490 :Monolith兵:2014/02/05(水) 00:52:13
※艦娘のキャラが(憂鬱世界準拠の為)崩壊している可能性があります。ご注意ください。
ネタSS「辻正信が鎮守府に着任したようです」 その2
辻政信が艦これ世界の鎮守府に提督として着任してから約半年、彼は次々と艦娘を建造・発見しては最適と思われるローテンションを組ませて彼女たちに経験を積ませて艦隊の増強に余念が無かった。その甲斐あってか、沖ノ鳥海域の攻略を成功していた。
そしてキス島撤退作戦に従事していたある日、出撃していた艦隊が帰還して辻に報告を行っていた時にその事件は起きた。
「第1艦隊ただいま帰還しました。」
「ご苦労様でした。負傷した艦もいるようですので、入渠してください。報告書はそれ以降でかまいませんから。」
辻は帰還した艦娘たちに労いの言葉をかけた。最初こそ辻正信が提督という事に反発をする艦娘もいたが、辻が艦娘を大事にして、資源運用を上手にこなして順調に戦力と補給の増強をこなしている姿を見て、殆どの艦娘は辻の事を見直していた。赤貧に喘いだ日々は、そして戦後の大軍縮は日本の為に必要な事であり、自分たちは退役したり解体されたりしたが、確かに日本の発展の為に活躍できたのだという自信を取り戻していた。
「今回の出撃ですが、新たな艦娘を保護しました。」
「ほう。それは嬉しいですね。」
辻は心の中で、ニーソックスの似合う艦娘だと嬉しいですね、と心の中で呟いた。そんな辻の心の声を知ってか知らずか、第1艦隊旗艦の阿賀野は新たな艦娘を紹介した。
「阿賀野型軽巡洋艦酒匂です・・・って!辻政信ぅ!?」
「・・・その反応ももう慣れましたよ・・・。」
流石に毎回のように魔王やら辻ーんやらと驚かれていたら慣れるというものだ。
「あっあっ・・・、な、何でもしますから、私の姉妹たちはもうう、売らないで下さい。解体しないで下さい。お願いします!」
酒匂は衆目の中土下座をして懇願した。流石の辻もこの反応は想定外で顎が外れんばかりに口を開いてしまった。
「え、ええと、どういうことですか・・・?」
そんな疑問を口にした瞬間、辻は前世で生き残った阿賀野型をイギリスに売り払ったりした事を思い出した。姉妹の殆どが沈んだ上に日本を裏切ったイギリスに売られたという経歴は、戦後海上保安庁で巡視船として活躍した酒匂にとって辻に複雑な感情を持たせるには十分であった。
その予想は間違っていないようだった。
「酒匂ちゃん、大丈夫だよー。辻提督はそこまで非道じゃないよー。」
そこで助け舟を出したのは、酒匂の姉であり阿賀野型軽巡のネームシップである阿賀野だった。彼女は第二次世界大戦中に戦没したために妹たちが戦後どのような運命にあったかは直接は知らなかったが、それでも辻の事は責められなかった。
なにより、裏切り者のイギリスに売られたとしても、結果としてそれは日本の為になったのだ。
「お、お姉ちゃん・・・?」
酒匂は信じられないようなものを見たかのようにうろたえていた。
「だ、だったら、売られもしないし、解体もされないし、身包みはがされたりもしないの?」
「・・・大丈夫よ、多分。」
阿賀野は妹の身包みはがされるという発言に軽く辻を睨んだが、再び妹を宥めにかかった。それに安心したのか、酒匂は見事な敬礼をして姉と共に執務室から出て行った。これで、彼女とも解り合うことは出来るだろう。
「・・・私って、そんなに非道に見えますか?」
毎回見られる光景とはいえ、流石の辻も堪えたのか、傍らに立つ大鳳に尋ねた。ちなみに今日の秘書艦は先程出て行った阿賀野だったのだが、妹に会えて嬉しい気持ちもわかるので、辻は今回の職務放棄は不問にする事にしようと思った。ただ、その代わりにこれからは妹ともども黒ニーソを履かせようと心に決めた。
「ご自分の胸に聞かれてはいかがでしょうか?」
辻の大盤振る舞いによって建造された大鳳といっても、同僚達の心の内を考えれば無条件で辻を擁護する事はできなかった。それほど、海軍内での辻に対する評価は厳しいものだったのだ。
「何で私がこんな目に・・・。トホホ・・。」
辻は胃の辺りを摩りながら弱音を吐いた。大鳳はそんな辻を尻目に書類仕事を手伝うのであった。
491 :Monolith兵:2014/02/05(水) 00:52:54
おまけ「今日の嶋田鎮守府」
艦これ世界に来た嶋田は、乗組み経験のある艦娘とそうで無い艦娘との間に挟まれて胃を痛める日々を送っていた。
だが、大和が嶋田鎮守府にやってきてからはそれも緩和されつつあった。彼女はそこにあるだけで凄まじい威圧感を放ってはいたが、寡黙で心優しかった。故に、嶋田の事を考えて二派の間に立って、その仲立ちをしてくれるようになっていた。その結果、確かにしこりこそ残っているものの、以前とは比べ物にならないほど意に優しい鎮守府に生まれ変わっていたのだ。
