620 :二二三:2013/10/15(火) 02:39:57
前に投下した休日モニカルート×ゼロ魔ネタの本編バージョン
一発系なネタなので突っ込み所満載かも~
異界を掛ける鉄の騎士
「ほら早く召喚しろよルイズ!」
「おい、あんまり可哀想なこと言ってやるなよ。魔法ゼロのルイズが使い魔の召喚なんて出来るわけないじゃん」
「あ、そうだった!これは失礼な事を言っちゃったなぁ」
周りに集まったクラスメート達は皆一様に自分の事を馬鹿にしているけど、特に気にはならない
「皆さん静かに!」
私の側に立つミスタ・コルベールが皆を一喝して静かにさせてくれるのは有り難いんだけど、正直な所周りがざわついていてくれた方がよかったのに
「さ、ミス・ヴァリエール、今の内にサモン・サーヴァントを」
「はい…」
引率者という事もあると思うけれど、きっと魔法が使えない私に対する彼なりの配慮なのだろう
だけど、今回ばかりははっきり言って有り難迷惑だ。だって、みんなが騒いでる間に態と呪文をミスして召喚出来なかったという具合に持って行くつもりだったのに、それを出来なくされたから
私のサモン・サーヴァントは普通とは違って人目に付く場所では使えない。その主たる要因は、゛向こう側への扉゛が開いてしまうからの一言に尽きる
向こう側を知っているのは私の他には家族だけだ。そして、その向こう側の事は極力秘密にしておかなければならない。家族以外に知られてはならないのだ。例え相手が王家であっても
何故ならハルケギニアにとって向こうの存在は異端その物だから
魔法とは異なる社会、科学という学問を基礎とした社会を築く向こう側の存在は、始祖ブリミルの教えこそが法の根幹を成すハルケギニアとは相容れない
もしロマリア辺りに向こう側の存在を知られ、ヴァリエールが向こう側と交流している事がバレてしまえば、ヴァリエール家は異端認定を受け、国を追われる事さえ有り得る
もっとも、向こうでお世話になった人たちは『こうしてルイズさんの家と我々の国が交流出来るようになったのも何かの縁です。万が一、我々との交流が原因でヴァリエール家が追われる立場になった時は頼ってください』そう言ってくれたけど、それはヴァリエール家が王家やロマリアと戦争になる可能性を意味していた。トリステイン王家はともかくロマリアからはヴァリエール家を取り潰すために騎士団が派遣されてくる
最大で10メイルほどの扉しか開けないとはいっても、向こう側の力を借りる事が出来れば確かに勝てると思う
だけど私は戦争なんてしたくないし、ヴァリエール家も国に迷惑を掛けるつもりなんかこれっぽっちも無い
無論、私がお世話になり、ちい姉様の病気を治してくれた向こうのお国にも迷惑を掛けたくない
だから扉が開いてしまうサモン・サーヴァントを人目のある場所で使う訳にはいかない
「ミス?」
「あ、す、すみません!いま……」
いけない。考え込みすぎていた
こうなったら言い間違っても分かり難い文字を一字だけ変えてしまおう。そうすればいつもみたいに爆発するはず
そう思って態と一字間違えた呪文を唱えたんだけど……
結果的には失敗だった
「おお!成功ですなミス・ヴァリエール!」
「嘘だろ!ゼロの癖に成功なんて!」
「それに何だあの鉄のゴーレム!?あんなの見たことないぞ!」
621 :二二三:2013/10/15(火) 02:45:44
「やったじゃないルイズ!」
「興味深い…」
驚愕する声に混じって自称私のライバル、キュルケの喜ぶ声が聞こえた。もう一人は私より背の低い小柄なガリアからの留学生。でも私はというと、到底手放しでは喜べない
だって
「な、ナイトメア……?」
本来爆発するはずの一字違いのデタラメ呪文を唱えたら、使い魔召喚の門が現れたのだから。それも、現れた門の大きさは高さ6メイル幅4メイルはあろうかという大きな物で、その門をくぐって現れたのが私もよく知る向こう側、地球の兵器、人型装甲騎ナイトメアフレーム
(ど、どうして使い魔じゃなくナイトメアが出てくるのよォォォォ?!)
知られてはならない向こう側の科学の塊が眼前に現れたせいで若干混乱してしまった私の肩をミスタ・コルベールが叩く
「やりましたな!ではコントラクト・サーヴァントを」
(できるわけないでしょーがぁぁぁ!!)
