思いついたネタです。
ストパンネタです。でも制作者はストパンをチョコットしか知りません。
TSネタがあります。キャラも出てきますが、よく知らないので違ったらごめんなさい。
独自設定もありますが、それでもよろしければどうぞ。
あくまでもネタです。あしからず。
最終回です。
京都のとある場所。
そこにはもう何もなく。
既に森のような状態であった。
しかし広場のような中心には、赤い花を付けた椿が一つあるだけだ。
そんな場所にたった一人、女性が倒木に腰かけている。
「……それでね、辻は全く変わっていなかった。しつこく術士学校の事を聞いてね。」
九曜は手に持った木を、シールド・ブレードで削り取りながら虚空に語りかけていた。
語るのは家族が死んでしまってからの出来事だ。
けさ早くからこの場所にきて。
手短に丁度いい倒木を輪切りにして、そのまま彫りはじめた。
既に横には完成した木の人形が三つ。
大中小と並び、髪の長さや表情から男か女か判別できる。
そして今語りかけながら彫っていた木人形も、ついに彫り終わり、綺麗に撫でながら語り続けた。
「……もういいよね。」
私は頑張った。
何度も死のうと思い続けた。
家族が、愛する人がいないこの世は辛すぎる。
誰も彼もが自分を置いていく事が辛い。
老衰できない事が恨めしい。
病気で死ねばいいのだろうが、その兆候もない。
「私は、約束を守り続けた…」
あの人との約束。
―――ハァ…ハァ…『 』……
―――死なないで、私を一人にしないで!
―――済み、ません…でも、一人じゃ…ないでしょ?
―――いやだ!一人はいやだ!!
―――はは…相変わら、ず。ゴホッゴホッ!…ヒュゥ…ヒュゥ…泣き、虫さんで、すね
―――今度は南方に治せる人を探しに行ってみるから!そうすればきっと!!
―――『 』…
―――……なに…?
―――この国を…あの子たちの未来を… “守って” ください。
―――そして、長く…私の分まで、長く…生きて下さい。
―――えっ……?
―――済み…ません。先に…い…き……
―――え…ぁ………
―――■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!!
〔長く生きる〕
〔この国を守る〕
〔子供達の未来を守る〕
私は守ってきた。その約束を守る事考えて生きてきた。
それでも潰れそうになり、自殺をしようという考えが浮かんでしまう。
その度に【未来透視】が、強制的に“この扶桑国が滅亡する情景”を見せつける。
原作にない海を渡ろうとする巨大ネウロイの襲撃。
強大な自然災害。
これらの対処を九曜葛葉は全力でこなした。
巨大ネウロイは全て生物型であったが、海を渡ろうとしたことに驚愕しつつも殲滅する。
その度に肉体を酷使し、疲労がたまって休眠状態に入った。
自然災害はどうにもならなかったが、素早く復興と救助を行う。
富士の大噴火では、火砕流を急行した勢いそのままに魔力で強引に制御し、人気の無い方角に誘導し。
地震災害で負傷した民衆をいやすが、治療術の行使し過ぎでやはり休眠する。
休眠のせいで三人の子供の臨終が見れなかった。
いや、それは良かったのかもしれない。
見れば死にたくなった筈だから。
だがこの苦労も終わる。
天皇家に侍従長として仕え始めた頃に未来視した光景。
夢幻会メンバーがこの国を引っ張っていくのみた。
そしてそれが現実のものとなり、彼等は期待する通り改革を開始してくれた。
扶桑事変も、想定内の被害よりも少なめで終わってくれた。
だから、もういい。
人形を横に置き、立ち上がる。
手に持つは思い出の短刀。
「怒るかな…怒るよね…」
このまま自殺すればあの人は怒ってくれるだろう。
だけれでも、それが今となっては嬉しい。
もう一度会えるのだから。
二人で植えた椿の前に立ち、見上げる。
抜き放った短刀をそっと撫で・・・
首筋に当てた。
―――
――――――
―――――――――
「わぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
エイラは絶叫と共に飛び起き、今ままで経験した事が無いくらい心臓が動いているのに気が付かず。
何とか息を整えようと深呼吸を繰り返す。
「ハァ、ハァ…なんナンだ。アレは…」
起きる直前見た光景。
オバサマに手を伸ばし・・・その首が落ちた。
落ちた首からは鮮血があふれ出ている。目や口から、壊れた蛇口のように。
あたり一面が赤く染まり。
誰かがすがりついて泣いている。
自分の手を見れば、真っ赤に濡れて・・・
「なんナンだ!」
あれは【未来透視】なのだろうか?
