したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1- 最新50 | まとめる | |
提督たちの憂鬱 支援SS その03
1 :名無しさん:2012/05/20(日) 16:32:06
このスレッドは、「提督たちの憂鬱」の支援SS(二次創作)を投稿する場所です。
SSに対する感想、議論を書く場合は、支援SS 感想掲示板に書き込んでください。
中長期に渡って連載をする場合は、「中・長編SS投稿」スレッドへ移動してください。

また、よりネタ臭が強いものは「ネタの書き込み」スレッドへ、
それが長い場合は「中篇以上のネタの書き込み」スレッドへ移動してください。

550 :ルルブ:2013/11/24(日) 21:04:38
自動車の話は1950年代から1960年代にして書き直す予定です。
ご指摘ありがとうございます。とりあえず、二作目です。これは夢幻会・会合の中の一シーンをモデルにした話です。



提督たちの憂鬱支援SS ~『大東亜共栄圏と大東亜会議』~



1941年から始まり、1945年8月15日に終戦を迎えた太平洋戦争。或いは当時の日本語では大東亜戦争と言われた戦争には一つの会議がある。
それは植民地独立、民族自決を掲げた大東亜宣言を大日本帝国帝都東京にて行った、大東亜会議と呼ばれる国際会議だ。
恐らく、近代以降の東南アジア史上初めての国際会議である。
で、その会議の後世世界における意義や影響、日本の功罪などは多々議論すべきであるし、議論すべきでは無いのかも知れない。
それは史実で戦後60年が過ぎても解決してない問題だった。

だから転生者は『会合』にこの企画を持ち込んだ外務省の吉田・白洲呉越同舟連合派閥らの正気を疑ったのも無理はない。

時はサンタモニカ会談終了から代表団帰国の半月後である。




「大東亜会議・・・・・これはまた・・・・・」

阿部内務大臣が絶句した。
辻大蔵大臣はとにかく一旦お茶を飲む。
嶋田内閣総理大臣はめまいがし、思わずビタミンドリンクを飲む。
一方で史実を知らない山本海軍大臣らは真剣に話を聞く。

「ご存知の通り、欧州列強諸国はインドより東側の植民地を放棄します。正確には我が国に譲渡する、と言って良いでしょう。
そうですね、面倒な事言わずに言葉を取り繕わなければ、列強は我が国に対して媚を売る為に重荷になるであろう地域を売り払った、という事です」

吉田茂は最早国家どころか土地すらないキューバ島の葉巻を惜しげも無く吸う。
この点は英国人以上に英国紳士らしいと言われる白洲次郎も同様だった。
無言で頷く会合の面々。

「そして政府ならび特務機関と軍が接触し組織した独立準備委員会は確実に我が国の陣営に入ります」

当然である。
七つの海を支配した大英帝国という帆船は正に沈没寸前。
新興のゲルマン民族至上主義のドイツ第三帝国はその国是と国策からして絶対に有色人種を対等に扱わない(というよりも扱えない)
アメリカ合衆国は壮大な、それこそ史実アメリカ映画界、ドラマ界が好きそうな、バイオ・ハザードと内戦を引き起こして消滅。独立した日本勢力圏の西海岸諸国と南部の欧州陣営の半植民地以外は最早文明圏とは呼べない。
南米はアメリカ経済支配からの脱却による混乱が続き、中東は英仏独伊の混戦模様。アフリカは民族浄化政策を進める欧州枢軸と現地住民との内紛で外に目を向ける事は無理。
インドもカースト制度と反英思想の蔓延と分離独立主義者と国民会議派の対立などで頭痛の種。中華と敗戦国にして対独防波堤扱いのソビエト連邦の国際影響力は論外。

「と、皆様もご承知の通りですが東南アジアに生まれる新国家群は確実に我が国の勢力圏内に入ります」

白洲がそういって料亭に用意されている白板に地図とグラフをはる。
それは東南アジア各地に眠る鉱物資源・人口・農業地・海路・工業地帯の簡易化したものである。
無論、国家機密以外の何物でもない。
史実のインターネットで外務省が簡単に公開する様な事はこの世界では不可能なのだ。

552 :ルルブ:2013/11/24(日) 21:07:30
「それで?」

「・・・・・改めてこの様な国際会議を我が国でやる必要はないのではないですか?」

近衛元首相と嶋田現首相が聞く。
そうだ、だいたい『大東亜会議』という名称そのものが不安だ。
何が起きるか、どこで悪名に転じるか分からない。そんな転生者特有の漠然とした不安が彼らにある。
もちろん、嶋田ら転生者、史実を知る者達ははそうでも、この世界しか知らない現実を生きている人々である白洲、吉田ら外務官僚組はそうでは無い。
彼らに取って、大東亜会議と言う名称はあくまで方便。
本当の狙いはたった一つだけ。

「欧州枢軸は良くも悪くも列強国家をドイツが力づくで抑えております。一度国土や首都を占領下におかれた欧州各国は表向きドイツに強く言えません。
そうでしょう。何せ強力な軍事力に正面から戦って負けたのです。国民もそう迂闊な事は出来ない。
ですが、総理、我が国はどうでしょうか?
我が国はの方針は一言で言えば『王道』を歩む事です。それも民主主義的な要素を残し、ドイツとは違う、各国の自主自立に文化と歴史の尊重を保障する。
そうであればいつまでも武力に頼った武断外交方針は害悪と思われますが?」

