621 :名無しさん:2013/12/11(水) 04:50:43
ブリタニアINでカズシゲ三男設定。
深く考える話じゃないよ。
カズシゲと小さな暴君。
クルシェフスキー侯爵家と共に西海岸諸侯の盟主として同地を纏め上げている神聖ブリタニア帝国シマダ公爵家分家の三男、カズシゲ・シマダは憧れの叔父に連れられて皇族リ家の離宮を訪れていた。
リ家とは、シマダ公爵家が先祖代々付き合いをしている縁深き皇族である。代々の当主の中にはリ家出身の皇子や皇女と婚姻関係を結んだこともあった。その関係上、彼に取っては遠い親戚に当たり文字通りの身内となる。
そういった関係から彼もまたシマダ家当主のシゲタロウ同様よく離宮に顔を出していた。
「なんで十六にもなってこんなことせにゃならんのだ」
ぶつくさ文句を言いながらも動かしている手は止めないカズシゲが作っているのは、花と蔦で編んだ冠。所謂花輪というものである。
花輪など女子が作り遊ぶものだ。それを十六の男子である僕が何故?と思いたい彼の心情は痛いほど分かる。
だがこれは作らざるを得ないのだ。「一緒に作りましょう」と言われたから作るしかない。
(ラウンズ候補生でもある僕がこんなことしてると知られたら親戚中に笑われるよ)
拒否権が有れば行使したいと考えるカズシゲであったが、自らの主君であるリ家の人間の言葉には逆らえないのだ。
「できましたかカズシゲ」
例えそれが子供であったとしても。
「ええ、ええ、出来ましたよ出来ましたでございますとも」
ようやっと作った一個を「一緒に花輪を作って遊びましょう」と強制してきたリ家のお姫様に手渡す。
ぞんざいな言葉遣いだがまだ七歳かそこらの子供なら気にはしないだろう。
「ユーフェミア様」
ユーフェミア。ユーフェミア・リ・ブリタニア。
それが今、彼に花輪作りを強制している九歳年下の暴君であった。
少女は鮮やかなピンク色の髪をした頭にカズシゲが作った花輪を乗せる。
「似合ってますか?」
「ええそれはもうよくお似合いでございますよユーフェミア様」
どこかの国のお姫様みたいだ。
ああそうだ、みたいじゃなくてお姫様だった。
自分でボケて自分でツッコミを入れている。
「ユフィですよ?」
「はいはいユフィ」
叔父に遊び相手を頼まれたからこうして付き合っているが、そうでなければ幾ら主君筋の人間とは言え花輪作りなんて恥ずかしいことに付き合ったりしないぞ。
不満をおくびにも出さないカズシゲに「それじゃあ」とか言ってニコニコしながら立ち上がり、近寄ってくる暴君は、後ろ手に何かを持っている。
そして目の前までくると隠していたものを取り出し何やら頭に乗せてきた。
「はいっ」
「んお?」
それは自分が作ったのと同じ色の花で作った花輪である。
「これでわたしとカズシゲはおそろいね」
お揃いとは花輪のこと。同じ花の花輪を交換する形で頭に乗せたことを喜んでいるわけだ。
子供というのは何と恥ずかしげもなくこういったことが出来るのだと感心させられる。
今までにも何度か遊び相手を務めたことはあったが天真爛漫さと悪意のない笑顔には毎度のことながら毒気を抜かれてしまう。
(ま、いっか)
優しさいっぱいの無邪気な微笑みを浴びせられたカズシゲは深く考えるのを止めて、小さなピンク色の暴君相手に、こうなったらとことん付き合ってやろうと考えた。
最終更新:2014年02月22日 15:22