582 :第三帝国:2013/10/24(木) 23:09:04
衝号ぬきの太平洋戦争~第7章「発動、MI作戦」
42年の12月は日米双方が艦隊の整備に明け暮れていたため、
大規模な会戦は発生しなかったが、それでも世界情勢は動いていた。
12月18日。北京から遁走を図った張学良が列車ごと爆破され死亡。
悪い事に同乗していた主たる幹部も死亡してしまう。
そして直後、存在感が半ばなきに等しかった中国共産党、国民党から国共合作の宣言が出され、
民族の裏切り者の軍閥張学良に天誅が下ったと発表した後に民族解放を名目に北伐を開始、大陸に再び戦乱の時代が始まった。
余談だが北伐と名称こそ勇ましかったが、
両軍共に規模が小さいため主にゲリラで混乱する中華民国をかき回していった。
これは「革命は銃口から生まれる」をテーゼとするスターリンの意向で、
張学良の暗殺から国共合作の支援をしたソ連だが、大祖国戦争で手いっぱいなため重火器の支援が行えなかったことが非常に大きい。
そして、首領を失い中華民国内部でも分裂の兆しが見えてきたため、
2正面戦争を避けるべく中華思想的には皮膚病にすぎない日本との講和締結を決定。
日本との講和もあるが、上海虐殺事件、在中資産の無断没収など
アメリカは猛烈に抗議したが、
彼らからすれば約束は破るもの、さらに日本にしろ米国にしろ所詮夷敵に過ぎず、
より重要な中華の覇権をめぐって争いだし、ここで日本の大陸での戦争は終結へと向かった。
もっとも、
夢幻会は日本が不利になれば即座に寝返ることを予想しており、
より中華世界が混乱の渦中が永続することを望み、福建だけでなく国民党や共産党を支援し戦乱を助長した。
こうした一連の動きにアメリカは当然のことながら指を咥えて傍観していたわけではない。
チャイナが戦争から脱落した隙間を補うべく全方面で積極的な外交攻勢に出たが残念ながらどれも失敗してしまう。
まずは日本とは相合わないソ連に各種支援を餌に対日参戦を打診したが、
ソ連はなんとか防衛に成功しているとはいえ、ドイツに押されてばかりで極東で戦端を開くなど物理的に不可能であり、
逆に対独宣戦要求を突きつけ、支援だけは頂こうとされかけた上に、挙句日本と資源のバーター交易を始める始末であった。
ドイツも同じくソ連との殴り合いだけで既に限界であり、
そもそも遥か極東の日本に参戦した所で展開できる戦力など存在せず、
逆に敵の敵は味方の理論でソ連と日本が手を結び、日本の支援を受けたソ連が殴りかかってくることを恐れ、拒絶される。
自由フランス、自由オランダなどロンドンに拠点を置いた亡命政府にもそうした話を持って行った。
なぜなら、両国は
アジアでいくつかの植民地を有しており現在は中立国を題目に日本に各種戦争資源を輸出している。
特に自由オランダの植民地インドネシアは、ボーキサイトに鉛、、天然ゴム、石油など資源の宝庫であり、
ここは最低でも禁輸措置をするように呼びかけたが、日本の南進を恐れて拒絶された上にそのための保護義務を突き付けられる。
自由フランスに至っては南太平洋の幾つかの港を日本に租借させる始末で、
12月からは一部の潜水艦がトラック諸島から前進して、南米航路の通商破壊に従事しだした。
なお、自由フランスは日本から租借代金をせしめると同時に、
アメリカに対しては日本の武力に屈して仕方がなく貸している等といけしゃあしゃあと説明した。
独自外交が大好きな蛙食いの対応に国務省の官僚の血圧を上げたが、表向きには事実でもあるのでどうしようもなかった。
最後に保有する武力に与える影響のこともあり一番期待していたイギリスも失敗に終わった。
イギリスは日本を連合国から追放したとはいえ、準軍事同盟を締結しており、
下手に禁輸処置を取った場合には、日本の南進を誘因するとして協力には消極的であった。
