この作品にはオリキャラが出てきます。
魔改造されたキャラが出てきます。 と言うか作者好みの魔改造です。
TS要素が含まれています? 提督の憂鬱要素はほとんどありません!
ORETUEEEE要素があります。 ていうかあります。
それでもよろしければ御読み下さい。


九曜ストパン版 アンドラの魔女 中編


「はぁぁ・・・」

目の前で相方が大きく息を吐くのが見えた。
まぁ無理もない事だ。
何せ修行を終えて初の実戦だ。緊張するのも無理はない。
しかし・・・

「先生と相対するよりかは楽だったニャ」
「いや、それは・・・そうかも。」

一時は否定しようとしたイリスだが、過去に行った模擬戦を思い出して肯定してしまう。
それだけ厳しい修行だった。
普段は泣き言を言わない菅野直枝ですら枕に涙するのだから。
剣を鞘に入れなおして振り返ると、トラックに乗っていた避難民が呆然とこちらを見ている。
突然現れた味方に驚いているのだろうか?

それとも、絶望から急に救われて思考停止しているのだろうか?
恐らくは両方だろう。
イリスが近づいていくと、避難民たちは御互いに顔見つめ合い・・・
ようやく実感したのだろう、お互いに抱きしめ、大声で騒ぎ始めた。

「皆さん、喜んでいる所申しわけないのですが・・・
 移動して頂いても構わないでしょうか?」
「おお、そうか! お嬢ちゃんありがとう!!」

何時のまに降りてきたのやら、トラックの運転手が両手をとって感謝の意を表した。
そして運転手が怒鳴ると、避難民は続々と降りて二人に礼を言っていく。
ちょっとワタワタしながらも対応していると、防衛戦の方から荷馬車がやってきた。
そしてその横をマリアが駆けていく。

「凄いわ、イリス! ネウロイが“スパっ”て真っ二つ!!」
「えっと、まぁ・・・うん。」

物凄いハイテンションの親友に押されてしまうイリス。
助けを求めて後ろを見るが、誰もいない。

「アイネ、アイネどこ!」

慌てて前を見ると、すでに荷馬車に乗った相棒がいた。

「旧交を温めるといいニャ。」

そう言うと馬車は発射していく。
手を伸ばして助けを求めるのだが、ニコニコ笑うアイアネスの笑顔はドンドン遠ざかるばかり。

「う、裏切者ぉぉぉぉぉ!!」

―――――

何とかマリアを落ち着かせたイリスは、そのまま防衛陣地を指揮する隊長にあった。
隊長は少佐であったがかなり若く、古参兵の軍曹を頼りに指揮しているのが現状だと説明を受ける。
それと同時に着任を報告する。
ハンドガンと剣で戦うという説明を受けると、少佐は大層驚いた。

一部始終を見ていたマリアの説明を受けた少佐は、そういうモノなのだと納得して頷く。
すると、軍人と一緒に防御陣地にいた村人がやってきて、声高らかに称えはじめた。
見える位置にいたのだろう。その場にいた村人皆が集まってきて胴上げを開始する。
慌てふためくイリスを見て、少佐と周りの軍人たちは苦笑するのみ。
その日の夕方は、避難民に宿を提供して食事を与えたり。

イリスの帰還祝いで、村は活気に包まれていった。
ここまで言わってくれるという皆の心意気に感激しつつ、同時にその期待を一心に受け止める重圧に少しだけ顔を青くする。
そんな彼女の肩を相棒が叩く。

「心配すんニャ。私が付いているニャ!」
「そうね。・・・でも、さっき見捨てられたけど?」
「にゃ、にゃはははは・・・」

ジト目で睨むと、明後日の方を向いて乾いた笑いをする相棒に溜息を吐く。
隣に座っていたマリアは、その様子を見て話しかけた。

「ずいぶんと仲がいいわね。修行仲間だから?」
「そうね・・・」
「ある意味、心を一つにした同志だニャ」

うんうんと頷いて、天井見る二人の目から光が消える。

「「ホント、死ぬかと思った。」ニャ。」

二人が放つ壮絶な雰囲気に、お祝いしていた村人全員が硬直した。
一体どれだけの経験をすればこんな雰囲気を出せるのか、まったくわからない。
ケタケタと笑う二人を見て焦ったマリアは、話題を変えるために手を叩いて注目を集めた。

