225 :いっくんとリーラの温かい早朝:2013/12/05(木) 20:57:27
提督たちの憂鬱キャラがギアス並行世界に転生(オリジナルギアス世界)
性格改変注意。
山本五十六とリーライナ・ヴェルガモンのお話。
恋愛系の甘い話。
R15。
226 :いっくんとリーラの温かい早朝:2013/12/05(木) 20:58:12
いっくんとリーラの温かい早朝
「ん……」
寒い冬の朝。ひんやりとした空気を肌に感じた男が不意に目を覚ます。
「……まだこんな時間か」
枕元に置いてある大きな目覚まし時計の針は午前5時丁度を差していた。
夏の時間帯ならば空は白み始めて夜明けを告げる頃合いなのだが、この時期はまだまだお日様が顔を覗かせる気配が無く、外はまだ真っ暗闇だ。
寝室であるこの和室もランプ一つ付けていないので暗い。精々家の外に設置されている街灯やらの明かりが漏れて薄暗く見えるだけで、少し離れれば何があるのか裸眼で確認することは不可能であった。
だが、同時にほぼゼロ距離の場所であるならば何の問題もなく見えるというものだ。それこそ目を懲らしたりする必要さえない。
「んん……いっくん……」
そのゼロ距離。正確に言えばすぐ左隣から聞こえた声に身体ごと動いて振り向く。あるのは当然金色の長髪に整った容姿を持つ、控えめに言っても美人であろう年の頃は二十歳くらいの白人女性の姿。
今や寝るときも含めて自分の隣は彼女の定位置となっている。
彼女が付けてくれた自分の愛称、下の名前が五十六(いそろく)だから“いっくん”
難しくも何ともない至ってシンプルな愛称だが自分としては意外と気に入っていた。
流石に初めの頃は恥ずかしかった物だが、呼ばれ慣れてくると子供が付ける渾名と同じ様な物だと気付いた。
親しい間柄にあるからこそこんな名前を付けてくれたのだろうと思えば、嬉しいとも感じられるのだから不思議としか言いようがない。
寝言でも良く口にしているから気になって聞いてみたことがある。すると、良く自分が出てくる夢を見ているらしく、それが寝言になってしまうと言うのだ。
夢に見るほど想われているのは嬉しい物だが、同時に少し気恥ずかしくもあった。
「リーラ……」
リーラ――それが彼女の愛称。自分だけが使っている彼女の呼び名だ。
本名はリーライナ、リーライナ・ヴェルガモン。
神聖ブリタニア帝国ヴェルガモン伯爵家の息女にして、駐日ブリタニア大使館で警備の任務に就いている女性騎士。そして結婚を前提としたお付き合いをしている恋人でもあった。
闇の中でもよく映える彼女の金髪に触れ、指を絡めながら撫でる。
腰まで届く綺麗な髪は纏めないまま眠ってしまったからか少々乱れていた。
それを治してやろうと彼女の首の後ろから肩を跨いで身体の前に髪を持ってくると、手櫛で梳きながらほつれを解いていく。
指の間を何度も擦り抜けていく度に髪のほつれは取れていき、10分ほどそうしている内にすっかり綺麗になっていた。
「よく寝ているな」
当然か。昨晩はじっくりと時間を掛けて何度も抱いたのだからよく眠れない方がおかしい。
逆に、こんな朝早くに目が覚める自分の方が問題なのではないのだろうか。
年を取った証拠とも思ったが、あれだけ愛し合ったのだから自分とて相応に体力は消耗したはず。
それも、ここ最近リーライナがブリタニア大使館員宿舎より家に引っ越してきて一つ屋根の下で寝食を共にするようになってからというもの、毎晩のように抱き合っている。
年寄りの朝は早いのが定番だが全身が汗にまみれるほど深く愛し合って疲れたというのに、一度寝て起きれば殆ど疲れは取れているのだから、まだまだ若い証拠であるとも言えるだろうか?