あんなものを見たことなどない!
オバサマが常々言っていたことが思い出される。
『【未来透視】はけして幸せな未来を見る事は無い』
そもそも能力の発動が、未来に不安を抱く事から発生している。
だから“幸せな未来”を見ることは敵わないという持論であった。
だとするならば?
「オバサマに会わないト!」
思い立ち、すぐに二段ベッド上から降りる。
さぁドアから出よう・・・として困った。
場所がわからない。
そもそも扶桑国に来たの会いに来たのであって、成果が無い現状、会う事も出来ない。
呻いてどうしようとクルクル回り始める。
「…あれ?芳佳ちゃん…どこ?」
「ドウシタンダ?なにかアッタカ?」
自分が寝ていた二段ベッドのしたから、サーニャが眠い目を擦って現れた。
「芳佳ちゃんが…いない…」
「トイレじゃないノカ?」
ソワソワしていた気持ちもあり、二人はすぐ近くのトイレに向かってみる。
しかし・・・
「いないナ」
「…うん」
寮はそれほど広くない。三階建てで各階に2か所トイレがある。
その両方共にいない。
「マサか…外か?」
「どうしよう。寮長に怒られちゃう…」
「よし。サーニャは戻ってイルンダ。私が探シニ行く!」
「で、でも…!」
サーニャは渋ったが、結局エイラに任せることにし部屋に戻る。
彼女が部屋に戻るのを確認し、急いで昇降口に向かい靴を履いて出ていく。
鍵は開いていた。
中からしか鍵かかけられない構造なのに開いているという事は、外に芳佳が出て行ったという事だ。
理由は知らないが、急いで出ていく。
「クソ、どこだ!?」
寮の周りにはいない。
学校方面にかけ出し、校庭を過ぎようとし・・・異音を聞く。
「ん?…ナンデ駆動音が?」
良く聞く、昨日聞いたことのある音が、校庭に響き渡り始めている。
急いで音源に向かってみると目的の人物がいた。
「芳佳! 何やってイルンダ!!」
「………」
駆動音がうるさくなる距離まで近づき、怒鳴るようにいうが、彼女は何も答えない。
こちらに目を向け・・・一瞬誰だかわからなかった。
(本当に芳佳…ナノか? 雰囲気が別人ダゾ!?)
驚いて固まっているエイラをよそに、キ27- 97式訓練用戦闘脚を履いた芳佳は、視線を戻すとそのまま飛んで行ってしまった。
「え、アレ?芳佳はノッタことがナイハズじゃぁ…」
更に驚いて硬直していたが、慌てて隣のストライカーを履く。
今日の実習の為に置いておかれたストライカーは、簡単なシートがかけられていただけだったので、すぐに発進できる。
やっぱり出力がもの足りないが、頭を振って急いで後追う。
先行して飛行している芳佳はよほど急いでいるのか、かなり飛ばしているようだ。
「ドコに向かうキダ?」
エイラも飛ばしているが一向に追いつけない。
芳佳は初めて飛ばしているようには見えず。とても安定している。
追いつけないだろうが・・・見失う事もない。
そのまま飛行し続けこと数時間。
暗かった空は明るさをまし、太陽が昇っている。
天測をしてみると、どうやら西に向かっているようだ。
「…ん? 西? 実家に向かってイルンジャないノカ?」
何個もクエスチョンマークが浮かんで消える。
芳佳の目的がさっぱりわからない。
無理をすれば追いつけるかもしれないが、訓練用のコレではすぐに駄目になってしまう。
それに・・・
(ナンだろうな? 後にツイテいけばイイ、っていう安心感がアル…)
良くわからない感情を秘め、エイラは後をついていく。
山を越え、谷を越え・・・ようやく芳佳がホバーリングで停止したのは、どこかの街の上空だった。
「おーい。モウ逃走はオワリカ?」
近づいて話しかけるが、キョロキョロと辺りを見回すのに忙しいのか返答をしない。
「…どこ?」
「イヤ…私がキキタイ位なんだケド……」
ようやく口を開いてもらえたと思えば、思ったのとはまったく違う。
「お母さん、どこ?」
「ハッ?」
お母さん?
