632 :第三帝国:2013/12/11(水) 22:58:08

衝号ぬきの太平洋戦争~第15章「次の一手へ」

1943年2月、日本は三式弾道弾の開発についに成功。
開発に関わった大田一大尉などは自らの名が歴史に残った事に歓喜する一方で、
夢幻会上層部ではアラスカ侵攻作戦である『星一号作戦』に間に合うことに安堵した。

また、さらに夢幻会の面々が安堵させたのは、
ソビエトの煽りで俄かに元気になった国民党と共産党が暴れ回り、
主たる主導者がコミンテルンの陰謀で暗殺され、尻に火がついた中華民国との講和条約が正式に結ばれたことだ。

アメリカはこの裏切り行為に猛抗議したが、
中華側からは支援要求と逆に海軍が壊滅された不甲斐なさを責める始末であった。
なお、条約では領土こそあまり取らなかったが、資源の無償提供と賠償金を強く要求するものになった。

もっとも、夢幻会の見解として余裕が出てかつ日本が不利になれば、
いけしゃあしゃと米国と共に東洋鬼と戦った戦勝国と成るべく動くだろうと予想しており、油断は許されない。

戦争資源の輸入と生産も順調であった。
資源を運ぶ船舶は1800万トンと史実約650万トンと比較すれば余裕があり、
本土では史実の電気不足は黒部ダムの建造で解消され、全国の工場は24時間体制で生産中である。

(参考本編13話:彼らの努力の結果、黒部ダムと関連の水力発電施設は無事に建設され電力不足は大幅に解消。)

開戦直後はアジアに配備された米潜水艦の通商破壊の脅威に曝されたが、
前話で語ったように元々魚雷に不備があった上、魚雷保管庫が空襲で吹き飛んだせいでその活動は低調。

駄目押しに大陸の拠点であった青島の降伏に、
フィリピンの攻略で米潜水艦が拠点とすべき場所は一気にハワイとダッチハーバーまで後退。
史実ではオーストラリアやソロモンからの出撃はこの世界においては英国が中立を保っているせいで使えず通商破壊の効率は著しく悪化、
おまけに『霧島』が潜水艦に沈められて以来、

『ヒャッハー!米帝の潜水艦は消毒だー!』
『潜水艦……駆逐してやる!この世から……一隻残らず!』
『我らは皇国の代理人。神罰の地上代行者。我らが使命は、
 我が皇国に逆らう潜水艦を、その肉の最後の一片までも絶滅すること。Amen!』

等とモヒ艦、駆逐系駆逐艦、
ならびに代行者化した駆逐艦、護衛艦が嬉々と潜水艦を狩っているせいで損害が増すばかりだ。

あまりの損害にサブマリナー達は自ら拷問器具である『鉄の処女(アイアンメイデン)』
あるいは『鉄の棺桶』と自嘲する有様で、爆発しない魚雷と合わさって士気は低下するばかりである。

対する日本の深淵に潜む灰色狼達は元気いっぱいに働いていた。
MI作戦後、主力艦隊が一度整備補給のために後退すると最前線で戦うのは彼らと成り、
潜水艦を支援する特設巡洋艦、潜水母艦は空いたミッドウェーの哨戒圏に入り更にハワイ=西海岸の航路の破壊に従事した。

しばらくするとミニ機動部隊ともいえる遊撃戦隊(軽空母1重巡洋艦1駆逐艦16)が2個支援に回ると、撃沈トン数は一気に上昇。
アメリカの主力艦の消滅と本土への撤退などあり、1月は約70万を数えて海運業者と海軍、陸軍の輸送部門の頭を禿げさせる。
パラミラ、ジョンストン島が攻略されるとハワイには盛んに機雷が投下され、それによる被害も相次いだだけにとどまらず、
魚雷を抱いた陸攻による船団への襲撃も相次いで行われ、被害は拡大するばかりであった。

