- 555. ひゅうが 2011/11/25(金) 08:32:49
- ※ リリなのネタを要望する声が聞こえた気がしたのでちょっとだけ書いてみました。
ネタ――「海鳴D事件」
――西暦199X年 春 日本帝国 海鳴市
「ストップ!」
「ストップだ!」
声が重なったことに双方が驚いたらしかった。
「こちらは帝国神祇院である!神祇公安官(公安職)権限をもって本現場における捜査指揮権を所掌することを宣言する!」
ザザザッという音とともに、それまで影も形もなかった洋装に日本刀をたずさえ、あるいは帝国陸軍制式である90式小銃に長大な銃剣を取り付けた男女たちが「彼女ら」を取り囲んだ。
その周囲では、神社の社殿にいそうな和装の女性たちが指の間にお札のようなものを持ったり、御幣を両手で持ちながらこちらを鋭い視線で見つめている。
「な・・・!」
時空管理局執務官 クロノ・ハラオウンは一瞬の出来事に反応が遅れていた。
「この場より動かないことをお勧めする。公務執行妨害による現行犯逮捕は――」
「フェイト!――ぐっ!な、何する離せ!」
「このようになる。本職は神祇院関東総局 倉木公安官。事情を聞かせていただきたい。」
犬神の類だろうか、と部下の公安官に取り押さえられ、符を貼られている「獣耳の女性」を一瞥しつつ、倉木浩一(旧姓 羽山)は最近はやめていた煙草を吸いたくなっていた。
耳につけたイヤホンからは、東京湾要塞の対宙射撃システムが高度90キロに照準をあわせ、帝都の首相官邸から慌てて閣僚たちが地下の中央指揮所に退避しつつある状況が聞こえてきている。
これは、あの加藤さんが出張ってくるだろうなぁ。面倒なことになる。
本山教授あたりは嬉々として調査に参加するだろうし――
「ああ、この場にはすでに4重の和洋両用式結界を展開済みだ。逃亡は不可能とは言わないが、かなり難しいことを心得ておいてくれ。」
『待っていただけますか?』
来たか。
倉木公安官は、これまでにも寄せられていた世界中の報告から導き出される結論――異星ないし異世界文明との接触などという大ごとを押しつけた彼の上司に一定の殺意を覚えつつ、にこやかに「空中に出現した画像」に向き直った。
さて――鬼が出るか蛇が出るか。
――のちに、「海鳴D事件」と称される第2級‐甲種霊的事件における最初の接触は、こうして開始された。
最終更新:2012年01月01日 21:36