722 :taka:2013/10/08(火) 13:25:08
この史実とは異なる世界において、日本が映像技術に注視をしていたのは広く伝わる事だ。
先見の明と己の欲望と趣味の実現に固執した日本の政財界の後押しの結果、史実よりも格段に映像技術は洗練されたものとなった。
それらは民間から企業、軍部に至るまで使用され情報を視覚的に効果的に伝える役割を担った。
勿論、時代柄国家の技術が優先的に使用される軍部においてもまた然り。


海軍の広報映像というものがある。
一般の映画館等で流す宣伝映画、軍内部で戦況などを簡潔に映像にまとめた映像資料と分かれている。
今回は、尉官以上が閲覧出来る映像をご紹介したいと思う。


【海軍広報部映像科提供】

SE:甲高いファンファーレ

戦艦三笠の艦影のバックに旭日旗が翻っている。
ゆっくり大きくなる題名

【日本海軍週間ニュース】

『開戦以来、我が帝国海軍の海狼たる第六艦隊麾下の潜水艦隊は太平洋各地に進出』
(水上航行中の呂二一型潜水艦。艦橋上では水上電探が回転し、見張りが双眼鏡を手にしている)
『敵地たる北米沿岸部航路を担当するこの艦が哨戒を始めて二週間が経過した』
(艦長の軍帽を被った指揮官が双眼鏡を手にしている。そして水兵たちに囲まれてカメラを手にしている従軍カメラマンの姿)
『水上電探が敵船を感知した。艦長は直ちに潜航を指示する』
(続々と艦内へと滑り降りていく水兵たち。BGMが勇壮な音楽に変わる)
『数十分後、米国籍の輸送艦を確認、艦長は魚雷戦用意を指示、攻撃用潜望鏡が降ろされた』
(帽子のツバを前にしたままの艦長が潜望鏡を覗いている。右手をレバーに引っ掛けているのが特徴)
『敵影を確認した艦長は聴音による魚雷攻撃を指示、電探による敵位置の割り出しが急がれた』
(電探の画面を見ながら距離や進路を割り出している。メモを手に襲撃運動盤へデータを算出している)
『敵影は5つ、護衛の艦艇が二隻、タンカーと商船が三隻。艦長は三隻の獲物を狩る事に決めた』
(艦長の号令と共に、魚雷室の士官が発射ボタンを押す。次々と発射されていく魚雷)
『深度をゆっくりと下げ、退避する伊号。命中までの緊張の瞬間』
(艦長と副長がストップウォッチを手にしている。待機中の緊張した水兵たちの顔、艦内神社、キッチナーのポーズをした東条将軍のポスター)
『命中の音が連続で響き渡る。艦内は静かな喜びに満たされた。だが、敵の反撃を予想した艦長は直ちに退避の指示を出した』
(兵員室に飛び込んで何かを叫んでいる兵曹長、盛り上がる兵員達を何故か同じ兵曹長が制止している)
『敵艦の反撃の爆雷が落とされる。だが、我が海軍の総技術を結集した伊号は敵艦に位置を悟られなかった』
(遠くで響く爆雷の音を不安げに聞いている若手の乗組員。山本五十六の写真の顔に蝿が止まっている)
『敵艦が遠ざかったのを確認し、艦長は潜望鏡で海面を伺った』
(傾斜が30度以上に傾き、船体から幾つもの黒煙を噴き出している商船、護衛艦が横付けされ救助作業が行われている)
『既に目標は片付けた。艦長は海域からの離脱を命じた。
タンカーと商船合わせて三隻、2万1千トンの損害。だが、米国の船はまだまだ尽きない。彼らの戦いはまだ終わらないのだ!』
(勢い良く海面に浮上し海原を突き進む伊号。そして何故か歌詞を変えたイギリス征討歌が流れる)

「ちょっとストップ! Uボートの演出は仕方ないにしてもイギリス征討歌の替え歌はヤバイだろ!」
「えー、いいじゃないですか。東機関の報告ではライミー共が我が国の提供した電探のスペックをばらしたそうですよ。
 あの風見鶏の裏切り者の恩知らずにはこの位の意趣返しをしてやらねば。それとも本国港奇襲とかいいですかね?
 もし米国の圧力に負けて参戦なんざしやがったらドーバーとリバブールを自国の艦船で閉塞させてやりますよ。
 ハリフォックスの体毛を全部引き抜いてやる。チャーチルの禿頭なんてめじゃねぇぜ」
「君の憤りは理解したから曲は『轟沈』に差し替えな」
「(´・ω・`)」

こうしてネタに溢れた週刊ニュースは戦後まで続く事になる……。

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最終更新:2013年10月20日 19:38