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238. 189 2011/11/19(土) 02:05:49
続きを書いてみました。
ひゅうが氏やぽち氏とはちょっと別ルートですが、私的妄想ですのでどうかご堪忍の程をお願いします。


その日、元宰相嶋田繁太郎は憂鬱であった。

長年、その重責とメンバーの奇行のせいで胃痛の種と化していた夢幻会の会合が久方ぶりに開かれるのだ。
現職当時は欧州戦に対米中戦と立て続けに大戦争が起こり、その全てに勝利を収め、さらには戦後の枠組みまでも
作り上げた大宰相とも言われる嶋田も会合の面々だけは最後まで御せなかった。
いや、正確に言えば彼等から顎で使われたといっても過言ではないかもしれない。
そんな会合である。憂鬱になるのも仕方がないといえた。

「会合が開かれるということは、相当な変事が起こったということか。大陸の件なのであろうが
もう老体のこの身にいくら働かせれば連中は気が済むんだ……。」

都内某所。そこはまるで老人会の集まりのようになっていた。もっとも、集まっている老人達は皆「帝国の元老」とも言える面々である。
「やぁ東條さん。まだ生きてたのか。相変わらず不幸そうな顔しているね。」
「当たり前だ、ひ孫の顔を見るまで死ねんよ。」
等、ちょっと見ただけでは本当にただの老人たちなのであるが。

「ところで久々の会合だ、何があったのかね?」
嶋田がとりあえず昔のように場を仕切りだす。そこへ昭和の巨人と謳われた男が声を上げた。
「いえ、今回集まってもらったのは趣味と実益と我々の名誉をかけた一大スペクタクルを開催しようと思いまして。」
「それは大陸の一件か?」
「それも含めてのスペクタクルです。皆さんこの世界にはルパン3世やその一味、さらには銭形警部が実在していることはご存知ですね?」
「もちろん。我々以外のファンタジーが存在していたのだ、当時の会合でも分析にかけたではないか。」
「ええ、その時の会合では彼ら以外にファンタジーな存在は無く、我々の元いた次元との差異は彼らだけであることが判明しました。
そして、我々は彼らに不干渉ということも決めました。彼らが行う冒険活劇は我々に大いに娯楽を与えてくれ、それと共に政治的行動も取らせてくれました。」
「その彼らがどうしたというのかね。」
「我々は会合で『彼らには不干渉』と決めましたが、例外的に干渉することもあると決したのはお忘れではないでしょう。」
「……そうか、彼らのほうから我々に干渉してきたか。」
「ええ、しかも今回は上海に巣食う亡霊共も一緒にです。」
「さながら劇場版と言った所か。で、先の言い分だとルパンや亡霊の狙いも分かっているのだろう。」
「ええ、もちろん。狙いは『夢幻会の秘宝』ですよ。いやぁ、まさかあれがかの大怪盗に狙われるとは。」
「まさか、あんな物に……。」

嶋田は、正直こんな会合さっさと辞して家に帰り、猫のミケと遊んでいたい気分になっていたが、
上海の亡霊共も動くとなるとそうもいかないことも分かっていた。
それに、何を隠そう嶋田自身がこの騒動の元凶といっても過言ではない。
MMJや特撮オタク、それに巫女服愛好家等が国の中枢で巫女服かセーラー服かなんて論議され国家予算までついていくのだ。
そんな彼らの残した負の遺産達を後世に残すまいという嶋田のせめてもの抵抗が、徹底的な隠蔽と軍まで動員しての警護となったのである。

「我々の嫁はなんとしても守りぬかねばなりませんな!」
「MMJの活動の軌跡でもありますしな。」
「まったくそうですな。」
239. 名無しさん 2011/11/19(土) 02:09:07
嶋田は本格的に頭痛がするのを感じていた。
だが、気を持ち直し各人の発言を止め対策をとることにする。
彼としてもMMJ達の作品や裏帳簿を盗まれると困ったことになるからである。
主に孫の視線や孫の視線などで。

「何にせよルパンはともかく、上海の馬鹿達は黙らせなければいけなかったしな。これもいい機会だと思おう。劇場版だとすれば銭形君にある程度の権限を与えれば
ルパン達との対決の中で自然と上海ともぶつかっていく筈だ。ぶつからなければそう誘導すればいい。銭形君に与える権限だg……」
「陸軍は4個師団に近衛連隊を出そう!」
「海軍は陸戦隊に1個機動艦隊だ!」
「空軍は特別任務部隊に戦略兵団!それに1個航空総隊出すぞ!」
「うちは全警察官の指揮権はもちろん公安の使える奴すべて出すぞ!」
「なら、うちだって虎の子の作戦課の権限だ!」
「糞!外務省は各国へのあらゆる折衝、圧力なんでもやるぞ!」

再び会合が混沌としだす。そこに秩序を与えたのは昭和の巨人であった。
「皆さん、落ち着いてください。予算の件もあります。ここは陸海空三軍は
各特殊部隊と関東一円の一般陸上兵力。内務省は警察官の指揮権と公安の一部。情報省と外務省は提案通りの線で行きましょう。」

そうして喧々諤々の後、会合は散会となり部屋には嶋田と眼鏡の似合う禿げ上がった老人二人となった。

「しかし、お前にしては随分と気前がいいな。いくら上海の件があるとは言え。」
「いえ、上海の亡霊だけならば特殊部隊と適度な政治圧力だけですんだのでしょうが……。」
「彼らだけではないと?」
「ええ、未だに漢民族を宗主とあがめる時代錯誤がいますからね。」
「なるほど、朝鮮民族派か。」
「おや、ご存知でしたか。」
「私にだって目や耳はある。多少耄碌してはいるがね。」
「彼らがこれで我が国の本気を感じてくれればいいのですがね。」
「どう転ぶかは神のみぞ知るか。
ところで、陸軍の彼はああ言っていたが、近衛の連中は文句を言うのではないか?『我々は陛下の軍だ』とかなんとか……。」
「いや、彼らも自分達の今の立場を理解しています。快く銭形警部に協力するでしょう。」

戦後の大軍縮は近衛師団とて例外ではなかった。
彼らは師団から1個連隊へと削減され、なおかつ宮中警護、儀杖等は第一大隊、第二大隊が他部隊への教導隊的役割に
さらに第三大隊は高砂族等の日本勢力圏内に住む者で優秀ならば誰でも入れるという条件の特殊部隊とされていた。
もちろん猛反発(特に第三大隊に関して)もあったのだが陛下の「朕にとって平等な赤子を容れずして何の為の近衛か」との言で収まることとなる。

そんな彼らが表には出ることは無いが、確実に政府中枢から評価されるであろう特殊任務に対して首を横に振るはずが無かったのである。

「まぁ、なんにせよアレが表に出ることが無いよう祈ることにするよ。」
「私としては上海の連中が潰されればどちらでもかまわないのですがね。」
「……。」

そして嶋田の胃は荒れる一方なのであった。
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最終更新:2012年02月13日 21:03