現在の国内世論は嶋田が懸念する様に、一部強硬派が軍事力至上主義的な側面を見せている。
それだけではない。陸のソビエト連邦、中華民国、空のドイツ第三帝国、海のアメリカ合衆国を完膚なきまでに叩き潰した帝国陸海軍にも大きな自負心がある。
性質の悪い事に、この自負心は実績と実力と国力に裏付けされているからあながち間違いでもない。
しかもだ、これに土壇場での英の裏切り、独ソとの長年にわたる対立、米中両国の策謀による国際的な孤立化を経験した事が国内世論に拍車をかける。

『さらなる軍備拡大!』

『日本による日本の為の、日本の秩序!!』

『太平洋に名だたる帝国海軍!!』

『無敵皇軍!!』

『打倒、旧秩序!! 確立、新秩序!!』

『欲しがりません、勝つまでは!!』

などなど。
戦時中のスローガンやプロパガンダが戦後だと言うのに未だに尾を引いている。
しかも外務省組にとってこれらは拡大傾向にあるのが最大の懸念。
だいたい外務省への風当たりは非常に強い。
日英同盟を長年結んでいた英の裏切りや米中による挟撃、国際資本の孤立にハル・ノートと呼ばれたアメリカの最後通牒。
英独停戦も、米中共謀も見抜けなかった外務省。
独米中ソら大国と欧州、大西洋、地中海、中華大陸、太平洋で対等に、いや、徹底的に叩き日露戦争以上の勝利をもぎ取った軍部。
国民がどちらを支持するか、好意を抱くかなど火を見るより明らか。
仮にこれが外務省の失態で戦争直後に奇襲攻撃を受けたり、史実の様に宣戦布告文章を渡すのが遅れたりしたら『非国民』『売国奴』扱いは覚悟しなければならなかっただろう。

彼らとて日本国の中から選ばれたエリート中のエリートだ。
頭が悪いわけでは無い。寧ろ、学力と言う面で、文章理解や個々の情報判断は世界有数である。何せ憂鬱世界の日本には総研が存在しているのだ。
馬鹿では出世できなかった。少なくとも表向き、大多数はそう信じている。
だからこそ、外務省の主要メンバーは焦った。
人の組織である以上、多くの派閥が存在するのが常だが、この時ばかりは外務省の主要派閥のトップは一致団結し、一つの結論に到達する。

『このままでは政府内部で外務省は陸海軍に軽んじられる。いや、下手をすれば他の省庁からさえ引き離され埋没する』

と。

553 :ルルブ:2013/11/24(日) 21:10:30


国際的な孤立。軍事的緊張。そして、開戦と言う経緯を辿った昭和の時代。
これらの結果として、外交による打開が行われんとするが、そうは言っても大英帝国と欧州枢軸は国民感情が否定的、中華民国と旧アメリカに関しては問答無用。
ソビエトは利用するだけの存在となる。
もちろん、そう強気に出れるのは圧倒的と言う言葉でさえ間に合わない軍事力、原爆、富嶽、極秘のジェット機、最強の空母機動艦隊などがあるから。
それは全ての列強が知っている事。
ならば正攻法では外交の、外務省の復権は程遠いし迂遠でもある。
彼らは悩んだ。そして一つの案が誰からから、どこかの部署から、いつの間にか出された。



東南アジア諸国、福建共和国、華南連邦、インド地域、更に北米西海岸三カ国を組み込んだ、太平洋の覇者である大日本帝国に政治的本拠地をと経済的・軍事的中心地を置く、『大東亜共栄圏』構想

そしてこれを有名無実化しない為の定期的な国際会議である、『大東亜会議』。



主な内容は相互経済協力、相互軍事協力、相互防疫対策、相互災害対策の四本柱であった。
更なる詳細は省くが、これの一番の特徴は、大戦で圧倒的な勝利をもぎ取った軍部では無く、その存在意義さえ問われつつある外務省=外交交渉による日本主導の国際政治体制を明文化・確立する事。

(今さら独に付けない、英は頼れない、他の国は使えないと判断した国々は一時的にせよこの案を受け入れる。
各国に都合の悪い点、それは後から修正していけば良い。それが外交と言うモノだ。そう言う意味でもこの国際機関は有用だ。
此処にいる皆なら分かるだろう)

吉田は白洲が皆の前で語り続ける中で思う。

(尤も、先の国際連盟や国際協調政策が完全に失敗した上、ブロック経済が先の大戦を招いた。その物真似のこれが上手くいくかは分からない。
だが、世界中から日本が軍部だけで成り立つ軍事独裁国家、或いは政治は軍事力が全てだと言う風潮が祖国の常識となる前になんとしても外交の意義を取り返さなければならん。
確かに本音を言えばこの策は我々の為、外務省らの利益の為でもある。
が、何より、戦争は外交の一形態にしか過ぎないのだ。それを忘れては我が日本人は文明の何たるかを知らない野蛮人に戻ってしまう!!)

彼らの構想が、外務省の焦りが良い事か悪い事かは別にして。
軍事力偏重主義の蔓延を恐れた夢幻会にこれは一つの解決策、或いは打開策、妥協策となるかもしれない。
だが、それを判断する事はまだ誰にも出来なかった。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2014年01月07日 20:54