それなら神奈川の方だろう?
そう思って手を肩に伸ばすが、スカって前の目に倒れそうになる。
慌てて体勢を整えると、再び飛行時始めた彼女の後を追う。
もう何が何だかわからない。
芳佳は何度も立ち止ってはあたりを見回す。
その行動はだんだん多くなってる。焦りを覚え始めているのか、遂には立ち止まらずに飛行しながらクルクル回り始めた。
「お~い、ソロソロ帰ろう。」
呼びかけるがまったく応答しない。
溜息をついて地上を見下ろす。
すると・・・見覚えのある地形が見え始めていた。
あれ?と思い。よくよく目を凝らしてみると・・・
「…オバサマとの夢にデテイタ町並み?」
その町は、遠くに見えていた町並みに酷似している。
その事に気が付き、芳佳に尋ねようとし
「あった!」
目的のものを探していたものを発見した芳佳は、叫んで最高出力で飛行し始めた。
「あ、おい! マテ!!」
エイラも慌て後を追う。
猛烈な勢いで飛行し続ける芳佳、その後追うエイラ。
訓練用ストライカーはそれほど強くない、このままでは壊れて墜落してしまう。
それを回避するために追いつきたいのに追いつけない。
沸き起こった焦燥感をなだめつつ芳佳から目を離さなかった。
だから見えた。
鍛えられた視力で、
良く知る人物が、
赤い花をつけた木の前で、
後ろ姿が見えた。
「オバサマァァァァァァァァァ!!」
―――
――――――
―――――――――
魔力を程々に込めた短刀は、鉄すら豆腐同様に切り裂く鋭利さを手に入れている。
だから一瞬で胴体から首を切り離せられる。
そうすれば死ねるだろう。
(あ、そういえば。首だけになってもし、ばらく生きていられるんだっけ?)
そうなっても構わない。
どうせ痛みなく死ねるとは思っていない。
だから力を込めてようとして、その声が聞こえたことに驚愕する。
慌てて振り返ると、上空にエイラと芳佳が全速力で向かってくるのが見えた。
驚きで思わず短刀が首から離れる。
「いまだ!」
「っ!」
近くの茂みから誰かが飛び出してきた。
今まで積み上げてきた戦闘経験が瞬時に構えを取らせる。
だが飛び出してきた人物は思いもよらない人物だった。
「や、山本!?」
「うぉぉぉぉぉぉ!!」
なんでここに山本五十六がいる!?
夢でも幻でも無く、親友が走り込んでくる。
ここまで近づいていることに気が付かなかったのは失態だ。
思ったよりも物思いに深けってしまっていた。
すぐに短刀を構えようけれど、エイラと芳佳がいる前で死ぬなんてできない。
頭が混乱し始め、その場から飛び去ろうとする。
「とったどぉぉぉぉぉぉ!!」
「っぁぁ!」
急に短刀を持つ腕に重量が加わった。
飛びついてきたのはこれまた予想がない人物。
冨永恭次が、短刀を奪い取らんと奮闘する。
「邪魔だ!」
「アイキャンフラァイィィィ!」
魔力を込めて振り回すと簡単に吹っ飛んでいく。
少し大人げなかったか?
と思ったのもつかの間、山本がタックルを敢行した。
「せぃ!」
「あぐぅ!」
溜まらず吹っ飛ぶ。
しかも短刀を手放してしまった。
慌てて掴み取ろうと手を伸ばすが、それよりも先に取られてしまった。
「やれやれ…間一髪でしたね。」
「辻……どうして…」
「どうして? それは我々が聞きたいです。」
首をもぎ取るか?
