411 :Monolith兵:2014/08/14(木) 05:17:20
ネタSS「憂鬱日本欧州大戦 -パスタの本気②-」


 狂乱の一夜が開け、翌朝アレクサンドリアでは日英海軍の将官たちが会議を開いていた。

「英国海軍の損害だが、巡洋戦艦レナウンとフッドが沈没、駆逐艦ジャーヴィスが大破している。・・・我が海軍の誇る巡洋戦艦は全て沈んだ事になる。」

「日本海軍も空母天城が沈没。爆炎が赤城にも降りかかり飛行甲板の約3割が焼失しました。他にも駆逐艦曙が爆炎を浴び炎上、重巡洋艦青葉に衝突し、曙大破、青葉が小破しました。」

 地中海艦隊司令アンドリュー・カニンガム中将は、苦虫を噛み潰したような顔で昨晩の損害を述べた。それに続いて、古賀も疲れきった表情で第8艦隊の損害を報告した。赤城と曙は兎も角、青葉の被害は防げたかもしれなかったからだ。

 それぞれの被害を報告しあい、日英海軍の将官たちからため息が漏れた。
 イギリス海軍はイタリア艦隊に備えて、地中海に多くの戦力を派遣していた。ジブラルタルのH部隊には戦艦ネルソンとロドニー、更には新鋭戦艦キング・ジョージ五世を始めとする強力な戦力を配備していた。
 そして、ここアレクサンドリアには、主力艦だけでも戦艦5隻巡洋戦艦2隻空母3隻を配備していた。
 それに加えて重巡洋艦4隻の他、軽巡洋艦以下合計70隻を超える艦がアレクサンドリアには集結していた。
 更に、日本の第8艦隊(第2次遣欧艦隊)の戦艦2隻空母2隻を基幹とする30隻の艦隊も加わる大艦隊の拠点となっていたのだ。

地中海艦隊(アレクサンドリア)
戦艦
クイーン・エリザベス、ウォースパイト、ヴァリアント
レゾリューション、ラミリーズ
巡洋戦艦
レナウン
フッド
航空母艦
アーク・ロイヤル
イラストリアス、フォーミダブル
重巡洋艦4隻
軽巡洋艦12隻
駆逐艦48隻

第8艦隊(第2次遣欧艦隊)
戦艦
金剛、榛名
航空母艦
天城、赤城
重巡洋艦2隻
駆逐艦26隻

 これらの艦隊は地中海での船団護衛や、エーゲ海でのダーダネルス海峡封鎖等の任務に就いていた。

412 :Monolith兵:2014/08/14(木) 05:18:16
 これほど地中海に戦力を集結できたのは、昨年のクロンシュタット・レニングラード奇襲でバルト海におけるソ連海軍の運用能力をほとんど奪う事が出来たのが大きかった。バルト海には他にもソ連海軍の基地はあったが、大型艦の運用できる規模の設備は無く、精々が駆逐艦や潜水艦程度しか活動出来なかった。
 ドイツ空軍による航空偵察でもそれは裏付けられており、ドイツ海軍は潜水艦による機雷封鎖を行いそれらの運用能力も奪っていた。その結果、バルト海の制海権はほぼ連合国のものとなり、ドイツ海軍を主力に英仏海軍が戦力や物資の輸送と護衛、各種支援を行っていた。第1次遣欧艦隊改め第7艦隊(鳳翔、妙高、足柄基幹)も主にフィンランド支援を行っており、フィンランド戦線では連合軍が優位に立ちつつあった。

「そして、現地の協力者からの情報で、イタリアの主力艦の殆どが昨晩出航したそうだ。どうやら我々は奴らに一杯食わされたらしい。
 恐らくイタリア艦隊はフランスの船団がトゥーロンに入るのを阻止するだろう。
 そして、フランス海軍はイタリア海軍と闘う他に選択肢は無い。既にアルジェの艦隊は出航したそうだ。
 船団はアルジェに入れば守れるだろうが、ニースやアルパイン線が砲撃されるだろう。フランス本土に殆ど戦力が無い以上、アルパイン線が抜かれればフランスはイタリアに占領される・・・。」

 あまりにも厳しい現状が告げられると、会議室はざわめきに包まれた。
 方法は不明だがイタリア海軍は、アレクサンドリアのイギリス巡洋戦艦を沈め日本の空母も沈めて混乱した隙に出撃したのだ。その中には38cm砲戦艦のヴィットリオ・ヴェネト級戦艦2隻も含まれていた。

