128 :第三帝国:2013/12/22(日) 22:44:07

衝号ぬきの太平洋戦争~第17章「終わりの始まり」

『Z号作戦』でアメリカが被った被害は甚大であった。
海運の要所であるパナマ運河が破壊され、東西間の戦略機動が潰えてしまい、
カリフォルニアの製油所が破壊されたせいで数カ月は燃料の供給計画に支障をきたした。

海軍はミッドウェーに続いてまたもや損害を受けて早速ドックでは大破、
中破艦が入り24時間体制で突貫修理をしていたが、最低夏か秋にならなければ既存の艦は復帰出来ないほどだ。

エセックス級空母『エセックス』は魚雷4爆弾3が命中して沈んでも可笑しくない被害を受けたが、
機関室に人が残っていたが容赦なく注水を行い、 艦内の水兵が溺死する程炎上による消火活動をしたお陰で何とか帰還できた。
もっとも、このせいで死傷者1000をこの艦だけで数えるほどの甚大な被害を受けてしまい、練度がさらに低下した。

おまけに空母13でパナマに襲うだけにとどまらず
日本海軍の総力を挙げて短期間だが通商破壊に従事したせいで船舶の損失はこれまでの比ではない。

大型船団が相次いで本当に全滅するような悲劇かあちこちで発生し、
護衛がいても、数百機の航空機による波状攻撃に対抗できるはずもなく護衛共々海に沈む他なかった。
一連の攻勢で120万トンもの船舶が沈み、護衛艦、護衛空母もカウントすると人的損害は想像を絶する。

アメリカの月々の船舶生産高がまだ50~60万トン程度でしかないせいで、保有船舶数は大幅に減少。
そのせいで西海岸での航行は市民のパニックもあって一時的に自粛せざる負えなく、護衛の艦船も幾ら日刊、週刊で完成するとはいえ、
一か月は所詮4~5週間程度の月日しかなく、日刊護衛艦なら30隻、週刊護衛空母で4~5隻しか建造できず。
正規艦隊が丸ごと殴りかかってきたせいでしばらく護衛の補充が追い付かない、何もかもが日本側の数の暴力のせいだ。

結果、十分な護衛がつけられず、規模が縮小した船団は日本の呂号潜水艦エース達の点数を稼ぐ結果になる。
ハワイへの補給もいよいよ駆逐艦による高速輸送(ワシントン急行)と、4発機の空輸に頼るほかなかった。

が、日本側は負担を承知でローテーションを組んで軽空母で編成した遊撃戦隊か、
場合によっては機動戦隊を前線に貼り付け、西海岸=ハワイ間の長大な空間を利用して積極的に通商破壊に従事させていた。

駆逐艦は潜水艦の攻撃を躱すことはできたが、
数百キロの速度で突っこんで来る航空機の前ではその足の速さを以てしても的にすぎない。
お陰さまで艦隊型駆逐艦までもが激しい消耗戦を強いられ、水兵の質的低下に歯止めがかからない悪夢の連鎖に囚われた。
アーレイ・バーク大佐のように無傷で物資を届ける事ができたのは例外中の例外で、大抵は損害を受けた。

4発機の空輸も直線距離を以ても、それこそB29のような何れ来る新型機でも殆ど片道空路である。
ハワイに降りた後に燃料の補給を受けて再度本土へ戻る必要があるのだが、その航空燃料の補給も本土からの船舶が減少したせいで、制限を加えるほかない。
ミッドウェーから飛来する日本の爆撃機は機雷だけでなく滑走路にたびたび100式地中貫通弾を投下するため、航空機の運用も支障をきたしていた。
ついでに、航空機の空輸もアメリカの総力を挙げて行っていても船舶と比較すれば運べる量は少なく、効率が非常に悪いことをここに記す。

129 :第三帝国:2013/12/22(日) 22:44:43

それでもなお、合衆国の領土を守らなければいかず消耗を承知で補給と増援を送り続けた。
同時に西海岸では住民の疎開と、上陸に備えて20~30個師団にも及ぶ兵力が配置された。
パナマ運河が破壊され、保有船舶を大幅に減少したため俄かに国内の鉄道網を強化し東海岸で建造した艦船のパーツを、
鉄道で運んで西海岸で組み立てるなど荒技までやってのけたが、効率が低い事には変わらず経済的にも悪影響を与えて続けている。

パナマ運河が破壊されたので態々南米大陸の最南端であるホーン岬を経由するルートで西海岸に船舶を送っていたが、
カナリア諸島から移動し今度は南極の入り江や泊地で特設巡洋艦から支援を受けた潜水艦が襲いかかって来た。
本土から交代でやってきた部隊も合わせて過酷な任務であったが、それ以上に堂々たる戦果を挙げロングの頭を禿げさせた。

なお南極に軍備?と首を傾げるだろうが史実において南極における軍備制限を課した南極条約は1957年である。
また、カナリア諸島でバイオ厨に廃墟マニアが結託してそれっぽくダミー工作を仕掛けたことも合わさって、戦後奇妙な伝説が生まれることになる。
他にも危険を承知で南極に訪れた学者が戦争中にも関わらず数々の学術的な発見をするなど副産物を生んだ。

そして、アメリカは生産リソースをひたすら造船に振り分けたが、戦艦に空母と言った大物は流石のアメリカでも年単位の時間がかかる。
しかも現状の海軍戦力では兵力では奇跡でも起こらない限り対抗は不可能だと先の海戦で改めて思いしらされ、結果現存艦隊主義に走らせた。

アメリカ戦艦完成予定
『ニュージャージ』:1943年5月
『ミズーリ』   :1943年6月
『ウィスコンシン』:1943年末~44年
『イリノイ』   :1945年末~46年中旬
『ケンタッキー』 :1945年末~46年中旬

