591 :名無しさん:2014/01/01(水) 02:00:21
休日太平洋戦争の議論を見て戦争の果てに日ブの今があるのを考えていたら思い付いた今の日ブの恋人達である山本とリーライナの話。


年明け(山本五十六とリーライナ)


行く年来る年を観ていた山本五十六とリーライナ・ヴェルガモンは午前零時を迎えると共に向き合い正座をして深く頭を下げる。

「あけましておめでとうございます」

誰を置いても山本にだけは他人行儀な口の聞き方などしないリーライナであったが、この日、新しい年に行う最初の挨拶だけはいつもと違い淑女らしく振る舞うのだ。

「あけましておめでとうございます」

彼女の挨拶を受けた山本も居住まいを正して丁寧な挨拶をする。
恋人や婚約者としてのそれではなく、ブリタニア帝国の名家ヴェルガモン伯爵家のリーライナ嬢に対しての挨拶に他ならない。
普段の仲睦まじい二人の姿から想像すること適わぬ光景と言えよう。

親しき仲にも礼儀あり。

新年の挨拶は山本家の当主として。
またヴェルガモン家の次期当主として向き合うようにしているのだ。
方や元海軍大臣。方や有力貴族の次期当主。
二人の立場が見て取れる厳かな雰囲気の挨拶。

「旧年中は何かと至らぬ事が多く、山本卿に於きましては心穏やかならぬ日もあったことでありましょう。不束なこの身ではございますが今年も変わらぬお付き合いの程宜しくお願い致します」

「丁寧なご挨拶のほど真に痛み入ります。不肖この山本、リーライナ殿の婚約者として相応しく振る舞い、絆を育んでいく一年と致したいと存じますので、今年もどうか宜しくお願いします」

一通りの挨拶を終えた二人はゆっくりと顔を上げる。
山本の黒い目にはリーライナの美貌が写し出され、リーライナの翠玉色の瞳には山本の精悍な容貌が写し出された。
そして暫し見つめ合っていた二人はふっと笑みを浮かべて硬い表情を消すともう一度新年の挨拶を交わす。

「いっくん、あけましておめでとう。今年も宜しくね」

「こちらこそあけましておめでとう。この一年も宜しく頼むぞ」

二度目の挨拶は軽いいつものノリで。

「やっぱり堅苦しい挨拶よりこっちの方がいいわね」

「確かに。俺もリーラ相手に堅苦しくしたくはないのだが、一年の始まりはヴェルガモン家次期当主殿への挨拶をしておかなければならんからな」

「私も同じよ。山本五十六閣下」

でも。
だが。

「ここからはいつも通りよいっくん」

「無論だともリーラ」

「さて、そろそろ行きますか」

「そうだな」

一瞬醸し出した厳粛な空気を取り払った二人は各々厚手のコートを羽織る。

「日本の英霊達への挨拶と初詣にね」

向かう先は日本の護国を司りし英霊の眠る神聖な地、靖国神社。

「ああ、行こうか」

山本にとっては偉大なる先達が眠る地であり、リーライナにとっては伝記に残る太平洋戦争の英雄達が祭られている伝説のようにさえ感じる神社。
かつて刃を交えた日ブのそれぞれの名家の二人は、身を切る冷たい空気の中を歩いて行く。
肩を寄せ合い仲睦まじく歩くその姿には、もはや敵として相見えた日ブの過去が時の彼方に過ぎ去ったのだということを物語っていた。

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最終更新:2014年02月22日 17:10