367 :二二三:2013/09/25(水) 15:00:34
突発的ネタ~
乗りこなせるだけで超人
「すげぇ…」
大空を舞う緑色の光を見上げていた黒髪と金髪の男が二人、ポカンと口を開けたまま思ったことをポツリと呟いた
「アレが第9世代ナイトメアフレーム、ランスロット・アルビオン!」
男たちにその名を呼ばれた緑色の光の正体は目を凝らして見ると辛うじて判別可能な白色のKMFだ
変わっている点として挙げるならその背中には既存のKMFには見られない緑色に光る翼が広がっているところか?
そしてもう一つの点はその異常な速度
「目で追えない……!」
その速度があまりにも速すぎるため加速時には背部の翼が蒼い空に描く緑色の軌跡だけしか見えないという異様な光景に言葉を失う黒髪の男
驚愕する黒髪の男を尻目に空を翔るKMFは急加速と急停止を繰り返しながら手にした大型のヴァリス、スーパーヴァリスを標的機であるヴィンセントに向けて発砲した
ヴィンセントは何も反応できないままに撃墜―――となる筈が、普通にその場に浮遊している
本来なら巨大な銃口から発射される閃光を受けて木っ端みじんに爆散している所だがそうならないのは、これがテストによる模擬戦であるからだ
テストの内容は新型機の性能を見るという物。無論新型機とはあの白と緑に光り輝くランスロット・アルビオン
「入隊する以前に聞いた、たった一騎でラウンズの諸卿を全滅させたという話は本当だったのか…」
黒髪の男はランスロット・アルビオンの異常な戦闘力を目にしながら士官学校在籍中に耳にした彼の機体に騎乗している人物の噂話を思い出す
曰わく、たった一騎で現役のラウンズを全滅させた最強のデヴァイサーがいるらしい
それが今あの機体に騎乗している彼らの所属部隊、神聖ブリタニア帝国軍ナイトオブトゥエルブ親衛隊の司令官モニカ・S・クルシェフスキーである
現時点において世界でただ一人第9世代機を専用機に持つ最強の騎士の実力を垣間見た彼はある種の感動を覚えていたが、彼の隣に立つもう一人の男はそうは思わなかったようで違う感想を口にした
「いや。確かに凄いと思うしラウンズの方々を全機撃墜なされたのも本当の事なのだろうが、それは日本が開発した世界初の第9世代機フリーダムの力があったればこそだろう?
私はモニカ様を尊敬しているし忠誠を誓っているが、"最強"であるとは考えていない。言うなればフリーダムやランスロット・アルビオンはジェット機で、ラウンズの方々が騎乗されている専用機は第8世代機――レシプロ機だ」
金髪の男が言うのももっともである。レシプロ機とジェット機では圧倒的な戦闘力差があり、如何に天下無双のラウンズといってもレシプロ機でジェット機――それも最新世代のジェット並みに格差のある機体を相手にすれば勝てる訳がない
「第9世代機フリーダムやアルビオンに乗れば私でもラウンズの方々を討ち取れる筈だ」
「おいおい口を慎めよ!不敬だぞ!」
「だが事実だろう?仮に私が第9世代機を駆り第8世代機を駆るモニカ様と闘えば勝つ自信がある」
同世代同士の機体ではモニカ様の足元にも及ばないがと付け加えた金髪の男であったが、ここまで彼が自信を持って言い切れるのには理由があった
金髪の男は士官学校を主席で卒業している超の付くエリートなのだ。特にKMFの操縦技術は群を抜いており、次代のラウンズ候補として名が挙がる程の実力を備えている
それだけの実力者だからこそラウンズの親衛隊に抜擢されたとも言えよう
『では騎乗してみますか?』
368 :二二三:2013/09/25(水) 15:04:11
「はっ?」
自信満々な金髪の男はすぐそばの車両に繋げられた無線から掛けられた声に言葉が詰まった
「ゴメンね~。無線の感度が良好過ぎて君らの会話をマイクが拾っちゃったみたいで」
無線で上空のモニカと遣り取りしていたアルビオンの開発責任者、メガネを掛けた銀髪の男性ロイド・アスプルンド伯爵からのお詫びと無線から聞こえた上司の声に、体を硬くして直立不動の態勢のまま敬礼する黒髪の男に対して、気を取り直した金髪の男には若干の余裕が見られる
「それは有り難いお言葉でございますが、新型機の性能テストに私のような若輩者を」
『構いません。ラウンズの権限で許可致します。宜しいでしょうかアスプルンド伯爵?』
「僕は構いませんよ~。このランスロット・アルビオンは少々の操縦ミスで壊れたりするような柔な機体じゃないですからねぇ~」
「ミス?モニカ様やアスプルンド伯爵に対して失礼を承知で申し上げますが、私は新型機とはいえ操縦ミスをするような素人ではありません」
「おいっだから言葉が過ぎるって言ってるだろうがっ!」
遥か上位者を侮るような金髪男の言葉を大慌てで止める黒髪男に、モニカとロイドは構わないからと言い、新たなにアルビオンのテスト、正確には"第9世代機素人騎乗テスト"を行うため金髪男をアルビオンに騎乗させるのであった
「モニカ様、アスプルンド伯爵、ペンドラゴン士官学校主席である私の実力、徳とご覧ください」
彼はこの直後、第9世代機という怪物の洗礼を受ける事になる
「第9世代機、アレを乗りこなせるのは世界広しと言えど、モニカくらいであろうな」
彼がこのナイトオブワンビスマルク・ヴァルトシュタインの言葉を知っていれば、自分も第9世代に乗ればラウンズに勝てるなどという愚かな考えは持たなかったであろう
ラウンズが強いのはその実力故であるが、モニカがラウンズ最強と称されるのは第9世代機フリーダムを自由自在に操れる人間離れした実力があるからこそ、そう他のラウンズは第9世代フリーダム、ランスロット・アルビオンを操れないのだ
ラウンズでさえモニカを除いてフリーダム・アルビオンを乗りこなせる者はいないというのに彼に乗りこなせる訳がない
それを知ったのは他でもない乗機アルビオンの手で士官学校主席卒としてのプライドを木っ端みじんに叩き潰された後であった
後に彼は正式なアルビオンのデヴァイサーとなるナナリー皇女の騎士枢木スザクと自身の上司モニカを「人間を超えた超越者」と称し、恐れ敬うようになったらしい
最終更新:2013年10月21日 12:46