26 :パトラッシュ:2013/12/07(土) 10:05:37
凰鈴音SIDE(2)
「ううー、一夏より優れた女性でなくてはダメなのか……」
「物凄く高いハードルですわね……」
「ただでさえISでも勝てないのに、難しいよ……」
「七つも年上になると、あたしたちなんてガキ扱いなのかも……」
「いつ嫁を私のものにできるのか……」
箒、セシリア、シャルロット、あたしにラウラの五人は放課後、学生食堂の隅で揃って頭を抱えていた。今朝、一夏が初めて語った結婚観がショックだっただけではない。全員が授業もそっちのけであれこれ考え込んでしまい、仲良く千冬さんから出席簿や拳骨を喰らっていたのだ。
不意にラウラが顔を上げた。
「そうだ、クラリッサの話だと日本ではこうした場合、プレゼントを贈ると効果的だとか。早速実行してみるか」
「まま待てラウラ。そのクラリッサという名前は、とんでもない知識に直結していたはずだぞ。どうするつもりだ?」
「確か裸にリボンを巻きつけて、<私がプレゼントよ>と迫ればイチコロだとか」
「何アホ言ってんのよ! そんなのあたしが――いえ、千冬さんが許さないわ!」
「そ、そうですわ、ラウラさん。織斑先生に銃殺されますわよ」
「う、さすがに教官を怒らせるのはマズイか……」
「それ以前に一夏が住んでる宿舎って、警備の厳重さは世界一って聞いたよ。いくら軍人でも、あそこに潜入できるの?」
「――いや、無理か。GSG-9(ドイツ連邦警察局特殊部隊)の将校が、あの宿舎に強行突入は不可能だと断言していたな。この世界では知られていない保安システムで固めてあると」
つ、疲れる。こんなのが少佐だなんて、ドイツ軍は兵士の教育を根本的に見直すべきだと、あたしは断固主張したい。にしても、一夏も一夏よ。
「何で約束を忘れちゃったのよ! 覚えてたら強引に話を持ってくつもりだったのに」
「「「「鈴(さん)、それはどういう意味だ(ですの)?」」」」
ヤバイ、うっかり本音が洩れた! とっさに逃げようとしたが、一瞬で四人に周囲を固められては動けない。結局、二人だけの秘密を白状する破目になってしまった。
「毎日酢豚を食べてくれる、か。断言できるが、一夏はタダメシを食わせてもらえるとしか思ってなかったはずだぞ」
「ですわね。今はともかく一夏さんにとっての十年前では」
「一夏が忘れていてよかったね。大恥をかくところだったよ」
「嫁が食い物に釣られる男だと思っていたのか?」
「わ、わかってるわよ! 一夏のトーヘンボクは筋金入りだって。中一の一学期だけで十三人の女子から告白されたのに、その全員に<ありがとう、いい友達になろうね>って返したんだから」
「そ、それは、さすがに……」
「女の敵のセリフですわね……」
「悪気はないんだろうけど……」
「私でも愉快ではないな……」
全員揃ってため息をつく。考えてみると五人とも一夏をめぐっての敵のはずなのに、今や同志みたいね。どんよりした気分のところへ突然、能天気な声が響いた。
「あれぇ皆さん、どうかしたんですかぁ」
思わず山田先生の巨乳を吹き飛ばそうと、ISを展開するのを堪えるのに多大な精神力を要した。
「そうだ、先生に恋愛経験はありますか?」
「そ、そんなの、あるに決まってるでしょう。残念ながら結婚までは至りませんでしたけど。ということは、揃って恋バナかしら?」
「いえ、ちょうど自分の気持ちを相手にわからせるにはどうすればよいかという話になっておりましたの」
「それならいい方法がありますよ」
「「「「「な、何です(の)」」」」」
「裸にエプロン姿で<ご飯にする? お風呂にする? それともあ・た・し?>と迫れば……」
「学校で生徒に教えることかっつーの!」
「え、え、いけなかったんですかぁ?」
「はぁ、一夏にふさわしい女性になるためコツコツ勉強するしかないか……」
「当たり前なのかも知れませんけれど……」
「嫁に教育する方法もないとは……」
「せめて、一夏の子供が欲しい……」
「シャ、シャルロット! 今何て言ったのよー!」
※五人が五人とも、向こうの世界で一夏が女をつくっている可能性を考えなかった(考えたくもなかった)一幕でした。Wiki掲載は自由です。
最終更新:2013年12月07日 17:33