 そして、フランス本土を砲撃する可能性がある以上、フランス海軍はイタリア艦隊を放置できない。H部隊やアレクサンドリアの艦隊と合流しようにも、それよりも早くイタリア艦隊はフランス本土への砲撃をしてしまうだろう。もしそれを許せば、最悪の場合フランスの単独講和という事態にも発展しかねない。それは第2次世界大戦で連合軍が再び劣勢に立たされると言う事を意味した。
 それを防ぐためには、不利を承知で連合軍は戦力の逐次投入という最悪の選択肢を選ぶしかなかった。

「こちらにも15インチ砲戦艦は残っているが、どれもが鈍足だ。高速戦艦は日本の金剛榛名のみ・・・。それとて14インチ砲戦艦だ。空母もイギリス空母は3隻とも無事だが、日本の空母は天城が沈没、赤城が飛行甲板消失で使用不可能・・・。
 だが、それでも我々は出撃しなければならない。」

 そこまで言うとカニンガムは古賀の方へと視線を向けた。現在アレクサンドリアに存在する艦艇の内で高速(巡洋)戦艦は金剛榛名のみであった。

「古賀提督、お願いできるだろうか?」

「勿論です。我々はその為に欧州にいるのです。何よりも、戦友を見捨てたとあっては日本海軍ひいては日本人の恥となります。」

「勿論我々も出撃可能な艦は出す。即時出撃可能なクイーン・エリザベス、ウォースバイト、ラミリーズを出撃させよう。また空母も全て出せる状態だ。これは随伴艦も付けて日本艦隊に任せたい。天城型と比べれば搭載機数は少ないが、今では貴重な高速主力艦だ。3隻あれば敵艦隊にかなりの打撃を与えられるだろう。」

 カニンガムは航空機で戦艦が撃沈できるかどうかは疑問に思っていたが、それでも速力を落とすなど戦力を低下させることは可能だと考えていた。
 また、金剛と榛名のみではイタリア艦隊の無力化は無理だろうが、最大速度を出せばフランス艦隊と共同して時間は稼げると考えていた。その時間を作り出し、後続の15インチ砲戦艦3隻とジブラルタルのH部隊とで挟撃するつもりだった。

413 :Monolith兵:2014/08/14(木) 05:18:47
 カニンガムの考えは古賀も理解していた。だからこそ、カニンガムは古賀にお願いしたいと言ってきたのだ。
 この戦いで第8艦隊は壊滅的な打撃を受けるのは間違いないが、それを恐れて出撃しないのは日本海軍の恥であった。
 そして、損害を恐れ同盟国を見捨てるような事があれば、日露戦争で倍の戦力の艦隊を相手に戦った日本海軍の先達や、自分達の子や孫に会わせる顔も無くしてしまう。

「空母は3隻?いえ、空母は4隻です。赤城も出撃させます。」

「しかし、赤城は飛行甲板が半ばまで焼失しているのでは・・・。」

「飛行甲板以外に被害らしい被害はありません。航行中に飛行甲板を修理します。明日には修理を終わらせ、艦載機が着艦できる状態にします。
 我が帝国海軍の艦載機の航続距離は優に2000kmを超えており、燃料弾薬も出航間近だった為に殆どが積み終わっています。」

 古賀は、赤城の飛行甲板をどれだけ早く修理できるかで今海戦の帰趨は決すると考えていた。英空母3隻の艦載機数は合計でも150機ほど。これに赤城が加われば200機を優に超える航空機を運用可能になる。
 だが、問題もあった。そもそも赤城が明日までに修理出来るかは古賀も不安だった。また、修理できたとしても、英空母に搭載されている攻撃機は旧式のソードフィッシュだった。戦闘機こそ96式艦戦とフルマーだったが、爆撃機も旧式のスクアであった。一応は急降下爆撃が可能な機体ではあったが、その能力は日本の97式艦爆と比べて遥かに低かった。

「可能なのか?」

「出来るでしょう、いえやって見せます。それ以外に我々が勝利する道はありません。」

「解った。頼む。」

 カニンガムの言葉に古賀は見事な敬礼を行い、出航準備をするために会議室を退室した。

414 :Monolith兵:2014/08/14(木) 05:19:48
 アレクサンドリアから日英連合艦隊が出撃した頃、プロヴァンスとロレーヌはアルジェとトゥーロンから出撃した艦隊と合流していた。フランス艦隊は戦艦3隻重巡洋艦4隻以下38隻にも及ぶ大艦隊だった。しかし、対するイタリアは主力艦だけで戦艦7隻重巡洋艦4隻以下合計32隻という戦力であった。
 フランス艦隊は、少しでも味方の来援が早くなるようにイタリア艦隊のいるであろう中部地中海へと向かっており、仏伊艦隊は今日中にも激突する可能性が高かった。