これは生き物でもゴーレムでもなく、高度な科学力で作られた機械。本来生物が対象のコントラクト・サーヴァントが通用する訳がない
「ま、待ってください、先にどういった物か調べさせてください、」
「しかし暴れ出すやも知れませんぞ?」
「それは大丈夫です!召喚した私にはわかるのですが、これは暴れ出したりしません!」
ナイトメアが勝手に暴れ出してたまるか。操縦者が内部に乗り込んで初めて動かせるのだから暴れたらお化けだ
渋るコルベール先生をやり込んだ私は膝を着いたまま動かないナイトメアによじ登って調べる振りをしながらコックピットハッチの開閉装置を探す
このナイトメアは初めて目にするタイプだったけど、見たところ私がお世話になった地球の国、日本とブリタニアの流れを汲む感じだし、外部から操作出来る場所は共通しているはず
(あった、これだわ)
思った通り簡単に見つかった外部からのハッチ開閉ボタン
私はそれを押してハッチのロックを解除すると、重い鉄の扉を開けてみた
「誰かいますか?」
寸でも動かないから何処かの基地に駐機していた無人のナイトメアかも知れないけれど、一応パイロットがいるのを前提で考える。その理由は使い魔召喚が飽くまでも生物を対象としているからだ
無機物だけが召喚されるなんて聞いたことはないし、ナイトメアが無機物でも、中に人がいればその人間こそが召喚対象のはず
もし人間がいたらすぐにでもゲートを開いて送り返さなきゃ。人間は使い魔じゃないんだから、此方の都合で無理に契約なんて出来ない
「いた!」
やっぱり予想した通り人がいた
コックピットの座席にもたれかかるようにして気を失っていたのは、体にフィットしたパイロットスーツに身を包んだ少し癖のある短い黒髪の男の子
ハルケギニアには珍しい黒髪はメイドのシエスタと同じ髪の色だ。シエスタは魔法学院で数少ない友達。付き合い始めの頃は身分がどうとか恐れ多いとかよく言ってたけど、私は身分の差なんて気にしてない
『平民は宝』
『平民こそが貴族を支えている』
『貴族と平民は助け合っていく関係であり、支配し隷属するのみの関係に非ず』
私がお世話になった地球はブリタニア帝国の貴族、モニカ姉様は口癖のように言っていたけど、私も今ではその通りだと思う
ううん、私だけじゃない。少なくともヴァリエールの人間はみんなそう考えていた
それはともかく、黒髪という事は東洋人か。それも顔を見た感じでは日本人に見えるけど、ブリタニアにも日系人は多いから一概に決め付けられないわね
622 :二二三:2013/10/15(火) 02:47:02
外傷は無いようだけど召喚のショックか何かで気を失っているようだ
「大丈夫ですか」
肩をユサユサ揺さぶっても全く起きる気配がない
「何かあったのですかミス・ヴァリエール?!」
いつまでも降りないからコルベール先生が来てしまった
「ミスタ、ゴーレムの中に人がいたのですが、召喚のショックで気を失っているようです。とりあえず医務室に運びたいのですが、コントラクト・サーヴァントは彼が回復してからでも宜しいでしょうか?」
「うむ、それならば仕方がありませんな。それにしてもこのゴーレムは一体……」
コルベール先生はナイトメアに興味を持ったみたいでコックピット内に目を走らせて観察している
彼は貴族には珍しく、地球を知らない生粋のハルケギニア人でありながら科学的な視野を持っている
だからナイトメアに興味を持っても不思議ではないけれど、下手にいじられて壊されでもしたら大変ね
この男の子が何処の国の軍人かはわからないけれど、このナイトメアの武装からして軍に所属しているのは確かだ
日本軍?ブリタニア軍?
それともモニカ姉様が治めるクルシェフスキー領の騎士団みたいなブリタニア諸侯軍所属の騎士団員?
身元が分かる物があればいいんだけど……
まあとにかく今は彼を医務室に運ぶのが先決ね
「ミスタ・コルベール、いつまで観察しているんですか?」
「おっと、これは私としたことが……では皆教室に戻るぞ」
外のクラスメート達に指示を飛ばすコルベール先生
「ルイズ、お前は歩いてこいよ!」
「あいつフライは愚かレビテーションさえまともに使えないんだぜ」
「ゴーレムはアンタにもったいないけど、その平民はお似合いね!」
好き勝手な事を言って飛び去っていくみんな。悔しいけどフライもレビテーションも使えないのは事実だ
私に使えるのはゲートと名付けた地球への扉を開く魔法だけ
まあ、たった今新しくサモン・サーヴァントが使えた訳だけど、それはまた別だ
デタラメに唱えた呪文で奇跡的に事故を起こしただけ。要するに運良く使えたに過ぎない
「ま、いくら魔法が使えてもああいう平民を見下してばかりの傲慢な人間にはなりたくないわね」
アンタ達が普段口にする食事は誰のお陰で食べられるのか?
