783 :第三帝国:2014/02/25(火) 23:17:23
日米戦争におけるカナダの立ち位置は基本中立であり、
俄かに
アメリカが国内で気が遠くなるほどの兵力が出現したことに、
史実と違い別に同じ連合国でもなんでもないためやや警戒したが対抗して動員は行わなかった。
なぜなら、この戦争はあくまで日米間の戦争に過ぎず、カナダにとっては他人ごとに過ぎず、
むしろ、陸続きの隣国ということもあり五大湖の工業地帯へ資源を提供すること一種のバブル景気の恩恵にあずかった。
しかし、戦争が大勢の見方と違い日本が常に戦場で勝利を重ね続け、
アジア、ミッドウェー、パナマ、西海岸と彼らが誇る連合艦隊は常に合衆国海軍を海の底に沈め続けた。
そして43年夏にはとうとうアラスカへ上陸し、カナダはようやく戦争が身近な存在であることに気づかされた。
本国は徐々にアメリカに対して冷たい対応をしつつあり、
アラスカとアメリカ本土の間に挟まったカナダは今更ながら自分の立ち位置に危機感を覚えた。
何せ一歩対応を誤れば即座に自国の領土が戦火にさらされることは、先のナチスドイツの例のように明らかだ。
しかし、カナダとして取りうる手段は限られている。
もしもカナダが巨大な軍事力を有する国家ならばここで講和の呼びかけか、
あるいは、どちらかと同盟を結び自国の安全を保障することができたが、残念なことにそれは不可能である。
国家の独立こそ31年のウェストミンスター憲章で独立しているが、
国王陛下を君主と仰ぐ以上、外交ではどうしてもイギリスの意向を完全に無視するわけにはいかない。
人口は1200万人、その気になれば100万人程動員可能だが国内の工業力、動員可能人口はとてもではないがアメリカに対抗できない。
日本は日本で陸軍はせいぜい10個師団程度であるが、
どれも高度に機械化されている上に、空からは『富嶽』による核攻撃という手が存在する。
つまりこの戦争で下手に下心を見せた瞬間カナダは問答無用に破滅する運命であることに間違いなく、
ゆえに、カナダ政府は『武装中立宣言』を行い、いかなる勢力もカナダ領内に侵入するのを拒んだ。
国境では俄かに無数のトーチカが建造され、国内では続々と動員された兵士が監視の眼を光らせていた。
しかし、それでもなおどことなく日米戦争に関しては他人事の気分が抜けていなかった。
『武装中立』といっても五大湖の工業地帯への資源の供給は民間の商業活動として黙認していたし、
日本がアラスカに来たら来たで売れるものなら何でも売りさばいている有様であった。
そしてそれゆえ、西海岸に集結していたアメリカ軍が丸ごと殴りかかって来たのに対して対応が遅れたのだ。
動員していたとはいえ、総人口の限界まで動員していたわけでもないし、
軍の機械化は本国の凋落と同様遅れに遅れていたし、戦車もイギリス名物「どうしてこうなった?」な代物揃いで、
対戦車砲こそM4シャーマンに対しては多少対応できる6ポンド砲の存在があるが数が少ない。
全体的に兵器は対岸にナチスドイツがいるせいで、本国へ優先配備されていた。
結果、国境は短期間で突破された。
カナダ軍は冬戦争のフィンランド軍のようにゲリラ戦を仕掛け、
多少なりとも効果はあったがアメリカ陸軍はソ連のように軍が弱体化しておらず、
数の暴力と合わさって、焼け石に水に過ぎない。
アメリカ軍の侵攻ルートは五大湖に近い首都のオタワ。
そして西海岸沿いにカナダの先のアラスカの州都ジュノーの2本立てで侵攻中である。
784 :第三帝国:2014/02/25(火) 23:18:03
日本側はまさかアメリカの方から2正面戦争の危険を冒すとは思わず、
驚くと同時に北米で最低20~30個師団と正面から殴りあう可能性が出たため、更なる陸軍の増派が決定される。
そして、いくら戦時量産体制が極めて良好であるとはいえ、補給にかかる膨大な費用に頭を抱える羽目に陥った。
何せ太平洋の先の北米まで物資や人員を運ぼうというのだから消費する燃料だけでもすごいことになる。
現在展開している師団は8~10個、
最低10~15万人の胃袋を満たす必要があるし、
ここからさらに人員を送り込むとなるともっと物資を送らねばならない。
さらに頭が痛いのは、
これまで皇国の矛として東奔西走してきた連合艦隊は先の海戦で傷つき、
その戦力を大幅に減退させており、出来ることは限られている。
期待の噴進機、もといジェット戦闘機の『疾風』の実戦配備は春~初夏を待たねばならない。
『流星改』についても夏~秋にようやく実戦配備が始まるとされている。
(※本編では流星改は出ていません)
