148 :辺境人 ◆WvgPQuc/WQ:2013/08/19(月) 23:39:58
(……またか)
男は布団の中で妙に達観したような表情で心中呟いた。
前世といって良いのか分からないが、すでに男は前の人生において転生を果たし、同士たちと共に歴史を変えようとした経験を持っていた。あれこれあったものの、なんとか天寿を全うできて永眠したと思ったら、また違う人間の身体に入っていた。しかもどう見ても未来、いや眼前に広がる光景からしてSFな部類の世界であること分かった。なにしろ、室内の壁に置かれた大型スクリーンに広がっているのは宇宙空間に遊弋する巨大な宇宙戦艦だったのだから。
さすがに動揺もしたが、いいかげん精神年齢は老人の域を超えた仙人並なのであからさまに動揺するほど若くはない。まずは落ち着いて以前のようにこの身体の持ち主の知識や記憶を探る……が、結果として更に動揺する羽目になる。
(……勘弁してくれ)
ジャミトフ・ハイマン。それがこの身体の名であった。
<提督たちの憂鬱三次創作作品「総帥閣下の憂鬱」>
宇宙世紀0082年
「それでは、定例会議を始める」
地球連邦軍本部ジャブロー。そこに集まったメンバーは地球連邦軍総司令官コリニー大将、宇宙艦隊司令長官ワイアット中将、参謀総長エルラン少将、参謀ジャミトフ大佐など作品は違えどガンダムにおいて無能とか悪役になったメンバーである。ここにはいないが他のメンバーにはゴップ元大将、ステファン・ヘボン少将、バスク・オム中佐、ジャマイカン・ダニンガン少佐、ナカッハ・ナカト少佐、ベン・ウッダー大尉、フランクリン・ビダン中尉なども同志として動いていた。
そしていずれも前世において大正時代や昭和時代に転生し、
夢幻会という組織に加わっていたというまさに魂レベルの同志ともいえる繋がりもあってただでさえ軍閥化が進んでいた連邦軍において一年戦争において多くのポストが空席になった関係もあって連邦軍の最大派閥を築くにいたっていた。
「宇宙の方はどうだ?」
コリニーの言葉に、ワイアットが苦い顔で答える。
「一年戦争で発生した大量のデブリ問題も解決する目処は全く立たないし海賊も多い。それにやはりスペースノイドの連邦への反感は強いのでまだまだジオン残党の一掃にはほど遠いな。バスクやジャマイカンも頑張ってはいるんだが、なんせ軍事力では対症療法にしかならんし軍もデブリ対策に駆り出されて士気がいまいち上がらん。政治畑の同志がアデナウアー・パラヤしかいないのがつくづく悔やまれるよ……アニメじゃ連邦の政治家なんてほとんど出てこなかったしなぁ。ゴップ大将が政界に進出してるけど、あの人も典型的な黒幕タイプだから……折角、軍縮して民需復興をしてるのに政治家がリベートを取りまくりやがって。原作で軍事関係者ばかりが政治を語ってるのもト○ノ神の政治音痴だけが原因じゃないんだと思えるくらいだ。現状ではそうした政治家の弱みを情報部を使って把握することで操ってる状況だな」
「おかげで地上も宇宙も苦労してる。新造艦はわずかな改ペガサス級だけで、一部の対ジオン残党用の特務部隊を除けばほとんどが一年戦争時代のサラミス級やマゼラン級を改造しつつ使ってる有様だしな……バーミンガム級もドゴス・ギア級も結局建造中止になったし」
「軍艦はラー・カイラム級やクラップ級を参考にしたMS運用能力を重視した次世代艦の設計だけは一応しているさ。まぁ原作のラー・カイラムなどよりも量産性重視なのでグワダン級なんかとタイマンしたら負けるだろうが連邦の戦い方は
アメリカ方式でとにかく物量重視だからな。王道というか横綱相撲で戦えるだけでも今回は恵まれてると思うべきだろう」
149 :辺境人 ◆WvgPQuc/WQ:2013/08/19(月) 23:42:04
