701 :二二三:2013/12/12(木) 21:00:30
続くブリタニアinネタ
大賢者シマダ公爵?
「対日融和を主張なされておられるシマダ公だが、どうやら上手くいきそうだ」
「まさか戦わずして、血の一滴も流さずして日本を属国化してしまおうとは…!」
「さすがはハイランド大公家と並ぶブリタニア最有力の名家シマダ公爵家の御当主様だ!」
気勢を上げる諸侯達の話題の中心は皇族以外では最大の力を持つユーロブリタニア宗主ハイランド家と唯一対等であるとされるシマダ公爵家の現当主シゲタロウ・シマダの対日政策と工作について
サクラダイトの利権を巡り、いずれは日本にも侵攻してエリア化しなければならないと考えられていた中(一般的にシャルルの思惑を知らないが故表向きにサクラダイト利権が理由とされているので)
「話し合いと融和策を徹底させるべきだ」と異を唱えたシマダ公爵に賛同したクルシェフスキー侯爵とリ家が進めた対日融和策が実を結びそうなのだ
当初は勇猛なるブリタニアの貴族でありながら非戦・融和を唱えたシマダ公爵に対し、彼と対立する強硬派は「弱腰ですぞ!」などと喚いていた
だが彼が進める個々の政策と先見の明がある改革案や領地改革を目の当たりにして「これはエラい人物が現れた」と矛を納めざる負えなくなり
彼が中心となってリ家・エル家・ウ家が進めていた対日政策が実は融和とは名ばかりで犠牲を出さず労力を掛けない静かな侵略であると気付いた強硬派は、皇族や大諸侯が参加する皇族会議後、一夜にして「シマダ公爵はブリタニア一の策士であり強硬派であった」とかで賞賛の嵐を浴びせ持ち上げていたのだ
「猪突猛進な強硬派とは違いシマダ公は知恵で戦う賢者だ。あんな血の気ばかりが多い馬鹿共にはわからんだろうな」
「卿の仰られます通りですな、喧嘩を売るのは簡単だが真なる賢者は戦わずして勝つもの。シマダ公は日本に工作を仕掛けてそれを体現なされただけです」
「まったくもって見事な手腕、これは我が家も勉強させて頂かねば」
「私は恐ろしいですよ。あの方が他国に生まれた政治家であったらと考えますとね」
歴代のシマダ公爵家当主でも最優であると謳われ、未来が見えるとさえされる現当主の手腕を見た多くの皇族・貴族は素直に彼の偉業を讃えていた
ただし元よりシマダ公爵家の派閥だった貴族、代々シマダ家に仕えている傘下の諸侯や家臣などは自分達の主君の政策が悉く未来を見据えたものであり、幼少期より領内改革を提言し、父親を通じて成果を上げてきた神童であると知っているが故に
「主君シゲタロウ様の記録にまた一ページ新たな成果が記載されただけだ。特段珍しくも何ともない」
等、こんな当たり前の事で態度を変える連中は尻軽で信用できんと話していたりするのだが
(侵略か、まあそう受け取られても仕方がないが気のいいものじゃない。いずれシャルルを排除し、EUとの戦争を終結させた後に独立させる算段を立てているとはいえ、日本を救うには一度は属国化を図るしかないからな)
各派閥や皇族・貴族の声に耳を傾けていたシマダ公爵は、自分を賞賛する声とは反対で、侵略する意図は無く唯日本を救いたいと奔走する行動が期せずして侵略と同義になっている事を思い知らされていた
また、賢者だ策士だと自身の実像が誇張されていく様には目眩がする
(これじゃ前世と同じじゃないか……。俺はあなた方が言うような凄い人間じゃないんだぞ)
シマダ公爵は賞賛されればされるほどに肩を落とし、ままならない世界と国内情勢に精神的疲労が蓄積していくのを嫌というほど実感するのであった
702 :二二三:2013/12/12(木) 21:03:54
「シマダ、日本との折衝は順調のようだな」
「宮様や近衛さんが日本国内の対ブリタニア強硬派の政治家や軍人を抑えてくれているお陰だ。お二人には苦労ばかり掛けているよ」
皇族会議終了後に催されていたパーティーで壁際の席に着いていたシマダ公とヤマモト辺境伯は久々の談笑に興じていた
意図しないのに日本侵略と捉えられて気分は落ち込んでいたが、前世からの親友であるヤマモトとの話に少しは気分が楽になってくる
何よりも自分以上に神経をすり減らしているであろう海の向こうの仲間達の現状を考えれば、いつまでも落ち込んではいられないというのもあった
「確かに俺たちも何かと苦労は絶えんが、宮様や近衛公に比べればまだましな方だ。慣れない領地経営もあるにはあるが亡国がどうとかの心配は無いからな」