思ってみたが、すぐに無駄と知る。
周りを見回せば、見知った転生者が何人か取り囲んでいた。
「あ、あれ。不味いぞ!」
取り囲む一人が上を指して叫んだ。
指す方向を見ると、ストライカーから黒煙が噴き出して墜落するエイラと芳佳の姿があった。
九曜は目を見開くと同時に飛び出した。
魔力を最大限込めた脚力で地面を爆発させるように蹴り上げ、二歩目で中二飛び出しシールドを円柱状に展開し、それを掴んで腕力で加速する。
エイラは芳佳を庇うように頭を抱えながら落ちている。
それを【念動】で掴む。
ユックリと勢いを殺すように・・・そっとスピードをおとしていく。
そして二人を空中で抱き留めた。
「エイラ…大丈夫?」
僅かに震えている彼女に、優しく語りかける。
ぬくもりを感じて安心したのか、顔をあげてこちらと目が合った。
「やっと…会えたんダナ…オバサマ」
―――
――――――
―――――――――
二人をおろし、壊れたストライカーを脱ぎ捨てさせて一息ついく。
皆思い思いの場所に陣取り、自殺しないように視線を九曜に合わせる。
九曜の右手にエイラが、左手に芳佳が。
前には辻正信と、山本五十六が倒木に座っている。
「それで、なぜ自殺を?」
「…私は、私は生きた………生き続けた。」
項垂れいるが、告白し始めた思いは・・・重いモノであった。
文献により、己が不老になった事。
子供達が己よりも先に死んでい苦悩。
“化物”になってしまった恐怖。
遠き過去の孤独。
思いを打ち明け、寄り添った最愛の夫との死別。
誤解から生まれた“親しき者の拒絶”のトラウマ。
子供達の記憶を封じてしまった罪。
この国を、扶桑を見捨てれば滅んでしまうという重責。
様々な思いが語られていく・・・
「わからないだろう? お前達にこの思いが!! 苦しみが!!! 孤独がわかってたまるか!!!」
叫びが周りを打ち据える。
「私は頑張ったんだ。四百年近く戦ってきた。守ってきた。もう…楽になりたかった。」
思い。
重い。
告白は誰にも責められるものではなかった。
不安げにエイラが九曜を見つめる。
「オバサマ…私と会うのは、イヤだったノカ?」
「……直接あえば、情がうつるとわかっていた…」
「ワタシとの出会いは…いやd「そんな事は無い!」……」
「嫌じゃないわ。あの出会いは偶然だった。でも、あの…子の……」
涙を流すの見て、エイラは自分が嫌われていないと確信できた。
「たとえ、あの子の子孫でなかったとしても、貴方を嫌う事は絶対に無い…」
「オバサマ………」
優しく頭を撫でてくれる九曜に甘えるように抱き着く。
少し疑問に思う事が出来たが、それは後で聞けばいい。
今はいっぱい甘えたい。
エイラの様子に苦笑し、隣で手をつないでいた芳佳だが、手を放して九曜の前に立つ。
「…あなたは…」
「あ、コノ子は宮藤芳佳って言ウンダ。コノ国で出来た、初めてのトモダチだぞ!!」
「そうなの…」
エイラの髪を優しく撫で、芳佳と目線を合わせる。
「……」
「えっと…なにかしら?」
芳佳は何か言いたげなのだが、ソワソワして落ち着かない。
何だろうと疑問に思う。
もう一度声をかけようと口を開くと、頷いて九曜の顔を見た。
「…お母さん」
「お母さん?」
「え、もしかして隠s ―ドゴォ― グハァ!」
「宮藤さん、私は貴方のお母さんじゃないw「〇〇だよ。覚えてないの?」え…」
その名前は、かつてあの子にあげた名前。
まさか・・・
「私がわからないの?」
「え…ぁ…だって……」
だって・・・記憶を消したはず!
「うん。それはさっき聞いたよ…正確には“お母さんに関連する記憶を思い出さないように封じた”だよね?」
「っっ!!」
九曜は記憶操作できない。
しかしシールドの魔法の応用で封じる事は出来た。
離れても維持できるよう、魔力を込めたお守りを“肌身離さず持っている”という暗示の魔法も、かけてあったはずなのに!
