SS投下~
休日世界
ルルーシュ・〔ランペルージ〕


ホントは怖いサクラダイト


ブリタニアの地質学者ジョセフ・フェネットの厚意によりフェネット家の居候となっていたルルーシュ・ランペルージは、昼下がりのリビングに流れた緊急速報のけたたましい音に、読んでいた本から目を離して、付けっぱなしであったテレビを見つめた

(なんだ?また公民党が何かやったのか?それとも舞朝新聞の汚職事件の続報か?)

ここ最近のニュースといえば最大野党日本公民党のスキャンダルか、マスコミ業界全体を巻き込んだ舞朝の汚職事件がトップを飾る事が多い。日本の直ぐ近くで今にも戦争が起こりそうな最中に何をやっているのかと憤りを覚える事もあったが、それは言い換えれば日本が平和である証拠とも言えた
日本が戦火に晒され亡国へと至った世界出身である彼には、馬鹿な政治家やマスコミに対する怒りと共に妙な安心感もあった

日本が平和だからこそ平和呆けした輩の愚かな行為もあるのだ

これが良いことである筈が無いのは百も承知なのだが戦火の日本しか知らない彼からすれば、こんな毎日がある平和な日本で良かったとさえ思えるのだから、人間一人一人立場の違いや生きてきた環境によってそれぞれ捉え方が異なるようである
但し、ルルーシュ・ランペルージの捉え方は乱世を生きていたからの物であり、家の主人であるジョセフや、ジョセフの娘で共にアッシュフォード学園日本校で学ぶ彼の同級生たるシャーリー辺りに考えを知られれば怒られること必死な考え方でしかない

そんな他愛もない事を考えながらルルーシュは画面に出たテロップを読む

「アフリカ解放を謳うアフリカ系武装組織によるノルウェー鉱山爆破計画発覚、内通者のユーロピア軍幹部逮捕」

ノルウェー鉱山とはノルウェーのサクラダイト採掘基地のことだ。近年急ピッチで開発が進むこの鉱山では足りない人手をアフリカから徴用してきた労働者で補っている
キツい鉱山での労働はユーロピアの民ではなく二等三等市民とでもいうべきアフリカ人がやるべき
極度な選民思想が根付くEUならではの事情だが、安い給料と劣悪な労働環境にアフリカ人の怒りは日増しに高まっている
EU内では実質的に発言力が無い植民地人扱いのアフリカ人の中には今回の事件のように武装闘争を選択している者も多く、元より利権と汚職で政治不信を招き、経済力が低下の一途を辿るEUの斜陽加減を表す要素の一つとなっていた

(まるでかつての自分が行っていた反逆行為その物だな)

行っている者が日本人からアフリカ人に。対象がブリタニアからEUに変わっただけで、アフリカ系武装組織がやっているのは理不尽な世界への反逆
一瞬、頑張れと、彼等への賞賛を心に浮かべたルルーシュであったが、ニュース速報が急遽ニュース特番に切り替わったのを見て疑問を抱いた

〔テラシマさん、テロ計画は未然に防がれたようですが、EU軍の幹部までもが関与していた今回のサクラダイト施設爆破計画は、下手をすればヨーロッパ全土が壊滅していたかも知れませんね〕

(な…に?ヨーロッパ全土が壊滅していたかも知れないだと!?)

ニュース番組の司会者が解説員に語った内容を聴いていたルルーシュの顔は驚愕に彩られていた

〔ええまったく恐ろしい計画でした。高い爆発性を持つサクラダイト施設を爆破などすれば、採掘基地の地下に眠るサクラダイト鉱石は勿論のこと、最悪鉱脈自体が連鎖爆発してヨーロッパ全土が文字通り吹き飛んでいたかもしれません。これはEU一国の問題ではなく世界全体の問題ですよ。EUの報道官はテロ組織に全ての責任があるとの発言を繰り返し強調していましたが、そもそも計画にEUの軍高官が関わっていたのが問題ですので――〕

テラシマという解説員が語るサクラダイト鉱脈爆破がヨーロッパ全土、最悪世界全体の気候を大きく変え、未曽有の大災害を引き起こしていた可能性があったという話にルルーシュは身体の震えが止まらなくなる

「ねぇパパ、サクラダイト鉱脈爆破テロが本当に実行されていたらヨーロッパが吹き飛んでいたって本当?」

ルルーシュと共にニュースを観ていたシャーリーが仕事の書類をチェックしていたジョセフに聞いた。ジョセフ・フェネットは地質学者故にサクラダイト関係の話には詳しい。彼がそうだと言うならばそうなのだろう

(否定してくれ…!)

願うルルーシュの脳裏には自分が行った富士山爆破の映像が蘇っていた。新しい人生をこの世界で歩むと決めた時より捨てた悪逆皇帝・魔神としての自分が起こした災厄が

〔この事件を受けて日ブ両政府外務省は武装組織とEU双方への非難声明を発表しました。会見で澤崎官房長官とブリタニアのコーネリア大使は次のように述べ――〕

「ん…、ああヨーロッパのテロか、」

書類から目を離したジョセフはニュースを観ながらシャーリーの質問に答える

「まあ、最悪の展開に至ればだが、ヨーロッパが吹き飛び地球規模の異常気象が起こっていた可能性はあるな」

「う、うそ、本当に?」

「ああ、それだけサクラダイトは爆発性・可燃性が非常に高く、爆発反応が連鎖した時の破壊力は想像を絶する事態を引き起こす危険な鉱物でもあるんだよ。現代文明には欠かせないエネルギー源であるのも事実だから採掘しない訳にも行かないがな」

ほぼすべての電化製品はサクラダイトがエネルギー源である。車も船も飛行機の燃料もサクラダイトであり家庭に供給されている電気も太陽エネルギーとサクラダイトの二つを併用している。つまりは切っても切り離せない資源なのだ

「普通に使う分には問題無いが未曾有の災害を引き起こす可能性も同時に秘めている。万能資源といってもそれなりのリスクはある」

「ふーん」

ジョセフとシャーリーの話を聴いていたルルーシュは喉の渇きに何度となく唾を飲み込んでいた
動悸と息切れも激しい。理由は言わずもがなだ

「ち、ちょっとルルどうしたの?!」

様子のおかしくなったルルーシュを心配したシャーリーが椅子から立って彼の背中をさすった

「あ、ああ、ちょっと気分が悪くて、」

「ルルーシュくん大丈夫かい?」

「え、ええ大丈夫です、」

「ルル…」

「大丈夫だよシャーリー……直ぐ治る」

真っ青な顔に冷や汗を浮かべながらも心配を掛けまいとするルルーシュの脳裏には噴火する富士山の光景が焼き付いて離れなかった

(何という事だ……俺は…、俺のエゴは、世界を滅ぼしていたのかも知れなかったのか………)

世界を一つにするための行動が世界の滅亡へ直結する物であったことを思い知らされたかつての魔神は、自身の愚かしさを改めて実感していた



〔いくら国内が不安定化しているとはいっても、サクラダイトの管理はしっかりとして頂きたい物ですね。次のニュースです。先日より話題になっております嶋田元首相を巡るユーフェミア・リ・ブリタニア皇女殿下とモニカ・クルシェフスキー卿の発言が各界を揺るがしており――〕



終わり~。ルルーシュはサクラダイトの危険性を知らなかった
裏は休日ダブルヒロインルート

休日氏の「また君を」が前提となったます

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最終更新:2014年08月18日 21:48