469 :Monolith兵:2014/04/01(火) 06:30:49
※艦娘のキャラが(憂鬱世界準拠の為)崩壊している可能性があります。ご注意ください。

ネタSS「辻正信が鎮守府に着任したようです」 その3

 辻政信が艦これ世界の鎮守府に提督として着任してから約1年。辻鎮守府では初の年度末を迎えていた。そう、辻鎮守府は収支報告を上層部に送らなければならないのだ。これで赤字を計上してしまうと、査定に響いてしまい、最悪の場合更迭の可能性さえあるのだ。
 しかし、底は大蔵省の魔王辻政信である。さぞかし大黒字を計上するのでは、と思われていたのだが・・・。


「・・・駄目だ。何度計算しても・・・大赤字だ・・・。」

 当の辻政信は、そのように思われていることを露知らず、夜中の執務室で自分の机で頭を抱えていた。憂鬱世界においては経済無双していた辻だったが、この憂鬱艦これ世界では、流石に勝手のわからない軍務に手を焼いていた。嶋田たちとの付き合いで、多少は海軍に通じているとは言ってもそこは専門外であり、かなりの浪費をしてしまったのだ。勿論、慣れてからはそんな事は無かったが、最初の不手際がここまで響いていたのだ。

「もうどうしようもないですね・・・。」

 辻はもうどうにもならないと諦め、気分転換に散歩に出かけることにした。時刻はそろそろ日が昇り始める頃である。空気がすんで朝焼けが綺麗な時間である。辻としては朝焼けよりも、艦娘たちの寝顔を眺めたいが、流石にセクハラは慎んでいた。なにより、好感度がマイナスからようやく0になった艦娘も多いのだ。自分から好き好んで女性に嫌われるような趣味は辻には無かった。

「ふぅ・・・。流石に3月とは言え明け方は冷えますねぇ。」

 そう呟きながら、辻は埠頭にやってきていた。ここからは鎮守府に所属する全ての艦が見渡せるのである。夜通しで哨戒活動や遠征に出ている艦も多いが、半数以上が埠頭に接岸していた。
 さて、その中を歩く辻だったが、倉庫が立ち並ぶ補給用の埠頭付近まで来た時、ある倉庫の中から音が聞こえてくるのに気がついた。この時間艦娘も、妖精も、鎮守府で働く海軍関係者もほぼ寝静まっている時間である。なにより、この時間に倉庫で何かをするということを辻は聞いていなかった。
 これを不審に思った辻は、すぐに近くの詰め所に走り陸戦妖精に事情を話した。すぐさま妖精たちが倉庫へと武装して向かい、辻は詰め所で待つ事にした。流石に自分が現場に行き何かができるとは思っていなかった。
 そして、30分ほどして戻ってきた陸戦妖精に連れられて来た犯人を見て辻は目を丸くした。

470 :Monolith兵:2014/04/01(火) 06:32:32

「これはどういうことですか!!」

 辻は珍しく憤慨していた。辻の怒号は執務室の窓ガラスをビリビリト震わせるほどで、それだけで辻の怒りが分かるという物だった。執務室に詰め掛けている艦娘たちも耳を塞いでいた。

「そ、それは・・・。」

「言い訳は聞きたくありません!私は貴方たちに必要な資源を、食事をさせているはずです!なのに・・・、何で盗み食いなんてしているのですか、貴方という人は!!」

 そう、倉庫で音を起こしていたのは盗み食いをしていた艦娘だったのだ。犯人は言わずとも解るだろうが、あえて言おう。正規空母赤城だった。

「・・・。」

 赤城は悔しそうな顔をして唇を噛んだ。辻は赤城を初めとする艦娘たちには十分な量の食事(資源)を与えていた。事実、艦娘たちからは不満は無かったし、赤城以上に大食らいな筈の大鳳も満足しているようだった。なにより、辻鎮守府の艦娘たちは言いたい事はずけずけという性格の娘ばかりだ。隠れて盗み食いする必要性は全く無いはずだった。なのに、赤城は盗み食いを働いていたのだった。

