742 :第三帝国:2014/01/10(金) 23:28:55
1943年9月後半、目標であったアンカレッジの無防備都市宣言。
さらに
アメリカの残存兵力が沿岸沿いにアラスカの州都ジュノーに向けて撤退したことで
夢幻会は星一号作戦が成功したことを祝った。
世界はとうとう黄色人種が白人の大地に足を踏み入れたことに驚愕した。
ヒトラーは俄かに独自のロジックに『基づいて』日本による『黄禍論』を演説し周囲の人間を困らせ、
列強の殖民地ではロシアに続いて成し遂げた日本の偉大な戦果に喝采を挙げ、
インドでは独立に向けた運動が活発化するなど不穏な空気が流れてイギリスの神経を尖らせた。
当事者の日本では万歳三唱に「アラスカ陥落」の提燈祭りが開催され、マスコミは次は西海岸だと熱狂の渦中にいた。
まるで戦勝したかのような騒ぎであるが、戦争はまだ終わっていない。
それどころかアラスカでは陸軍がジュノーに撤退するためにアメリカが決死で支援していた。
海軍は空母『エンタープライズ』が修理を終えたが出撃してもむざむざ撃沈スコアを謙譲するだけなのは明白なため、
変わりに駆逐艦や巡洋艦を中心とした高速部隊による補給ならびに撤退支援、増援輸送に従事し、消耗に耐えつつアラスカの北海で戦った。
西海岸=ハワイの航路よりも短く、潜水艦の攻撃を避けるため沿岸沿いのルートが選択できるなど、
輸送船にとって喜ばしい環境が整っていたが、それでも夜は呂号潜水艦が絶えず襲撃してくる上に空は日の丸の銀翼が飛び交い、
積極的に夜戦を挑んでくる水雷戦隊を相手にしなければならず、アメリカにとってさながら聖書物語の預言者のごとく苦難の連続であった。
おまけにアラスカと本土の間にあるカナダ政府は自国の領海に立ち入らないように通告したため、
一度基地航空隊も届かず、潜水艦が活躍しやすい深い外洋にでなければならずアメリカの船乗りたちは『ブラック・ギャップ』と恐れた。
船舶の建造も史実のような『毎月約100万トン』の半分程度で作ったそばから日本に沈められるせいで需要に追いつかない。
そのため資源節約もかねて、一度陸軍主導で作ってみたコンクリート製の輸送船が思いのほか高い対弾性を発揮したため、これを機に大量生産に踏み切った。
輸送量が『少なく』(又は『少ないことと』)燃料コストが高いことが難点であったが沿岸航路を支え、戦後は防波堤として第二の人生を送るなど予想を超える活躍をした。
ほかにもイギリスから技術を強奪した際に手入した氷山でできた船舶を輸送船として試作までしたが、さすがにこれは完成できず。
陸軍の兵士が何度も水泳大会をする羽目になり、負け続きに戦争でどこか冷静さを消失した陸軍はとうとう『まるゆ』もどきを投入。
海軍はさすがLSTを投入したが、それでも間に合わないので艦隊駆逐艦による鼠輸送、
それも限界なためいいアイデアだ(錯乱)とばかりに陸軍の案をパクリこちらは潜水艦で牽引する『特殊運貨筒』もどきを投入。
こうした動きに夢幻会では「鹵獲したのを『調べたけど』工作精度高くてワロス」「英国面の先祖返り!?」などなどと盛り上がった。
743 :第三帝国:2014/01/10(金) 23:30:28
以上のようにアメリカの台所事情は非常に厳しいものであるが、無論やられっぱなしというわけではない。
ハワイよりは距離が近いおかげで戦力の移動の難易度が低く、その密度を短期間で容易に上げることが可能で激しく抵抗した。
史実では欧州戦線で活躍したクレイトン・エイブラムス少佐は主力が州都ジュノーへ撤退する中、殿を務め追撃する日本を苦しめた。
航空爆弾改造の地雷、運ばれたM12ジャクソン駆逐戦車を組み合わせて徹底した待ち伏せ戦術で翻弄し、見事な遅滞防御を演じた。
他にも独立戦争の気分のままアメリカ市民による蜂起やゲリラ戦も日本を悩ませた。
そういたゲリラ対策については、長年傭兵として活躍した海援隊が知っていたため後方を彼らに守らせ、
足を使った徹底的な包囲戦術で一度まとめて処分したが、軍政に定評がある今村均を以ってしても統治は難しいものであった。
海軍も負けていない。
撤退と州都ジュノーの防衛のために駆逐艦、巡洋艦を中心とした部隊が船団護衛や輸送に従事しており、
そうした部隊を日本側は狙って襲撃するためソロモンの戦いのごとく夜間は幾度も戦艦以下の艦船が交戦した。
第3次アラスカ海戦ではアメリカ側が島影でレーダーのエコーに隠れ、対する日本はアメリカのレーダーから丸見え。
という環境を生かして先にレーダーの専門家であるウィリス・A・リー少将がレーダー射撃で牽制している間に、
アーレイ・バーク大佐率いる駆逐艦が横合いから殴りかかり日本側は巡洋艦『愛宕』『長良』駆逐艦『暁』の沈没。
駆逐艦『天津風』『雷』の大破と夜戦で日本が敗れ、ミッドウェーの夜戦以来意気揚々の水雷屋に衝撃が走った。
さりげなく参加していた駆逐艦『雪風』が無傷でこの世界でも死神っぷりを発揮したが、
駆逐艦『暁』の沈没に「おのれバーク」「俺のリトルレディがああああ!!」とT督たちは嘆き悲しみ『慢心ダメ、絶対』と誓った。
