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134. ひゅうが 2011/12/12(月) 18:56:36
※  ネタです。憂鬱世界と平成世界がつながったネタですが、これを最後にしようかと。ちょっと長めです。
      あとTS分はほとんどなしなので一応ご安心を。

――西暦20XX(接触+1)年8月  アメリカ合衆国  ホワイトハウス


「では、報告してくれ。」

合衆国大統領は開会を宣言した。
この場に集まっているのは、大統領府および国防総省の面々に加え、中央情報局と国家安全保障省、それに議会上院の安全保障委員会から特に招かれた議員たちと国直属に近いシンクタンク群の研究官たちだった。

現在、彼らが集っているのはホワイトハウス西館地下にあるただ「会議室」とだけ呼ばれている部屋だ。
かつてキューバ危機の際にはケネディ大統領が地上部分で会議を行ったが、70年代以降の先制核攻撃と相互確証破壊の悪夢の中で、一発ないし数発の核弾頭が炸裂することを考慮に入れた合衆国政府は平時においても即座に地下へ退避し、全米に張り巡らせた地下ケーブル網(のちのインターネット)によって初動指揮をとれるようにこの部屋を建設したのだった。

冷戦が過ぎ去り、そして昨年には新たな敵となるはずだった中華人民共和国が限定核戦争の果てに内乱状態に陥るという国家安全保障にとっては極めて都合のいい状態が訪れたこともあり、これらの施設は現在は「秘密の会合」に使用されている。
というのも、この地下施設は議事堂地下の議会地下鉄などの地下トンネル網と繋がっており、それはペンタゴンなどにも延長されている。
要するに、誰にも予定を告げずに会うにはこれほどの場所はないのだ。

「では、報告いたします。御手許の端末をご覧ください。」

国防総省の担当官がモニターの前に立った。
スクリーンではなく、日本のNHK技研が開発したスーパーハイビジョン・デジタル22・4チャンネルというまだ売りだされたばかりの代物である。

と、画面が変わった。映し出されたのは、観艦式の映像だ。


「まず、向こうの世界の日本帝国海軍の戦力です。確認されているだけで、超大型空母4、軽空母兼用の強襲揚陸艦4、対潜軽空母3と、大型水上戦闘艦12が確認されています。
うち2隻は、『ヤマト』クラスといわれる超大型の『戦艦』です。たび重なる改装によって排水量は9万トンを超えているようで、これに2万トン級の超大型多目的水上戦闘艦『アサマ』クラスが加わっています。いずれも、我々が配備を断念したタイコンデロガ代替型の大型巡洋艦の後継型というべき性能を持っています。
汎用水上戦闘艦は、38隻。詳しくは御手許の資料を参考にどうぞ。現在3タイプが確認できますが、いずれもイージスあるいはアーレイ・バーク級かズムウォルト級に匹敵する性能を持っていると思われます。
特筆すべき点は、ここです――この船体側面のアンテナをご覧ください。これは、アクティブ・ステルスシステム。受けとったレーダー電波に逆位相の電波をぶつけることでレーダー波を相殺し、ノイズキャンセルの要領で電子的に艦を見えなくする代物です。さらにこれ――このノズルのようなものからは、海水を噴霧して赤外線をシーカーから艦を隠し、大型艦の場合は核攻撃による熱線や放射線から艦を守るシステムのようです。」


「つまり、インペリアル・ネイヴィーは全艦がステルス艦かつイージスシステムの発展型を装備。しかも核攻撃からの自己防衛まで可能としているというのか!?」

議員の一人が叫んだ。
135. ひゅうが 2011/12/12(月) 18:57:11
「その通りです。彼らの世界では、地域紛争が冷戦後の我々の世界のように頻発していたために実戦経験の機会が多かったようです。さらに、艦隊は対地攻撃ではなく対艦攻撃を重視しています。ナチスが戦後長きにわたって存続したために、それに対抗する必要上大型の水上戦闘艦を配備することにしたと思われます。さらにはドイツ率いる枢軸欧州との戦争に備え、艦載機やミサイルのステルス化も推進しており、80年代末には現在の水準に達したと思われます。こちらをご覧ください。」