「私は魔力があったせいなのかな?死ぬ二年前に記憶が戻ったんだ。
慌てて屋敷を確認しに行ったら、もう何もなかった。
お姉ちゃんの記憶も戻してみたけれど、お母さんがどこにいるかわからなかった。
だから私は賭けに出た。
お母さんがやったように、私は魂をお守りに封じた。
この時代に起きたのは・・・おそらくエイラさんのお蔭だと思う。
夢で会っていたおかげで、お母さんの魔力を感知できたから。
宮藤家が女系だったから。
お母さんに会えたんだと思う。」
思わぬ告白に九曜は硬直した。
死んだはずの子供が、魂を封じてまで自分に会える機会を待っていた。
それは嬉しいと思うと同時に、恐ろしい事だった。
「お、お前は怖くないの?」
「なにが?」
「わ、私は……私は化物なのに……」
言った。言ってしまった。
我が子に忌み嫌われるくらいならば・・・いっそ自分から離してしまえばいい。
あの時の様に・・・
だから覚悟を持って言った。
しかし・・・回答はビンタと言う形でなされた。
はたかれ、唖然としつつも顔を戻すと涙を流す〇〇がいた。
「なんで、なんでそんなこと言うの!」
「〇〇…」
「私がお母さんを嫌う訳ないじゃない!
確かに記憶を消したのは許せない!
信用して貰えなかったのが許せない!
でも…一回でも化物と思ってしまった自分が、絶対許せない!」
ぬぐっても、ぬぐっても、涙は流れ続ける。
「お姉ちゃんも後悔していた。
なんであの時「綺麗だね」なんて言ったのか。
なんであんな視線になっちゃったのか…
後悔していたんだよ…」
涙声で話す芳佳の姿は、あのころの・・・あの子の姿になっていた。
ああ、自分はやっぱり母親失格だ。
こんなにも愛されていたのに自分は恐れてしまった。
突き放してしまった事は今でも後悔している。
それでも子供達の将来を思い、決断したのは間違いないと思っている。
だから・・・だから・・・そっと抱きしめた。
「ごめん…ごめんね。こんなに弱いお母さんで…」
「ヒッグ、ウェェェ…」
腕の中で泣く姿は自分と同じ、泣き虫の次女だ。
エイラは話についていけず混乱していたが、なんか感動したのでもらい泣きしている。
「なるほど…だとするならば、あの子も相当心配していたのでしょうな。」
目の前で見続けていた辻はぼそりとつぶやく。
「いい雰囲気の所申し訳ない。」
「…何かしら……?」
「我々がここに集まった理由ですよ」
そういえば聞いていなかった。
〇〇を宥める様に背中をさすりながら聞く。
「我々はね。夢でお願いされたのですよ。」
「…夢?」
「ああ、そうだ。」
山本が腕を組んでいう。
「寝に入ったらな。いきなり木の下で血まみれになっているお前がいたんだ。
何事かと思っていたら、倒れているお前の横に見知らぬ女性がいるじゃないか。
訪ねてみたら「お母さんを止めて!」って叫ばれて、慌てて起上ったよ。」
続いてよく話した女性転生者が苦笑する。
「そうなのよね。
なんだろうと思っていたら、同人一緒に作っていた子も見たって言うし…」
「なぜか気になって駅に行ってみたら、示し合わせたようにこのメンバーがいたんですよ」
東条英樹が頷く。
「フッハハハハハハ!
だが、皆場所がわからんかったようだ。が!!
俺は常に夢を自在に見える訓練をしていた上に、その記憶を覚えていられるようにしていたのだ!」
冨永はうるさい。
辻が未だに笑い続ける冨永に石を投げて黙らせる。
「…まぁ彼の記憶を頼りに、私が推測して此処に来た。これが真相ですよ。」
こんな不確定要素で動くなんて、今ままでありませんでしたよ。と苦笑した。
ここに来た理由はわかった。
そして恐らく、泣いて止めるよう頼んだ子は・・・
「その子は…髪が長くなかったですか?」
「ええ、そうでしたね。」
「手の平に傷がありませんでしたか?」
「あったような気がするが・・・それがどうした?」
山本が肯定した手の平の傷。
昔、あの子が誤って、あの人の短刀で傷つけてしまった傷痕。
「その子は…私の長女です。」
長女は市井に消えていったのは知っている。
そして子宝に恵まれたのも知っている。
恐らく・・・ここにいる夢幻会メンバーの祖先に、長女がいるのだ。
その長女まで出てきて止めた。
「あ、あのさオバサマ…」
「何…エイラ?」
「モウ自殺なんてシナイヨナ!?」
「それは…」
言葉に詰まる九曜を見て、エイラは涙目になりながらも怒った表情を見せた。
「約束ダ!私、絶対にオバサマを嫌いにナンテならない!!」
「俺達もだ。」
山本が笑う。
「二度転生するなどめったにありません。それを言うならば私達も十分化物です。
ほら、お仲間ですよ。」
辻が怪しく笑う。
私は・・・私は・・・
「私はどうすれば…」
「さあな…こればかりはどうにもならんよ。だがな、今までよりは楽なんじゃないか?
