666 :第三帝国:2014/01/08(水) 22:38:23

衝号ぬきの太平洋戦争~第18章「星一号作戦」

春の攻勢からのお互い艦隊の整備に明け暮れていたが、
夏が近づくにつれて俄かに日本が発する軍用暗号通信の量が増加しているのをアメリカは掴む。
さらに、物資の流れや一般公開情報を照らし合わせると、間違いなく日本は再度の攻勢をたくらんでいるのが判明。

他にもアリューシャン列島のダッチハーバーから出撃したガトー級潜水艦が急激に増大した対潜部隊に次々と狩られ、
これまで辺境であったはずの北太平洋では続々と艦艇が集結しつつあるのを偵察や無線傍受で確認された。

ウェークやトラック諸島ではなく本土の横須賀に主力艦艇群が補給を受け、
彼らの本土近海であの恐るべき空母機動部隊が頻繁に演習しており、北海道では陸軍の上陸演習が行われるなど、
どの要素から見ても日本の歴史上初の空前の規模となる渡洋作戦が近いことを伝えていた。

当然ながらアメリカはパニックに陥った。
そして今度こそハワイへ上陸してくるとする意見があれば、
いや西海岸だ前に攻撃を受けたではないか?と政府、軍、議会で百家争鳴の大論争を引き起こした。
大方の識者の見解としては前のように艦隊丸ごと通商破壊に従事しアメリカの継戦能力を奪うつもりであると考えた。

何せ船さえ沈めてしまえば自分たちは海の向こうの弧状列島へ進撃どころか、ハワイへの補給すらままならなくなる。
それにこれならば安易に市民に厭戦感情をまき散らすことが可能で、自分達が根をあげて講和条約を締結させるつもりであると推測した。

もし侵攻するとしたら距離と戦力的にハワイが適切であろう、何せ西海岸は20~30個師団が密集しており、
攻守三倍の法則を信じるならば日本側は60~90個師団も用意せねばならず、それだけの師団を一度に運べる船舶量など存在しない。
しかし、どんな意見であろうが現状ではアメリカは常に受身で甘んずるほかなし、ということに関してはあらゆる所属組織で一致した認識であった。

そもそも陸軍はともかく海軍は人的にも組織として維持するに手一杯なため、
ひたすら沿岸部からの陸軍の援護の下、艦隊温存に勤めるほかなく、戦争の主導権は明らかに日本側にあった。

8月16日、開幕を告げたのは世界最大にして最強の機動部隊からの攻撃であった。
嶋田繁太郎がラジオとテレビで述べた『アメリカへ開戦一周年記念日への贈り物』はダッチハーバーに送られた。
現地では200機の戦爆連合が待機し、レーダーで的確な迎撃を実施したが日本側の方が数がはるかに多い上に、
最高時速726kmのターボプロップエンジン搭載の『烈風改』に『F4U』『P38』は性能差でも押し切られてしまう。

667 :第三帝国:2014/01/08(水) 22:39:04

2派にわたる空襲でダッチハーバーは壊滅。
夜になると今度は戦艦郡による激しい艦砲射撃を浴びせ、基地としての機能は極限まで低下、翌朝には再度空襲と艦砲射撃の支援下で歩兵2個師団が上陸した。
アメリカ側も可能な限り準備していたため激しい戦闘が展開されたが、陸軍の優先配備は西海岸であったせいで抵抗は2週間で収束。
『星一号作戦』の第一段階であるアリューシャン列島の占領は無事成功した。

なお、『大鷹』型空母を除けばほぼすべての空母の戦闘機が『烈風』から『烈風改』に換装されている。
おまけに目標の未来位置を計算し、見越角を自動的に加えるジャイロ式照準器の装備の配布を開始したため、撃墜率はさらに伸びている。
そして、『星一号作戦』に参加した艦船は以下のとおりだ。

戦艦
『長門』
『伊勢』『日向』
『扶桑』『山城』
『鞍馬』『伊吹』
『金剛』『榛名』『比叡』

超甲巡
『富士』『新高』

空母
『隼鷹』『飛鷹』
『翔鶴』『瑞鶴』
『天城』『赤城』
『蒼龍』『飛龍』
『大鳳』
『紅鳳』『海鳳』『瑞鳳』『祥鳳』『龍鳳』『天鳳』
『大鷹』『雲鷹』『冲鷹』『神鷹』『海鷹』『白鷹』『黒鷹』

本土で修理中
『陸奥』(Z号作戦で損傷)

沈没
『霧島』(ミッドウェーにて)

戦艦10、超甲巡2、空母22と空母の数はついに20を超えた。
ただし大鷹型は常用機23機、補用機4機と小ぶりで主に攻略部隊護衛に従事していたが数は力である。
新規に2隻の大鷹型、1隻の祥鳳型が加わり、合計800~900機もの航空機を運営できる点がその証拠である。

一連の攻勢に対してアメリカは、海軍では潜水艦や水雷艇でお茶を濁すような援護しかできず、
やはり再度航空機による大規模な攻撃を仕掛けたが、辻がコストが高いとボヤきつつも大量生産し数が増える『VT信管』の威力。
高度に組織化された防空システムを前に消耗し、史実をたとえるならば『ブーゲンビル島沖航空戦』のようにベテランパイロットを多数損失した。

ただ、それでも相手はアメリカ軍のため空母『冲鷹』が大破、後に沈没。
空母『加賀』は中波の被害と少なからず被害を受けたが、日本にとってはある程度の損失は覚悟の上であった。

そして、アリューシャン列島の攻略を終えると満を喫してアラスカに艦隊と船団が姿を現した。
手始めにアラスカ沿岸のあらゆる基地を襲撃し、露払いを行うとすかさず6個師団がアラスカの大地に上陸。
夢幻会にとって歴史が変わり、アメリカにとっては英米戦争以来、敵が本土に上陸した瞬間であった。

『日本軍アラスカ上陸!』の報を受けてワシントンでは政治家が右往左往し、責任を追求する権力闘争が勃発。
ニューヨークでは再度株価は急降下し、ウォール街では2回目の紐なしバンジージャンプ祭りが開催する騒ぎと相成った。
なお日本軍が上陸したため自衛火器の需要が高まりわずかに武器メーカーの株価だけは助かった。

アラスカでアメリカ軍は必死に抵抗したが陸軍の主力は西海岸のため数で押され、
戦車も大半がM2で最新のM4は少なく、そのM4も日本側のチハたんにアウトレンジされる一方だ。
例外としてクレイトン・エイブラムス少佐が待ち伏せし、至近距離からの射撃で日本の戦車を撃破した。
だが、制空権、制海権はすでに日本側にあるため態勢は変わらず1ヶ月半後、9月後半にアンカレッジ市が無防備都市宣言を出し、
アメリカの残存兵力は沿岸沿いに州都ジュノーを目指して撤退、ここにアラスカ上陸作戦『星一号作戦』は完遂された。

「いよいよだ」

嶋田繁太郎はそうつぶやくと、書類にサインと判子を押した。
それは三式弾道弾の使用と爆撃機『富嶽』による爆撃の許可に関するものであった


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最終更新:2014年01月23日 11:31