832 :taka:2013/10/27(日) 12:00:15
呂号が一斉攻撃を開始し始めた頃、船団が存在する海域に接近する複数の機影がいた。
海面に波を立てる様にしてすれすれに航行している大型機、日本海軍が誇る世界最強の飛行艇二式大艇だった。
8機の二式大艇は水上機母艦を基地とし、ミッドウェー周辺で偵察や潜水艦狩り(捜索レーダーと磁気探知装置を搭載していた)を主な任務としていた。
呂号艦隊が効率的に狩りを行えるのも、彼らが的確な情報収集をしてくれて正確な敵艦隊や船団の情報が手に入るからである。
だが、今回は彼らも船団襲撃に参戦したのである。
呂号が一斉雷撃を行い護衛艦隊を壊乱させ、まともに反撃出来ない状態にした所で止めを刺す。
呂号が第一の矢であるなら二式大艇は第二の矢だ。この第二の矢で護衛艦隊を壊滅させ、船団を文字通り丸裸にする。
船団を食い放題にする海狼の宴を完成させる為に、彼らは危険を推して艦隊襲撃に参加したのだ。
もっとも、二式大艇の搭乗員達の士気は極限まで高まっていた。
栄えある敵艦隊攻撃に参加出来るのだ。まさに飛行艇乗りの華というやつである。
相手は潜水艦ではない。戦闘艦なのだ。それに魚雷をぶち当て撃沈し戦果を上げる。飛行艇乗り冥利に尽きる。
秋津洲で何時もとは違う800kg航空魚雷を2本搭載し、意気揚々と迫るは敵艦隊の姿!
『秋津洲より入電! 呂号戦隊が攻撃を開始しました! 敵護衛空母に魚雷命中、撃沈確実也との事!』
搭乗員達の歓声が上がる中、攻撃隊の指揮を執る海軍中佐は獰猛な笑顔を浮かべた。
「ドンピシャだぜ。こっちも今敵艦隊を視認した! 最高の時期に突入出来るぞ!!
二班! 打ち合わせ通りだ、海軍必殺の魚雷を敵艦隊の横っ腹にお見舞いしてやれ!!」
8機の大艇は艦隊の前半分を狙う四機、後ろ半分を狙う四機と二手に別れる。
「敵は既に陣形を崩し、各々回避行動に移っている! 出来るだけ大型艦を狙えよ!!
曹長、景気付けだ、あれを流せ!! ついでに突撃ラッパも鳴らせ!!」
やがて敵艦隊へと超低空飛行で迫る二式大艇の1機から朗々とワーグナーの調べが流れ始めた。
ブリュンヒルデが率いるワルキューレの騎行。それをスピーカーで大音響で流していた。
「中佐殿、大丈夫なんでしょうかこれ? 幾らなんでも危険では?」
「俺が大丈夫って言ったらこれは大丈夫なんだ! 強襲するときゃワーグナーを流して突撃って日本海軍の基本なんだよ!!
ワーグナーは独国の伍長の占有じゃない、日本海軍だってワルキューレ騎行を流して問題ないんだ!!」
「そーなのかー」
「高速戦艦隊だって水雷戦隊だって空母の艦載機部隊だってワーグナーを流しながら突撃する! バルチック艦隊との決戦からの伝統だ!
あの艦隊の連中を沈めて海路と補給を遮断しミッドウェーの海兵隊を石器時代に戻してやる!!」
「第二班了解、ヤンキーの軽巡と重巡に魚雷をぶち込め! 奴らをやっつけてやる!!」
「編隊を崩すな、投下後は反対側にそのまま離脱し追跡を撒いてから母艦に帰還する! 雷撃体勢をとれ!!」
8機はそのまま護衛艦隊へと突入していく。
普通の攻撃機であれば導入が本格化された航空レーダーで探知できていただろう。
だが、彼ら大艇は文字通り海面スレスレの超低空を飛行している。
初期型のレーダーで探知出来るわけがなく画面は真っ白、見張りは雷跡を監視するので必死だった。
故に彼らが気づいた時には、8機のワルキューレが艦隊の横っ腹へ突撃してきていた。
833 :taka:2013/10/27(日) 12:00:49
「日本海軍お得意の神経戦だ、音量を最大にまで上げろ! 投下準備、ダンスのお時間だ!!」
慌てたような対空火砲は、殆ど機体の上を通りすぎてしまった。
加えて予期してなかった対空戦闘に乗組員たちは大わらわで、陣形が崩れて密集した攻撃を行えないのも米軍にとって最悪だった。
8機の大艇は己の獲物の横っ腹に食いつくと、次々と800kg航空魚雷を投下していく。
「一番機、敵旗艦と思しき重巡に一発命中!」
「二番機、敵重巡に更に二発当てました。大火災が発生しています!」
「三番機、軽巡に一発命中、爆発を確認!」
「よくやったいいぞぉ、後でラムネを奢ってやる!」
次々と入る戦果報告に目をぎらつかせながら、中佐は自機の獲物を捉え魚雷の投下を指示した。
「俺達の獲物はあの軽巡だ、あれを片付けろ!」
「投下っ」
至近弾を何発も浴びて水しぶきを浴びながら、中佐の機体は魚雷を投下した。
通りがけに銃座から20mmを浴びせつつ、艦尾の方向に飛んですり抜けていく。
やがて、軽巡の前部から2本の巨大な水柱が上がり、前部砲塔の1つが爆発して吹っ飛んだ。
「ハッハァー! 軽巡1隻撃沈確実だぁ、ザマァ見ろ!!」
弾薬庫に引火して、大火災を起こしている軽巡を見て中佐が喝采をあげる。
真っ先に敵艦隊から離脱していく中佐機に、残りの爆撃を終えた7機が続いて離脱を開始する。
損傷を受けている機体もあったが、どれも乗員は無事との報告が入っていた。
「攻撃終了だ。後は呂号に任せて秋津洲 (水上機母艦)に戻るぞ。今日はみんなに俺秘蔵のビールを飲む権利をやる!!」
機内と、通信越しに乗員たちの歓声が響き渡った。
その後、八機の二式大艇は追撃してきた2機のドーントレスを返り討ちにし、無事に母艦へと帰還したという。
重巡1隻と軽巡二隻を撃沈。駆逐艦数隻に損害を与えた彼らは司令部から直々に賞賛されたが、中佐は司令官から直々に説教を受けたとか。
〉バルチック艦隊との決戦からの伝統だ!
* *
* + うそです
n ∧_∧ n
+ (ヨ(* ´∀`)E)
Y Y *
最終更新:2014年04月06日 18:47