着ている服は誰が作ったのか?
平民に出来ないことを貴族は出来る
だけど貴族は長い時を掛けて磨き上げた平民の職人技は使えない
その職人の恩恵を私達貴族は受けているのだから、その事に感謝しなければならないのに……
人への思いやりや人と支え合って生きている事から目を背けていたら、いつか困ることになるわよ?
(さて、と……こっちも行きますか)
「ミスタ・コルベール、彼をお願いできますか?」
飛び去っていく皆の背中を見ながら考え事をしていた私はコックピットの彼をコルベール先生に任せる
「うむ、わかった。しかし君はどうするんだね?」
「私は……」
開けっ放しのハッチをくぐりながら伝える
「コレを運ばなければいけませんので」
「は……?ミ、ミス・ヴァリエール、君は何を言って、」
私の言葉に混乱する先生。確かに魔法を使えない私がコレを運ぶのは不可能
素手で運ぶのならば、ね
「多少は騒ぎになると思うけど、使い魔だから動かし方が分かったとでもしておきましょうか」
コックピットに乗り込んでシートに深く体を沈み込ませる
「久しぶりだから緊張しちゃうわ」
刺さったままの起動キーに手をかけ、回す
電源が入りユグドラシルドライブが起動。命を吹き込まれたかのようにパネルに光が入り、外の光景が映し出された
「うっわ、なんかグラスゴーや無頼なんかと全然違う感じ」
折り畳まれていたランドスピナーを地に下ろして、操縦桿を握り締めた
「行くわよ!」
地に下ろされた脚部のランドスピナーを急回転させて思い切り操縦桿を倒した
途端に停止していたゴーレム、その名もラファール・シュヴァリエは、異界の地に土煙をあげながら、急加速して滑るように地面を掛けていった
「う、動いた……」
後に残された頭頂部の薄い中年魔法使いは突如として動き出し、飛竜並みのスピードで地を掛けていった鉄のゴーレムを呆然と見送るのであった。その背中に本来の持ち主を抱えたまま
余談だが、クラスメートで一番早く学院に辿り着いたのは、魔法を使えないルイズであり、途中で追い抜かされた生徒達は皆一様に信じられないと驚愕の表情を浮かべながら、置き去りにしたはずのルイズに逆に置き去りにされるという屈辱を味わわされてしまうのであった
623 :二二三:2013/10/15(火) 02:47:34
お~し~ま~い~
639 :二二三:2013/10/15(火) 12:52:16
ラファール・シュヴァリエは配備されたばかりを想定してます。才人に関しては確か元ネタの方の設定では日系北欧人サイト・ヒラガとなっていたので、日系スカンジナビア人とでもしときましょうか
因みに自分が書いた話というか設定ではモニカさんは嶋田さんと新婚だった
ゼロ魔原作開始時点ではサクラちゃんが5歳か6歳くらいの時期を想定してますから、まだしげちーはいませんね~
地球=日本・ブリタニアと交流してるのはヴァリエール家だけで、トリステイン王家も知らない(というか相手は異世界なので知りようが無い)
カトレアは日本の病院で治療を受けて病気を克服
モニカさんやリーラさんやシャルルから貴族の在り方を学んだルイズは平民のシエスタやマルトーさん達と胸襟を開いて付き合っている
平民を中心とした地球の発展振りを目にし、平民を大切にすることでより豊かになっていったブリタニアの経緯を知ったヴァリエール公爵・カリーヌ夫人・エレオノール姉様も自領の平民に対して徹底した善政を敷いている
日本と交流している関係でヴァリエール公爵領には醤油・胡椒などの調味料や、日本料理の文化、地球の医学に基づいた医療施設が普通にある
ヴァリエール騎士団の装備には日本製の武器=銃などが有り、かなり強力になっている
でも平民の武器である銃なんて大した事はないと侮る輩もいる
といった感じです
最終更新:2013年10月21日 13:54