「まぁジオン公国やアクシズに転生しなかっただけまだマシだろうな……。しかし、原作のティターンズみたいに政治的権限はつけなくともやはり火消し役としての精鋭部隊はファントム・スウィープ隊以外にももう少し欲しい。今の規模じゃやっぱり人手不足は否めないからな。ブライトをアルビオンの艦長にするっていう話はどうなったんだ?」
「アムロを大尉に昇進させてGP01のパイロットに、というスケジュールで考えてたんだが……コーウェン中将がGP計画を手放さないんだ。核攻撃用のモビルスーツなんて止めろと言ったんだがな……原作では軍閥政治を批判する善玉扱いだったが、やってることを客観的に見ると条約違反の核兵器開発推進派ってかなりのタカ派だからタチが悪い。この調子ではスケジュール通りデラーズフリートが動くのも避けられないだろう。だからブライトには別の艦を任せることにした。アルビオンと同じ改ペガサス級の3番艦に沈んだホワイトベースの名を襲名させたホワイトベースⅡだ。ガンダムの方もガンダム・アレックスをベースにした新型ガンダムをGP計画とは別に行っているところだ。できればガンダム開発は一本にまとめたいところなんだかな……まぁメラニーのアナハイムはジオン系技術者を大量に抱え込んで技術の取得をやってる最中なのでスパイも山ほど潜り込んでるだろうからまだこっちの技術を流すわけにもいかんし、しばらくはアナハイムは表向き連邦とは一線を引いた立場でアクシズなどと裏で接触してもらう」
「原作にも無いガンダムか。GP01並に使える機体だと良いがな……」
「開発経緯も中身も違うがムーバルフレームも採用してるし多分これがガンダムMkⅡになるだろうな。反応速度重視で開発させてるのでインコムやファンネルなどの複雑なギミックも無いので開発も順調だ。アムロも開発に参加してるし基本武装も頭部のバルカン砲以外はビームライフルとビームサーベルだけとシンプルだが機動性と反応速度が尋常じゃないからアムロが乗れば無敵な機体になると思うしGディフェンサーやフルアーマーガンダムのような火力強化ユニットも並行開発しているから攻撃力も不足はない。一年戦争の時にジオニックやツィマッドの技術だけでなくフラナガン機関のデータも真っ先に押さえたがサイコミュはさすがにMSサイズに搭載するのが難しいから簡易サイコミュのバイオセンサー……の劣化版くらいには使えると思う。さすがにムラサメ研の強化人間研究は非人道的すぎるっつーことでサイコガンダム計画もろとも潰して予算を奪った上で、そっちの人材もこっちに回してるしな」
「他のMSの開発状況はどうなってるんだ?」
「MS開発だけは戦後も予算を削らずに進めてるせいで順調だ。当面は一年戦争に大量に作られたジムのアップデートを最優先で開発させている。具体的にはジェネレーターと冷却装置、そしてセンサーなどの強化で全体の出力を底上げして強力なビーム兵器などを使えるようにする、という方向だな。ビームスプレーガンじゃザク相手でも苦戦しかねんからな。開発中のビームマシンガンが使えるようになれば火力で敵を圧倒できるしすでに生産したジムの部品交換などで数を揃えられるからな。開発自体は終わってるから今は改良部品を生産してジムをジム改にしてるところだ。ジム・カスタムも強化されてるから多分、原作よりも強化されてジム・クゥエルよりマシくらいの性能にはなってるはずだ」
150 :辺境人 ◆WvgPQuc/WQ:2013/08/19(月) 23:43:27
「ジオンの技術をベースに開発してるっていうMSはどうなってる? やっぱりハイザックになるのか?」
「いや、あれは政治的にジオン残党を刺激しすぎるだろうってことでデザインをジムにさせて設計させてる。原作のハイザックは中身がジムなザクだったが、こっちだと中身がゲルググなジムってことになりそうだな。外見がジムだし、多分これがジムⅡになるだろう。とりあえずはガルバルディαを改良したガルバルディβを優先して開発させてるからうまくいけばデラーズ紛争でガルバルディβを使える。まぁ機動性重視で装甲が薄い欠点があるからベテラン向けになるだろうが……。それ以外は海軍向けにズゴックEを連邦規格にしたのを細々と生産中、ペズンで連邦とジオンの技術を合体させた新MSとしてガンダムセンチネルのゼク
