965 :yukikaze:2013/08/23(金) 23:34:25
やっつけで投下。これネタスレかねえ・・・
宇宙世紀0086
ザビ家の一部の人間は、眼前に広がる光景に乾いた笑いを
浮かべる以外ほかなかった。
「どうです。我が社のMSは」
満面の笑みで獅子吼するジオニック社総帥に、何人かのジオン軍人
は快哉のガッツポーズを挙げるが、その内実を知るザビ家の心の声は
こう彩られていた。
(ザクの皮を被ったハイザックじゃねーか・・・)
流石にガンダリウムγにムーバブルフレームまでは取り付けることは
出来なかった(試作品はあったが、量産となるとまた別であった)ものの
この時代でも量産可能なものは、あらかた採用していた。
もっとも、ジオニック社会長(倉重)と、ミノフスキー博士、そして未来知識
によって最優先で招聘されたテム・レイのコンビにとっては、この程度は
朝飯前であったと言える。
(ちなみにこのコンビが暴走した時に産み出されようとしたのがZZであった。
勿論、あまりもの高コストとジェネレーターがピーキーすぎてお蔵入りになった)
得意満面なジオニック社総帥とジオン軍人の前で、ザクの編隊は見事な機動で
次々と通り過ぎていく。
史実でも「非常に乗りやすい」と、多くのパイロットから操縦性を褒められた
機体である。ある意味ジオンにとって理想ともいえるMSであった。
「予想以上の出来というべきだな」
「そうですね。生産コストが低いというのもありがたいですね」
実戦部隊のトップというべきドズル(古賀)の評価に、ジオンの金庫番である
サスロ(辻)も満足げな表情を浮かべる。
何しろ最悪の場合は地球連邦と全面戦争をしないといけないのだ。
その場合、比較的低コストで優秀な兵器を揃えることが出来るのは、軍人であれ
官僚であれ喜ばないものはいない。
勿論、両者とも総力戦というバカバカしい代物なんぞ望んでもいなかったが。
「ザク部隊が計画通り量産できれば、艦隊の劣勢も大分緩和されますか」
「それでもある程度の艦艇は必要ですよ。我々はコロニー落としなどという愚行を
するつもりはありません」
サスロの言葉に、ギレン(嶋田)は、一応釘を刺しておく。
原作でジオン軍がコロニー落としを行ったのは、連邦政府に対する恫喝もあったが、
同時に反ジオン勢力を早期に潰すことで、ジオン軍が守るべき範囲を減らすという
側面も否めなかった。
勿論、ザビ家の人間にしてみれば、軍事的にはともかく政治的には自殺行為の
何物でもないコロニー落としなど考慮の外であり、故に艦隊決戦とは別の意味で
艦艇が必要であった。
「まあ・・・それにしてもあれがムサイですか・・・?」
サスロのどこか呆れかえった声に、ジオンの艦隊幕僚達は困った表情を浮かべる。
何しろMSが帰投している艦のシルエットは、原作のムサイではなく、逆シャアの
ムサカとしかいえないシルエットなのである。
確かに原作ムサカはティベ級重巡の流れは汲んでいるので、この時代に就役しても
おかしくないのではあるが(機関出力の問題から、前部メガ粒子砲は1基降ろされている)
それでも見事に原作の時間軸を崩壊させていた。
「それを言うなら旗艦もなあ・・・」
「レウルーラですね。本当にありがとうございました」
苦笑するガルマ(杉山)に、ダルマン首相(近衛)が半ば棒読みで答える。
どうやらジオンの艦艇設計本部には強烈なまでの逆シャアマニアがいたようである。
それも複数レベルで。
「取りあえず・・・準備は進めねばなるまい。好むと好まざるとかかわらず」
デギン大統領(伏見宮)の、どこかしら憂鬱な声に、その場にいた者達は姿勢を正す。
日に日に強くなっていく連邦の圧力と、ジオン共和国市民の反連邦感情。
そしてそれを利用しようと暗躍するダイクン派の面々。
原作よりもジオンに対して好意的なコロニーや穏健派の連邦加盟国が多い反面、
政治的側面から、原作以上に手足を縛られているジオン上層部。
運命の開戦まであと3年・・・、
最終更新:2013年11月05日 10:58