583 :第三帝国:2013/10/24(木) 23:10:17
特に日本のこれまでのしたたかな対応を吟味すると、
各アジアの現地指導者との繋がりを利用して大英帝国の宝物庫であるインドを混乱させる可能性が極めて高いと分析されており。
最悪インドから駆逐される可能性があり、開戦初頭でアジア艦隊を壊滅させた日本の空母機動部隊の威力を知り慌てて図上演習をした結果。
1年以内に東洋艦隊は全滅、さらにドイツと同盟を組み再度欧州で戦乱が勃発。
数年の戦いで最終的には勝てるが、国力戦力共に消耗し、肥え太るアメリカをしり目に大英帝国の威光は消滅する。
との結果が出たため軍人を中心に反対意見が多数出される。
また一方で「トーゴーの末裔はナチに対して共に戦ったが、新大陸のヤンキーはついに助けに来なかった」といった感情的な要素も無視できない。
極めつけは英国で最も尊き方が昨今の国際情勢について述べられた『感想』において、
かつての友人に対して剣を向けるのはいかがなものか?と深い憂慮と共に述べたことが決定打となった。
アメリカ側は脅したが、植民地の安全を保障することを求められ、
さらに安全確保に失敗した場合は、損害を補償するように要求し、事実上物別れに終わった。
かくしてアメリカの外交政策は見事に失敗し、日本とは真正面から対抗せねばならなかった。
ロング大統領はこの経緯に血圧を際限なく上げたがまったくどうしようもなく、
加えて日本の通商破壊で12月の損失は船舶約60万トン、との報告を受けてストレスで抜け出した髪の毛がさらに抜けた。
開戦4ヶ月目にして開戦直後に建造、訓練を終えた護衛艦がようやく実戦配備されつつあったため、
主に従来型の伊号を中心に損害を与えることに成功していたが、日本海軍は和風UボートXXI型の呂号のさらなる量産と、
誘導魚雷の装備を推し進めていたため、護衛艦共々損害は相変わらず大きなものであった。
このころになると流石に経済的だが損害が大きい単独航行はせず、
効率は悪いが接敵率が低下し、十分な護衛を付けることができて結果として損害を抑えられる船団航行をするようになったが、
日本海軍は特設巡洋艦、あるいは水上機母艦から無線探知、水上機による索敵で船団を見つけ次第付近の潜水艦を呼び寄せ、
集団で襲わせる等とまるでドイツの群狼戦法のような光景がいくつも発生した。
いくら英国からら対潜装備にノウハウを強奪したとはいえ、
その大元は日本海軍であり、そした装備への対抗手段を熟知していた。
また、トランジスタを早期開発に成功したお陰でアメリカ軍の暗号は筒抜けに等しく、
アメリカは未だ電子装備は実験的な存在でしかなかったため、対戦末期の日本軍よろしく派手に沈めれるばかりであった。
期待の護衛空母も来年の春までにやっと8~12隻揃う計算で数が足りていなかった。
それどころか真っ先に実戦配備された1番艦、2番艦は即座に沈められる始末であり、ロングと海軍首脳部の頭を禿げさせた。
なお、日本海軍として潜水艦単独でアメリカの船舶生産数以上に損害を与えるには、
整備、移動、哨戒のローテーションを組むことを前提とすれば最低350隻を必要と睨んでおり、その数を目標に増産していた。
また、アメリカ太平洋艦隊に打撃を与えることに成功した暁にはアラスカではなく西海岸へ上陸すると誤認させるため、
西海岸への空襲、パナマ運河襲撃も前提とした機動部隊による大規模な通商破壊をもくろんでいた。
閑話休題
アメリカ軍がミッドウェーに戦力を、
保持したままであることを確認した夢幻会は1月に予定通り「MI作戦」の発動を決定した。
しかし、万が一に備えて原子爆弾投下も念の為に準備する、と会合で一致した上で根回しに奔走しだした。
夢幻会と軍関係者の胃壁と睡眠時間、定時帰宅を犠牲にしつつ日本海軍は「MI作戦」に必要な物資を取りそろえ、