633 :第三帝国:2013/12/11(水) 22:58:54

何せ、日本として最終的にハワイに船団が向かう事を知っていた上に、
暗号はトランジスタの実用化で幾ら変えても直ぐに解読するのだから航路は秘匿しても直ぐに見破った。

とはいえ、対応能力と学習意欲の高いアメリカが指を加えて黙っているはずもなく。
船団が戦闘機の行動範囲内なら可能な限りエアカバーを提供、船団に先行して対潜部隊による哨戒活動。
と出来る限りの手を打ち続けており、主力艦こそ壊滅したが未だそうした補助艦艇群は馬鹿みたいな数で存在している。
哨戒機も本土やハワイから頻繁に飛来するため、電探のお陰で事前に探知して逃げることは可能だが、
日本側として日中の潜水艦の襲撃には細心の注意を払う必要が出てきていた。

おまけに毎週、あるいは日ごとに護衛空母、
護衛艦が完成すると直ぐに予備将校が艦長となり船団護衛に従事を開始しており、
その数は日ごとに増しており、幾らこの世界の潜水艦として隔絶した性能を誇る呂号と言えども頭の問題だった。

一度船団に『カサブランカ』級護衛空母を5隻、
さらに防空巡洋艦である『アトランタ級』軽巡洋艦を1隻配備と実に贅沢な護衛をつけた。
護衛空母には載せれるだけの『F6F』戦闘機を無理やり載せて、輸送船にはハリネズミのごとく対空火器を満載。

最新鋭のレーダーもあったため、襲来してきた遊撃戦隊の艦載機による攻撃を何とか凌ぐと逆襲に移行。
『B24』等の長距離爆撃機によるハワイからの援護も受け軽空母『瑞鳳』の大破に成功するなどの戦果を上げることに成功した。

日本側として相手に陸攻のような長距離雷撃機がなく、
艦載機の大半は戦闘機に爆装したものだったのと、夢幻会主導でダメコンに口うるさく指導していたお陰でなんとか撃沈されずに済んだ。

しかし、より問題として捉えていたのは、
アメリカもまた被害局限戦法としてロケット弾を搭載した『F6F』が駆逐艦を制圧、
しかる後に雷撃機が空母にめがけて突撃する戦法を採用していたことだ、明らかに彼らは自分達のやり方を見て戦訓としていた。
これがもし正規空母が10隻単位で殴り合う大海戦だった場合のことを考えると、関係者の背筋に冷たい汗が流れた。

もっとも、航空機が飛べない夜間のその日の内に呂号潜水艦の集団襲撃が行われ、
船団は無茶苦茶にかき回されて、翌日にはミッドウェーから前進してきた第3機動戦隊(戦艦2空母2巡洋4)が全力で襲撃。
退くことを知らない男である角田栄治は2派の空襲、さらに夜間には艦隊ごと殴りこんで来たせいで船団は壊滅。
バラバラになった所をさらに灰色狼たちが襲いかかり文字通り壊滅的な被害を被った。

なお第3機動戦隊が最前線にいたのは、
日本側は無理を承知で常に1~2個機動戦隊を最前線に貼り付かせて、ローテーションを組んでいたためである。
当然ながら補給の問題で後方の嶋田繁太郎ならびに後方官僚はアラスカ侵攻の準備と合わさってデスマーチの日々が続いていた。

だが、それより前に次の一手。
すなわちパナマ運河ならびに西海岸への襲撃で兵力の誘因とアメリカの戦争経済に打撃を与える作戦を春に控えていた。

『Z号作戦』と命名されたその作戦概要は海運の一大拠点であるパナマ運河を破壊し、
東西海岸の兵力の移動を妨げると同時に西海岸への空襲、通商破壊でアメリカの兵力を西海岸への誘因するものである。

1943年:3月下旬~5月『Z号作戦』

そして、夏に本命のアラスカ侵攻である『星一号作戦』を発動。
可能ならば秋には三式弾道弾を五大湖へ撃ち込み、アメリカを脅迫する予定だ。

1943年:7月~9月『星一号作戦』

それでもなお、屈しない。
というよりロング大統領が日本が無条件降伏するその日まで屈しない。
と宣言したため、もはや北米に『富嶽』による核のキノコ雲を昇らせる他にないと夢幻会の面々は考えていた。


次話:第16章「発動、Z号作戦」目次

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最終更新:2014年01月23日 11:33