嶋田はそんな大和に感謝し、色々と便宜を図っていたのだったがそれが彼女の策略とは気がついていなかった。彼女もまた、嶋田を慕う一人なのである。
それはともかく、そんな嶋田鎮守府にあって嶋田の受けるストレスはやはり大きなものだった。いくら大和がストレス源を小さくしたといっても、通常業務だけでも激務なのだ。もっとも、それも大和を始めとする艦娘たちが提督業務の補佐を買ってくれている為に、徐々に小さなことになっていた。
それゆえに、嶋田は日に一度は散歩をする事ができるほどになっていた。
これは、そんなある日の出来事である。
「今日もいい天気だな。」
嶋田は昼食後の腹ごなしに鎮守府の周りを軽く散歩をしていた。ここ数日晴天が続き、出撃や遠征も予定通りこなせていた。
軍港では妖精さんたちが艦娘の本体である艦体を駆け巡って整備を行い、一部の艦娘は日光浴をしていた。
その時、嶋田は声を掛けられた。
「ヘーイ、提督ぅ。こんな所で会うとは奇遇ネー。」
「金剛か。どうしたんだ、その荷物は?」
嶋田に声をかけたのは金剛だった。彼女はこの鎮守府で数少ない常識派であり、大和が来る以前の嶋田争奪戦には参加せずに愚痴を聞いてくれたりしてくれていた。もっとも、流石に派閥抗争の仲立ちなどできる力は無かったが、それでも嶋田は金剛の存在をありがたく思っていた。争奪戦に参加しないというだけでこの鎮守府ではとても貴重な存在なのだ。
「ワタシは、ペットたちの世話しにいくのデス。良かったら提督もどうデスカ?」
「それはいいな。」
金剛がペットを飼っているというのは始めて聞いたが、動物と触れ合って癒されようと思い金剛に付き合うことにした。暫く歩き、鎮守府の外れに柵があり、そこに金剛はペットを飼っていた。
「ペットって・・・これが?」
「そうデース。可愛いでショウ?」
「へー、確かにかわいいな。」
嶋田と金剛の視線の先には柵の中にいる2頭の白くてメェーと鳴く動物、ヤギがいた。そう、金剛のペットとはヤギだったのだ。
「この2頭は番で、その内数が増えるヨ。そうしたらミルクも取れるカラ、提督におすそ分けも出切るネー。」
「あ、ああ。」
金剛の言葉に嶋田は生返事で答えた。金剛はそんな嶋田に気がつかず、柵の中に入ってヤギの世話を始めた。
そんな金剛を見ながら、嶋田は先程考えてしまった事を必死に頭から追い出そうと躍起になっていた。
(いくら金剛がイギリス生まれだからといって、ヤギなんて・・・。いやいや、これはただの偶然だ。)
「提督もこっちに来たらイイヨ。実際に肌を合わせたほうがこの子達もも喜ぶネー。って、もう駄目デショ。」
金剛が喋っていると、ヤギがじゃれ付き始めた。更には、スカートを口で引っ張る始末だ。
(は、肌を合わせるだと!やっぱり金剛は・・・。)
それを見て嶋田は更に疑惑を深めていった。
「え、ええと、金剛は何でヤギを飼い始めたんだ?」
「え?それはその・・・。(提督の癒しになったらイイなぁトカ、一緒に世話をしたいなぁトカ言うのは恥ずかしいデース。)」
急にもじもじし始めた金剛を見て嶋田は疑惑を確信に変えていた。やはり、金剛はそういう目的でヤギを飼っていたのか!?
これまで数少ない常識人として見ていただけに、この出来事は嶋田にとって衝撃だった。
(例え、生粋のイギリス人では無いとしても変態紳士の国の習慣は染み付いてしまうというのか!?)
「提督?」
「あ・・・、すまん!お前の趣味は否定しないが、俺には無理だ!?」
気付けば嶋田は一歩後ずさっていた。それに気付いた金剛は声をかけるが、嶋田はそう言ってその場を走り去っていった。金剛はその後姿を見て何があったのか解らずただ呆然と立ち尽くすだけだった。
それ以降、嶋田は露骨に金剛を避けるようになった。それは、金剛が泣き付いた大和が嶋田と話し合いの席を作るまで続くのであった。
おわり
492 :Monolith兵:2014/02/05(水) 01:02:35
辻ーんは海軍からかなり嫌われていると思います。そして艦娘も。
ただ、流石に艦娘たちも日本の境遇を考えると、大規模な軍縮を進めた辻ーんの行いは理解しているので、反発はしても反抗はしないと思います。
旧式艦や戦時急造艦は、戦後装備を身包みはがされて売り飛ばされるか退役させられたので、複雑な感情を持っているのではと思います。でも、初対面だとこういうこともあるよね。
そして、嶋田さんが金剛の事を誤解していくお話。イギリス海軍が日本海軍に軍艦引き渡す時に、ヤギもついでに乗っけていたという話は有名ですが、それが巡洋戦艦金剛でもあったらしいという話があります。
というわけで、金剛にはヤギを飼ってもらいました。別にそれ用じゃないよ?ただのペットだよ?癒されたいだけなんだよ?
後、艦娘はアルペジオ方式で行きました。艦娘の本体の艦があり、艦娘はそれのインターフェースという位置づけです。艦娘自体が戦闘するのは色々嫌だし。
最終更新:2014年04月11日 20:28