた。(参考本編39話)
449 :第三帝国:2013/10/02(水) 19:07:22
かくして、
稼働可能な残った空母3隻の内2隻を動員して編成された、
空母『サラトガ』
空母『エンタープライズ』
戦艦『ノースカロナイナ』
巡洋艦5
駆逐艦12
給油艦2
航空機約180機
(参考、マーシャル・ギルバート諸島機動空襲時の兵力+憂鬱世界補正)
による、
マーシャル・ギルバート諸島への襲撃が決定された。
また、日本の活発で巧妙極まる通商破壊から移動には細心の注意を払った。
夜間消灯、無線封鎖は当然のことながら、
パナマ運河を経由して大西洋へ向かうかのように一時進路を変更する、
等と言った努力を払ったお陰で日本側は夢幻会を含めて、
元からアメリカが反撃するとしたらカナリア諸島への攻撃が先であると考えていたため、アメリカ側の意図を誤解した。
だが、さらに誤算だったのはアメリカの方かもしれない。
当初は日本の脆弱な拠点を一撃離脱による襲撃でとどめるはずだったが、
ちょうど太平洋のウェーク島付近までハルゼーの艦隊が辿りついた時日本海軍のウェーク島の攻略が始まってしまった。
そして、ロング大統領はその報告を受けて、
直ちに日本海軍に対して反撃を行うように大統領命令を発してしまったことだ。
太平洋艦隊司令長官のキンメル大将ならびに、ニミッツ提督は苦渋の表情を浮かべながら現地のハルゼーに直ちにウェーク島の日本軍に攻撃するように伝達した。
もっとも、その命令を受けた指揮官のハルゼー中将は元は駆逐艦乗りだったこともあり、
日本艦隊と戦えることに好戦的な笑みを浮かべ、沖合に日本艦隊がたむろっているとのウェーク島からの報告にしたがい、
直ちに攻撃機の発艦を伝達、ここに二度目の空母決戦が始まった。
最終更新:2014年03月23日 13:49