子供には嫌われていなかった。
俺達は感謝している。
十分報われていると俺は思うぞ。」
山本はそういうと立ち上がった。
辻も立ち上がって、お尻を叩いている。
「さて、もう大丈夫そうですし我々は帰りますかな?」
「そうだな。」
「仕事途中なのよね」
「ある意味、仕事をほっぽって来たからな」
「俺なんて海相なのだがなぁ」
メンバーがそれぞれ立ち上がり、この場を去ろうと歩き始めた。
慌てて〇〇を抱えたまま立ち上がる。
気が付いた何人かが振り返る。
「…こんなこと言えた立場じゃないけど……ありがとう…」
ただ、お礼を言いたかった。
深く、深く礼をする。
エイラも、〇〇もお辞儀をする
その様子に皆苦笑して手を上げたり、「どういたしまして」と言って去っていく・・・はずだったのだが、冨永が急いで戻ってきた。
「おい! 俺達は一応お前の子孫という事なのだよな?」
「ええっと…そうだけど」
いきなり何を言ってるんだコイツは?
戸惑いながら肯定すると、なぜか雄たけびを上げてよ転びだした。
奇声を上げる目の前の人物を恐れた両脇の少女たちが抱き着く。
「ならば!!俺にも“ウィッチ”の要素があるのだな!!!」
「っへ?」
混乱している頭で考える。
私→長女→長女の子供→世代が続いて→冨永恭次に・・・
あれ?
ちょっとまて。待ってほしい。
あの子から・・・●●からコイツが生まれた?
「そ、そんな…」
「オバサマ!?」
「お母さん!?」
二人が支えてくれるけど、フラフラと後ずさってしまう。
いや、確かに自分の技はネタが多いけど・・・けして厨二病だからじゃない!
というか信じたくない!!
「御婆ちゃん!魔力、教えておーくれ!!」
「だまりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
思わず冨永を雷撃で打ちのめし、劫火で火あぶりにし、氷漬けにし、念動で吹き飛ばしたのは間違いでないはずだ。
だから同情的な視線を向けないでほしい。
憐れみを向けないで!
「ふ、ふ…不幸だァァァァァァ!!!」
―――
――――――
―――――――――
結局、九曜葛葉は皇居に戻った。
その際陛下に呼ばれ、顔を叩かれたが仕方がない事だ。
ただ予想外なことに涙を流されたのは慌てたが・・・
皇女陛下も飛び出してきて、九曜をポカポカ叩いてわめいた。
それを諌めるのにも苦労した。
残しておいた遺書は無かったことにされ、そのまま業務を続けることとなる。
その翌々日、九曜はエイラと芳佳・を連れて転生者が経営しているお店に向う。
常に尻尾と耳が出ている上に白いので非常に目立つが、結界を張って強引に買い物行った。
孫馬鹿がここにきて爆発している・・・ようだ。
他にも工区を除いたり。
宮藤博士を訪ねたり(九曜は隠れた)。
倉崎翁にエイラが気に入られ、戦闘脚を送る約束をしたりした。
陛下の許可を得て皇居内に有る自分の部屋に招待し、昼食を身内三人で摂る。
その際、
学校に帰ったら凄まじいお説教が待っていた事。
正座のしすぎで二人で悶絶した事。
寮すべてのトイレ掃除をその日一日かけて行った事。
友達、主にサーニャが泣いて芳佳に縋り付いた事。
等を話した。
〇〇の魂はそのまま成仏したようだが、記憶と思いを芳佳は継承していた。
次女も“ウィッチ”だったが、どちらかというと戦闘系だったので相性はあまりよくないらしい。
代わりに歌唱力が多少付き、呪歌が多少うまくなったようだ。
そして二人を学校まで送り届け、その日の夕方、エイラは扶桑から旅立った。
最後に迷惑を掛けたことをあやまったが、本人は気にしていないと言う。
お土産に、シールドを即座に張ってくれるお守り(魔力がある限り永続)と、掲げて魔力を送れば簡単なキズなら治療してくれるお守りも渡す。
さらに料理のレシピ本までおくる。
この好意には、さすがのエイラも苦笑するしかなかった。
―――
――――――
―――――――――
九曜は夢を見る。
あの懐かしい屋敷で、あの庭で子供たちが遊んでいる。
縁側で夫婦揃って座り、その光景を見つめている。
―――済みません。
―――何がですか?
