391 :名無しさん:2013/12/08(日) 01:35:57
ブリタニアINでのシャルル排除後皇族会議。
シマダ公爵を巡って。


「では兄上も異論はございませんね?」
「もちろんさ 大体にして私の器で皇帝の座に就くのは無理だよ 別段なりたいとも思ってはいないし戦乱の無くなった世には彼女のような者こそが相応しいからね」

詰め寄る第二皇女コーネリアと屈託のない笑みを浮かべた凡庸な男性、第一皇子オデュッセウスが意見の一致を見たことで場の張り詰めた空気が霧散していく。
彼らはシャルル亡き後の次代皇帝に慈愛・平和の異名を持つリ家の第三皇女ユーフェミアを擁立することにしたのである。
武人コーネリアと元々なるつもりがなかったオデュッセウスの役割は妹の後見人と補佐的な任務となり、リ家ウ家の重臣が中心となって盤石の態勢を築き上げていた。

リ家を支える筆頭であるシマダ公爵も無論のこと了承済みで、第九十九代皇帝はユーフェミア・リ・ブリタニアで決まったと思われたその時であった。

「異議ありッ」

当の本人たるユーフェミアが異議を申し立てたのだ。

「なッ!?」

「どうしたんだいユフィ これはみんなで決めた事だし平和な世には君のような他国・他民族との融和を掲げる人材が必要なんだよ」

思いも寄らなかった妹の異議申し立てに二の句が継げないコーネリア。
我が儘な子供を諭すように説得を始めたオデュッセウス。
しかしユーフェミアは首を縦に振らず、ある一つの条件を呑みさえしてくれればこの話を受けますと言い出したのだ。

「条件とは何だ 聞けるものであるならこの場で聞こう」

「私も同じくだ さてユフィ こうして皆が集まれるのはこの先そうは無いだろうから今この場でその条件を聞かせて貰うよ」

血を分けた姉と腹違いの兄の顔を交互に見たユーフェミアは続いてリ家とウ家を支える重臣達を順に見ていく。
シマダ公爵を筆頭に集まっているリ家を支えている貴族。
シマダ公爵家傘下の諸侯。
シマダ公爵家とは盟友関係にあるクルシェフスキー侯爵家とその傘下にある諸侯。
同じくシマダ家と盟友のヤマモト辺境伯家と傘下の諸侯。
ヤマモト辺境伯と娘が婚約している関係でリ家の派閥に加わっているヴェルガモン伯爵家とその傘下の貴族。

そうそうたる顔触れは皆その中心点にシマダ公爵の存在があった。
リ家の祖先クレア・リ・ブリタニア皇帝の盟友であったシマダ家初代の流れを汲むシゲタロウ・シマダ公爵は現在も尚リ家を支える最大の支持者である。

(シゲタロウお兄様)

自分が物心付いたばかりの幼い頃より、よくリ家の離宮を訪れていたシマダ公爵は自分の我が儘に付き合ってよく遊んでくれた兄のような人。
その後も度々お目に掛かっては一日中世話を焼いて貰ったり、シマダ公爵を姉コーネリアと取り合ったり、色々あった。
彼に婚約者がいることは知っている。
クルシェフスキー侯爵家の息女にして父の下でラウンズ十二の席を勤めていたモニカ・クルシェフスキー。
シマダ家の先々代とクルシェフスキー家三代前の当主が交わした約束により生まれながらにして彼の婚約者の地位を獲得した女性。

(ずるい)

ずっと思っていた。
リ家とシマダ家は何百年もの昔から深い絆で結ばれた盟友。
幼い頃に抱いたシマダ公爵への淡い思いを未だに持ち続けている自分がリ家の人間である以上、ひょっとしたらと考えた事もあったのだ。
それなのにリ家の人間ではなく、たった百年ほどの付き合いしかないクルシェフスキー家の姫に彼は奪われてしまった。
自分が生まれるよりも前にもう決着はついていたのである。
でも、ここにきて巻き返しを図れるかもしれない絶好の機会が訪れた。
本当はダメだとわかっていても戦わずに負けを認めるなんて嫌だ。
だからこの機会を最大限に利用する。

392 :名無しさん:2013/12/08(日) 01:41:01

やると決めた瞬間目に止まったのは黄緑色のマントに身を包んだ碧い目の女性。

(貴女にだけは負けない)

「私は―― 私ユーフェミア・リ・ブリタニアはシマダ公爵家当主シゲタロウ・シマダ卿に結婚を申し込みます!」

「な なにィィィイイ!?」

「ゆ ユフィちょっと待ちなさい シマダ卿には」

姉と兄が狼狽えている。
集まっている諸侯も皆同じ。

「ゆ ユーフェミア殿下ッ お戯れはその辺でッ」

シマダ公爵も狼狽えている。
唯一視線鋭くこちらを射貫いているのはクルシェフスキー卿のみ。

「私は本気です 幼き日よりシマダ公爵―― シゲタロウお兄様をお慕い申し上げておりました ですが貴方には既に御婚約者がおられましたので伝えることができないこの思いを私はずっと胸の内に秘めていたのです」

「で 殿下」

「私の条件とは 今申し上げました私の求婚を受け入れてくださるか否かをこの場でシマダ公爵にはっきりと宣言して頂くことです 受け入れてくださるのならばそれでよし 受け入れてくださらないのなら御婚約者であらせられますモニカ・クルシェフスキー卿に勝負を挑ませて頂きます」

会議室の空気が凍り付く。
碌に戦ったこともないお飾り皇女がよりにもよってナイトオブラウンズであるクルシェフスキー卿に勝負を申し込むというのだから当たり前。

「ユーフェミア殿下へひとつだけ申し上げておきます」

凍った空気の中で口を開くのは予想通り彼女だった。

「殿下の御発言については何一つ認めるわけには参りません」

そうだと思う。
逆の立場なら自分も受け入れられない。

「シゲタロウ様は私の婚約者であり幼き頃より私が嫁ぐのはシゲタロウ様ただお一人であると心に決め この世に生を受けてより二十年変わらずお慕いして申し上げております 故に他の女性に渡す気など微塵も持ち合わせてはおりません ですのでユーフェミア殿下が先の御発言を撤回なさらない以上殿下は私の敵でございます 敵として相対する以上は一切の手加減も出来ませんがそれをご承知の上での決闘なのですね?」

「無論承知の上です 貴女からシゲタロウお兄様を奪おうとしているのですから相応の覚悟は出来ております」

「いいでしょう ナイトオブトゥエルブの名に掛けてユーフェミア殿下との決闘をお受けさせて頂きます」


かくして始まるユーフェミアとモニカ、二人の女性が持つ譲れないものを掛けた女の戦い。
勝負の行方や如何に。

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最終更新:2014年02月22日 14:58