“還暦を越えれば老人”などという口の悪い人間も居るが、遺伝子技術・医療技術・栄養事情・エネルギー事情この4拍子が世界最高の水準を誇る日本人の平均寿命は年々延び続け、現在では120の領域に達している。
つまり、還暦というのは人生の折り返し地点でしかなく、考え方によってはまだまだ若いという認識は決して的外れな物ではないであろうと思われた。
228 :いっくんとリーラの温かい早朝:2013/12/05(木) 20:59:00
前世では想像だにもしていなかった昨今の平均寿命の異常な伸びは、やはりブリタニアとの遺伝子・医療技術の共同研究と開発が著しく影響しているだろう。
生命に関連する技術の伸びは正直目を見張る物がある。これは不老不死さえ存在するこの世界特有の物であるのかも知れない。
医療福祉がしっかりしているお陰で定年後の人生にも不安がないので生きやすい社会であり、老後の不安というストレスからくる心因性の病気が極端に少ないのもまた一因か。
最近では定年を80代にまで引き上げるべきではないのかとの議論まで出ているくらいだ。
最低ラインで100以上。平均が120まで生きられるのならばそういった意見が出てくるのも然もありなん。悪い事ではないだろうと思う。
尤も、現状の体制で問題が起こっている訳では無いので、制度が変更されなくとも何の問題もないのだが。
この辺りは資源豊富で高い技術力を持つ世界一の金持ち国家である日本とブリタニアだからこそ実現できた高福祉低負担政策のお陰だ。
そうでなければ両国共に平均寿命120で年金支給が60乃至65からとなれば、人口的に考えても国家財政が破綻してしまう。
全ては全分野のエネルギー源となる高純度で質の高いサクラダイトの存在と、磨き上げてきた技術が実を結んだ結果であり、両国の良い部分を伸ばし続けるよう努力している者達が居たからこその今である。
「今年は2人で富士山詣でもするか」
安らかに眠っている彼女の頭や髪を撫でながら一つの提案をしてみた。
霊峰富士。元より日本人の宝と言っても過言ではない美しき休火山。
だが、この世界に於いては正真正銘の宝山である。世界の7割にも達する膨大なサクラダイトが埋蔵されている黄金の山。
この山の存在こそが、この世界の日本を世界一の技術力と財力を持つ国へと駆け上がらせ、ブリタニアに次ぐ世界第2位の超大国へと押し上げた一因でもあった。
その為か、元旦の富士登山は、初日の出というよりも初詣の趣がある。
この国に住まう者は当然、ブリタニアにも大きな恩恵をもたらしている富士山に感謝の念を持とうという訳だ。
日ブ両国の敬虔な富士山信仰者は毎年元旦には富士山詣に訪れて、山頂を埋め尽くすのが恒例となっていた。
「富士山頂から拝む御来光は格別だからな」
去年はリーライナが年末に実家へと帰ってしまった都合上行くことが出来なかったが、今年は元旦と2日を日本で過ごすと話していたから丁度いいだろう。
「ヴィンセントに2人乗りでもして行く?」
気が付くと彼女の閉じていた目が開いていた。
「起こしてしまったか」
「うん。なんだか頭と背中がこそばゆくてね」
「ああすまん。随分と髪がほつれていたからちょっと治していたんだ」
「ふ~ん、そうなんだ……。ふふっ、ありがとう」
まるでエメラルドのように美しい翠色の瞳がじっと此方を見つめている。
「まだ5時を少し回ったところだからもう一度眠ると良い」
起こしてしまって悪いと思い眠るように進めてみたが『いっくんが起きてるなら私も起きてる』とやんわり断られてしまった。
次いで此方に抱き着いてくる。
「おい、こんな朝っぱらからは流石に――」
「なにを変な勘違いしているのよ。こうしているといっくんの温もりを直に感じられて気持ちが良いの」
「あ、ああ、なんだそういうことか……」
229 :いっくんとリーラの温かい早朝:2013/12/05(木) 20:59:45
自分たちはいま服を着ていない。
昨日の夜にたっぷりと愛し合った後は衣服を脱いだままで寝てしまったから、今は肌と肌で直接触れ合っている状態だ。
胸板に押し付けられる形となった豊かな膨らみの温かさを直に感じることとなり、それ故につい変な勘違いをしてしまった。
(……俺もまだまだ若いという証明か)
120という日ブの平均寿命からすれば60などまだまだ青年期であるとも言えよう。
まあ、青年期といっても一線を退いた中年の男であるという事実は変わらないが、心と体力は未だ若いと自負しているので、彼女のようないい女にこうして抱き締められれば、妙な考えも浮かぶという物だ。得てして愛し合う男と女の関係とはそういうもの。
前世でも芸者を相手にした色恋沙汰等、幾つもあった。やはり男と女の恋の駆け引きという意味では昔も今も変わらない。
(尤も、今はリーラ一筋だがな)
何故アイツまで転生しているのだと思える意外な男、米内光政に誘われてたった一度だけ夜の街に連れて行かれたことがあったが、それは内緒だ。
それに言い訳をさせて貰えば全て米内の奴が悪い。食事に行きましょうと誘われたから久しぶりに顔を合わせたしと思い行ってみれば“食事もできる”というだけで、そういう店であったのだから。
店の女にやたらと引っ付かれたが全て突っぱねたし、まあ知られたところで問題は無いと思うのだが決して良い気分ではないだろう。故に黙っているのが吉である。
思い出してしまった米内関係の嫌な事と、実はまだケツの青いガキなのかも知れないという恥ずかしさを誤魔化す為に自分からもリーライナを抱き寄せ、その瑞々しい唇を奪う。