「これでこの使途不明の資源の行き先が解りましたよ。海軍の伝統とか言うギンバイ?という奴ですか・・・。貴方のお陰でこの鎮守府は今期赤字ですよ・・・。」

 辻はそう言ってため息をついた。辻は使途不明の資源を、ロスの積み重ねや帳簿の不備によるものだと思っていた。だが、実際は赤城が盗み食いしていたのだ。

「え?あ、赤字なんですか?あの辻政信なのに?」

「貴方は私のことを何だと思っているのですか?私は資源やお金が自然に沸く魔法の壷を持っているわけはありません!全てクエストのクリア報酬や支給された資源で遣り繰りしているのです!それをあなたという人は・・・!!」

 辻は再び火がついたように怒鳴り始めた。これには流石に他の艦娘たちもアワアワとするだけで、赤城を擁護する者はいなかった。もっとも、あの辻正信が赤字を出したという事に呆然としているだけかもしれないが。

「赤字だというのなら、解体すれば・・・。」

 それを聞いた辻は体をわなわなと震わせ、震える指で眼鏡を外した。その尋常ならざる姿に艦娘たちは悲鳴を上げた。

「・・・今から言う者以外部屋から出て行ってください。赤城、大鳳、霧島。」

 赤城は当然ながら、大鳳は秘書艦(事務方トップ)として、霧島は工廠担当艦として呼ばれた。呼ばれなかった艦娘たちはしぶしぶと部屋から出て行った。そして、全員が出て行き扉が閉まると同時に、辻の怒りが爆発した。

471 :Monolith兵:2014/04/01(火) 06:33:03
「貴方は一体何を考えているのですか!貴方のせいで赤字になったというのに、言うに事欠いて解体しろですって!!私がどんだけ精神を削ってこの鎮守府を運営してきたか解っているんですか!?前世では貧乏で侘しい気持ちをさせたから、十分な食事と文明的な生活を提供しようと努力してきました!誰も解体しないでと言う要望を聞き入れ、これまでに誰も解体しませんでした。姉妹を迎え入れたいというから、鎮守府を拡張しました!それを貴方は、私の努力を貴方は捨てろというのですか!!」

「それは言いすぎです!私は鎮守府全体のことを思って!」

「ふざけた事を言わないで下さい!馬鹿!!」

 立ち上がり腹の底から怒鳴る辻に赤城は顔を赤くして反論するが、馬鹿と言われてつい涙が出てしまう。

「そんな、私はただ・・・。」

 普段の辻ならば、女の子が涙を流していたら慰めるだろう。だが、赤城はこれまで艦娘たちの為にしてきた努力を否定する事を言ったのだ。辻の怒りは深く、とてつもなく大きかった。

「泣いて済むと思っているのですか!貴方は私を、ひいてはこの鎮守府を否定したのですよ!」

 畜生め!という言葉はすんでの所で飲み込んだ。流石に怒りに任せて女性に浴びせる言葉ではないと思ったからだ。

「大鳳にも長門にも、大食らいな艦娘たちは十分な資源を食事を福利厚生を与えてきたつもりでした。それとも、貴方だけが他の艦娘とは違うというのですか!?」

 辻は力が抜けたように椅子に座り、顔を俯かせた。

「デイリーとウィークリークエストは全てこなし、資源地帯も積極的に向わせた。遠征も途切れることなく行かせた。皆が汗水たらして手に入れた資源を、貴方は自分の欲望の為に奪ったのですよ!!」

 辻はそこまで言うと、それまでの怒りが嘘のように暫く黙りこくった。それが赤城には逆に不気味だった。静かな執務室には、扉の向こうから誰かが泣いているのだろうか、すすり声が聞こえてきた。

「・・・もう二進も三進もいきません・・・。解体しましょう・・・。」

 辻がそう呟いた瞬間、廊下から複数人の鳴き声が聞こえてきた。自分が解体されるかもと思って泣いているのだろう。その責は本来なら赤城の背負うものだが、辻は全て自分の責任のもと行うと言い切った。

