774 :Monolith兵:2014/01/26(日) 15:07:43
※艦娘のキャラが崩壊している可能性があります。ご注意ください。

ネタSS「辻正信が鎮守府に着任したようです」


 辻正信は死後地獄に行くことを覚悟していたが、何の因果か彼が行くことになったのは艦隊これくしょんの世界だった。
 当初その事を喜んだ彼だったが、すぐさま辛い現実を叩きつけられた。

「提督が鎮守府に着任しました。これより艦隊のぉっ!って、大蔵省の魔王!?」

「ほぉ、その二つ名はともかく私のことを知っているとは嬉しいね。」

 目の前の艦娘が自分の事を知っていることを知り顔を綻ばせる辻だったが、次の言葉に彼は奈落の底に叩き落された。

「知ってるわよ!あんたたちのせいでっ!私たちがどれだけ苦労したと思ってるのよ!!」

 それは余りにも予想外の言葉だった。彼女が建造された1930年前後の海軍は予算不足にあえぎ、新造艦の建造は殆ど無く、古い艦を騙し騙し使っている時期でもあった。第2次大戦前夜から大規模な軍拡を行う事になるが、それまで海軍は赤貧に喘いでいたのである。
 それらの苦労は結果として日本の為になったとはいえ、貧乏な記憶は深く彼女の記憶の中に刻まれていたのだ。

「い、いや、あの時はですね。日本の国力を上げるために軍縮を推し進めるしかなくて・・・。」

「解ってる、解ってるわよ!だからって、許せるわけ無いでしょ!海軍の皆は、私たちを満足に動かそうって苦労していたのよ。服も中々支給されずに、食事の質も少し落ちて、それでも皆私たちのために・・・。」

 それらは全て辻を含む大蔵省が予算を減らした為に起きていた事だった。とはいえ、海軍もそれを受け入れた結果のことではあったが、貧乏の恨みは深いのである。

「将来起きる戦争で日本が勝つ為にはああするしかなかったのです。それで君たちが苦労した事は同情しますが、私は謝りません。私は間違った事はしていません。それは、第二次世界大戦や太平洋戦争での日本の勝利を見れば解るはずです。」

「解ってるわよ!だから一応は貴方の命令には従ってあげるわ。感謝する事ね。でも、またあの時のような目に遭うようなら私にも考えがあるんだから。」

 そう捨て台詞を吐いて、叢雲は執務室から出て行った。残ったのは辻と執務机の上に積まれた書類の束だけであった。

「やれやれ、前途多難そうですが・・・。これから来る艦娘の中には私と仲良くなれる子もいるはず。ああ、こちらの世界にかつての同士が来ていないか調べる必要がありますね。本当にやる事が多い、忙しくなりそうです。」

 そう言いながら書類に目を通していった。
 しかし、辻は貧乏人の僻みを軽く見ていた。
 これから先、辻は多くの艦娘と出会っていくことになるが、赤貧時代を過ごした艦とそうでない艦とで二派に分かれてしまい、多大な苦労をしていく事になるのであるが、その事を彼はまだ知らなかった。


おわり

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最終更新:2014年04月11日 20:30