701 :Monolith兵:2013/10/08(火) 01:26:38
蹂躙系SS「大魔王様降臨外伝 イギリスの場合」
1942年の第2次世界恐慌より暫くして、イギリスではダウニング街の住人たちがしかめっ面を付き合わせていた。
「これは由々しき問題だ。」
「ああ。日本の策略により
アメリカはわが国の、いや列強の草刈場と化した。だが・・・これは、これが世界に知られたらわが国はアメリカでの収奪が、いや、世界市場から追い出されてしまう。」
「アメリカで大量の偽札のドルが流通しているのは知っていたが、まさか・・・。」
「「「まさか、ポンドの偽札までばら撒かれているなんて!」」」
そう、辻たちはアメリカで大量の偽札を、それも本物と見分けが付かないほどの精巧な偽札をばら撒いていた。それは、アメリカ国内の資産の減少や債権の国外流出とあいまって、ドルの価値をこれまでに無いほど押し下げていた。
だが、暫くするとイギリスの政治家や経済人たちは奇妙な事に気がついた。アメリカが余りにも大量のポンドを持っているのだ。いや、ポンドだけでなく、マルクやフラン、少数ながら円なども存在した。それを疑問に思ったものたちは、調査を進め大まかであるがアメリカが保有している外貨の量を把握した。
アメリカが持つ外貨は、特にポンドに関しては、イギリスが発行したポンドの数倍にも達していたのだ!
「このポンドの、偽札の発行元だが・・・。」
「・・・日本以外にあるわけが無いだろう。」
その言葉に、会議室に集まったメンバーは深いため息を吐いた。
「・・・日本からは何か言ってきているか?」
「日本はアメリカで偽ポンド札が大量に出回っている。同盟国として、偽札を回収する用意があると。」
「何と白々しい・・・。」
ここにいる人間は、偽ポンド札をばら撒いたのは日本だと全員が確信していた。これまでの所業が所業であったし、そもそも第2次世界恐慌を仕掛けたのは日本なのだ。
「だが、日本の思惑に乗らなかったら、・・・アメリカで流通しているポンドの殆どが偽札だと公表されるぞ!」
現在イギリスは講和後(実質は敗戦)の不況や混乱とは決別し、未曾有の好景気に入っていた。それらは、アメリカから流出した大量の資産や債権による影響もあったが、何といってもドルの暴落によりアメリカでの流通通貨が事実上ポンドになった為であった。
しかし、もし日本がアメリカで流通しているポンドの多くが偽者だと知られれば、今のイギリスの繁栄は終わりを迎える事になる。それを防ぐ為には、偽ポンド札を早急に回収し、正規のポンド札に入れ替えるしかないのだ。それを日本は手伝おうと提案している。これで、日本に借りが出来てしまう。日本がポンドをばら撒いたと言う決定的な証拠は無く、イギリスはどん底からかつて無い好景気に入っている。日本も好景気であるが、これは以前からの事であるし、諸外国には第2次世界恐慌を起こしたためだと納得するだろう。そして、イギリスは日本の起こした恐慌を利用して日本に行くべき富を横取りして復活したと、以前の裏切りと共に諸外国に更に白い目で見られる事になっていた。
もっとも、偽ポンド札をばら撒いたのは日本なので、それなんてマッチポンプ?と言いたいのがイギリスの本心だった。
702 :Monolith兵:2013/10/08(火) 01:27:09
「日本の提案、いや要求は呑まなければならない。だが、ここまで我々をコケにした報いは受けてもらうぞ。」
男は机に置いてあった書類を手に取った。そこにはいくつもの計画案が概略とともに書かれてあり、その内の2つにペンで丸が書かれていた。
その計画案は、「アメリカ分割統治計画」、そして「第3次百年戦争計画案」であった。
アメリカ分割統治計画は言うまでもないだろう。アメリカを州ごとに独立させ、イギリスの植民地として統治しようとする計画である。現在、余りの大不況によりアメリカの各州政府の中央政府に対する不満は限界に達しており、アメリカ分裂はそう遠くない未来に起こる事だとイギリスは判断していた。そして、独立したアメリカ諸州をイギリスの経済圏に組み込み、かつての大英帝国を復活させようと言うのが骨子であった。
一方、第3次百年戦争計画案はイギリス人の陰謀好きこれに極まりと言うほどのものであった。
アメリカに存在したイギリスの債権はイギリスに戻ってきており、その借金は帳消しとなっていた。その為、イギリスの債権をあてにして作られていた各種の(金融)商品はもはや紙切れと化し、逆にイギリスがアメリカに大量の金を貸している状態にすらなっていた。
その為、イギリスはアメリカに借金の催促という形でポンドを吐き出させようとしていたのだ。だが、アメリカでポンドが事実上の流通通貨として出回っている以上、全ての(偽)ポンドを回収する事は不可能であり、正規ポンドと入れ替えを行う程度しか出来なかった。
そこで、イギリスはアメリカに物納でも良いから借金を返せと迫る事にしたのだ。そして、返済する物はその多くが兵器になる事は予想に難しくなかった。何といっても、レンドリースや日本との戦争の為に戦時経済に移行しようという時期で大不況が起きたのだ。この不況のさなか、急にラインを組み替えろといっても難しいし、重火器や各種兵器を枢軸との戦争で失っていたイギリスとしてはそれらは喉から手が出るほど欲しいものだった。
そして、アメリカの生産能力を調べていくうちに、イギリスは自国だけでは消費しきれないほどの兵器弾薬が生産されようとされていようとしていた事を知った。自国で消費しきれない分は植民地や同盟国に回してもまだ余り、アメリカの借金はまだまだ残っていた。
そこで、イギリスはそれらの兵器を壮絶に殴り合っている独ソ両国に中立国を経由して供給する事を考えた。安く大量にアメリカ製兵器や弾薬を供給し、両国の経済を改善させより壮絶な殴り合いが出来るように戦争を煽る。また、両国から金や資源を対価として巻き上げる事ができ、それをイギリス国内に投資する事で生産力を上げ、ドイツとの再戦に備える事ができる。まさに、1石3鳥の策であった。
「恨みは分散するものだ。日本にはソビエトやドイツから盛大に恨みを買ってもらおう。」
イギリスは日本経由でソビエトに売りつけようと考えていた。日本も中国や北欧経由で売ろうとするだろう。イギリスだけが恨まれないように配慮し、枢軸国と共産国を疲弊させる。その間にイギリスはアメリカをおいしく頂こうというのだ。
「ボーア戦争からこっち、我々は斜陽の一途を辿っていた。だが、今こそ大英帝国を復活させ、世界帝国として再び君臨するべきなのだ!」
「「「おおおー!」」」
かくして、イギリスの世界規模の策謀が始まった。
おわり
最終更新:2013年10月20日 19:35