「ですが憶えておいてください。私は貴方を許しません。皆の努力の結果を貴方は駄目にしたのですから・・・。以上、解散。」

 辻は力なく解散を命じると再び黙りこくった。執務室には、ただ壁越しに泣き声が聞こえるだけであった。


 そして翌日。NAK48の第2郡と第3郡(合計96隻)が解体され、辻鎮守府最大の危機は去ったのであった。

472 :Monolith兵:2014/04/01(火) 06:33:36
 おまけ「年度末の嶋田鎮守府」


 さて、辻鎮守府が修羅場に入っている頃、嶋田鎮守府でも今年度の収支報告書がまとめられていた。こちらでは、前世で海軍官僚であった経験ゆえに、十分に黒字を確保できていた。嶋田は区切りのいいところで書類仕事を終わらせ、金剛の入れた紅茶を楽しんでいた。

「しかし、今期はばたばたしていたが、結構余裕を持って終わらせそうだな。」

「本当ネー。普通着任初年度は赤字が多いけど、提督は流石は大宰相ヨ!私も鼻が高いデス!」

 金剛はその大きな胸をそらしながら、嶋田をほめる。それを聞いた嶋田は頭をかいた。前世から嶋田をヨイショする者は多かったが、ここまで純粋な尊敬を女性から受けた事は少なかったから、恥ずかしかったのだ。
 その時、執務室の扉を叩いて大和が入ってきた。大和は今日新海域に旗艦として出撃していたのだ。

「提督、第1艦隊ただいま帰還しました。こちらが報告書になります。」

「うむ、ご苦労。」

 大和が綺麗な敬礼をしたのを見た嶋田は自分も立ち上がり敬礼を返した。そして報告書を受け取った嶋田は大和の姿に違和感を感じた。

「あれ?何か砲等が減っていないか?」

「あ、これはその・・・。実は今日の出撃でレベルアップして、改造ができるようになったのです。今日の戦闘で大破してしまっていたので、改造を行えば入渠時の資源の消費もなくなるし補給もしなくてよくなるので、工廠妖精からした方が良いと言われて・・・。」

「そうか、おめでとう。それで、どれほどの資源を・・・。」

「必要だった資源は報告書の最後に記しています。」

「ああ、これか・・・ってッ!」

 嶋田はそれを見た瞬間悲鳴を上げてしまった。金剛も何事かと報告書を見たが、そこで口を開いたまま固まってしまった。

「エッ?エッ?」

 そのリアクションに大和はどうしたのかと思った。

「こ、これは;;!?」

 嶋田と金剛の見ている書類には、大和の改造前と改造後のスペックの比較と必要資源量が記されていた。何と、大和は18インチ砲戦艦から20インチ砲戦艦へと改造、いや進化していたのだ!しかも、基準排水量も4万トン近く増え、装甲も最大4割も強化されていた。そう、そこには伏見宮に却下された筈の20インチ戦艦案に改造されていたのだ!
 問題は、それに要したコストであった。その項目を見た瞬間、嶋田は豚の悲鳴のような声を上げ、白目を剥いてひっくり返ってしまった。金剛はそんな嶋田を支え、必死に呼びかけているが、嶋田は口から泡を吹いたまま痙攣し始めた。流石に大和も尋常な事ではないと思い、軍医を呼ぶべく救護所へと走っていった。

 嶋田が読んだ、大和の改造にかかったコストは、鋼鉄45000弾薬30000という化け物じみた数字であった。そして、それは嶋田鎮守府の残り資源量を上回る数字であった。
 こうして嶋田鎮守府は大赤字のまま新年度を迎えることになるのであった。


おわり

473 :Monolith兵:2014/04/01(火) 06:38:59
憂鬱艦これ世界でも赤城さんは大食い&盗み食いの女王なのです。
それに辻ーんがぶちきれるお話でした。
嶋田鎮守府の大和は、改定前のあれです。改定後の大和から改定前(伏見宮に潰された案)の大和にバージョンアップ!一回の戦闘で4桁の重油と弾薬を消費するよ!入渠したら万いくよ!招いた提督は漏れなく破産するよ、というお話です。
憂鬱艦これじゃ、大和や大鳳を扱えるのは廃人級の課金厨ぐらいだろうなぁ。一方、一般の提督には敬遠されてそう。(´・ω・`)

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最終更新:2014年04月11日 20:25