モンタナ級戦艦完成予定
『モンタナ』     :44年末~45年中旬
『オハイオ』     :44年末~45年中旬
『メイン』      :45年~46年
『ニューハンプシャー』:46年~47年
『ルイジアナ』    :46年~47年

エセックス級空母完成予定
『ホーネット』   :43年5月
『イントレピッド』 :43年8月
『フランクリン』  :43年11月
『バンガーヒル』  :43年11月
『ワスプⅡ』    :44年1月
『ハンコック』   :44年1月

インディペンデンス級軽空母完成予定
『カウペンス』    :1943年5月
『モンテレー』    :1943年6月
『ラングレーⅡ』   :1943年7月
『カボット』     :1943年8月
『バターン』     :1943年11月
『サン・ジャシント』 :1943年11月

130 :第三帝国:2013/12/22(日) 22:45:23

5月時点で西海岸に配備された艦船

戦艦
『アラバマ』『マサセッチュー』

修理中
戦艦
『ワシントン』
『アイオワ』

空母
『エセックス』
『ヨークタウンⅡ』
『エンタープライズ』

5月で戦艦『ニュージャージ』、空母『ホーネット』が完成されるが、
訓練に最低3カ月は欲しい所である上に、こうした大型艦船が建造できるのは東海岸だけで西海岸への移動にも時間がとられる。
完成次第、あらゆる艦船に船舶を西海岸に送り出しているが、南極に拠点をおいた潜水艦の餌食になる船が相次いでおり頭が痛い問題であった。
可能な限り護衛をつけていたが戦艦『ニュージャージ』がホーン岬を経由中被雷し稚拙なダメコンのせいで沈没するなど被害を被った。

翻って日本は大鳳型空母の2番艦『白鳳』が艦隊の損害が想定より少ないため建造が再開され44年中旬~44年末に完成する。
祥鳳型空母は43年中に3~4隻が完成する予定で、より小型の大鷹型はさらに3~5隻完成する予定である。
その他改装空母も3~4隻完成する予定で、43年で軽空母だけだが合計9~13隻もの空母が海に浮かぶ計算だ。

(参考本編32話:史実米軍の月刊正規空母とまではいかないが、月刊軽空母くらいにはなるだろう)
(参考本編32話:和製コロッサス級を目指した軽空母とは言え、排水量が18200tもある祥鳳型を8隻同時建造。
 史実日本の貧弱な生産力を知る人間からすれば十分に驚嘆すべきところなんだが)

富士型超甲巡も追加で今年から2隻の建造が開始され、44年中旬~45年に完成する予定であった。
戦艦派としては夢の大和型戦艦の建造をして欲しかったが今は空母優先で、代わりに超甲巡が建造されるが一同は血涙を流した。

43年の完成予定
空母
祥鳳型 :3~4隻
大鷹型 :3~5隻
改装空母:3~4隻

合計9~13隻

131 :第三帝国:2013/12/22(日) 22:46:03

なお蛇足だが、ホーン岬はホーン岬海流が流れおまけに悪天候になることが多く古来より難所として知られている。
そのせいで海上は荒れている上に悪天候のせいで航空機も飛ばせない日が多く、海中は海流のお陰で無音潜航で接近可能で、
アクティブ・ソナーの精度も落ちる等、潜水艦にとって実に有利な条件が揃っている事を記す。

以上を総括すれば、アメリカは西海岸を荒らされた時点で本気でハワイか西海岸に日本軍が上陸してくることを覚悟していた。
20~30個師団にも及ぶ陸軍だけでなく州兵も動員され、海岸と言う海岸では俄かに無数のトーチカと数千キロに及ぶ鉄条網が設置された。
統合参謀本部ではこれまでの日本の傾向から夏~秋に再度攻勢を仕掛けてくる事が予想されており、それに備えて努力を重ねている。

そして、兵力配分リソースは西海岸へ集中し、アラスカはおざなりにされた。
無論アリューシャン諸島を中心に航空機や艦船による小競り合いが開戦以来続いていたので、決して手を抜いたわけでない。
が、重点が西海岸により集中したため、本来受け取れるはずの兵力が減少したことは事実で西海岸への兵力誘因といった日本の狙いは当たった。

そして、4月末の『Z号作戦』以降はお互い主力艦隊の整備に集中する一方で、
潜水艦を中心とした通商破壊を強化し、対するアメリカも正規艦隊が西海岸を荒らした影響で仕える駒が大幅に減少し、
苦しい戦いを強いられたがそれでもなお、戦い続けておりアメリカがミッドウェー以来大損害を受けているにも関わらず戦い続ける姿勢に諸外国は恐怖を覚えた。
同じく日本の規格外な善戦っぷりにもうすら寒さを覚え、お互いの戦力の大きさからイギリスではもはやロイヤルネイビーが田舎海軍に堕落したことを自覚し、

ドイツでは18隻もの戦艦を失ってもなお回復可能なアメリカにレーダーは羨ましげな眼で見つめ、
デーニッツは日本が仕掛けている通商破壊こそが、自分が理想としていたものだったので現状を鑑みて思わず嫉妬すら覚えた。

ソ連の独裁者はアメリカは建国2度目の本土決戦を迎えるだろうと予想したが、
それより制空権がドイツ有利なせいで『ヒャッハー!アカは消毒だー!』とハッスルするルーデルの対策に頭を悩ました。

そして誰もが日米の戦いを注視する中、
1943年8月16日、日米開戦から一年目にしてついに『星一号作戦』を日本は発動した。

終わりの始まりである。

次話:第18章「星一号作戦」目次

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最終更新:2014年01月23日 11:32