570 :フォレストン:2013/12/20(金) 10:32:31

提督たちの憂鬱 支援SS 憂鬱ドイツ電算機事情

地球の裏側で、極東の小国が無双していたころ、独ソ戦はドロ沼の消耗戦に突入していた。

戦争に求められるのは、何は無くとも数であり、大量の兵器を前線に送り出した側が勝利を手にすることが出来るのは、ある意味真理である。
しかし、その兵器を製造するのにも、運用するのにも、結局のところマンパワーが必然なのである。

マンパワーの隔絶。
兵器の性能もキルレシオも圧倒的に上回りながら、ドイツが苦境に陥っているのには、そんな事情があったのである。それゆえに、軍需大臣であるアルベルト・シュペーアは、独ソ戦遂行のために、資材の管理と共に、マンパワー確保のための手段も模索していたのである。

政治に関与するまでは、元々数学者志望であり、紆余曲折を得て建築家の道を歩んでいたシュペーアは、あらゆる局面における膨大な計算から、技術者を解放することが、マンパワーの効率的運用に繋がると考えていた。そのためには、高性能な計算機が必要と考えた彼は、軍需省主催で計算機とそのアイデアを広く募集したのである。

その結果、性能もさることながら、抜群の安定性を示した、コンラート・ツーゼの電気機械式計算機Z1(史実Z2相当)が特別賞を受賞し、公的機関に大量に導入されることになる。
史実以上に潤沢な援助を受けたツーゼは、独立して(日本を例外とすれば)世界初のコンピュータ会社を起業し、1942年には、Z4を完成させた。

Z4はチューリング完全を達成したZ3の拡大発展バージョンであり、これまでのZ系列計算機の集大成と言えるものであった。ドイツの公的機関、企業のみならず、欧州枢軸内でも広く用いられ、兵器設計やダム等の巨大公共建築物の設計に力を発揮したのである。

Z4開発の副産物として、ツーゼは(くどいようだが、チートは例外として)世界初の非ノイマン型高級言語である、プランカルキュールを考案している。
その後、欧州枢軸で広く使用されるプログラミング言語となり、後のプログラミング言語も、プランカルキュールから派生、発展していくことになる。

571 :フォレストン:2013/12/20(金) 10:35:12
テキサス共和国。
旧テキサス州とその周辺領土で構成された国家であり、1944年のサンタモニカ会談で、正式に承認された独立国であるが、実態はドイツの衛星国である。

アメリカ合衆国最後の大統領である、ジョン・N・ガーナーの出身地であったため、荒廃した北米の地にあって、比較的早く復興しており、豊富な資源があったことにより、対日決戦のための後方基地としての役割を担うことを、期待されていたため、東海岸より軍需メーカーが多数避難してきていた。

後に旧アメリカ財界の方針転換により、大部分の人材や機材が、西海岸へ移動したのであるが、想定以上に早かったアメリカ崩壊により、取り残された施設や人材が多数存在していたのである。

進駐してきた、ドイツ軍によって発見、確保された工場の中には、KEN-RADやRCA、GEなどの真空管製造メーカーがあった。
ドイツ本国より、ただちに技術者が派遣され、現地に在留していた旧アメリカ人技師の協力もあり、工場の稼動に成功したのである。
その結果、高品質な真空管の大量生産が可能となり、ドイツのコンピュータ開発に多大な影響を与えることとなる。

テキサス共和国で大量生産された真空管は、優先的に軍需に回されたが、その後広く民生品として出回るようになった。
ラジオや無線、後にTV放送にも使用され、ありとあらゆる電子機器に搭載されたのである。

真空管は、性能はともかく、重く嵩張り、寿命も短いのが常であるが、当然性能向上が図られた。
ドイツの変態技術と旧アメリカの大量生産技術が組み合わさった結果、目覚しい性能向上を遂げ、年を追うごとに、小型省電力、長寿命化を達成し、1940年代にmT管、1950年代にはサブミニチュア管とニュービスタ管の大量生産を開始するのである。

小型化はそれだけでは留まらず、ついには鉛筆の芯先程度(史実フィールディスター相当)までの小型化に成功、さらに小型化に邁進することになるのであるが、ここでは割愛する。

真空管の高性能化を見て、スイッチング素子として真空管を使うことに反対していた、ツーゼも考えを改め、Z4の電気機械式計算機の素子をそっくり真空管に置き換えた計算機を製作した。

後にnZ系として発展派生していく計算機の始祖であり、構造的には完全なデジタルコンピュータであった。
nZ系計算機は、真空管の小型化に合わせるように、性能向上とダウンサイジングを達成し、欧州枢軸のコンピュータのスタンダードとして永く使われることになる。

572 :フォレストン:2013/12/20(金) 10:36:58
あとがき
英国紳士なおいらなので、ゲルマン魂の発露は保障できませんが、いかがでしたでしょうか?

日本はIC、英国はパラメトロンとゴトーペア、ドイツ(欧州枢軸)は超小型真空管と3つ巴になってしまいました。
プログラミング言語も、日本は日本語ベース、英国はAlgol系、ドイツはプランカルキュールなので、多国間でシステム構築するときに、すり合わせが大変なことに…(汗

詳細には描写していませんが、支援SSの時代想定は戦後から1960年くらいです。
いかにゲルマン魂をもってしても、真空管の小型高性能化は、それくらいまでには限界に達するかと思います。
英国はパラメトロンのあとにゴトーペアで多少は凌げるし、将来的には日本からの技術導入も有り得ますが、ドイツはこの後どうするんでしょうねw

ただ、悪いことばかりではなく、ドイツの真空管技術が異常に発達して、大出力管の生産も容易になるでしょう。レーダーのレンジも出力に任せて増大するかもしれません。
他にもブラウン管やら、電子レンジのマグネトロン等もありますし、持っていても損はしないのが真空管技術なわけで。

欧州枢軸内では、真空管が大量生産されているので、真空管アンプ好きには垂涎の環境でしょう。
きっと、イタリア経由で大量に真空管を大人買いする、転生者が絶対にいると思います。
このことを知った、ドイツ側関係者は、日本の真空管技術は遅れていると、誤解をするかもしれませんねw
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最終更新:2014年01月07日 20:59