従来の艦載機による肉薄攻撃でアメリカの強化された対空砲火の前では、
被害甚大を覚悟せねばならないのはこれまでの戦訓から判明している。
ゆえに、和風フリッツXは切り札の一つとしてあるが、それだけでは心ともない。
空対艦ミサイルの開発もまだまだ時間は掛かり44年中の実戦配備は流石に無理である、
特に艦載機サイズのはもう少し時間がかかるが、代わりにロケット滑空式の誘導魚雷が44年中盤から実戦配備される。
既に各種誘導魚雷については実戦配備されていたが、小型化に時間がかかりようやく完成の目処が立ってきた。
外見はロケットに魚雷を抱かせたような姿で、敵艦の5キロまで接近してロケットで滑空。
自動的に切り離し後は誘導魚雷に任せるという代物で、空対艦ミサイルの中継ぎとして期待されている。
ただし、搭載重量が増えるため『流星改』での搭載が前提でそれ以前の機体ではかなり厳しい。
空対空ミサイルはもう少し時間が掛かる。
いくら分野によっては史実より10年進んでおり、
戦争によって湯水のごとく資源と資材を投入しているとはいえ、
流石に赤外線ホーミング技術には手間取り44年間の投入は無理である。
(※本編15話:日本の技術水準は分野によっては10年以上進んでおり、国力も3倍以上(鉄鋼、造船、機械工業は約4倍にまでなっていた)
が、艦艇搭載型の対艦ミサイルは出来つつあった。
ミッドウェーの夜戦で水雷戦隊はその真価を発揮したが、
電探技術の向上により至近距離からの雷撃はいつか集団自殺行為になる。
という点については戦前から予想されていた事実であり、
艦載機に搭載できるまで小型化しなくてもいい艦対艦ミサイルは今年の末には完成する予定だ。
対空ミサイルについても艦対空ミサイルの『奮龍』の開発が進展しており、これもまた今年の末に完成する。
そして対空ミサイルを搭載した新鋭防空駆逐艦『島風』型は45年に竣工する予定で、
さらに進歩した電探システムと両用砲、対潜魚雷を装備しておりどことなく海自の護衛艦に似たデザインをしていた。
(※島風型駆逐艦なるものは本編で登場しておらず、作者の妄想です)
これにより、既に配備されているギアリング級を参考にした『松』型駆逐艦と共にさらなる鉄壁の防空網を敷く。
785 :第三帝国:2014/02/25(火) 23:18:42
対艦装備についてはスーパー北上様こと『北上』
そしてガチレズの『大井』には酸素魚雷ガン積みから、
対艦ミサイルをガン積みし、ミサイル巡洋艦のハイパー北上様へパワーアップする予定である。
(※本編第16話:新型ジェット機の開発に並んで、ミサイルの開発も推進された。
陸海軍それぞれの思惑もあり、ミサイル技術の開発は強力に進められた。
海軍としては太平洋戦争中盤から後半にかけて米機動部隊の防空能力は飛躍的に向上することで、
航空攻撃が犠牲の割りには戦果が出せなくなることが判っていたので、
アウトレンジで米軍を攻撃できる対艦ミサイルは必須だった。
日本版フリッツXの開発も進めているが米軍と戦うには心もとない。
出来れば艦載機に搭載できるサイズのミサイルが欲しかった)
また、アメリカがまだまだ戦うことを諦めていないため、
さらなる核兵器の量産、そしてその威力の拡大を全力で推進させている。
特に水爆の研究開発が最優先事項として資本を投入しているが、それでも46~47年になると予想されている。
また、原子潜水艦の研究開発もやや時間がかかり46~47年になると予想される。
まだまだ核兵器を運搬するには爆撃機が必要であるためその研究開発には一切妥協を許しておらず、
『富嶽』の次として発動機を改良強化させ時速を900キロ近くまで改善させる『富嶽改』は恐らく45~46年。
倉崎重工主導でジェット爆撃機の『飛鳥』については流石にもっと先であるが、
戦争で資金資材に困ることがないため、もしかすると47~48年には完成するかもしれない。
以上、「これは一体どこの紺碧の艦隊だよ?」な状態であるが、
残念なことに紺碧の艦隊、そして各種仮想戦記で主役を張っていた『大和』型戦艦の生産は44年もそれどころか45年もない。
「戦艦を作るくらいならば空母を数隻、
または『富嶽』を100機作った方がまだまし、というかそんな余裕はない」
とは嶋田繁太郎の言である。
ここまで新兵器の大盤振る舞いしたため戦艦建造の余裕はなかった。
それに古賀峯一を筆頭とする戦艦派としてちっとも面白くない事態であるが、
史実を思えば仕方がないと納得し、今年の半ばに完成する超甲巡2隻でしぶしぶ我慢することになる。
陸軍は陸軍で105ミリ砲を搭載し、
ドイツの動物戦車