「一年前と同じく、我々は再びフランスの希望となった。今回の戦いは厳しいものとなるだろうが、諸君らの奮闘を期待する。」

 フランス艦隊を率いるマルセル・ブルーノ・ジャンスール中将は艦隊への訓示を終え、大きなため息を一つついた。
 フランスの戦況は、去年のフランス内戦以上に逼迫しており、フランス軍は南仏で敗北寸前にまで陥っていた。輸送船団に乗っている5個師団をフランス本土へと輸送できればそれも覆せるだろうが、その為にはイタリア艦隊を撃破する必要があった。

「イタリアは戦艦7隻に対し、我々は戦艦3隻。補助艦艇では僅かに上回っているが、勝利は難しいだろう。」

「しかし、日英艦隊がアレクサンドリアから出撃したそうです。30ノットでこちらに向かっているので、明日には合流できるでしょう。」

「その前に我々は壊滅しているだろうな。敵艦隊には38センチ砲戦艦が含まれている上に、戦艦だけで倍以上の戦力だ。だからといって、ただでやられるつもりも無いがな。」

 ジャンスール中将は日英艦隊と合流できる可能性は低いと考えていた。フランス艦隊と日英艦隊がイタリア艦隊と接触するのはどう考えても1日以上間隔が開くため、フランス艦隊の壊滅は確実だと考えていた。かといって、イタリア艦隊との戦闘を回避するのは論外であった。

「我々の使命は、味方が来援するまで少しでも時間を稼ぐ事だ。難しいだろうが、頼むぞ。」

「勿論です。地中海の主人が誰かパスタどもに教えてやります。」

 ジャンスールの言葉にダンケルク艦長は自信を持って答えた。

415 :Monolith兵:2014/08/14(木) 05:21:21
 フランス艦隊とイタリア艦隊とが戦闘に入った事が日英艦隊に齎された頃、赤城は飛行甲板の修理をほぼ終えていた。上空には既に艦載機隊が旋回しており、次々と着艦していた。

「まさか1日で飛行甲板の修理を終えられるとは・・・。」

 赤城艦長の伊藤皎大佐は僅か1日で飛行甲板の修理を終えた事に感嘆していた。赤城の修理は天城の乗組員も動員して24時間体制で行われていた。夜間も照明を付けて修理を行っていたために、何度もイタリアの潜水艦に接触された。30ノットという高速で航行しているために聴音機は役に立たず、レーダーと見張り員の肉眼のみが潜水艦対策であった。
 一度は魚雷が接近してからようやく潜水艦が潜水艦が存在する事を知り、駆逐艦1隻が沈没した、また、高速で航行していたために他にも駆逐艦2隻が基幹不調で脱落し、英艦隊も軽巡洋艦1隻が機関故障によって脱落していた。

「古賀司令の命令は無茶苦茶だと思っていたが、結構上手くいくものなのだな。」

「問題は搭乗員の消耗です。唯でさえ何時間も飛行してきたのです。これから攻撃隊を出すにしても更に数時間の飛行と戦闘は、去年のクロンシュタット奇襲の二の舞になる可能性があります。」

「解っている。だが、やらなければならない。」

 航空参謀の懸念に、伊藤はそれでもやらなければならないと答えた。赤城に搭載できるのは所詮は空母1隻分の艦載機だけであるが、敵艦隊に空母が無い為、空母2隻分の艦爆と艦攻を露天駐機までして100機近い艦載機を搭載していた。
 艦戦も元艦爆乗りを選抜し、爆弾を搭載して対艦攻撃を行う予定であった。


「今回の海戦で第8艦隊は壊滅的な打撃を受けるだろうが、それでもやらなければならないのだ。

 古賀中将は旗艦金剛で力説していた。仮にフランス艦隊と共同してイタリア艦隊に対処できたとしても、戦艦の数は5対7と連合軍が不利だった。それを埋める為の空母であるが、既に夕暮れになっており航空攻撃は難しかった。