「イリスはバロセロナの魔女育成学校に行ったんでしょ?
 どうだった? いいところだった? 彼女とはそこで知り合ったの?」
「えっと・・・」

怒涛の質問を浴びせる事で、正気を取り戻した親友にホッと一息。

「確かに推薦でバロセロナの魔女育成学校に行ったわ。
」 バロセロナは本当に都会で、見るモノが凄かった。
」 綺麗な所はあったし、美味しいお店もあった。」

話し始めたイリスの顔は明るく、マリアも安心した。
いくらこの村期待のウィッチとはいえ、たった一人で都会に言って不安もあった。
もし無事に戻ってきたら、自分が彼女のストライカーを修理したい!
その一心で勉強し続けた。だが・・・イリスの表情は暗くなる。

「でも・・・ 学校は楽しくなかった。」
「え・・・」
「村で習うモノよりも都会の学校は進んでいたの。
 私はそれに追いつくので精一杯。
 都会のルールっていうのかな?そういうのもわからない。
 他の子が話す洋服の話、美味しいお店の話、友達の噂・・・
 どれも付いていけなかった。
 魔力だけは他の子よりもあった私は、実技じゃ一番だった。
 けどその所為で私は・・・虐めにあった。
 陰湿でね。靴を隠されたり、教科書を隠されたり・・・酷かった。」

うつむいて独白する親友を見て、息を飲んだ。
自分は都会の良い所ばかりを見ていた。
この村だって虐めはあるにはある。
しかしどれも大人が諌めたり、当人が誤り来たりして仲直りするのだ。
不味い事を聞いてしまった。

嫌な思い出を思いこさせてしまった後悔が、胸の奥に広がる。
謝ろうとする前に、顔を上げた彼女の顔は・・・暗くなく、真っ直ぐに前を見ていた。

「そんな時、先生が「扶桑に行ってみないか?」って言われたの。
 最初は放逐するつもりだと思ったんだけど・・・」
「違ったのニャ。」

今まで聞きに徹していた少女が割り込んできた。

「その先生が言ったのはニャ。扶桑にいる伝説的なウィッチがウィッチを育成してくれる、という話を聞いてだったのニャ。」
「それってたしか・・・例の最強のウィッチの話か?」
「推定400歳のウィッチだって聞いたけど・・・嘘だろ?」

少女たちの対面にいた村人が、噂にしか聞いたことのない人物の話をする。
いずれも眉唾物であり、まるで信じていなかった。

「信じがたいかもしれないけど、その人は確かにいたわ。」
「年齢まではわかんニャいけど、自分の事を【御婆ちゃん】【年寄り】って言っていたから間違いなニャい。」

噂を真実と言うと、周囲から「本当かよ。」「信じられん・・・」「ウチの御婆ちゃんよりも長生きなの!?」と言うどよめきが上がった。
その様子に苦笑する二人。

「私はその人の元で一年間師事する事が決まったわ。」
「私は志願で行ったニャ」
「そ、それで?」
「「もう本当に地獄でした。」ニャ。」

再び二人の目から光が消えた。

「持久力を高めるために猛烈な運動。」
「魔力の制御を体で覚えるために叩き込まれ、何度吐いたかニャァ・・・」
「座学もわかりやすく教えてくれるけど、密度がバロセロナに比じゃない。」
「休めるのは週一回だけ、殆どが修行に費やされたニャ。」
「もう何も怖くないわね」
「同感だニャ。」
「「アッハッハッハッハッハッハッハッハッ」」

