79 :第三帝国:2013/11/30(土) 17:38:20

衝号ぬきの太平洋戦争~第12章「艦隊決戦」

戦闘はまず空ではじまった。
アメリカ側は自身の不利を知っていたので出せるだけの観測機を上げて、
照明弾を投下するつもりであったが、夜間戦闘機使用の『烈風』に阻まれ落とされるか逃げ回るかの選択を強要された。

夜間に空中戦をこなすクレイジーな光景に愕然とするアメリカ軍であったが、驚愕はまだ終わらない。
水上でも電探を有する日本がやはり先手を打ち、距離2万で戦艦『長門』『陸奥』『伊吹』『鞍馬』の4艦が一斉に砲撃を浴びせてきた。
夜間でしかも距離2万となると光学標準のみなら誤差が大きく、命中どころか挟叉に至るまで酷く時間がかかるだろうが、

だがこの世界では電探と連動させた射撃管制システムに、
トランジスタが実用化されたため実現された自動射撃管制装置等により、初弾で挟叉というとんでもない成績を出した。

(※参考43話:トランジスタの開発によって電子機器の小型化に成功した海軍は射撃システムそのものの自動化を進めていた。)

おまけに発射速度も自動化されているお陰で今までのよりも早く、立ちあがる水柱がアメリカ艦隊を包んだ。
だが、覚悟を決めたキンメル提督は直ちに全艦ジグザグに航行して接近を図るように命じた。

これによりある程度回避することに成功したが既に観測機にまで観測されていたため、
丁字に押さえられていたこともあり先頭を走っていた『サウスダコダ』に砲撃が集中してスクラップへと変化してゆく。
何せ戦艦12、重巡洋艦10からの砲火を一身に受けているのでしかたがないことであった。

そして1万5000で何とか照明弾を落とすことに成功した味方の観測機のお陰で、
その全容を捉え、さらにサーチライトで旗艦『長門』を照らして砲撃を開始、同航戦に持ち込むべく進路を変更した。
しかし、サーチライトを照らしたことで日本側の射撃精度がより向上して『サウスダコダ』は大破炎上しつつあり、

おまけに日本側は足が速く、同航戦などせずそのまま頭を押さえて殲滅するつもりであった。
だが夜間照明弾で海面が照らされ、サーチライトで相手を捉えたことで『長門』に2発の命中弾を得ることに成功。

80 :第三帝国:2013/11/30(土) 17:39:03

1発は煙突付近に着弾、速度が低下しマストをなぎ倒したせいで通信が一時的に不能に。
2発目は艦尾の非装甲区画を突き破りスクリューと舵に損傷を与えて艦の進路がアメリカ側に寄るような形になった。

継続する艦は『長門』の異常に気付かぬまま自然と同航戦へと移行してしまう。
気付いた時は遅く、アメリカにとって待ち望んだ至近距離での殴り合いをする羽目になった。
もっともその状況を作った『サウスダコダ』は大破漂流で脱落してしまい、後を残りの9隻に託した。

一方、日本側の水雷戦隊の戦いが味方の戦艦の砲撃に合わせて開幕を告げた。
ギリギリまで砲撃を禁止して密かに接近を図る日本側であったが、距離9500でアメリカの補助艦艇群に発見されお互い激しい砲火を交わす。
立ち上る水柱が艦橋を濡らし、打ち上げられる星弾、硝煙の香りで怯むどころかこれぞ夜戦とばかりに士気は高揚し、
『艦隊のアイドル、那珂ちゃんだよー』『ギッタギッタにしてあげましょうかねぇ~~!!』『雷ちゃんと電ちゃんのおしっこだあああ!!』と咆哮する。