担当官は、映像を動かした。
そこには、艦上から上空に向かって光の筋が延びる冗談のような光景が広がり、まるで第2次大戦中の対空砲火のような曳光弾が空へ伸びている。その速度は異常なほど速い。

「彼らが配備している対ミサイル用戦術レーザーシステムと、57ミリレールガンです。AGS装備の艦も多いですが、順次改装が為されており、防空用ミサイルは大型の対弾道弾・大型機用のものと小型の撃ちっ放し式の二本立てのようです。演習内容は確認しましたところ、780発の対艦ミサイル攻撃の中で弾道弾が数十発飛来するものでした。
現在は彼らの保有する原潜その他を探っていますが、5〜8隻ほどの弾道ミサイル・対地攻撃ミサイル原潜と攻撃型原潜10隻ほど、そして通常動力潜水艦30隻ほどを保有しているということ以外は不明です。また、彼らの第2次大戦後に海空軍共同で保有している超音速ステルス攻撃機――というより戦略爆撃機のようなものですが、これは全部で70〜90機ほど。いずれも1トンの高性能弾道を装備する超音速対艦ミサイル12発の装備が可能です。また、対艦弾道ミサイルの装備も可能だとか。」

「グラニトを空中に上げたようなものか・・・。おまけに中華が開発していたニミッツ殺しをすでに保有している?笑い話にもならんな。」

将官が溜息をつく。

「わが軍は、これらに対抗可能かね?」

大統領が言った。

「無理でしょうな。」

統合参謀本部議長が肩をすくめた。

「核の乱れ打ちをするくらいしか手がありません。全軍勇壮に突撃して死ぬなら何とかなりますが、軍の再建には30年はかかるでしょう。これはあくまでも敵海軍のみを相手にする場合です――おい君。日本帝国空軍と陸軍の戦力は?」

「幸いなことに、数はそう多くありません。それでもB2相当の戦略爆撃機・・・これは先の攻撃機のほぼ同型機ですが、これを150機ほど保有しています。海軍との共同保有機も全面戦争時はこれに加わります。旧式ですが、これに加えて100機ほどの超音速戦略爆撃機もいます。これは我々のYB70『バルキリー』に相当する機体ですが、現在はミサイル母機に改装されているようです。最盛期は200機を数えたとのことですが、向こうでも緊張緩和のため数は削減されたとのこと。これ以外に『フガク』の発展型がありましたが現在は空中給油機として以外は存在してません。
戦闘機は、海軍のそれと同様の『ジンプウ』の改良型が400機ほど。攻撃機としては重装甲の『ライジン』が100機ほどいます。ヘリその他については現在調査中です。
戦闘機以外の爆撃機などは、緊張緩和に伴い半分モスボール状態のものも多い模様です。」

はぁ・・・と全員が溜息をついた。
最初のうちは真っ青になっていたが、これはもう、笑うしかない。

「陸軍は?」

「はぁ。陸軍は、海空軍と違い定数削減の代わりに機械化と装甲化が押し進められたようで、24個師団体制。ほぼ全てが旅団戦闘団のような編成で兵員数は少ないですが、140ミリ砲装備のタイプ61戦車や120ミリ砲装備のタイプ58装輪戦闘車など新装備に富んでいます。どうも向こうの冷戦もどきでは、北米分割線を越えてやってくる敵を迎撃することが目的だったようですが、ソ連軍のような大軍団を送り込むのではなく航空支援下での精鋭部隊による遊撃と一点突破の併用がされると予測されていたために高精度な通信指揮システムを用いて大隊から中隊規模での独立戦闘と効果的な支援を両立させようとしていたようです。早い話が我々が第2次大戦時西部戦線でやったことを中隊規模でやろうとしているわけですな。中隊ごとに対戦車VTOL部隊との回線を確保しているとの情報もあります。
MLRS(多連装ロケットシステム)のような大量殲滅装備こそ少ないですが、その分命中率には病的に拘っているようです。こちらののセルフ・ディフェンス・フォースのように。」

「ジエイタイか。あの病的な錬度は向こうも同じか。確かにWW?の時には1日40キロの進撃を行ったシマダ戦車隊や急降下爆撃で爆弾命中率80パーセントを叩きだしたナグモ・タスクフォースがいたからな・・・」
136. ひゅうが 2011/12/12(月) 18:57:45
「感心していないでくれ将軍。我々は彼らに何とか対抗しなければならないのだ。」

