774 :ひゅうが:2014/08/25(月) 22:01:24
※ これは本編のIFです。またまだ書いていない未来のお話の断片です。その旨ご留意ください。



戦後夢幻会ネタSS ――IF「巨竜の伝説 1991年」


――西暦1991(昭和66)年1月22日 ペルシャ湾


「被弾!被弾!」

「ダメージリポート(被害報告)!」

アメリカ海軍第7任務部隊(第7艦隊)指揮官 ジョン・S・マケイン・ジュニア提督は「モンキーシート」と呼ばれる指揮官席で体勢を保ちながら叫んだ。
艦長は各部からの報告をいつも通りの早耳で聞き取って数秒もたたず返事を返してくる。

「右舷に4発、うちエレベーター付近に2発命中! 格納庫と甲板上で誘爆が連続しています!」

「機関部は無事か?」

マケイン提督の頭によぎったのは、この原子力空母「レキシントン」(エンタープライズ級原子力空母の3番艦)が搭載している8基の原子炉の状態だった。
後継の「ユナイテッドステーツ」級空母(註:史実のニミッツ級)への更新が優先されたために改装が行われていないエンタープライズ級の原子炉は、堅牢ではあるが耐用年数的には微妙な存在だったからだった。

「機関部は異常を認めず。全力での航行能力発揮が可能です。喫水線下の浸水はバルジで食い止めつつあります。」

「よろしい、太平洋で経験を積んでいたのがいきたな。いささか結果が出るのが遅かったが。」

CDC(艦隊戦闘情報室)の空気が少し和らぐ。
マケイン提督の父は、今は艦列をならべている同盟国と半世紀ばかり前に機動部隊で戦い、そのキャリアと引き替えに空母の戦闘力維持に関して尽力していたことをこの場の誰もが知っていたからだった。

「敵航空機(I)群は接近中か?」

「第二波が接近中です。発射可能位置まであと15分!連中嵩に着ているようですな。」

775 :ひゅうが:2014/08/25(月) 22:02:03

「数が少ないのにご苦労なことだよ。おっといかん。友軍の状況はどうか?」

マケイン提督は、自身が原子力空母の被弾という事実に少々動揺していたことを自覚し、少し恥じ入るとともに幕僚に問う。
むろん顔には出さない。

しかしまだ若い幕僚の一人はわずかに恥じ入ったようでヘッドセットを耳につけるとまじめくさって何度も頷いた。

「英軍の駆逐艦『コヴェントリー』が被弾。現在退艦中です。
日本のシナノは――えっ?」

「どうした?!」

マケイン提督は、今回の「砂漠の嵐」作戦において横須賀からともに出撃した日本国防海軍の空母が被害を受けたのかと少し顔色を変えた。
艦齢46年を数える老朽艦ではあるが、「世界最大の通常動力空母」と呼ばれる彼女はいろいろな意味で彼らにも有名だったからだ。
冷戦華やかなりし頃には極東における核抑止力の中枢として日本海や東シナ海に展開。
幾度も実戦を経験している。
そして何より――彼女は、「あの」ヤマト・タイプの最後の生き残りだ。
この戦争が最後になると思われる戦艦「モンタナ」と主砲を共有した姉妹艦。
「ラスト・ドレッドノート」の一角。
それだけで日米の海軍に属する者にとっては特別な存在だった。

国際的に孤立したイラクがイラン憎しのあまりソ連の全面支援を受けていなければそのまま日本近海にとどまっていたに違いない。
「極東の巨竜」までもが動くという象徴的な存在が被害を受けるとなれば、その影響は計り知れない。

「シナノの右舷には3発が命中した模様です。ですが――」

「どうした?」

「被害無し、と。」

「は?」

マケイン提督はもとより、スタッフたちの動きが一瞬止まった。
おそらくはソビエト軍事顧問団が運用していたであろうスホーイSu-27KSグローザ戦闘攻撃機から発射されたミサイルは空母キラーことSS-N-19ことP-700「グラニート」は、弾頭重量が500キロという凶悪な代物だ。
一昔前の戦艦の主砲弾なみの威力を有するそれでなければ、被害はもっと軽かったに違いないのだ。

「あ…シナノより信号です。」

「何といっている?」

「Old Navy is never die.  I`m YAMATO class!!」

そうか、そういうことか。
マケイン提督は親の代からの因縁も放り出して、腹の底から笑った。

「ヤマトは死なないか! 上等だ! それでこそわが古き好敵手!」


当然か。
あいつは空母になってもヤマト・タイプ。
その腹には耐18インチ(46センチ)主砲弾装甲が仕込まれていると聞いている。
あの怪物め。東側の切り札を弾き返しやがった!



――日米機動部隊が航空機発着不能に陥ったと判断したイラク軍の大攻撃隊がペルシャ湾上空で、やる気に充ち満ちた大和型戦艦の末裔から放たれた戦闘機隊による「おもてなし」を受けるまであと15分足らず。

架空戦記版66
535 :ひゅうが:2016/03/16(水) 03:04:53
発:ソヴィエト軍事顧問団
宛:モスクワの禿

本文:ぺるしゃ湾ハ軍艦ニテ舗装サレタリ。敵ガ七分ニ海ガ三分。繰リ返ス、敵ガ七分二海ガ三分。
   我ラコレヨリ南雲航空艦隊(第一航空艦隊)トナラム。


【解説】――湾岸戦争における「ペルシャ湾航空戦」を前にバグダットのソ連軍事顧問団が発した電文。
十隻以上の正規空母と、戦艦までも含む多国籍軍を前にした絶望的な状況を端的に示すものとして、沖縄決戦の際に牛島大将(戦時昇進)から大本営に向けて発せられた電文を引き合いに出したものである。
しかしながら、マリアナ沖海戦時に陸上航空隊の統合指揮を担い、見事に小沢機動部隊の突入を掩護した「名将南雲忠一大将」の故事を引き合いに出すなど、その意気込みは十分であった。
しかし、彼らの計画は、「鋼鉄の破壊神」大和型の生き残りと、沖縄沖海戦の雪辱を果たした多国籍軍海上艦隊司令長官(余談ながら彼は当事者の息子であった)に打ち砕かれることになるのである…
最終更新:2016年08月21日 09:55