761 :二二三:2013/10/16(水) 18:01:12
唐突&色々ごちゃ混ぜのモニカさん超未来


グラスゴーは尚も現役


皇暦65536年
大日本帝国首都星・惑星東京


六万年以上の長い歴史を持ち、今や一つの銀河を支配するまでの巨大銀河系国家へと成長していた日本
その首都星系東京中心星にある日本歴史資料博物館へ展示物を運び入れる人型作業機械を、感慨深げに見つめる人物がいた

艶やかで真っ直ぐな長い金色の髪と一点の曇りもない青空を思わせる瞳を持つ、黄緑色のマントを着用したその女性は、お隣の大銀河を支配する、日本とは六万年来の同盟関係にあった銀河系国家、神聖ブリタニア帝国軍の頂点に立つナイトオブラウンズ筆頭騎士だ
本来のラウンズ筆頭である第1席ナイトオブワンを差し置いて、第12席ナイトオブトゥエルブに就く彼女が何故ラウンズ筆頭騎士であるかというと、クルシェフスキーという幾つもの星系を領地に持つブリタニア帝国指折りの名家出身であり、その実力もラウンズ最強であるからに他ならない
超の付く実力主義社会であるブリタニアにおいて、クルシェフスキーという六万一千年以上の途方もない歴史を持つ大貴族でありながら、騎士としての実力でも最強という彼女がラウンズ筆頭となるのは当然とも言えたし、現ナイトオブワンも異論は無いようであったから問題は無かった
ただ、ラウンズ筆頭に任命されるにあたり、肝心のモニカ本人が拒絶するという珍事があったりと、一時大きなニュースにもなっていたが…
当時彼女が拒否した理由は、丁度日本へ派遣されている武官の任期が切れるに当たり自身が立候補しようとしていたからで、ラウンズ筆頭になれば本国から離れられなくなると危機感を抱いていたからというのが語られている

長い歴史の中で皇族同士が何代にも渡って婚姻関係を結んでいるので両国の皇族は親戚関係にある
国民の間も日本・ブリタニアは互いに同朋であるとの意識が強く、現在では兄弟国といっても過言ではない親密な関係にあった
このあたりは昔からなのだが、両国の憲法前文に互いの事を言及する一文が入っていたりと、その仲は良くなる一方で、他の勢力からは日本=ブリタニア連合帝国とさえ呼ばれているくらいだ
だからこそブリタニアでは日本での任務は出世コースと見られてる感があり、頂点に上り詰めた彼女が何故今更出世を考える必要があるのかと不思議がられていた

尤も、それは日本就任の挨拶の際に時の首相に抱き付いて「我が主」と囁いた彼女の行動が全ての答えであったと判明していたが、如何に相手が日本の首相とはいえ、皇帝陛下以外に、それも会ったことも無い相手にラウンズが剣を捧げるという前代未聞の事件は当時ブリタニア国内で騒動を巻き起こす
ラウンズは皇帝一人に対して剣を捧げる存在であり、いくらクルシェフスキー家の次期当主といえど許されないのではないかと

しかし、これもまたクルシェフスキー家が両国の間で特殊な地位にあったが故に不問に処されている
特にクルシェフスキー家の系譜を知っている両国皇家や大諸侯・名家の間では、寧ろ歓迎すべき事であると受け止められるほどだ

そして上流階級の事情を知らない者達も、モニカが皇帝以外に剣を捧げた日本首相嶋田繁太郎の嶋田家とクルシェフスキー家は六万年前より非常に深い繋がりがある事実と、クルシェフスキー家の名にあるSの意味を知るにつれ、一転して歓迎ムードに変わっていった
しかも、その六万年前に大恋愛の末結ばれた当時の嶋田家当主とクルシェフスキー家の次期当主が、件の首相とナイトオブトゥエルブと同じ名であり、容姿までが生き写しであったと判明するや否や、「六万年の時を超えて巡り会った約束の恋人」と呼び、週刊誌やワイドショーで他星系にまで報道されるイイ意味での騒動に発展していった
(その反面、日ブの影響下には無い星系では週刊銀河減退などが、「古代の独裁者と血濡れの女神!!」なる特集で嘘八百を並べ立てていたが)

762 :二二三:2013/10/16(水) 18:07:14
それはさておき


そんな多種多様な逸話を持つ大昔のクルシェフスキー家当主と同じ名を持つモニカは、展示品として貸し出されたクルシェフスキー家の秘宝、フリーダムを搬入する人型作業機械に見入っていた