「技量の高い者から募り夜間攻撃隊を編成しました。しかし、夜間の発艦着艦は事故の可能性が高いです。」

「既にフランス艦隊が戦闘に入っている以上、少しでも有利になるように支援を行わなければならない。夜間攻撃隊の搭乗員には申し訳ないが、死ぬ気でやってもらいたい。」

 古賀はフランス艦隊支援のために、損害を覚悟で敢えて夜間攻撃隊を編成していた。これは事実上の決死隊であった。
 ここで1隻でも敵艦隊に打撃を与えておけば、フランス艦隊の生き残れる可能性は高くなる。翌日の艦隊決戦を考えれば、フランス艦隊には少しでも多くの戦力を残しておいて欲しかった。

 そして、第8艦隊司令部が祈る中、夜間攻撃隊は赤城から次々と発艦していった。

416 :Monolith兵:2014/08/14(木) 05:22:16
 イタリア艦隊との戦闘に突入したフランス艦隊は圧倒的に不利だった。イタリア艦隊は32センチ砲戦艦だけで5隻、更に新鋭の38センチ砲戦艦が2隻も存在していたのだ。
 だが、それでもフランス艦隊は奮闘した。日本からの技術提供によって製造したレーダーを装備し、イタリア艦隊を超える練度と士気により、既にカイオ・ドゥイリオ級戦艦1隻を撃沈し、もう1隻を中破していた。
 しかし、フランス艦隊も既に戦艦プロヴァンスが中破し、重巡洋艦コルベール、軽巡洋艦グロワール、駆逐艦4隻が沈没、重巡洋艦デュプレクスと駆逐艦2隻が大破していた。

「敵1番艦に命中。火災発生!」

 ダンケルクの主砲が敵戦艦に命中した。

「電探という物は本当に便利だ。こんな夜間でも敵の位置が手に取るようにわかる。」

 ジャンスールは電探の有用性に感嘆した。これまで夜戦はかなりの技量が必要とされていたが、電探の登場によってそのハードルはかなり下がっていた。
 更に、イタリア艦隊はレーダーを装備しておらず、ダンケルクには未だ命中弾は無かった。

「日本海軍に感謝ですな。しかし、こんな代物を開発していたとは。極東の島国と思っていましたが、認識を改める必要がありそうです。」

「前大戦でも日本海軍は勇猛果敢だった。地中海ではドイツ潜水艦から商船を守り、ユトランド沖海戦では巡洋戦艦2隻でドイツ巡洋戦艦を3隻も撃沈した。単に黄色人種だからといって、見下すのは間違いだろう。」

 フランス海軍は少なくとも日本人は欧州人に迫る能力を持つと考えていた。ドイツでも日本人は大切な戦友として扱われており、人種差別が横行する欧州にあっては画期的な事だった。

 その時、ダンケルクに衝撃が走った。

「後部甲板に被弾!左舷4連装13センチ砲大破!」

 戦闘が始まって以降初めてダンケルクは被弾した。しかし、幸い砲弾は左舷13センチ砲塔に着弾後横滑りし海面に落下したために、壊滅的な被害は受けなかった。
 お返しとばかりに、ダンケルクは主砲を斉射した。8発中2発の34センチ砲弾は敵1番艦のヴィットリオ・ヴェネト級戦艦に命中した。しかし、やはり38センチ砲戦艦だけあって堪えた様子は無かった。
 ダンケルクはヴィットリオ・ヴェネト級戦艦2隻を相手し、プロヴァンスとロレーヌは残る5隻を相手にしていた。

「くそ、腐っても15インチ砲戦艦か。」

 ジャンスールが毒づいた時、電探手が声を上げた、

「4時の方向から航空機12機が接近!」

「何!」

 ジャンスールは慌ててPPIスコープを覗き込んだ。そこには確かに航空機らしい影が映されていた。

「位置から考えれば日英の空母艦載機か?しかし、夜間攻撃をするとは・・・。」

 ジャンスールが感心していいやら呆れていいやらという表情をして呟いた。フランスも空母を持つ国として、夜間攻撃の難しさを知っていた。と言うよりも、ほぼ不可能だと考えていた。
 だが、もし艦載機に電探を載せていたら?とジャンスールは思った。

(各国が開発できなかった程の性能の電探を開発した日本なら、航空機に電探を搭載していても不思議ではない。)

 伊達に世界3大海軍の一角を名乗ってはいないと考え、ジャンスールは悔しさと共に日本を羨んだ。実際には遣欧艦隊の艦載機には電探を搭載していないのだが、後にそれを知ったジャンスールは「日本のパイロットは化け物か!」と叫んだとされる。