他にも対地支援のために夜間陸地に近づいた戦艦『扶桑』『山城』に入り組んだ入り江に隠れていたPTボートが襲い掛かり、
電探は魚雷艇が入り江に隠れていたせいで気づかず、『扶桑』の大破、『山城』中破の被害を受ける羽目になる。
何とか撃沈されなかったのは駆逐艦『山雲』『満潮』『朝雲』がわが身を犠牲にして完全に『扶桑』『山城』を守り通したためである。
余談だが、この襲撃のさいに魚雷艇の船長を務めていたジョン・F・ケネディが船を沈められ捕虜となった事実をここに記す。
このように、日本側は星一号作戦を完遂したが、その後の抵抗で損害を受けつつあった。
補給もアラスカに合計8個師団と航空隊への補給、その他ミッドウェーなど太平洋の島々への補給。
などが日本に重い負担を強いており、その費用に辻に何度もため息をつかせ、補給担当者にデス・マーチを強いた。
744 :第三帝国:2014/01/10(金) 23:31:05
しかし、基本制空権は日本側にあるため例え夜戦で敗北をこうむっても、
夜が明ければ空母機動部隊による鉄の暴風雨が吹き荒れ敗北の穴埋めをすることが可能で、
夢幻会がはるばるアラスカ攻略という博打に出たのは、永続的な占領ではなくすべては次の一手のためであった。
10月半ば、嶋田繁太郎総理はラジオで
『本日合衆国の工業地帯である五大湖を攻撃する。
主要兵器は弾道ミサイル、現存技術を超越した新兵器である。
合衆国市民諸君の生命の前に先ずあなた方の朝食からパンとホットケーキを奪う。
これは警告である、繰り返す。強い警告でありデモンストレーションである。尚、本作戦名はサジタリウス』
と国際向けに完璧な英国英語で宣言した。
アメリカはまさか、と思い念のために警戒したすぐに不審な物体をレーダーは捕らえた。
すぐに航空隊が離陸したがその物体の速度は音速を超え、しかも遥か上空から落下し五大湖の工場の一つに着弾、大爆発を起こした。
アメリカはこれ以上ないほど深刻な衝撃を受けた。
アラスカから攻撃可能でしかも迎撃不可能な現存技術を超越した新兵器というのは流石に予想外で、これだけですまないのは簡単に予測が付いたからだ。
確かに西海岸を春に荒らされ、夏にはアラスカの大地に踏み込まれたが戦争は始まって1年程度で、
海軍は散々な眼にあったがマスメディアはこれからだと煽っていたが、日本はすでに五大湖も攻撃可能であるという事実を突きつけた。
さすがに情報統制仕切れなかったせいで、市民社会では寝た子を起こしたとして大騒ぎとなり、政府はその対応に苦慮した。
しかし、アメリカの真の権力者達は投射数と威力が限られている点を察していたため、まだまだ戦争を続ける腹だ。
確かに五大湖を攻撃されたことは衝撃を覚えたが、五大湖の工業地帯を破壊するには万単位で攻撃せねばならず日本にその能力はないことを見抜いた。
むしろ、さらなる戦争の拡大による経済の発展と自分たちの懐が増えることを目指して苦境に立つロング大統領を強力に支援した。
そのため、ロング大統領はラジオでアラスカのジュノーをアラモ砦に例えて愛国心を煽り、
日本には再度無条件降伏するその日までアメリカは屈しないと高らかに宣言した。
このアメリカのジャイアンな応答に夢幻会では、
「もうやだあの大統領」「いい加減にしろ」と大ブーイングであった。
そんな中「もはやアレしかない」と伏見宮親王がつぶやくと嶋田繁太郎が苦渋に満ちた顔で頷いた。
11月、嶋田繁太郎総理は再度ラジオで国際社会に宣言した。
『警告は終わった。
ロング大統領以下アメリカ合衆国並び市民に要求する。
速やかに交渉のテーブルに着くべし、テーブルに着かぬ時は合衆国全土に真のサジタリウスの矢が降り注ぐ。
鏃は原始の炎、お分かりであろうがこれは決して虚構ではない。真の神の弓である」
アメリカ合衆国は冷笑を持って返答した。
そして日本はアラスカに展開した『富嶽』に原子爆弾を抱えさせアメリカ合衆国の空に飛ばし、
手持ちの日本版A10のすべてを発射させ、空には幾条もの細長い雲が立ち昇った、破滅の始まりだ。
「『死んだら』地獄行きだな」と嶋田が呟くが、
すかさず辻が「嶋田さん一人で生かせません----自分もお供しますよ」と励まし2人の間に奇妙な友情が生まれたが、
「嶋田×つじーん、か・・・」「薄い本が厚くなるな」「馬鹿な!あの辻がデレただと!?」と周囲の人間が騒ぎ出しカオスな具合になる。
「次の同人即売会が楽しみだ」「夢幻会には腐女子もいるしな」と、
よりにもよってこのノリがいい連中にネタ臭を嗅ぎ付けれてた嶋田と辻は仲良く弄られたが騒がしいいつもの夢幻会に戻った。
自分たちが大量殺戮者になる事実をこのときだけは忘れていつもらしく騒いだ。
「というか誰だ!
ジパングねたを原稿に差し込んだ奴は!!」
「いやーかっこよかったですよ、帝国の独裁者らしくて(笑)」
第19章「サジタリウスの矢」終わり
745 :第三帝国:2014/01/10(金) 23:33:17
以上です、次は来週の週末になるでしょう。
次回もどうかよろしくお願いします。
最終更新:2014年03月23日 12:51