236 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2013/08/20(火) 17:58:10


143-144をつづける気は今のところないと言ったな、あれは過去だ。




 サイド6、リーアでも指折りの実業家として知られるペルガミノ。
彼所有のビルの裏口に、安物の電気自動車が入っていく。しかしその中に乗っていたのは、
電気自動車の価格とはとても釣り合わないサイド6の要人ばかりだった。


「安心してください、このビルは連邦、ジオンの情報部を完全にシャットアウトしています」


 ビルの応接室で豪華な椅子に座るペルガミノが言う。彼の『仲間達』はペルガミノに促されソファに座った。


「ブリティッシュ作戦は"史実"と同じように推移していますが……ペルガミノさん、浮きドックの方はどうです?」

「サラミス・ムサイ程度の艦に対応したドックが2つ、半月以内に稼動します。
 大型ドック『ニューポート』はその気になればマゼラン級も収容できますが、まだ時間が要りますね。
 ただ第一次降下作戦に間に合う事は保障しましょう。造船への転用は勿論可能にしておきます。」


 サイド6はこの時点ではまだ中立宣言をしていない。早すぎれば連邦にどう思われるか分からないし、
遅すぎれば逆にジオンに痛くも無い腹を勘ぐられる。サイド6の首脳は絶妙のタイミングを計っているのだ。

 だがタイミングを計るだけで何もしないという事はなく、戦後の発言力確保も見据えて蠢動を始めていた。
『協力者』であるペルガミノは各所に張り巡らせたパイプを活かして資金を確保し浮きドックを複数個整備している。
またサイド6幹部は秘密裏に産業用ロボット工場の一部を改造してモビルスーツの開発を進めていた。


「大金がかかったとはいえモスク・ハン博士を招聘できたのは幸いでした。
 これでサイド6はいち早くマグネット・コーティングを利用できます」

「産業用ロボットへの導入も順調だが、効率が少なくとも11%は上昇している。まさにジオン十字勲章ものだよ」


 誰かが冗談めかして言うと、応接室の人々はどっと笑う。

237 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2013/08/20(火) 17:58:41


 一同がどっと笑った所で別な者が不安な顔をして尋ねた。

「しかし、モビルスーツはともかくとして浮きドックの方は動きが少し派手すぎやしませんか?
 連邦軍の戦艦クラスを収容できる大型ドックなんて作ったら何かしら怪しまれるのが普通では」

 この疑問をペルガミノは手で制して言う。

「問題ありませんよ。これは『サイド6』ではなくあくまで『私個人』が中心の事業です。
 連邦もジオンも、ついでに月も将来の需要を見込んだ実業家が派手な博打に打って出たとしか思っていません。
 後は自分達の艦の修理のために使わせてもらえればしめたものだ、とね。勿論適切にお金は取りますが」

「ふむ……それでも一方が相手方に使わせないようにするため破壊工作に及ぶ可能性はあるのでは?」

「まあまあ、この辺りの立ち回りはペルガミノさんに任せましょう。
 "前世"で一国の大蔵大臣まで勤め上げた人です、彼の頭脳は私が保証しますよ」

 なおも疑問に思う男を、かつて"彼"と共に一国を率いた男が諫めると、男もようやく納得した。

「次の話題に入りましょうか。モビルスーツ開発までの繋ぎとして配備していた戦闘用ポッドですが、
 どうも連邦軍がこれを使いたがっているようでして……」

238 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2013/08/20(火) 17:59:13


 次に話題に上がった戦闘用ポッドとは、彼らが万が一のために用意したものだった。
簡潔に言ってしまえば『RB-79 ボール』である。しかしサイド6で作られたボールは、史実よりかなり強化されていた。

 まず作業用アームにサブアームが、機体各所にスラスターが追加され、その見た目は0083の『RB-79C ボール改』に近い。
背部にあるプロペラントタンクは大型化、装着方法がザクIII改のようになり、さながら尻尾のような様相を呈している。
攻撃力においても開戦前は2連装180mmキャノンとワイヤーランチャー(第08MS小隊準拠)のみの質素なものだったが、
いざ開戦、サイド1、2、4が虐殺を受けると一斉に改装を受け、連装砲を機体下部に移設、長砲身化。
機体上部には8連装ロケットランチャー(外見は74式アスロックSUM発射機に近い)を増設。
関係者いわく「オッゴなんてブリキ缶メじゃない」という程の優秀な火力支援機となったのである。