―――縛り付けてしまったことにです。夫として、失格ですね…
―――ふふ…だとしたら私達は揃って、間違ってしまったんですね。
―――ああ、そうですね。
―――……
―――………
―――ありがとう。たとえあれが縛ることになったのだとしても、それで頑張れたから。
―――…そう言っていただけると、嬉しいですね。
九曜は立ち上がる。目の前から子供達がいなくなり、庭も消えた。
振り返ると、大きくなった子供達と亡くなる直前の夫の姿がある。
―――行ってきます。
―――行ったらしゃい。
―――もう少し言おうぜ●●姉ぇ… あー、頑張って!
―――貴方も変わらないわよ…お母さん、好きだよ。
子供達が別れを告げていくと消えていく。
最後に二人だけになった。
―――…
―――…
―――心配かけちゃってごめんね。
―――いえ、やぱっり…
―――貴方は、貴方だ。私の愛する『 』です。それは何も変わらない。
―――だから待っています。たとえ地獄へ行こうとも、その前で待っています。
―――はい。待っていてくださいね。
夫も笑顔で消えていった。
これは自分の妄想が産んだ夢なのかもしれない。
だが、新たな決意は前を向かせてくれるのに十分だ。
揺らぐことはあるかもしれない。
だって生きているんだから、揺らぐのも仕方がない。
でも・・・
しっかり生きていこうと思う。
さぁ!
前を向いていこう!
以上で憂鬱×ストパンは終わりです。
最後もかなり駆け足・・・というか、嶋田九曜さんの悩みや苦悩が全く書けなかった。
足りない脳みそではここが限界(泣
そして明かされた長女の子孫は、夢幻会メンバーの一部の人達でしたwww
やったね九曜さん。冨永がしs〔何かに潰されたの血痕しかない〕
復活! 嶋田九曜さんの子孫にエイラが上がった際、すぐに子供三人が浮かび上がりました。
わかる人にはわかるかと思いますが、家族構成がギアス版の○ニカルートを参考にしています。
しかし名前は付けていません。あえて名前を付け無いスタイルで行ってみました。
結果は・・・予想以上に難しかった・・・
名前表現できないからきついのなんのってなぁ。
そして今回でトラウマが解消されました。
今後は多少心穏やかに過ごしていけるでしょう。
そして今回のオリジナル設定。
非公式のネウロイ渡海行動撃退です。
この戦闘は完全に秘匿されたものです。誰も知らない所で嶋田九曜さんは殲滅戦を展開していました。
戦国時代以降は、これと言った戦闘が少なくなってく予定だったので、戦闘経験を積ませるために非公式襲撃を思いつきました。
幕府に心配かけない様に、洋上で全力戦闘しています。
三度襲撃があり、一度目は大量の足による渡海方法を用いた船舶型。
二度目は飛行する空母のような鯨型。
三度目は速力を重視したカジキ型です。
防御・物量・速度と方法を変えて侵攻してきました。
それぞれ三年の休眠・二年の休眠・一年と半年の休眠が必要になるくらい、きつい戦闘だったのです。
今後の予定ですが、せっかくストパン零を手に入れたので、それを題材に書いてみようかと思います。
改訂版も書かなきゃいけないのに、何言っているんだかwww
最終更新:2014年08月28日 20:27