「んっ、」
濡れた唇の接触で口内に甘酸っぱい唾液が溜まってくる。
「んっ……んっ……んんっ!」
口内に溜まった唾液は重なり触れ合う唇から舌を差し入れ、彼女の口内へと送り込んでは呑み下させる。そして差し入れた舌はそのまま彼女の舌を求めて絡ませ合う。
粘膜を触れ合わせて互いに唇と舌を味わいながら唾液の交換をはかり、愛情を塗り込んでいく。
「はむっ、んっ……んむっ……っ」
リーライナの舌の裏側を舌先でつつーっとなぞりながら感じさせ、今度は彼女からの舌による愛撫を受け入れる。
行ったり来たり、互いの口内を往復させての舌による応酬は続く。
「あっ、んうっ……っ……んちゅ……あっ……んんんっ……」
腰に回されている腕には力が込められ、お互いを離さぬよう強く抱き締め合ったまま。1分、2分、3分と、長々と深い接吻を交わし続けた。
230 :いっくんとリーラの温かい早朝:2013/12/05(木) 21:00:27
「んふぅ……ん……」
やがてゆっくりと唇を離して僅かな距離で見つめ合ったまま微笑み合う。
寒さからではない彼女の頬の赤みが接吻の激しさに感じ耽っていた事を窺わせていた。
「いっくん、キスは気持ち良くていいんだけど……。毎日毎日キスも含めていっぱいしてるのにまだ物足りなかったりする?」
「俺はいつでも紳士的に対応しているだけなのだがな。リーラみたいな“いい女”に求められて何もせんのは逆に失礼というものだ」
「だからそういう意味で抱き着いた訳じゃないって言ってるでしょう」
「すまんな。青年的には刺激が強すぎる身体を密着させられるとつい意識してしまうものなんだ」
「なにが青年よ。中年のおじさんの癖によく言うわ……。それに、普段は私に密着されただけで真っ赤になる癖にこういうときばかりは男らしくてカッコイイとか狡い!」
「男らしくてカッコイイか。それは男冥利に尽きる有り難い一言だ」
こうやってリーラと軽口を叩き合うのが今の自分にとっては何より楽しく充実した毎日と言える。
少なくともあと半世紀以上はこういう関係で居られると思うと中々どうして、楽しい老後になりそうではないか。
気の合う友人と、愛する女に囲まれている今という人生は、正に得難いものである。
「話は変わるけど私はいいわよ、フジサン詣」
「ヴィンセントでは行かんぞ? アレは1人乗り用で俺は入れんし、そもそも私事での使用許可など下りないだろう?」
「冗談に決まっているでしょう。でも……もし私のヴィンセントが複座式で使用許可も下りていたら乗ってくれる?」
「聞かれるまでもない。淑女のお誘いをお受けするのは紳士としての嗜みだからな」
「まあ、お上手です事」
冗談の中に紳士淑女の話でも入れてみると、淑女らしい仕草と言葉遣いをしてくるリーライナ。
中々様になっている。流石はヴェルガモン伯爵家の姫といったところか。
「今年は1月3日に本国に帰る予定だから、年越し蕎麦もお餅も一緒に食べられるわね」
「ああそうだな。今年の年末年始は一緒に過ごせるから去年やれなかったことを全てやっておこうか」
「うん……あっ、そうだ忘れてたわ」
「なんだ急に」
「うん、あのね――」
向かい合う形で自分を抱き締めていたリーライナの腕が、すすっと背中を越えて首の後ろに添えられると『えい』と頭を引き寄せられた。
「おい、急になにをするんだっ」
丁度顔がリーライナの胸元に押し付けられるような態勢にされてしまい、仄かな香りが直に鼻腔を擽ってくる。
「う~んやっぱりこのいがぐりみたいな坊主頭は触り心地がいいわ~」
そんなことはお構いなしに自分の頭をわしゃわしゃと撫で回してくるから適わない。
「おいこらやめんかっ」
「い・や・よ。いっくんだって散々私の髪の毛触ってたから今度は私が触る番なの。なにか文句がおありなのかしら?」
「頭触るのは構わんが、その為に一々顔を胸に押し付けるなっ」
「いつも触ってるのに今更じゃない」
「それは時と場合によってだな──」
「いいから私の好きに触らせて。いっくんのいがぐり頭触るの凄く好きなんだから」
「……仕方がない」
了承すると遠慮の欠片もなくわしゃわしゃとやり始めた。
「どう? 気持ちいい?」
「うむ……」
惚れている女に頭を撫でられて気持ち悪いという男はあいにくと見たことがない。
現に今こうされて心地がよく、少しずつだが眠気を誘ってくるのだから。
「いっくん」
「なんだ?」
“……………………大好きよ”
眠気に瞼が落ちそうになってきたところで聴こえたのは。
そんな他愛のない、いつもと同じ愛の囁きだった。
*
「あら、寝ちゃったの?」
いがぐり頭の恋人の頭を思う存分撫でていたリーライナは、ふと自分の胸元で聴こえる寝息に耳を傾ける。
「もう少しくらい起きてて欲しかったわね」
“そろそろいっくんの事を婚約者として紹介しておきたいから頃合いを見て両親に会ってほしい”
これを伝えるつもりであったというのに寝られてしまってはどうしようもない。
「ま、いいわ。夢から覚めたそのときに改めて聴いてもらうから……」
(今はゆっくりおやすみなさい)
231 :いっくんとリーラの温かい早朝:2013/12/05(木) 21:02:19
終わりです。
遺伝子と医学の共同研究をし、発達させ続けている日ブの平均寿命は現実の1.5倍と長命であるとしてみました。
いつも御感想寄せて頂き真に有り難う御座います。
大変励みになっております。
最終更新:2014年02月22日 14:56