シリーズの開発が始まったばかり、アドバンスドオブZのヘイズル計画はサイコガンダムみたいなコスト度外視のMAもどきのTR-6まではやりすぎだが技術試験としては有用なのでTR-5まではやらせるつもりだ。後は原作にも無いが陸戦用としてドムの熱核ホバーを取り入れたジムとドムの合体版のようなMSをアナハイムで試験させている。番外としてシロッコにジュピトリスでMS開発を史実通りにやらせてるのでまぁ量産性は最悪っぽいので実験機扱いとして可変MSのメッサーラを開発中だ。Zガンダムはアクシズからガンダリウムγが入手できないと機体強度的に無理だろうな」
「GP計画の機体はどうするんだ? 記録抹消するには惜しいと思うが……」
「アナハイムはGP計画をどっちかというと趣味の領域で頑張ってるみたいだから原作とは遜色ない機体にはなると思うが、だとしてもGP02はいらんし、GP01もガンダムMkⅡがあれば可動バーニアのデータくらいしか要らんだろうな。だがデンドロビウムは欲しいな。中のステイメンなんていらんから純粋なMAとして再設計すれば拠点防衛用以外にも対艦攻撃機として化け物じみた戦果を上げられるだろう……コストが洒落にならんので量産は無理だろうけどな」
「さすがにデンドロビウム級になると無理だが一度新型MSにも乗って試してみたいな」
「そうだな、俺も基地に置いてあるザクにたまに乗ってるがやはりMSは良い」
夢幻会メンバーはこの当時、多くの人間がMSの操縦資格を取っていた。男の浪漫である巨大ロボット、ましてやガンダムを操縦するのはオタクにとって一度は夢見たことであり適正が低い者以外はほとんどがMSに手を出しているのであった。ガンダムやGMなどの連邦製MSよりもザクなどのジオン製MSを愛する者の方が多かったのだがさすがにザクやドムを連邦に採用させようというのは政治的に問題がありすぎるということで自重されているのだが、ジオンの血を感じさせるモノアイのMSとしてペズンのゼク・シリーズが期待されていたりとあまり自重していなかったりする。
「デラーズ・フリートの調査はどうなってる?」
「シーマが接触に成功したらしい。ただ、さすがにまだ参加を求められるほど信用はされてないみたいだな。当面は海賊を装いつつスパイ活動に専念してもらう」
シーマ・ガラハウは0083の
登場人物でも人気のあるキャラであり、夢幻会メンバーの中にも当然ながら彼女を救いたいという意見の持ち主も多かった。ちなみに登場キャラへの嗜好の違いから夢幻会内部では「セイラさんは俺の嫁」「シーマ様に踏まれたい」「ニナは氏ねじゃなくて死ね」といった様々な主張がされて時に派閥争いになったり調査という名目で秘密裏に撮影された映像や写真の観賞会が開かれたりしていた(世間一般の基準では十分にストーカー犯罪である)。
そんな流れでシーマも夢幻会の「コロニーの毒ガス注入は何も知らされずにやったわけだからどう見ても責任は命令した奴にある」という多少贔屓目ではあるが穏健な意見によりシーマと接触、新しい戸籍と立場を用意して人生をやり直す機会を与えることを交換条件にジオン残党への内偵任務を依頼したのであった。シーマとしてもジオン時代の経験から人間不信になっているのでそう簡単には信用していないだろうが戦争が終わって平和になれば心が癒される時も来るだろうと判断されていた。
151 :辺境人 ◆WvgPQuc/WQ:2013/08/19(月) 23:44:13
「で、GP02の奪取……どうするんです? あらかじめオーストラリアにアムロかユウ・カジマあたりのエースを特殊MS遊撃部隊として配備しておいてガトーを一網打尽にすることもできますが……」