417 :Monolith兵:2014/08/14(木) 05:23:02
 フランス艦隊が奮闘している頃、赤城航空隊の夜襲部隊は艦隊決戦の行われている海域に到着した。

「フランスさんも結構頑張っちょるやないか!!」

「倍以上の戦力なんぞ相手にしてよう粘るわ。」

 戦闘海域に到着した97式艦攻のパイロットは派手に砲撃戦を行っている仏伊艦隊を見て歓声を上げた。

『11時の方向に戦艦2、恐らくヴィットリオ・ヴェネト級戦艦。』

 僚機からの報告に11時の方角を見ると、確かに派手に砲撃炎を上げる戦艦2隻を含む十数隻の艦隊が見えた。その時、上空に火の玉が輝いた。フランス艦隊が照明弾を上げたのだ。

「フランスさん、感謝しまっせ!」

 隊長機から攻撃用意の無線が届き、夜襲部隊は高度を下げた。12機の艦攻は海面すれすれまで降下した。イタリア艦隊は航空夜襲部隊にようやく気付いたのか、慌てて対空砲を撃ってきたが、時限信管の調整もまともに終わっていないのか、遥か後方で炸裂するだけであった。対空機銃もお世辞にも照準があってるとは言えず、被弾すらせずに12機の艦攻は2隻の戦艦に向かって魚雷を投下した。

 古賀は連合軍が勝利するためにはヴィットリオ・ヴェネト級戦艦が障害になると考えていた。就役後1年と短いために練度は低いだろうが、15インチ砲艦と言うだけで侮れない戦力であった。
 その為に、夜襲部隊にはヴィットリオ・ヴェネト級戦艦2隻を攻撃するよう命令していたのだ。

「よっしゃ、さっさとずらかるで!」

「明日また来てやるからの。それまで沈むんや無いで!」

 その言葉が合図だったのか97式艦攻は全てが東へと機首を向けた。夜間の着艦による事故を防ぐために、古賀はフランス本土へ向かうように命令していた。コルシカ島の飛行場へ着陸し、翌朝赤城に戻る予定だった。

418 :Monolith兵:2014/08/14(木) 05:25:09
「敵1番艦に魚雷命中!行き足落ちます!」

「敵2番艦にも魚雷命中!僅かですが傾斜しています!」

 ジャンスールはその報告を聞いてここぞとばかりに命令した。

「軽巡洋艦と駆逐隊は前へ!雷撃戦用意!」

 ダンケルクを旗艦とする艦隊には1隻の重巡洋艦アルジェリーの他に軽巡洋艦モンカルム、ジャン・ド・ヴィエンヌ、駆逐艦8隻が存在していた。
 ジャンスールはここで攻勢に出るべく軽巡以下の艦艇で魚雷戦をしかけようとしたのだ。フランス海軍の持つ魚雷は射程が短く、敵戦艦に接近しての雷撃戦は難しかった。
 しかし、2隻の戦艦が航空魚雷で損傷を受けた今は雷撃戦が可能だと考えたのだ。

 敵艦隊に向けて突撃を開始する軽巡洋艦と駆逐艦を抑えようと、イタリア艦隊からも巡洋艦以下の艦艇が突出して来た。しかし、数に勝るフランス艦隊はそれを物ともせずに突撃を続けた。
 ダンケルクもそれを支援するために主砲に加え、副砲も砲撃を始めていた。重巡洋艦アルジェリーは敵の巡洋艦へと目標を変え牽制していた。
 一方で速力の落ちたヴィットリオ・ヴェネト級戦艦の1隻はダンケルクの砲撃により火災が発生していた。それを見て取ったダンケルクは2番艦へ主砲を向け撃ちまくった。


 そして、その日フランス海軍は圧倒的な不利な中軽巡洋艦と駆逐艦による雷撃により戦艦を撃沈する快挙を遂げた。
 しかし、その一方で5隻の戦艦と対峙していた戦艦プロヴァンス以下の艦隊は戦艦1隻重巡洋艦2隻、軽巡洋艦1隻、駆逐艦8隻を更に失った。プロヴァンスを失い、ロレーヌを旗艦とした艦隊は再編成の為にダンケルクを旗艦とする艦隊と合流し、翌日の再戦に備える事になる。


おわり

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最終更新:2014年09月26日 19:03