1月7日ついにミッドウェー攻略作戦「MI作戦」が発動された。
大陸沿岸部、フィリピンが早期に陥落したため、山本五十六の遣支艦隊も参加し、
この日のために参加した兵力はまさに日本海軍の総力を挙げたもので兵力は以下のとおりである。
584 :第三帝国:2013/10/24(木) 23:10:57
第1艦隊(高須四朗中将)
第1戦隊〔長門、陸奥〕
第2戦隊〔伊勢、日向、扶桑、山城〕
第6戦隊〔青葉、衣笠、加古、古鷹〕
第13戦隊〔大井、北上〕
第1水雷戦隊〔米代、駆逐艦16隻〕
第5機動戦隊
第5航空戦隊〔隼鷹、飛鷹〕
第5戦隊〔愛宕、高雄、摩耶〕
第5防空戦隊〔球磨、駆逐艦16隻〕
油槽艦〔鳴戸丸、さくらめんて丸、健洋丸、玄洋丸、佐多丸、鶴見丸〕
第2艦隊(近藤信竹中将)
第3機動戦隊
第3航空戦隊〔翔鶴、瑞鶴、瑞鳳〕
第11戦隊〔伊吹、鞍馬〕
第9戦隊〔那智、利根、筑摩〕
第3防空戦隊〔川内、駆逐艦12隻〕
第4機動戦隊
第3航空戦隊〔大鳳、紅鳳、海鳳〕
第12戦隊〔富士、新高〕
第14戦隊〔吾妻、大淀、仁淀〕
第4防空戦隊〔阿武隈、駆逐艦12隻〕
油槽艦〔東邦丸、極東丸、日本丸、国洋丸〕
第3艦隊(小沢治三郎中将)
第1機動戦隊
第1航空戦隊〔天城、赤城、祥鳳〕
第3戦隊〔金剛、榛名〕
第7戦隊〔妙高、最上、三隈〕
第1防空戦隊〔那珂、駆逐艦12隻〕
第2機動戦隊
第2航空戦隊〔蒼龍、飛龍、龍鳳〕
第4戦隊〔比叡、霧島〕
第8戦隊〔羽黒、熊野、鈴谷〕
第2防空戦隊〔神通、駆逐艦12隻〕
油槽艦〔神国丸、日朗丸、豊光丸、第2共栄丸〕
ミッドウェー攻略艦隊(山本五十六大将)【本編34話を参考して増強】
第6機動戦隊
第6航空戦隊〔大鷹、雲鷹〕
第6防空戦隊〔足柄、駆逐艦12〕
第7機動戦隊
第7航空戦隊〔神鷹、海鷹〕
第7防空戦隊〔五十鈴 駆逐艦12〕
輸送船団〔清澄丸、ブラジル丸、アルゼンチナ丸、北陸丸、まがね丸、衣笠丸
球磨川丸・白鳳丸・秋鳳丸・俊鶴丸・栗田丸吾妻丸、霧島丸、第2東亜丸、
鹿野丸、明陽丸、山福丸、南海丸、善洋丸〕
油槽艦〔日栄丸、浅香丸、白山丸。帝王丸〕
第6艦隊(小松輝久中将)【史実ミッドウェー海戦の兵力の憂鬱補正】
第8潜水戦隊〔大鯨〕
呂15、呂17、呂19、呂25、呂26、呂74、呂75、呂22
第3潜水戦隊〔剣埼、高崎〕
伊168、伊169、伊171、伊172、伊123
第5潜水戦隊〔靖国丸、平安丸〕
伊156、伊157、伊158、伊159、伊162、伊164、伊165、伊166、伊121
585 :第三帝国:2013/10/24(木) 23:12:12
戦艦14、空母15、巡洋艦21、駆逐艦80、潜水艦22、と実に壮大としか表現しようがない艦隊であった。
迎え撃つアメリカは期待のエセックス級空母1番艦を12月に完成させ、2、3番艦は両用砲の代わりにエリコン式20ミリ機銃を設置する。
など一部装備を簡略化させなんとか12月に完成させたが、どちらも完成させただけで訓練なども始めたばかりだ。
本来ならば空母戦力こそ日本に劣っていたが、全体としてみればアメリカ海軍が圧倒していたはずだったが、
アジア艦隊の全滅に通商破壊で早々に空母を半数失い今では質的にも物量的にアメリカが押される一方であった。
長期的にはアメリカの勝利に疑いの余地はなかったが、現状はそうして数が揃うより前に日本軍がハワイを攻略しかねないもので、
最悪西海岸を戦場にすることを前提としなければならないと、アメリカ海軍首脳部の空気は重い物であった。
そして、日本軍ミッドウェーに来たり!
の報告を受けて軍、政府の間で様々な議論を呼び起こしたが、大統領は決断した……。
最終更新:2014年03月23日 13:59