エルランの言葉にコリニーは悪役にしか見えない笑みを浮かべた。
「まぁ、放置だな。トリントン基地はコーウェンの管轄下だからあまり横槍を入れるのも難しいし……それにコーウェンを排除する丁度良い機会だから邪魔な連中を放り込んでおく。地上で核を撃たれても困るからガトーは宇宙に逃がしてデラーズごと始末しよう」
「きたないさすがコリニー大将きたない、そこに痺れる憧れる!」
「ははは、そんな褒めないでくれ」
「駄目だこいつら、はやくなんとかしないと……」
「あんたらネタに走らずにいられんのかい!」
ジャミトフのツッコミに会議は何時ものように笑い声があがり、会議は終幕して各々の職場へと散っていくメンバーたち。一人一人が国家指導者クラスの風格を持った人物の集団は周囲にプレッシャーをかけまくっているのだが、当人たちにとっては畏怖の視線を向けられるなどすでに慣れていたため平然としている。それが誤解を呼び、夢幻会を地球連邦軍最大最強の派閥としての風評作りの一助となっているのだったが当人たちは前世でもそれが普通だったのであまり自覚していなかった。
それから2年後。アナベル・ガトーによるGP02の奪取とデラーズフリートの決起宣言に連邦軍はまるで待ち構えていたかのようにデラーズの根拠地である暗礁宙域<薔薇の園>に大艦隊を派遣。改良されたソーラーシステムにより暗礁地帯を力づくで啓開し、GP02による核攻撃を受けたものの核攻撃を警戒して密集陣形を取っていない連邦艦隊の損害はわずかなものであった。アムロの駆るガンダムMkⅡによりガトーのGP02は撃墜され、コーウェン中将はGP02を奪取された責任を取って退役することとなる。
「さて、次の問題はエゥーゴとアクシズだな」
「エゥーゴはブレックス准将を引き込んでいるし資金源であるアナハイムも裏でこちらと繋がっている。当面はアクシズ対策を優先して良いだろう。しかし遠征部隊を送るよりは輸送ルートを潰してじわじわと兵糧攻めにして時間を稼ぎつつこっちの経済及び軍備の建て直しを図りたいところだな。NTのクローンやサイコミュ技術などその技術力は侮りがたいので早期に潰しておくのも有りだが……」
「まぁ情報部の調査と政治交渉の進捗状況を見て方針は決めましょう。硬軟いずれにしても作戦は立案しています。ジュピトリスの件もありますし木星帝国なんざ建国されても面倒ですから悪い芽は早いうちに摘み取っておきませんとね」
「そう、地球連邦による人類の統一、パックス・テラーナこそが最終的な目標だ。そのためには最低限、地球の治安を維持し、地球が滅びない程度には環境保護を進める必要がある。そのためには手段を選ばずやっていこう」
「ええ、幸運にも戦火にさらされなかった日本とそのオタク文化を守るために!」
「百年以上昔の古書扱いの膨大な数の漫画やデータしか残ってないアニメなどを収集、観賞するにはまだまだ時間がかかる。そのためにもコロニーや小惑星が落ちてきたりしない平和で安心して引退できる世の中にするためならば鬼にも悪魔にでもなりましょう!!」
地球連邦を牛耳る強大な軍閥と化した夢幻会。それは宇宙世紀の歴史を大いに変動させ、地球連邦が宇宙を支配するパックス・テラーナを樹立させることとなる。スペースノイドとアースノイドの人種的対立もあったが各コロニーの代表が連邦議会の議席を与えられ時にスペースノイド出身者の連邦首相(当然ながら夢幻会メンバーの一員であった)が誕生するなど政治的バランスを巧妙に取りつつ地球連邦こそが人類の代表機関であるという共通認識を持たせることに成功し、人類の統一を成し遂げるのであるが、その原動力が何であるのかは謎とされるのであった。
152 :辺境人 ◆WvgPQuc/WQ:2013/08/19(月) 23:45:01
投稿は以上です。久しぶりだったので投稿がぶつ切りになってしまい申し訳ありませんでした(汗)
最終更新:2013年10月21日 17:37