数で日本側が圧倒し、電探統制射撃に対空射撃も想定しているため各駆逐艦、
巡洋艦の主砲の発射速度も早く火力の面でアメリカ側を押していた。

それだけでなく重雷装艦のスーパー北上さまこと『北上』に『大井』、第1水雷戦隊から放たれる予定の128本もの酸素魚雷。
他にも第2艦隊所属の第3、第4水雷戦隊、各防空戦隊から放たれる魚雷を数えれば実に250本近くになる。
アメリカに不幸であったのは目視だけでなく電探で連動して狙う上に半数が誘導魚雷と実に不運としか言いようがなかった。

が、それでもアメリカ海軍は奮闘し、接近している事もあり日本側に多数の被弾を受ける。
特に第2防空戦隊の旗艦『神通』には火災が発生したせいで砲火が集中し大破、指揮権を次艦の駆逐艦『雪風』に譲渡。
『三隈』には艦橋に20サンチ砲弾が飛び込み艦長以下艦橋要員が全滅してしばらく迷走することになる。
だが、そうした損害を前提に至近距離から魚雷を放つことのみを海軍人生の全てを掛けて来た男たちは、距離6000で斉射。

接近したさいと同様に全力で反転し、特型駆逐艦では魚雷の再装填を急がせる。
そしてタイマーを手にした水雷長の「じかーん!」という潮風でしわがれた声が響くと閃光が闇を照らした。
連続して轟音と水柱が上がり、アメリカの重巡洋艦、駆逐艦で構成された23隻の艦隊は全滅に等しい被害を被った。

『史実』のように酸素魚雷の遠距離からの雷撃にこだわるあまり、
信管の不調による早爆に、遠距離ゆえの命中率の低さなどを戦訓にした至近距離から雷撃に耐えられる艦はなかった。

だが、流石ダメコンの本家アメリカというべきか艦首を砲塔ごと吹き飛ばされても浮かぶ重巡洋『シカゴ』など、
生存する艦船が存在していたが、例え轟沈しなくても誘導魚雷で舵やスクリューを破壊された艦がかなりの数にのぼり、もはや戦闘力を喪失したのと同意義であった。

対する戦艦同士の殴り合いでは、やや違った光景が見られた。
戦艦12対9で日本側が有利であったが1万5000以下の距離で殴り合う羽目になった上に、
アメリカ側が全力で星弾を放ち、夜間を昼間のごとく照らしているので電探がなくても奮闘できた。
脱落した戦艦『サウスダコダ』の代わりに戦艦『コロラド』が陣頭指揮に当たり、再度サーチライトを『長門』に照射させる。

81 :第三帝国:2013/11/30(土) 17:39:56

そのお陰で『コロラド』自身の4発、さらに残り8隻の戦艦群からの集中砲火を浴びた『長門』が大破脱落。
爆沈しなかったのは、2番砲塔の天蓋をたたき割られてたが直ぐに主砲弾薬庫に注水を行ったためである。
しかし、損害は大きく傾斜し、黒煙をたなびかせてあちこちから炎を噴き出す酷い有様であった。

指揮権を次艦の戦艦『陸奥』に譲渡とすると『陸奥』は姉の仇とばかりに直ちに報復の一撃を加える。
相手は、戦艦『コロラド』で対14インチ程度の防御しかなく、しかもこの時距離が近かったせいで3斉射で大破。
SHS(スーパーヘビーシェル)に相当する砲弾を日本側が採用していたため更に一撃を受けて速度を落として脱落する。

このころになる各艦がそれぞれの艦に狙いをつけるようになり、
さらに『ウェストバージニア』『メリーランド』も同じ16インチ砲ながらも、
新鋭戦艦である『伊吹』『鞍馬』の猛射を受けて被害を拡大させる。

『伊吹』型は16インチ三連装砲2基6門を前部に集中配備した特異な艦で、
1万5千~1万8千においては米戦艦の装甲を十分に貫通することができる能力を持っていた。
それでもお互い16インチ砲と言う事もあり日本側も『伊吹』の1番砲塔が破壊され、火力が減少など相応に被害を受ける。
だが新鋭戦艦なだけに防御力は高く『伊勢』『日向』のみならず『陸奥』が主砲を向け出すとアメリカの旧式戦艦は苦戦を余儀なくされる。