シリーズとの殴り合いを想定した四式重戦車が採用された。
砲塔正面200ミリ、前面20+130ミリ(60度)で「不敗戦車」と自ら呼称するに相応しい性能を有していた。
しかし、アメリカのカナダ侵攻で圧倒的多数のアメリカ軍と戦わなければならず、
性能差はともかく、数で押し切られる上に直ぐにM26パーシングのような重戦車を投入してくるのが予想される。
「北米で陸戦なんてまるでレッドサン・ブラッククロスだ」
とは
夢幻会のボヤきで、
北米で陸戦とは架空戦記としてはロマン溢れるものだが、
実際するとなると、消費する物資と人員で国家財政がその重みに耐え兼ねないものになりかねない。
最悪北米から撤退してしまい、
陥落したハワイを拠点にひたすら持久戦をする事も考慮しつつも、
当面は増援を送り込んで何とかアラスカの拠点を保持する方向へ夢幻会は決定した。
786 :第三帝国:2014/02/25(火) 23:20:14
そしてアメリカ、カナダ侵攻報告に何よりも驚愕したのは宗主国のイギリスであった。
当然、議会は方針をめぐって大混乱に陥り誰もが今後の行方について思いつかなかった。
しかし首相のエドワード・ハリファックスが全ての責任を取る形で辞任。
変わりに史実でもチャーチルの後に戦後のイギリスを牽引したアンソニー・イーデンが首相に就任。
史実で彼はスエズ危機の対応のまずさから大英帝国を凋落させる原因を作ってしまったが、
逆に言えば前任者のハリファックスと違い好戦的な政治家であり同時に政府、
というより円卓一同はもはや大英帝国の凋落は防ぎ得ないと結論付け、開き直った。
1月10日。
大英帝国はドイツとの講和を発表。
ヒトラー総統がロンドンでアンソニー・イーデン首相と握手を交わす姿に世界は唖然とした。
当然、自由フランスを始めとする亡命政府は抗議したが、これを完全に無視する。
イーデンは欧州で戦乱が遠ざかったことを高らかに宣言した上で、
血の代価を払いながら英国を助けた友人日本を連合国から追い出したのは明らかに失策であるとし、謝罪を表明。
そして、アメリカ無理難題を日本に押し付け戦乱を起こした点、さらに日系人に対する非人道的扱いに痛烈に非難。
挙句の果てに戦争の原因とされる鉄道爆破は、中華民国の自作自演であることを懇切丁寧に話し、持つべき友人を間違えたと皮肉る。
しかも、今度はカナダ政府とは別であるという理由で宣戦布告なしで大英帝国に戦端を開いたのを非難。
たしかに我々はクラウツには負けたかもしれないが、ここで法も義理もない新大陸の植民地人に負けるわけにはいかない。
ここでもう一度負けてしまえばもはや大英帝国は三流国家として生きてゆく以外ない!
大英帝国は改めてアメリカ合衆国へ宣戦を布告。
日本の連合国への復帰と再度同盟の締結に向けて努力してゆくことを明言。
英連邦にはカナダを助けるために兵力の供給から資源、国債の購入など協力を呼びかけてゆき、
インドに対しては勝利した暁には名ばかりのインド統治法を完全に改善し、独立を大英帝国の首相として約束すると発表。
そして今度こそ我らは最後まで戦い続ける。
カナダで、太平洋で、大西洋で我らは戦い、復活した自信と力をもって空でも今一度戦う。
たとえいかなる犠牲を払っても、我らは祖国をその尊厳守り抜く覚悟である。
浜辺で、滑走路で、野原や街路で、丘陵で我らは戦い、断じて屈服しない。
そして例えもし、ブリタニア全土或いはその大部分が征服されて飢えに苦しむ事になった暁には、
我が帝国は艦隊に護られつつインド洋を越え、太平洋で日出る本の国と共になおも戦いを継続するであろう。
この戦いは、神の試練のあまねく中、新しい大英帝国がその強さと力とを以って、
古き大英帝国に救済と自由、尊厳をもたらさんと、やってくるその時まで継続されるのである。
「リメンバー・カナダ!」
かくして議会は万雷の拍手を以って新たな強力な指導者を歓迎した。
この宣言と同時にアメリカの占領下にあったカナリア諸島を本国艦隊が強襲、これを占領。
アイスランドを拠点にイギリスの潜水艦がアメリカ東部で通商破壊を開始、
日本ほどではないが相応の被害を与えることに成功してアメリカの船舶を眼減りさせた。
さらに日本に対して『富嶽』の発進基地としてアイスランドの基地提供の用意があると通達した。
夢幻会は一連の英国のラブコールに感情面でいまいち釈然としなかったが、
状況は既に日米戦争から日英米の三カ国の戦争に突入した事実を受け止め日英同盟締結に動いた。
かくして、日英同盟が復活。
戦争は新しい段階へ以降した。
最終更新:2014年03月23日 12:11