ヤマモトはそう語りながらグラスに入った赤ワインを煽る
ブリタニアがEUとの戦争に負けるというのを考えなくていいという一点は精神的に楽であった
ヤマモトが知る
アメリカを、一小国へと貶めてしまうほど強大なブリタニア側に転生したのは苦労も多いがそれだけで勝ち組であると言えなくもない
唯、勝ち組が容易に負け組へと落とされてしまうのもまた徹底した実力主義国家ブリタニアの現実
である以上、毎日弛まぬ努力を要求され、精神的に安らげる日が少ないという問題もあったが
「シマダ公!シマダ公とお見かけ致しますが!」
「ん?ええ、シマダは私ですがなにか?」
談笑していたとき歩み寄ってきた青年が声を掛けてきた
「お初にお目に掛かります!私、ジェレミア・ゴッドバルドと申します!」
青い髪に精悍な顔つきの青年は、父親であるゴッドバルド辺境伯の名代として会議に参加していたらしく、ブリタニアにその名を馳せるシマダ公爵への挨拶に来たのだという
「公の静かなる日本攻略には感服致しました、私はこれ以上植民エリアを増やすことでブリタニア軍にブリタニア人以外が混ざることになる可能性を危惧しておりましたので日本攻略後のエリア化には反対でありました。純潔派に属する一騎士として公の政策には全面的に賛成であります!」
ジェレミア青年はブリタニア軍純潔派と呼ばれる勢力に入っているらしく、植民エリアの増加によりナンバーズ出身の軍人や騎士が誕生している現状を愁いているという
それ故にエリア化を防ぎつつ且つ勢力圏を拡大させようとするシマダの政策を支持しているのだと力説
(ゴッドバルド辺境伯家といえばヴィ家の重臣だったな)
ゴッドバルド家といえば武門の一族でありブリタニアの積極的侵略を支持している強硬派でもあった
「私の対日政策に共感して頂けて光栄だよ。ジェレミア卿だったね?君と純潔派のことはよく覚えておこう」
「有り難き幸せ!」
(この出会いがヴィ家……ルルーシュ皇子やナナリー皇女の支援となれば良いのだがな)
次いでヤマモトにも深々と挨拶したジェレミア青年
「シマダ公!ヤマモト辺境伯!私は◯◯と―」
「私は××と――」
「私は――」
「私は――」
まだ何か話したそうにしていた彼であったが、タイミングを計ったかのように挨拶に来た別の貴族たちに押し退けられていった
703 :二二三:2013/12/12(木) 21:11:24
「そういえばシマダ、カズシゲくんの名前がラウンズ候補に挙がっているらしいな。俺が懇意にしているヴェルガモン伯爵と話していたのだが、かなり上位だそうじゃないか」
「ああ、彼も頑張っているからね。自分の道は自分で決めるだそうで騎士の道に進もうとしたら何時の間にか選出されていたとか言っていたよ。おまけに俺の小さな婚約者が触発されたのか知らないが〔シゲタロウさまをお護りする為モニカも最強の騎士を目指します!〕とか言い出して困ってる」
「カズシゲくんは才能があっていいし、モニカ嬢は可愛らしくていいじゃないか」
わははと笑うヤマモト
「俺など〔大きくなったらいっくんを膝枕して頭をワシャワシャしてあげる〕だぞ?意味がわからん」
「そういやお前もヴェルガモン家のリーライナ嬢と正式に婚約したらしいな。というよりその〔いっくん〕とはなんだ?」
「婚約させられた、だ。おかげで青春の二十代が子供のお守りで費やされてしまった……。ああ、いっくんとはあの子が俺につけた渾名だ。同年代に呼ばれても恥ずかしいというのに子供にいっくんだぞ?家の家臣が〔いっくん辺境伯〕と陰で呼称しているとか耳にしたときは〔いっくん禁止令〕を出してやろうとしたくらいだ」
「まあそういうな。そういうのは子供や女の子の特権みたいなものだし年の離れた妹みたいで可愛いだろう?」
「まあ、それは…な、」
「あの子たちと結婚する頃俺たちは三十代か、モニカ嬢もリーライナ嬢もさぞや美しく成長しているだろうな」
「楽しみではあるが現状が子守をしてるみたいな状態だから想像するのが難しい」
互いに持つ今はまだ初等部程度の子供でしかない小さな婚約者
未来の妻である彼女たちに思いを馳せながら新たにワインを注ぎ直して少しでも住み良い世界を作っていこうと乾杯する2人は、とりあえずのところはパーティーを楽しむことにした
最終更新:2014年02月22日 15:09