624 :フォレストン:2014/01/18(土) 21:04:00
アメリカの横槍が無ければ、間違いなく現実化していたはず。

提督たちの憂鬱 支援SS 憂鬱英国歩兵装備開発事情

1953年5月。
東京、市谷にある、陸軍省技術研究本部の一室で、関係者が集められて、とある上映会が行われていた。

陸軍省技術研究本部。
陸軍省の中にありながら、軍需省傘下という変わった部署であるが、帝国陸軍における各種装備品の研究、考案、設計、試作などを行っている部署である。

一部例外も存在するが、陸軍の各種兵器、装備品の大体はここで研究、設計、試作を行われたのち、目処と予算が出たものからメーカーでの開発生産が行われるという形をとっているのである。

そんな陸軍技術の先進を行っている部署で行われている上映会である以上、内容も当然技術的なものであった。
上映時間は2分少々と短かったが、その内容は実に濃いものだったのである。

「これは先日、情報局から回されてきたものです。本件について、専門家からの意見を伺いたい」
「なんとも、奇妙な外見をしていますね。しかし命中率は優れている」
「狙撃銃じゃあるまいし、スコープを見ながら射撃というのは、いかなるものかと…」
「…!?」

上映内容は、英国陸軍の新型小銃に関するものであった。
その奇妙な外見と、射撃姿勢は従来の小銃とは、一線を画していたが、斬新過ぎるゆえに評価に困るというのが専門家の総意であった。しかし、その場に参加していた、転生者の内心は穏やかではなかった。

(なんで…!?なんで、ブルパップでオプティカルサイトのアサルトライフルがこの時代に存在するんだぁぁぁぁ!?)

英国陸軍は、世界に先駆けてブルパップ式レイアウトとオプティカル照準を採用した、アサルトライフルを実戦配備したのである。

625 :フォレストン:2014/01/18(土) 21:07:01
1950年代以降、英軍は陸海空3軍共に装備の刷新を加速させていくのであるが、陸軍の歩兵装備、特に小銃の更新は急務であった。

これは欧州枢軸側の盟主であるドイツが、MP44とその派生型である突撃銃を、本国のみならず、フランス陸軍やイタリア陸軍にも広く配備しており、さすがに既存のリー・エンフィールド小銃(Rifle No.4 Mk 2)では、火力の点で対抗するのが厳しかったためである。

そのような理由で英陸軍では、旧来の.303ブリティッシュ弾の代替と、第2次大戦の戦訓を元に新型小銃の開発に乗り出したのであるが、銃器設計の最初の段階である、弾丸の選定で紛糾したのである。

新型小銃には、.280ブリティッシュ弾(7mm×43mm)の採用が内定していたのであるが、将来的に日本軍と共同作戦を取る可能性を考慮して、6.5mm弾を強く押す一派が、陸軍内に多数存在していたのである。
この問題は、一時期は陸軍内を二つに割るほどの大論争となったのであるが、最終的に.280ブリティッシュ弾を使用することとなった。

銃本体の設計はエンフィールド造兵廠(RSAF)で行われた。
RSAFでは、4つの新型小銃設計案について検討し、そのうちスタンレー・ソープのEM-1小銃(EMは試作型の意味)とステファン・ケネス・ジャンソンのEM-2小銃ついて本格的な設計を開始した。

なお、エリック・ホール少佐のEM-3小銃とデニス・バーニーのEM-4小銃は図面の段階で却下された。
銃剣戦闘を重視し過ぎた設計が問題視されたと言われているが、その理由は今を持って定かではない。

EM-1、EM-2はいずれもブルパップ式レイアウトであった。
ブルパップ式の場合、弾倉と薬室をピストルグリップより後方に配置することで全長をおよそ20%短縮し、銃身長を維持することが出来た。

両小銃ともに、20発の着脱式弾倉と単純な光学照準器、上部のキャリングハンドル、セレクティブファイア機能を備えており、これらは非常に似通っていたが、一方で内部設計には差異が見られた。
またEM-1は生産効率を上げる為に鋼板プレスを利用しており、多少重量がかさんでいた。

EM-1とEM-2をトライアルにかけた結果、EM-2の方が優れた設計と認められ、1953年初頭にNo 9 .280 口径自動小銃(Rifle, Automatic, Calibre .280, Number 9)の制式名称で英陸軍に採用された。

リー・エンフィールド小銃に引き続き、射撃精度を特に重視したEM-2は、フルオート時のコントロールも容易であり、兵士達からの評判も高かったのであるが、銃剣が付けられない点が唯一不評であったため、後期の量産モデルには銃剣を装備出来るように改良されている。

通称ジャンソン・ライフルと呼ばれることになる、この新型小銃は、既存のリー・エンフィールド小銃の代替として、英本国はもちろん、英連邦とその影響下にある国々に広く生産・配備された。一部の地域では、日本軍が使用している6.5mm弾が撃てるように改造されたモデルも生産された。