「まだ、動いているのですね…」

洗練され大型化した現在のKMFに比べて無骨な印象さえ抱くその人型機械を懐かしそうに、そして古い友人にでも出逢ったかのように見つめる彼女の目には、此処とは違う遙か昔の自領や日本の姿が映し出されている
そこでは、この機械とよく似た機械が作業をしたり、戦闘をしていたりする光景が日常であったが、まさか六万年後にも、これを目にするとは思ってもみなかった
ブリタニアでも既に別な作業機械を導入しているというのに技術の二つ名を持つ日本は未だにこれを使用しているのだから、驚くのも無理はない
もちろんこれの中身が昔と同じというのは有り得ない。中身は何度も改修、新規開発を繰り返した別物で、これを嘗てのこれと一緒くたに考えるのは間違いである

「アナタも、私やシゲタロウさんのように、生まれ変わっていたのでしょうか?

゛無頼゛


時が過ぎ、人が変わり、世界が広がって新たな宇宙人類などとも交流するようになっても、その外観を変えずに元気よく稼働する作業機械の名を呼んだ彼女の口元は、戦友との再開を喜ぶかのように綻んでいた

「モニカ様、そろそろ宇宙管理局と銀河共和連合への対策会議のお時間ですので、搬入作業は他の者に任せてお車へ」

ぼんやりと無頼を眺めるモニカを、副官にしてトゥエルブ親衛隊の隊長が呼びにきた
彼女はフリーダム搬入作業を見ているほど暇ではない。これから嘗ての地球圏の国家とは別の現在対立している銀河勢力、宇宙管理局と共和連合に対する対策会議あるのだから
共和連合はその名の通り民主共和制こそ唯一の政体と盲信する嘗てのEUのような多星系国家連合で帝国主義打倒を打ち出している
宇宙管理局は管理局の名の下に管理されてこそ人類と宇宙の平和は保たれると考える、およそ国という概念を持たない勢力
双方共に日本・ブリタニアとは倍近く国力が劣るも、此方の情報をあまり知らない為か、接触時より日ブに対して威高々な態度を取り続けていた
そして、自分たちより少し劣るくらいと考えている日ブが同盟国であると知るや、自分たちも対日ブ同盟を結び
中立を旗印にしている幾つかの星系国家を自分たちの管理下に入るよう恫喝して、逆らえば報復戦争を仕掛け併合という、何処が平和に管理だ共和だというほど傲慢な思想を剥き出しにして暴れていた
対して、日本もブリタニアも此方に無茶な要求をしてきたり、領域侵犯をしてこない限りは口出しするつもりはないのだが、最近では国境付近を何度も侵犯してくるようになったので警戒していたのだ
一部の小さな星や両勢力と長年対立していた国などは、初めて接触した新たな宇宙勢力である両国に助けを求めて使者を派遣してきたが、具体的な方針はまだ決まっていない

「あ、はい、申し訳ありません。あまりに懐かしいもので、ついつい見入ってしまいました」

「まあ、分からなくもありませんよ。私も初めて目にした時は夢でも見ているのかと思いましたからなぁ~。いやはや、六万年もの間、姿形を変えずに生き残っていようとは……
流石はグラスゴー、無頼と言いましょうか、同時に日本の物持ちの良さには感服致します」

モニカは大事な対策会議を前に気が抜け過ぎているなと自覚しながら、副官を勤める精悍な顔つきの親衛隊隊長を見た

「そういえば、卿も私と同じでしたね」

「何を今更。以前病室で逝く前に申し上げましたよ?再びモニカ様にお仕えしますと。まあ、お仕えできるというのは生まれ変わった先で嶋田卿と再会した時に確信したのですがね
何せ嶋田卿とモニカ様は運命の糸で結ばれておりますからなぁ。嶋田卿がおられるならば必ずやモニカ様も今のクルシェフスキー家に転生なさるはずだと」

フッと笑いながら車の後部ドアを開ける副官に「約束の恋人」の話をされたモニカは恥ずかしそうに頬を赤らめ、もう一度最後に無頼を見やる

長い時の果て、愛する人や親しい家臣との再会、そして、初めて騎乗したKMFとの再会に心が暖まるモニカであった

763 :二二三:2013/10/16(水) 18:07:55
おしまい。メシ喰うぜ~

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最終更新:2013年10月21日 14:18