 この機体は『CP-78R エグゾセ改』と命名され、小さくとも侮れないサイド6の防衛戦力となっていた。


「万が一を考えてできるだけの戦闘能力を持たせたのですが、それが裏目に出ましたね」

「仕方ないでしょう。ブリティッシュでも相当のダメージを受けていますし、これからまだルウムが控えています。
 連邦宇宙軍が藁にもすがる思いで戦力をかき集めたいと考えるのは当然の事ですよ」


 そしてサイド6を守るエグゾセ改の部隊はその戦力故に今、連邦軍への提供を求められているのである。
これに応じればジオンの不興を買うのは間違いないし、応じなければ連邦は間違いなく悪感情を抱くだろう。
困難な選択に悩む一同に対し、見かねたペルガミノがある提案をした。


「ここはエグゾセの提供の見返りとして、連邦にサイド6駐留艦隊の退去を求めてはどうでしょう?」

239 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2013/08/20(火) 17:59:49


 ジオン軍は最初の攻撃で各サイドの連邦駐留艦隊を攻撃していたが、
サイド6には攻撃を控えたため、サイド6の駐留艦隊だけは無傷で生き残っていたのだ。
この艦隊はサイド6がジオン寄りに傾かないよう睨みを利かせる任務に当たっていた。


「駐留艦隊を追い出すとなると益々連邦から不興を買うのでは?」

「連邦は更なるコロニー落としの阻止に全力で集中しようとしていますし、
 エグゾセが居なくなればサイド6独自の防衛戦力は半分無くなったようなものです。
 『エグゾセは提供する、しかしジオンに本格的に敵視されるとサイド住民を危険に晒すので、
  ジオンを刺激する材料となりうる連邦駐留艦隊には出て行ってもらいたい』
 という事であれば、連邦軍はエグゾセに加え駐留艦隊を決戦に使う大義名分も出来ます。
 現状連邦政府はブリティッシュ作戦で混乱しており、軍人の発言力が大きくなっている。
 政治家を納得させる事ができなくても、軍人を納得させられればこの場は乗り切れるでしょう」

「た、確かに……」


 "前世"で大蔵省の魔王という2つ名を取ったペルガミノは、ここでもその力を大いに発揮していた。
戦力の寡多を判断できる軍人ならば、固有戦力の中心を放出してしまったサイド6が連邦に歯向かうとは考えない。
ならば駐留艦隊を追い出す事に関しても、過度の警戒を招く事はないだろうというのがペルガミノの説明だった。
ブリティッシュ作戦の影響で軍人の発言力が増しているという異常事態だからこそ取れる大胆な策だ。

240 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2013/08/20(火) 18:00:24


「では、連邦側にはエグゾセ改の提供を承諾すると共にサイド6駐留艦隊の退去を求めよう。
 勿論ジオンに対し"過度の"協力行為はしないという事は確約する。事実上の中立宣言だな……
 ジオン側に対しては、『連邦が武力で脅して無理矢理持っていった』という形で言い訳すればいい。
 マ・クベを通してエグゾセ改のデータを渡してやれば怒りも多少は和らげられるだろう」


 男の出した結論に異論は無く、以後は簡単な状況等の確認が行われて会合は解散となった。


 会合では危惧する声もあった連邦駐留艦隊の退去だが、
彼らの予想に反して連邦は意外にもこれを簡単に受け入れた。ペルガミノの読みが当たったのだ。
連邦宇宙軍内部ではレビル将軍やティアンム提督が、サイド6艦隊についてこれが遊兵化していると主張。
ブリティッシュ作戦の後、地球の最終防衛線である事が明白となった連邦宇宙軍の主張に対し、
抑えが無くなる事によるサイド6の離反を恐れた者達も折れざるをえなかった。

 宇宙世紀0079、1月12日。サイド6は自衛部隊の装備であるエグゾセ改のうち8割を連邦宇宙軍に引渡し、
対価として連邦軍サイド6駐留艦隊はサイド6を退去した。サイド6政府は同日、この戦争に対する中立を宣言。


 3日後、ジオンの新兵器、モビルスーツがついにその真の脅威を見せようとしていた……


               ~つづくかは気分しだい~

241 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2013/08/20(火) 18:01:48
236-240で今回の投下は終了です。

当方エンブレムオブガンダムの文章の影響を受けてるので、
不自然な所があるかもしれませんがあしからず。

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最終更新:2013年10月21日 17:37