「ですが大統領。これはもう、無理というしかないですよ。我々はM3スチュアートでキングタイガーの群れに突撃するようなものです。ああ、MIGでF22でもいいですが。」

「31か?」

「21です。閣下。ただでさえ我々は財務省紙幣の発行寸前にまで追い詰められているんです。人民元が消え、ユーロがもたつく間に「YEN」が世界通貨に成りかねない勢いなんですから。あのチャイナの対日戦争のさ中に国内向けにだけこっそり債務半不履行なんてやられたのに暴動の一つも起こさないなんて日本って国はどうかしてますよ。
我々があれくらいの装備をそろえるには、少なくともあと20年はかかります。まぁ財政状況が厳しいのは理解していますが。」

大統領は頭を抱えた。
アメリカ議会の突っ込みにより、冷戦後の新装備開発計画はそのことごとくがぽしゃっている。
よしんばうまくいっていたとしても、費用超過が原因で潰されることの繰り返しだ。
まったくうらやましい限りだと向こうを羨望するのも無理はないだろう。


「軍事的オプションは、無謀極まりないということか。では経済的オプションは?」

分かり切った内容だが、大統領は希望にすがる思いでそう訊いた。

「無理ですね。向こうは福建円や満州円に加え、かつての英国植民地経済圏の大半を飲み込んでいます。基軸通貨『円』は強烈ですよ。カリフォルニアドルなんて、日本銀行が交換レート保障をしているからもっているようなものです。
域内に8億人が暮らす巨大経済圏、それに向こうは外圧に屈しません。護送船団は強力ですよ。」

「だが、我々の世界ほどの奇形的な・・・コンピューターの発達はしていまい?」

「はぁ・・・連中はすでに量子コンピューターを実用段階で運用しているんです。下手をすれば向こうが気が変わってこちらの暗号すべてを筒抜けにしていてもおかしくはないでしょう。あの戦争中、人民元レートのギャップが恐ろしいことになったり上海市場が大暴落したのをお忘れですか?」

既に報告は入っていた。あろうことか憂鬱日本にサイバー攻撃をやらかした人民解○軍の一部は、報復として辻一派によってさんざんに富をむしり取られていたのだった。
ちなみに平成日本の財政赤字補填に大部分が回されている。

「・・・どうしろというのだ。軍事的、経済的圧力は通じない。政治的圧力は向こうのロング政権が張学良と組んでシャンハイでやらかしたおかげで通じない。
おまけに今の宰相は、あの対米戦を指揮し、戦後世界秩序を構築したという政治的怪物だぞ?おまけにハイスクールガールになってる。」

「大統領。ここは、新たなゲストを迎え入れるようにするべきかと。かつてペリー提督をはじめ、欧米の人間は日本人にそうされたために好印象を抱くに至ったとか。
我々フロンティアスピリットあふれるアメリカ人は、インディアン相手に犯した間違いをここで繰り返すわけにはいきません。」

詭弁だな。と大統領は思いながら頷いた。

「そうだな。まずは友好関係の構築だ。幸い、あの国の宰相はアニメーションのヒロインのような外見だ。第2次大戦の記憶を持つ者も少ない。ここは大々的に友好関係のキャンペーンを打ち出して流れを作ってしまうべきだろう。茶会の連中にはジャパニメーションのファンも多いのだろう?」

「はい。それはもう。」

「結構。それに、我が愛しい同盟国も引き込めば向こうとて無視はできまい?今代のエンペラー陛下の快気祝いも兼ねて、ひとつ盛大に行こうじゃないか。」

――こうして、アメリカ合衆国の方針は決した。
137. ひゅうが 2011/12/12(月) 19:01:52
【あとがき】
>>134-136
米軍の分析のようなものです。ですが米軍らしくかなり過大評価しているのはお約束ですw実際はかなり数が少ないことでしょう。
                また、憂鬱日本側もたぶん米軍の異常な数に頭を抱えていることでしょう。「ニミッツ級10隻とか死ねる」といった感じでw

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最終更新:2025年03月14日 20:00