531 :フォレストン:2013/10/30(水) 11:13:44
設定スレの話題はおいらに対するネタ振りとみた…!

提督たちの憂鬱 支援SS 憂鬱英国戦闘機開発事情 番外編

1940年台後半になると、英国空軍の機体はターボプロップ機が主力となっていたのであるが、そのころにはドイツ空軍は既にMe262を本格的に配備していた。

Me262の速度は新型スピット(スパイトフル)を完全に凌駕していたのであるが、その速度差は黎明期のターボジェットエンジンの弱点である、加速の鈍さや低空での運動性の悪さをカバー出来るほどのものではなかった。さらに航続距離の短さによる英国本土上空での戦闘時間の制限があり、ドイツ側の誘いにのらず、防衛戦に徹する限りは致命的なものではなかったのである。
加えてバトル・オブ・ブリテンで培った、レーダーによる効率的な誘導で先制攻撃が行えるので、戦力的には充分対応出来るレベルであったし、事実空軍上層部はそれほど問題視していなかった。
しかし、Me262の後継機が開発されているとの情報もあり、英国空軍では本命のデ・ハビランド ヴァンパイアが戦力化されるまで、スパイトフルの性能向上に邁進することになったのである。

スパイトフルの性能は、搭載エンジンのダート(Rolls-Royce Dart)の出力向上に比例して向上しており、このままいけば、当分ジェット戦闘機の配備はいらないんじゃね?と空軍関係者が思い始めた矢先にトラブルが多発したのである。

出力向上と機体構造の強化で性能を向上してきたスパイトフルであったが、800km/hを超えると数々の問題点が発生したのである。800km/h以上の速度はプロペラ機では未知の速度域であり、既存の技術では対処しきれなくなったのである。

この問題に対して空軍上層部は技術実証機を製作し、その成果をフィードバックすることで解決することにした。機体の開発はこの手の試作機を手がけた経験が豊富にあるマイルズ・エアクラフトに任されることになったのである。

532 :フォレストン:2013/10/30(水) 11:15:55
マイルズではこの機体をM.51 (Miles M.51)として早速開発を開始したのであるが、単に800km/h以上の速度発揮に留まらず、900~1000km/hあわよくば音速をも狙う野心的な機体として開発を進めていったのである。

高速を発揮するために、空気抵抗の低減を最優先にした結果、機首を細く尖らせた楔状のシルエットを持つこととなり、主翼も空力を優先して中翼配置とされた。機体形状によりエンジンは機首には置けないので、機体後部に配置することになった。

機体製作の過程で最大の問題となったのはエンジンの選定であった。
当初はニーン (Rolls-Royce Nene)かダート(Rolls-Royce Dart)の出力向上型を複数搭載する予定だったのであるが、機体後部に搭載することによる排熱問題と、充分な空気流量を確保するとなると、巨大なエアインテークを機体に設けることになり、それは機体の空気抵抗低減を至上目的としている当機にとっては受け入れがたいものであった。

そこでセイバー(Napier Sabre)を3基横並びにして、ギアで連結したエンジンを製作した。
トライセイバー(try Sabre)と呼称された、このエンジンは出力1万馬力を達成し、これを延長軸で3重反転プロペラを駆動することになった。反転プロペラのメリットはカウンタートルクの相殺であるが、二重反転プロペラでは馬力を吸収しきれず、かといって四重反転プロペラにしてしまうと、サイズと重量が巨大になりすぎるので、3重反転プロペラで妥協することにした。発生するカウンタートルクは垂直尾翼をオフセット配置することで解消した。

液冷エンジンのメリットを活かし、エンジンの冷却に表面蒸気冷却方式を採用した結果、余計な突起物の存在しない、理想の機体形状となったのである。なお、主翼そのものは開発時間の短縮のため、スパイトフルの主翼を流用し、これに表面蒸気冷却装置を組み込んだものとなった。

意外に難題だったのが、ランディングギアの設計であった。
ただでさえ、中翼配置で脚が長くなるというのに、加えて大口径プロペラの採用があり、さらに細長い脚となった。
主翼内は表面蒸気冷却のための、水管が張り巡らされているため収納出来ず、結局胴体に収納することになった。この結果、ただでさえ不足気味な燃料タンクのスペースがさらに削られることになった。
尾輪も空力優先のため胴体内に収納されたが、着陸時には下方へ30センチ伸びるようになっていた。これは着陸姿勢が大仰角となるため、機体が地面と接地しないようにするための処置であった。

533 :フォレストン:2013/10/30(水) 11:17:19
マイルズらしく驚異的な突貫工事で機体の設計は進められ、設計開始から半年で実機が完成した。
早速、速度トライアルを開始したのであるが、トラブルが続出した。
あまりにも多いので一々挙げていたらキリが無いのであるが、主だったのを挙げると以下のとおりである。

  • エンジンの連結ギアの破損。
  • 延長軸の異常振動。
  • 3重反転プロペラの故障。
  • 表面蒸気冷却装置の性能不良。
  • ランディングギアの故障・破損。

他にも飛行性能には関係無いのであるが、空力優先の機体形状にした結果、燃料タンクの置き場所が無くなってしまい、全力飛行の時間が制限される問題も発生していた。
それでもマイルズの技術者達は、執念染みた努力で一つ一つ克服していき、水平飛行で940km/hを達成、日本の疾風を参考にした後退翼を搭載した2号機では、水平飛行で1000km/hに到達した。その過程で得られた技術はスパイトフルの性能向上に多いに役立ったのである。

マイルズ M.51 2号機

全長:12.3m
全幅:14.0m
全高:4.72m
全備重量:8263kg
エンジン:トライセイバー 10500馬力
最大速度:1000km/h
実用上限高度:12240m
乗員:1名
武装:非武装

534 :フォレストン:2013/10/30(水) 11:18:52
あとがき
設定スレの話題が、どうみてもおいらに対するネタ振りとしか思えなかったので、つい書いてしまいました。ご期待に沿えたでしょうか?(オイ

正攻法で行くなら、普通にジェットを使えよということなのですが、英国面故に致し方なし!
空力最優先で、余計な抵抗物を排除していったら、ああなっただけなのです。液冷エンジンに表面蒸気冷却は最強コンボですよ!
信頼性?実験機にそんなものを求めてどうするというのですか?

まともに稼動すれば、かなりの高速を発揮出来ると思います。さすがに音速突破は無理ですけど。
音速を突破するなら史実のベルX-1のような形となるでしょうが、この世界ではどうなるでしょうかねぇ。ドイツが先んじて達成して大々的に宣伝しそうな気がしますが、既にそのころには何食わぬ顔で、日本は疾風を改修してマッハ2級にしてそうだなぁ…(汗

追伸 2013/11/4
Wikiに載ったので、細かいところの修正と描写の追加をしました。

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最終更新:2013年11月04日 21:16