773 :二二三:2013/09/19(木) 22:25:35
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ユフィの声的にこういう事があるかも



夢幻会という組織には多種多様な趣味人が群雄割拠している訳だが、中でも尤も多く、声の大きい、アニメ・漫画・ゲームの趣味人たちは、嶋田繁太郎が神聖ブリタニア帝国第3皇女ユーフェミアと結婚したと知るや、まずは嫉妬、次いで祝福、そして最後にある事を頼んできた




「もう秋ですわね」

「そ、そうだな」

(うーん、あの変人たちに詰め寄られてついつい引き受けてしまったが、絶対変に思われるだろ)

休日の昼下がりに新婚ほやほやの若奥様ユーフェミアと二人して自宅の縁側で日向ぼっこをしていた嶋田はそよ風を受けて揺れるピンク色の髪の毛を横目に見ながらどうしたものかと悩みつつ、とりあえずは伝えなければ始まらないと思い切り出してみる事にした

「ユフィ、ちょっといいかい」

「なんでしょうか?」

「一つお願いがあるんだが」

「お願い?シゲタロウのお願いでしたらわたくしは何でもお聞きします。仰って下さい」

秋だというのに花弁でも舞いそうな暖かい微笑みを見せるユーフェミアが眩しくて益々頼みにくくなる
それくらいしょーもない、変な頼み事なのだ

「いや、実に馬鹿げた事なんだが」

しかし引き受けてしまったからには責任を持ってお願いしなければならない。引退したとはいえ政治家は信用第一。それに会合の度に変人たちの催促が五月蠅いのでさっさと終わらせてしまうに限る

「コレに『バカばっか』と『わたし少女ですから』と言ってくれないか?」

「はい…?」

差し出したのはICレコーダー。要するに録音機である。案の定ユーフェミアはICレコーダーと嶋田の顔を交互に見ながら怪訝な表情を浮かべている
普通に考えても録音機なんか差し出されて「バカばっかと言ってくれ」なんて頼まれたら変に思うだろう。幸いユーフェミアとは夫婦という間柄であり遠慮する必要も無いのだが、知った仲でもなければ春先に現れる不審者の類だと勘違いされて即通報されるところだ

「バカばっかと吹き込めば宜しいのですか?」

「ああ、頼まれてくれるかい?」

「そのくらい別に構いませんが、シゲタロウには“そういうご趣味が”おありだったのですね」

「ま、待て!断じて違うぞ!俺にそんな趣味は無い!」

「わたくしはシゲタロウがどの様な趣味をお持ちであろうと気に致しませんので、そんなに慌てなくても大丈夫です」

不審者の類なお願いにやはりそう受け取ったユーフェミアの変わらぬ笑顔からは夫の特殊な趣味を受け入れる理解ある妻の姿が垣間見えた

(まずい!変な趣味を持っていると誤解されてしまう!)

世間的に宜しくない趣味を持っていてもまったく気にしない広い心の持ち主である事を再確認させられた訳だがそういう話ではないのだ

必死の弁明を始めた嶋田にユーフェミアはニコニコ笑いながらICレコーダーに『バカばっか』『わたし少女ですから』と吹き込んでいた

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最終更新:2013年10月21日 12:08