18 :15:2014/01/06(月) 08:54:56
では投下させていただきます。
19 :15:2014/01/06(月) 08:55:38
12月下旬から1月上旬にかけてのブリタニア皇族は多忙である。
クリスマス、年末、年始とイベントが続く時期ではあるが、これらは平民にとっては遊興でも上流階級にとっては仕事である。
これらが一段落した次の日―――カズシゲ・シマダ・リ・ブリタニアは自室のベッドに横たわっていた。
ブリタニア皇族としての意識が強く、尊敬する父繁太郎の数多の武勇伝を知るカズシゲは少々働き者過ぎる傾向にあったが、
今回は頑張り過ぎて最後のパーティーが終わると共に過労で倒れてしまったのだった。
本人はもう回復したつもりでいるが、両親から一日しっかり休むよう言われやむなくベッドで寝ているのである。
「ん・・・んっ・・・」
眠っていたカズシゲの意識がゆっくりと覚醒していく。
左手に握られているような感触。目を開け左を向くと、カズシゲを見つめる青い瞳と目が合った。
「・・・目が覚めましたか?」
「・・・ソフィー?」
ソフィー・エル・ブリタニア。帝国宰相シュナイゼル・エル・ブリタニアの娘でカズシゲの許嫁である。
「お見舞いに来てくれたのかな?」
「はい。・・・体調はいかがですか?」
「大丈夫。元々大事をとって休んでいるだけだし」
「それは・・・良かったです」
ソフィーは嬉しそうに微笑む。
西洋人形じみた整った顔立ちに、雪のように白くきめ細かい肌。腰まで届くプラチナブロンドの髪に、やや小柄で華奢な体躯。
ふとした拍子に消えてしまいそうな儚げな雰囲気に、カズシゲがついその手を握ってしまったのは何時(いつ)のことだったろうか。
それ以来、一緒にいる時には可能な限り手を繋ぐのが二人の間の決まりになっている。
20 :15:2014/01/06(月) 08:56:41
「・・・ふふっ」
しばらく歓談していた二人だったが、不意にソフィーが笑みを漏らす。
「どうしたの?」
「昔・・・わたしが熱を出して寝込むのが珍しくなかった頃。カズシゲさんはよくお見舞いに来ては看病してくださいましたよね」
「そんなこともあったね」
今はそれほどでもないが、幼少期のソフィーは身体が弱く頻繁に寝込んでは周囲を心配させたものだ。
「わたしが寒いと言った時にカズシゲさんが何をしたか、憶えていますか?」
「・・・何か変なことしたかな?」
憶えていないらしく首をひねるカズシゲ。
「それはですね・・・」
ソフィーは頬を赤く染めつつ、答えを明かす。
「人を温めるのに一番良いのは人の体温だと言って、添い寝してくれたのですよ?」
「うぇ!?そ、そんなことしてたっけ!?」
「していましたよ?遠慮するわたしに『いいなずけは、くらくをともにするものなんだ』と言って強引にベッドに入って。わたしのことを抱きしめて、子守唄を歌ってくれて。・・・懐かしいですね」
「子供の頃の行動力って恐ろしいね・・・とにかく、ごめん」
「謝罪は不要です。・・・その、嬉しかった、ですから・・・」
「そうか・・・じゃあ、今回はソフィーが添い寝してくれるかな?」
「・・・!?」
顔を赤らめながらうっとりと目を細めるソフィーに気恥ずかしくなったカズシゲは、冗談でごまかそうとするが、
「あ、その・・・カズシゲさんがして欲しいとおっしゃるのなら・・・」
それを真に受けたソフィーはおずおずとカズシゲのベッドに入り込もうとする。
「ちょ、待って!冗談!冗談だから!」
慌ててソフィーを止めるカズシゲ。
「え?・・・あ!そ、そうですよね!じょ、冗談ですよね!」
紅潮した顔をさらに赤くして離れるソフィー。
だが、どことなくおあずけを食らった子供のような表情をしているのはカズシゲの気のせいではあるまい。
「・・・まあ、ソフィーがしてくれるって言うなら、してもらいたいけど?」
「そ、そうですか。カズシゲさんがしてほしいならば、仕方がありませんね」
いかにも仕方なさげに振る舞うソフィーだが、自分がどことなく嬉しそうな雰囲気を漂わせていることに気がついていないらしい。
(まったく、素直じゃないんだから・・・)
「では失礼・・・します・・・」
ソフィーはベッドに潜り込むと、カズシゲの左腕を抱きしめるようにして身体を寄せる。
むにゅ
(・・・・・・!)
カズシゲの左腕に柔らかい感触。
ソフィーは着やせする体質の為に分かりにくいが、実はサイズ90cmオーバーの巨乳の持ち主である。
「ね、ねぇソフィー」
「どうしました?」
「当たってる・・・その、胸が」
「あ・・・」
ソフィーは真っ赤になって身体を硬直させるが、離れようとはしない。
「む、昔はわたしばかりが恥ずかしがり、カズシゲさんは平然としていましたから、今回はカズシゲさんの方に恥ずかしがっていただきます!」
そう言って胸を押しつけるようにきつく抱きついてくるソフィー。
(火が出そうなくらいに顔を赤くして言うことじゃないだろうに・・・ああ、そういうことか)
ソフィーの本心を察したカズシゲは身体をソフィーの方に向けると、空いている右腕で彼女を抱き寄せる。
「きゃ・・・」
驚いて顔を上げたソフィーに顔を寄せ、不意打ち気味に頬に口づけ。
カズシゲが顔を離すと、ソフィーは目を見開いた状態で固まっていた。
「甘えたいなら、素直にそう言えばいいのに」
「~~~っ!」
にやにやするカズシゲに対し、恥ずかしさに耐えられなくなったらしいソフィーは抱きついているカズシゲの左腕に顔を埋める。
(あ~可愛いな~)
カズシゲとしてはもう少し虐めたくはあったが、ソフィーに添い寝されているという今の状況を続けたくもあったので、
右手でソフィーの頭をそっと撫で続け、落ち着いてきたらしいソフィーも抱きつく腕の力を緩めた。顔を上げはしなかったけれど。
21 :15:2014/01/06(月) 08:58:18
「ノックしても返事がないと思ったら・・・ふふふっ」
可笑しそうに笑うカズシゲの母、ユーフェミア・シマダ・リ・ブリタニア。
彼女がカズシゲの様子を見に来てみると、カズシゲとソフィーが同じベッドの上で眠っていたのだ。
「そうだ。写真を撮っておきましょう」
ユーフェミアはいそいそと携帯電話を取り出すと、カメラ機能を起動する。
カシャッ
「後でシゲタロウにも見せてあげましょう。それにしても・・・本当にお似合いですね」
抱きしめるようにして眠っているカズシゲも、抱きしめられるようにして眠っているソフィーも、とても幸せそうな顔をしている。
それを見てまた微笑むと、ユーフェミアは息子の頭をそっと撫でる。
「手放さないようにするんですよ、カズシゲ」
22 :15:2014/01/06(月) 08:59:12
以上です。
さんざん悩んだしげちーの口調はコードギアススレその25のラウンズしげちーネタを参考にさせていただきました。
最初は嶋田さんの地の口調に近いものにしてみたんですが、違和感が強かったので・・・
最終更新:2014年02月22日 17:27