『扶桑』『山城』『金剛』『比叡』と戦っている、
『テネシー』『ニューメキシコ』『アイダホ』『ミシシッピ』も押され気味、
というよりもスクラップにされつつも何とか『扶桑』『山城』に命中弾を与えて中破判定の被害を与えることに成功した。

『霧島』『榛名』を相手にする『ニューヨーク』『テキサス』はもはや奇跡とかしか言いようがない善戦で。
『ニューヨーク』は大破しつつも『霧島』の艦橋を損傷させ大破、電気系統の故障で射撃不能となり『霧島』は大破漂流。
が、怒りに燃える『榛名』の電探射撃を受けて沈黙を余儀なくされ、『テキサス』は何とか命中弾を浴びせてお互い中破に持ち込むが先に根負けするのは『テキサス』であろう。

82 :第三帝国:2013/11/30(土) 17:41:14

アメリカ側の被害は、

『サウスダコダ』『コロラド』『ニューヨーク』の大破
『ウェストバージニア』『メリーランド』『テキサス』
『テネシー』『ニューメキシコ』『アイダホ』『ミシシッピ』の中破

日本側の被害は、

『長門』『霧島』の大破、
『伊吹』『扶桑』『山城』『榛名』の中破

等とキルレシオは日本側に有利だが当初の楽観的な予想を覆すものであり、合衆国海軍の意地を知る羽目になった。。
しかし、日本側の重巡洋艦からの砲撃でアメリカの戦艦群は装甲こそ貫通されないが非装甲区画が続々と破られてゆく。
副砲で『鳥海』『古鷹』『那智』を中破に追い込むなどするが、重巡洋艦10隻からの砲撃でジリジリと削られる。

主導権は日本側にあったが、このままだと唯でさえ少ない戦艦にさらに被害を拡大するのでは?
そう焦りを生みだし、どうすべきか判断に迷ったがここで乱入者、水雷戦隊が現れる。

「天佑、今まさに我らにあり。全艦突撃せよ!」

第1水雷戦隊の司令官、木村昌福の命令の下、第3、第4の再装填を済ませた特型駆逐艦と防空戦隊、重雷装艦が砲火の中を突撃。
戦艦との殴り合いに集中していたアメリカ側が気付いた時は遅く、慌て副砲を放つがどの艦も損傷が激しかったせいでその数も少ない。

逆に夢にまで見た戦艦への雷撃に心を躍らせた水雷屋たちは6000どころか距離5000で一斉に雷撃を敢行。
150本近い雷撃の結果、全艦轟沈、全艦全滅という後々まで語り継がれることになる光景が演出された。

残るは早期に脱落した『サウスダコダ』と『コロラド』のみとなり、あらゆる火器が集中する。
駆逐艦の主砲からすら撃たれる中、辛うじて発砲可能な主砲で反撃し『サウスダコダ』の砲弾が戦艦『伊吹』の残った砲塔を破壊させ大破に追い込む。

さらに、『コロラド』と共同で『陸奥』にも中破判定の被害を与えることに成功したがそれまであった。
大小無数の命中弾で『コロラド』の電気系統が完全に停止し砲火を浴びつつゆっくりと転覆して沈没。
『サウスダコダ』は元々大破していたが、3番砲塔の主砲弾薬庫が水中弾となった一発で引火、大爆発。

誰もが終わりを悟ったのか刹那、戦場で砲火が止む。
そしてここまで奮闘した敵旗艦の最後を見ようと固唾をのんで見守る。
『サウスダコダ』は何度も爆発を繰り返し、軋む艦首をゆっくりとを持ち上げてゆく。
やがて90度近くも持ち上がった『サウスダコダ』は静かに海に沈んだ。

そして、ここにミッドウェー海戦が終了した。


次話:第13章「終結、MI作戦」目次

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最終更新:2014年03月23日 14:07