574 :Monolith兵:2013/12/24(火) 06:52:34
※この作品に出てくる会社、個人は実際の会社、個人とは全く関係ありません。ご了承ください。
※心を広く持ってお読みください。ただ、批判は受け付けます。
その日、高碕達之助は後輩の訪問を受けていた。現在高崎は東洋製罐と東洋鋼鈑の会長と衆議院議員の三足の草鞋を履いており、その生活は多忙を極めていた。更には、経済企画庁長官を勤めており、大宰相もかくやという激務を死ぬ思いでこなしていた。
それはともかく、高崎は後輩である中島董一郎を忙しいからといって追い返すのも忍びなく、自宅へと招き入れた。
家人が茶とお茶請けをテーブルに置いて部屋から立ち去ったのを見計らって、高崎は中島に要件を尋ねた。
「それで?今度はどんな問題を持ち込むんだ?」
「問題なんてとんでももない。ただ、相談したいことがあるだけです。」
高崎がそう切り出したのも仕方が無かった。中島は事あるごとに高崎に相談事といい、問題を持ち込んできていたからだ。とはいえ、それは会社や高崎自身の利益になることも多々あったので、別に嫌とは思っていなかったが。
「ああ、そういえば先日のポリボトルのサンプルですが、かなりいいものでした。あれの量産ができるのでしたら、これからは順次瓶からポリボトルに切り替えていこうと思っています。その時はよろしくお願いします。」
「いや、こちらこそお願いします。」
中島の言葉に高崎は顔を綻ばしてこれからも贔屓にしてくれと答えた。中島はマヨネーズ会社を経営しており、高崎が会長を務める東洋製罐は中島の会社にマヨネーズ容器を収めており、最近製品化の目処がついたポリボトルのサンプルを送っていたのだった。
「それで、本題ですが。最近の食生活の洋風化によりマヨネーズの需要は年々高まっているのですが、マヨネーズは世界に通用する調味料です。将来的には世界に進出したい。それで、今度社名を変えようと思うのですが、それとともにマスコットキャラクターを決めようという話が出てきまして。今日はそれを相談したく参上した次第です。」
それを聞いた高崎は、いよいよこの時が来たかと心の中でひとりごちた。そう、高碕達之助は転生者だった。高碕達之助に転生したと知った彼は生前某缶詰会社に勤務しており、東洋食品工業短期大学の卒業生だった。史実で高碕達之助は缶詰製造の分業化を推し進め食品加工業界の発展に尽力下のみならず、東洋食品工業短期大学や東京水産大学などの、食品加工技術者を養成する教育機関を設立したりするなど、食品加工業界の振興を行っていた。
彼はそんな高崎達之助をいつしか尊敬しており、高碕達之助に転生したと知ったとき、彼は果たして自分に缶詰業界の育ての親になれるのかと不安にもなったが、現在ではそんな不安も無く、史実以上に発展した憂鬱日本で食品加工業界の発展に尽力していた。
「それで、だいたい条件は絞れているんだろ?」
「はい。誰もが知っているものであること 、日本語でも英語でも書けること 、絵で描けることという条件で考えています。ですが、これがなかなかどんなキャラクターにすればいいのか絞れずにいまして・・・。」
「ふむ・・・。それではキューピーではどうだ?ほれ、あの赤ん坊の姿を下キューピー人形だよ。」
高崎は史実通りになるよう答えた。だが、中島の答えは意外なものだった。
「キューピー?ああ、あれですか?あれって
アメリカのものでしょう?勘違いされたら業績に影響が出ますからそれは勘弁してください。」
そう、アメリカ崩壊(というかアメリカ風邪の猛威)はこんな所でも影響を与えていたのである。
「そ、それでは何がある・・・。」
あまりな返答に、さすがの高崎も唖然としてしまった。そう、この瞬間史実のキューピーマヨネーズは無くなってしまったのだ。
「私もそれが思いつかなかったのですが、さすがの先輩でも難しいですか・・・。」
575 :Monolith兵:2013/12/24(火) 06:53:08
予想外の展開に沈黙してしまった高崎に続き、中島もそれに釣られて黙りこくってしまった。爺二人がうーんうーんと頭を悩ませていた所、パタパタと誰かが走る足音がだんだん近づいてきた。そして、麩が開き部屋に入ってきたのは高崎の孫娘だった。
「お爺ちゃん、遊んでー。」
そう言って高崎に近づいてきたのだが、流石に来客中なので追い出そうとした所、中島は「いい、いい。誰しも孫には弱いもんだ。」と孫が同席することを快諾した。高崎はそれを聞いて「ほら、おいで。」とあぐらをかいた膝の上をポンポン叩き、孫は膝の上に座った。
「初孫の、それも孫娘というものは可愛いもんですな。」
「ははは。わしの自慢の孫ですわ。」
二人は先程までの悩みを忘れてしばらく孫談義をしていたが、孫娘が何か手に持っているのに気づいた。
「おや?それは何かな?」
中島は孫が持っている本を指さし尋ねると、「はい。」と孫が本を差し出したのでそれを手に取り読み始めた。本、といったがそれはかなり薄く冊子といったほうがよかった。
「ほう、映画のパンフレットかい。そういえばうちの孫もこれを見たいと言っていたな。って!これだ!?」
「どれどr・・・・・・。」
高崎はどんな映画のパンフレットかと興味を持ち覗き込んだが、絶句した。
「こ、これは・・・!?」
「先輩もそう思いますか!?確かこの映画はかなりヒットしてたはず。それにファミリー層が観るしリピーター率も高いとか。これをマスコットにすれば!?」
「い、いや。これはさすがに・・・。」
「ああ、版権ですか?それは要交渉というところでしょうな。ですが、これだけ世間に知られているのならば、一考の余地がありますわ。」
そう言って、「それでは失礼。」と中島は高崎邸を後にした。後にはうなだれる高崎とそれを不思議そうに見ている孫娘だけが残っていた。
そして、1957年9月食品工業株式会社は社名変更をして、キュゥべえマヨネーズが誕生した。
そう、孫娘の持っていた映画のパンフレットとはまどかマギカのパンフレットだったのである。
おわり
576 :Monolith兵:2013/12/24(火) 06:55:46
前書きにも書きましたが、誰もやろうとしなかったのでやってみた。鉄板ネタなのにね・・・。(´・ω・`)
キューピーがアメリカ生まれだから、憂鬱世界だと避けられるんじゃね?と思ったので書いてみた。後悔も反省もしていない。
転生憑依者は、マヨネーズボトルや社名を見る度に吹き出したりため息をついたりするんだろうな、と思ってる。
さて、食品ネタで支援SSこれからも書いてみたいなーと思ってるけどいいかな?
最終更新:2014年01月07日 21:00