446 :パトラッシュ:2014/02/22(土) 09:32:35
クラリッサ・ハルフォーフSIDE
最近、シュヴァルツェ・ハーゼでは訓練の合間に日本式の「OBENTOBAKO」で食事をするようになった。それぞれ自分の好きなアニメやマンガのキャラクターを描いたお弁当箱に詰めてきた自作の料理を見せたり貰い合い、親睦を深めるのだ。おかげで隊員同士のコミュニケーションがスムーズになり、訓練の成果が上がった。やはりクール・ジャパンは偉大だな。私もネットで買ったイチゴのキャラを描いたお弁当箱の昼食を味わっていると、軍用携帯端末が鳴った。ミナミ・クリバヤシの『STRAIGHT JET』は、ボーデヴィッヒ隊長のパーソナルコールだ。
「――受諾、クラリッサ・ハルフォーフ大尉です。隊長、どうされましたか?」
≪大尉、極めて強力な敵に遭遇した。ISはおろか通常兵器も一切使えない相手だ。しかも兵士としての経験や能力は、間違いなく私より高い。そちらの意見を求めたい≫
「隊長より優れた兵士ですか」
聞き耳を立てていた周囲の隊員が一斉に緊張する。説明を省くため、オープンサウンドに切り替えた。
「状況説明をお願いします」
≪先日の協議に基づきターゲット撃墜のため秘密兵器を用意したのだが、はるかに強力な武器を有する警備陣が立ちふさがった。どうすればよい?≫
焦る隊長の背後から波の音が聞こえる。
「現場はIS学園臨海学校と推測しますが、警備陣とはどのような?」
≪うむ、ターゲットである織斑教官の弟の上官にあたる女性軍人だ。今日になって突然、臨海学校に参加してきた。とりあえず調べた限りではターゲットより三歳年上で、優秀な宇宙戦闘機パイロットらしい≫
「確かにターゲットは織斑教官の影響で年上属性な部分が強く見られると、軍の心理作戦センターも分析しておりました。上官を務める女性となれば、ぴったり当てはまります。しかし隊長に推薦したフリルをふんだんにあしらったビキニタイプの黒水着は、カワイイ悩殺と必殺『あ・て・て・ま・す・よ』作戦にふさわしいと確信しておりましたが?」
≪そ、それは、今から送る映像を見ればわかる≫
妙だな。隊長がこれほど自信なさげな声を洩らすとは。しかし、軍専用通信衛星を通じて送られてきたアキラ・ヤマモト少佐の写真を見て、全員が思わずうなった。
「副長、この相手では隊長が苦戦するのも無理ありません」
「織斑教官を思わせる大人の女性で、歴戦の戦士であるのが明らかとは」
「しかも説明によれば、白髪と緋眼は火星出身者のしるしだとか。他人に真似できない美貌と出身に加え、鍛え抜かれた肉体にまとった大胆な赤と白のマイクロビキニとは核弾頭級の破壊力と推察します」
「むぅ……隊長、ターゲットはヤマモト少佐と恋愛関係にあると思われますか?」
≪それはなさそうだ。一緒にビーチバレーをしながら、まるで無関心な様子だった≫
「そうですか。現状は二重三重に不利な状況ですが、決定的ではありません。ただ、これほどの強敵が出現した以上、一気に最終攻撃をかけるべきと思料致します」
私の提案に、隊員たちは一斉に上気した顔になる。
「隊長が大人になるんですね」
「ああ、シュヴァルツェ・ハーゼ初のウエディングベルが鳴る……」
「すべての女の理想であるヨバイを実行できるなんてうらやましい! 隊長、お幸せに」
≪まま待てクラリッサ、ここここには織斑教官もいるのだぞ。きき教官を騙したら処刑されても文句は言えん≫
「隊長、ターゲットの住む宿舎はGSG-9でも潜入不可能ですが、宿泊する旅館内は簡単に移動できるはずです。いずれ来るその日に備えて、『ふたりエッチ』のドイツ語訳を教材に手取り足取り教えてさし上げたではありませんか。今夜こそ隊長と教官の弟がユラとマコトの初夜を迎えるのです。あ、それから渡しておいたゴム製品も忘れずに」
≪わわわかった、ふふ夫婦の営みに関する作戦計画書を、もももう一度読み返そう……≫
※ドイツ語版『ふたりエッチ』は実在します。私は数年前、スイスで見ました(ビニールパックされていましたが)。Wiki掲載は自由です。
最終更新:2014年02月25日 17:36