321 :taka:2013/10/19(土) 11:40:07
深夜の冷やしカレー、あれが効いたな……いや、胃もたれしちゃったんですけどね
帝都の新宿・花園界隈の路地裏に小さな古びた食堂がある。
亜細亜最大の都市の不夜城で夜の0時から朝の7時まで営業している奇特な店。
お品書きにあるメニューは豚汁定食、ビール、酒、焼酎。これだけ。
だけど、食べたいものがあるなら大概のものなら作ってくれる。そんなお店。
「あー、今年ももう少しで年末ですねぇ」
「年末も家族と過ごせるのが行事だけってどんな罰ゲームでしょうか」
コの字のカウンターの左奥。
そこで二人の背広姿の男が焼酎とビールを片手に愚痴を呟いていた。
「嶋田さん、ちょっと飲み過ぎじゃない? 頑張ってるからって5杯は」
「うん、わかってるよマスター。本当は三杯が限度なのに5杯も飲むのは問題あるよね。
後、この巾着おでん美味しいねぇ。べ、別に今は誰の巾着でもないけどさ」
「本来の人物評をネタにするなんて洒落が効いてますね」
「そーいう辻さんこそ何ですか、めしやに尾頭付きの鯛持ち込んで姿焼きってあり得ないでしょ」
「いやー、山本さんに御裾分けしてもらいましてねー。トラック島での歓待にちなみビールで美味しく頂いてますよ」
「でもスゴイよね辻さん、そんな立派な鯛って築地でもそうそうお目にかかれないよ」
「そんな鯛を『マスター、これ姿焼きにしてくれる?』と言われて化粧塩までして焼いてくれたマスターも只者じゃありませんよ。
どうですか、もう少し立派な店にしてみません?」
「いやいいよ。俺、この店の佇まいってのを気に入っているからさ」
「そうですか残念ですねぇ……おや?」
「いよぉ、良い夜だなボゥナセーラ!! スィニョーレ嶋田、スィニョーレ辻!」
赤ら顔のイアリア統領が大声でズカズカと入ってきた。
何故新宿・花園界隈に彼が居るかというと「酔っ払って前後不覚になるといつの間にか店の前に居る」らしい。
帰る時も「路地をふらついていると気がついたら自宅に居る」らしい。
嶋田と辻もいまだに彼がどうやってめしやに来るか解明できてない。
それこそ機材から人員まで動員して調べたがそれでも不明だった。
現実としてめしやには偶にイタリアの統領がナポリタンを食べに来る、それだけの事だった。
「マスター、ナポリタン特盛りパルメザンありありで……全く辛気臭い顔して飯を食べても美味しくないぞぉ」
うわぁ、めんどくせぇと嶋田と辻は思った。
酔っ払ったイタリア人男性は兎に角面倒臭い。
少なくとも目の前の男はそうだ。
「ほら、あんたも飯を食うときは笑顔で豪快に食うべきだぞ。そんな辛気臭い顔して静かに食うなんて飯に失礼じゃないかガハハハ!」
と、今度は少し離れた位置で静かに食事をしていたサラリーマン風の男性に絡み酒をし始めた。
不本意ながら知り合いである自分達は兎も角、赤の他人の一市民に迷惑はかけられない。
そう判断した嶋田と辻が立ち上がった瞬間。
「があああああああああああああああああああ!!??」
瞬時にサラリーマン風の男は立ち上がりドゥーチェにアームロックを極めていた。
「モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず自由で、なんというか救われてなきゃあダメなんだ、独り静かで豊かで・・・」
「「ゴローちゃん、それ以上いけない!!」」
やおい
※ちなみにこの食堂を発見したのは宮様です。食べたメニューは好物の天ぷらうどん
最終更新:2013年10月20日 20:18