398 :taka:2013/10/21(月) 10:49:29
もう一発

年末の打ち上げは、めしやで行われた。
何分華族やら政財界の重鎮やら軍人やらときらびやかな晩餐ばかりしていた頃合いである。
過労と連日の美食におかしくなりそうな胃を鎮め、尚且つ侘びしくない豪華さを持つもの。それは

「フグチリとふぐ刺しだよなぁ」

本日は貸し切りで、この字テーブルはこの国を牛耳る重鎮でいっぱいになった。
マスターは実はふぐ調理師免許持ちであり、持ち込み素材として搬入されたフグ肉は全て検査済みの処理済みである。

「しかし、なんだってフグを此処で食べるんだい? 他の場所でも食えるでしょ」

綺麗にスライスされ花蕾のようなふぐ刺しを数枚豪快に箸で摘みつつ嶋田が笑う。

「いやぁ、此処暫くフグは遠慮してるんだよ。ちょいと食べれなくて拗ねている方がいらっしゃるのでね」
「嶋田、そのような物言いはどうかと思うぞ。お立場を考えれば食される訳にはいかないだろうが」

フグチリをハフハフ食べながら山本がいうと、ヒレ酒をグビッと呷った宮様が豪快に笑いながら言う。

「はっはっは、やんごとなき身分とは大変だよなぁ。マスター、ヒレ酒おかわり!」
(いやいや、貴方もですよやんごとなき身分は)

こちらもヒレ酒を飲みながら煮こごりを突く東条は、こんな美味をお立場故に楽しめないあのお方の事を思い感慨に耽るのであった。

「んー、んまっ、マスター。ふぐざくとヒレ酒お代わりね」
「あいよっ」

そんな風に彼らがふぐ料理を楽しんでいると………

「フグにはね、毒があるんだよ」

店内の空気が静止し、全員が一斉に入り口の方に振り向いた。
入り口の引き戸が僅かに開き、冷たい冬の風が店内に吹き込んでいたという……。



その後暫くの間、夢幻会のメンバーと宮様のある御方に対する態度がかなりぎこちなかったそうな。


やおい

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最終更新:2013年10月25日 17:10