派生型として、10倍スコープを搭載した狙撃銃仕様も開発されたのであるが、ブルパップ式レイアウトのため、既存の狙撃銃とは使用感が違うためか、性能は良かったものの、リー・エンフィールド小銃の狙撃型が古参兵には好まれたようである。
そのため、陸軍からは制式採用されずに終わったのであるが、全長が短く取り回しやすいため、警察向けの狙撃銃として採用されることになる。


No.9 Mk1小銃(Rifle No.9 Mk1) ジャンソン・ライフル

重量:3490g
全長:889mm(銃剣含まず)
銃身長:623mm
弾丸:.280ブリティッシュ(7mm×43mm)
作動方式:ガスオペレーション
発射速度:450-600発/分
初速:771m/s
有効射程:700m
装填方式:20発着脱式箱型弾倉
照準:オプティカル

626 :フォレストン:2014/01/18(土) 21:09:12
.280ブリティッシュ弾を使用した機関銃も開発された。
こちらはブレン軽機関銃を置き換える目的で、タデン機関銃として制式採用されたのであるが、ブレン軽機の扱い易さ、堅牢性を超えるものでは無かった。

そのため、ブレン軽機を.280ブリティッシュ弾に対応させたモデルが、急遽開発された。
Mark 5と呼ばれたこの機関銃は、従来のブレン軽機を改修したモデルと、新規に生産されたモデルが存在し、新規に生産された分は、弾丸の威力を鑑みて、銃本体の軽量化が行われている。
従来モデルからの改良点は以下の点である。

  • .280ブリティッシュ弾に対応。
  • 専用の30発箱型弾倉の採用。
  • ジャンソン・ライフルの弾倉が使用可能。
  • マガジン/ベルト給弾の両方に対応。
  • 銃本体の軽量化(新規生産分)

ブレン軽機の扱い易さに堅牢性、弱装弾化によるフルオート時のコントロールの容易さと、当時としては非の打ち所の無い完成度であった。そのため性能は悪くなかったものの、本命であったはずのタデン機関銃は比較的短命で終わっている。

新型ブレン軽機は、既存モデルを改修する形で配備が進められたが、需要に追い着かずに新規で大量生産された。
当初は軽機関銃として使用されたが、後に細部を改修したうえで、分隊支援火器として運用されている。

その優れた性能は多数の派生型を生み、空挺用に折りたたみストック化と短バレル化をして、取り回しの向上を図ったり、回転用銃座に取り付けて車載用としたり、特殊部隊向けに細部を改良したりと、多種多様なモデルが存在する。

本国や英連邦の陸軍に広く配備され、開発から半世紀以上経った20世紀末になっても未だに現役であり、英国の兵器らしく息の長い兵器となったのである。


タデン機関銃

重量:7790g
全長:889mm
弾丸:.280ブリティッシュ(7mm×43mm)
作動方式:ガスオペレーション
発射速度:550発/分
装填方式:ベルト給弾
有効射程:750m


ブレン軽機関銃 Mark 5(新規生産モデル)

重量:8180g
全長:1156mm
銃身長:635mm
弾丸:.280ブリティッシュ(7mm×43mm)
作動方式:ガスオペレーション・ティルトボルト
発射速度:500-520発/分
初速:771m/s
有効射程:700m
装填方式:専用30発箱型弾倉 20発箱型弾倉(ジャンソン・ライフル用) ベルト給弾

627 :フォレストン:2014/01/18(土) 21:10:37
あとがき
今回は自動小銃のお話でした。
史実では1951年(!)に制式採用されたものの、NATO弾絡みのアメリカの横槍で潰されています。

パワー馬鹿なメリケンが、アサルトライフルの重要性を理解出来ていれば、このようなことは無かったはずなのに…!(怒

この世界では、横槍を受けることは無いので、確実に実用化されるでしょう。
世界初のブルパップ式アサルトライフルを採用した国として、歴史に名を刻むことでしょうw

個人的に外見が洗練されていて大好きです。
ブルパップ式なんて、どれも似たようなレイアウトになるはずなのですが、この小銃はやたらとかっこいいんですよねぇ。木製部品を多用しているからですかねぇ?これなら近衛兵が持っても似合うと思います。

タデンガンこと、タデン機関銃ですが、ブレン軽機関銃に喰われてしまいました(汗
弱装化するなら、部品交換で対応出来ないかなぁと思ったのですが、ブレン軽機の堅牢性と信頼性は既に実証されているし、部品交換で済むので予算は抑えられるわけで、良いこと尽くめ過ぎて、タデン機関銃の存在意義が消滅してしまいました。
一応のメリットとしては、最初から.280ブリティッシュ弾前提で設計されているので、軽量コンパクトに仕上がっているというのがあります。特殊用途向けで生き残れるかも?

ちなみに実際の動画があります。
h ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm14561271

…1951年ですよ?
ブルパップにオプティカルサイトとか、どんだけ未来に生きているのやら。
しかし、それがいい!英国面最高ですっ!!

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最終更新:2014年02月19日 21:46