無表情に笑う二人に、どん引き留守村人達。
同時にコップ一杯を飲んで、息を大きく吐いた二人の目に光が戻り、お互い目を合わせる。

「アイネとは同室。」「くじ引きできまったのにゃ」「貴方でホント良かった・・・」
「最初見た時、「えらい暗い子だニャ」と思ったもんだニャ。」「あの時は本気で「厄介払いされた。」と思っていたもの。」
「積極的に話しかけて、場を取り持とうとしたニャァ・・・」「アイネも不安だったんでしょ?」
「思い起こせばそうだニャ。」「お互い赤点で、委員長が教えてくれたわよね。」「委員長サマサマだニャ!」
「脳筋コンビなんて言われて・・・誰が言い始めたんだっけ?」「ティナ、ニャ・・・」
「今度会ったら、ヒキサイテヤル。」「半分生かしておいてほしいニャ。ケリコロシテヤルカラ。」

交互に言い始めた二人は本当に楽しそうで、親友の様に見えた。
それを見ていたマリアは、自分の知らない親友の一面を見て呆然とする。
彼女は、こんな風にも笑うのか・・・
楽しそうに思い出を話すイリスを見て、彼女は複雑な思いを抱く。

―――――

翌日、マリアは村近くの平地に作られたウィッチ専用飛行場に来ていた。
通常航空機では離陸し辛い距離の飛行場だが、ウィッチとなれば話は別。
風も申し分なく、今日は快晴でいい天気だ。
もっとも、この飛行場を一人で使うイリスは未だに寝ているのだが。

「よいしょっと。」

飛行場に併設された小屋の中でストライカーを整備していると、扉が叩かれた。
ナンだろうと思って開けてみると、

「あ・・・」
「どうもニャ。」

アイアネスが立っていた。

「村の人に聞いたら、ココで整備が出来るって聞いたんだニャ。」
「出来ますけど・・・それを?」

ニコニコ笑うウィッチの後ろには、台車に乗せられた異形のストライカーがあった。
鉄棒が膝から突き出すストライカー。
興味はそそられるが、相手は親友を・・・

「そうだニャ。昨日使ったから、見ておきたいんだニャ。」
「わかりました。こっちです。」


扉を大きく開けて中に招き入れる。
いくら複雑な思いを抱かせた相手とはいえ、ここで戦ってもらうウィッチだ。
ストライカーの整備を任されるかもしれない。
中に入ったアイアネスは、分解整備中のストライカーを見て感心した。

「ほぇぇぇ・・・君がやっていたのかニャ?」
「そうですけど? 独学じゃ・・・不安ですか?」

ムッと少しだけ睨むが、相手は物凄い感心していてしきりに頷いていた。

「独学でも凄いニャ。わたし、全然わからニャい・・・」
「えっと、有難うございます。」
「流石イリスが言っていただけはあるニャ!」

褒められてうれしいが、親友の名前が出てきたので聞いてみる。
すると、「昨日言っていなかったかニャ?」と聞いてきたので顔を横に振った。

「そうだったかニャ? まぁいいニャ。
 イリスは最初暗かった・・・のは言ったニャ?」
「はい。」
「そんで、話をするようになってからにゃんだけど・・・
 君の自慢ばっかりだったニャ。」
「そ、そうなんですか?!」
「そうだニャ。あんまりに自慢するから、興味本位でここに来るくらいに、興味があったニャ。」

「イリスにとって君は本当に大切な人で、心の支えだったんだニャ。」と言われると、恥ずかしくなってきた。
だから慌てて否定したのだが、

「謙遜しなくていいニャ。あこっちつかわして貰うニャ~」

と言って話を聞いてくれずに終わる。
その後も言い訳をしようとするが、まったく取り合ってくれなかった・・・



一人の少女が思いを抱いた。友の知らぬ一面引き出した少女に・・・
されどその者により安らぎを得る。されど別の心が顔をのぞかせて来た。
運命はそれあざ笑い、試練を与える。古の教え子は、払う事が出来るのか・・・



やばい・・・    さらに伸びた。
前篇後編で終わらせる予定だったのに!!
次回こそ終わらせてやる!

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最終更新:2014年08月30日 16:50